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ーコラムー
事業承継
税理士監修記事

役員貸入付?借入金?扱い方をわかりやすく解説

公開日:2020.8.17 更新日:2020.08.17

会社と役員とのあいだで金銭貸借したまま精算せずにいると、課税額や企業の信用力に悪影響を及ぼす可能性があります。

後継者による経営を順風満帆にするため、先代オーナーの会社に対する貸付または借入の残高は、事業承継の前に出来るだけ精算しておかなければなりません。

本記事では、同族企業の経営者ほど注意したい「役員貸付金」「役員借入金」の各概要に加え、相続や事業承継を意識した精算の必要性について詳しく解説します。

目次

1.役員貸付金・役員借入金とは
2.会社と役員間で金銭貸借するメリット&デメリット
  2-1.役員貸付金のメリット&デメリット
   デメリット1:無申告が指摘される可能性がある
   デメリット2:銀行からの融資が受けにくくなる
   デメリット3:取締役会または株主総会の承認が原則必須
  2-2.役員借入金のメリット&デメリット
   デメリット1:相続税・贈与税が課税される
   デメリット2:銀行から融資を受けにくくなる
   デメリット3:取締役会の承認が必須となる場合もある
3.役員貸付金・役員借入金の各精算方法
  3-1.役員貸付金の精算方法
  3-2.個人資産売却or借入による返済
  3-3.役員報酬or退職金による返済
  3-4.生命保険や共済を利用する
  3-5.残高の貸倒処理
  3-6.役員借入金の精算方法
  3-7.債務免除(役員借入金の清算方法)
  3-8.後継者への債権譲渡(贈与)(役員借入金の清算方法)
  3-9.DES(デット・エクイティ・スワップ)(役員借入金の清算方法)
4.【役員貸付金が精算できない場合】無申告加算税がかからないケースとは
5.【役員借入金が精算できない場合】相続税が課税されない条件とは
6.まとめ

1.役員貸付金・役員借入金とは

そもそも「役員貸付金」「役員借入金」とは、法人とその役員または使用者とのあいだで金銭貸借を行った場合に、バランスシートに掲載しなければならない項目です。

このうち「貸付金」とは法人が貸す場合、反対に「借入金」とは法人が借りる場合をそれぞれ指します。

【整理】「役員貸付金」と「役員借入金」の違い
※貸借する金銭の流れを矢印の方向で示しています
 会社 → 役員:役員貸付金
 会社 ← 役員:役員借入金

役員貸付金は“一時的な役員報酬”や“経費計上の難しい支出”に使われるのに対し、役員借入金は開業費などの“経営者個人による資本不足分の立替え”に使われるのが一般的です。

2.会社と役員間で金銭貸借するメリット&デメリット

役員貸付金・役員借入金ともに、経営あるいはオーナー個人の生計を支える上では利便性の高いものです。しかし会社と役員間の借入残高をいつまでも残したままにしておくと、バランスシートの印象を悪化させ、先代オーナーと後継者個人の負担も重くなります。

事業承継や相続では、とりわけオーナー個人の税負担(所得税・相続税・贈与税)に着目して対策しなければなりません。

左記のポイントを含めて「残高精算の必要性」の理解が深まるよう、各貸借のメリットとデメリットを整理します。

2-1.役員貸付金のメリット&デメリット

役員貸付金のメリットは「創業期や業績悪化により売上の見通しが立たない」等の事情を抱える法人でも、十分な役員報酬を拠出できる点です。

そもそも役員報酬の損金算入には厳しい条件があり(下記参考)、安定期に入った企業でないと対応できません。そこで役員が必要とする生計費の一部を役員貸付金として支払うことで、損金算入の条件を満たせるのです。

【参考】役員報酬を損金算入できる条件
報酬が以下いずれかの性質を持つ「給与」に該当すること

  • 定期同額給与
    …役員報酬のうち源泉税等の控除後の金額が、ある事業年度の各支給時期において同額である
  • 事前確定届出給与
    …所定の時期にあらかじめ金額等を決め、届出が提出されている
  • 業績連動給与
    …株価など利益の状況を示す指標に応じ、金額が変動する

以上のように役員個人の生計に役立つ一方で、役員貸付金の残高には下記のようなリスクやデメリットもはらんでいます。

デメリット1:無申告が指摘される可能性がある

返済のない役員貸付金は「役員報酬」とみなされる可能性があります。報酬であれば役員個人に所得税の申告義務があり、確定申告の期限を過ぎても手続きがない場合、無申告とみなされて税額が加算される恐れがあります。

さらに、本来なら債務は相続時に遺産総額から控除できるところ、被相続人に対する加算税は例外的に控除対象になりません。

相続人ならびに事業の後継者に余分な負担をかけないためにも、税務署に申告していないと指摘される恐れのある貸付金は精算しておくべきです。

デメリット2:銀行からの融資が受けにくくなる

一方で、役員貸付金の安易な計上は「将来的に資金調達が難しくなる」というリスクをはらんでいます。

金融機関の融資担当者がバランスシートを確認する際に、税務署と同じく役員報酬性(企業資産の私的流用)を疑ってしまうからです。

デメリット3:取締役会または株主総会の承認が原則必須

取締役が債務者として会社と行う取引は「自己取引」と呼ばれ、取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)での承認が必須です。万が一にも承認なしで役員貸付を行ってしまうと、この取引は無効になるばかりか、取締役に損害賠償責任が生じる可能性があります。
参考:会社法第356条・第423条

2-2.役員借入金のメリット&デメリット

役員借入金のメリットは、他人からの借入でないため契約金利や返済時期は自由に設定できる点です。

役員報酬を少しでも多く確保するために利息設定を行ったり、資金繰りが安定しないあいだは無利息で借入して返済を繰り延べたり、会社や役員個人の事情に合わせて取引できます。

以上のように会社の資金繰りには役立つ一方で、やはり役員借入金の残高にもリスクやデメリットがあることは否めません。

デメリット1:相続税・贈与税が課税される

役員貸付金の残高も資産のひとつ(=貸付金債権)であり、譲渡できるほか相続財産にも含まれます。

残高精算しないまま事業承継を開始することで、まだ返済を受けられず個人名義のキャッシュはマイナスであるにもかかわらず、相続税や贈与税の課税対象になってしまうのです。

デメリット2:銀行から融資を受けにくくなる

会社が債権者である場合だけでなく、反対に役員側が金銭を貸した場合でも「将来的に資金調達しづらくなる」というリスクを負います。

役員借入金はバランスシートに計上される“債務”であり、金融機関の融資条件を満たせなくなる恐れがあるからです。ともすると債務超過に陥り、会社自体を精算しなければならない結末も考えられます。

デメリット3:取締役会の承認が必須となる場合もある

利息・担保を設定して取締役のポケットマネーから役員借入金を拠出する場合、役員貸付金と同じく「自己取引」に該当し、取締役会あるいは株主総会の承認が必須です。承認なしで金銭貸借契約を結んでしまうと、やはり最悪の場合は賠償責任の発生に至ります。

3.役員貸付金・役員借入金の各精算方法

会社とその役員との金銭貸借契約による残高は、そのままにしておけばいずれ悪影響が生じます。

将来控える相続や事業承継を意識し、なるべく残高は精算しなければなりません。
では、精算方法としてどのような手段が考えられるのでしょうか。
下記では「役員貸付金」から順に解説します。

3-1.役員貸付金の精算方法

役員貸付金を精算するにあたっては、返済原資となる個人名義のキャッシュ確保が必須です。

原資がどうしても確保できないなら、役員報酬や退職金の一部を返上する形式をとるか、会社側で貸し倒れとして扱うのが適切です。

3-2.個人資産売却or借入による返済

第一に考えられるのが、役員個人の資産を売却して返済原資とする方法です。

ただし、売却利益には役員個人に所得税が課せられる点は注意しなければなりません。また、不動産をそのまま会社名義に変更することで精算しようとする場合は、会社に不動産取得税等の費用を負担させることになります。

ほかには役員個人名義で返済原資を借り入れる方法も考えられますが、当然ながら積極的に勧められるものではありません。負債を増やすばかりで、遺産とともに返済義務を受け継いだ相続人にますます負担を強いる結果になりかねないからです。

3-3.役員報酬or退職金による返済

第二に考えられるのが、税引き後の役員報酬から少しずつ“返上する”方法か、先代オーナーが勇退に踏み切って退職金を返済原資とする方法です。

しかし、役員報酬と退職金のどちらを返済に充てるにせよ、やはり税額その他個人負担の問題は解消できません。

返済中も生計費を満額受け取れるよう役員報酬を増やすと、その分所得税や社会保険料負担が増加します。他方の退職金についても、在職中の功労や類似企業に比べて金額が過大すぎると、会社側で損金不算入の扱いになってしまいます(法人税法第34条2項)。

以上の点を考慮すると、会社から受け取る給与額を不用意に増やすべきではありません。現状受け取っている金額のうち余剰分を返済に充てるのが無難です。

3-4.生命保険や共済を利用する

精算しなければならない時期(相続や経営者交代)までに時間のゆとりがあれば、生命保険や「小規模企業共済制度」を使って返済原資を積み立てる良策があります。


【参考】小規模企業共済とは
小規模企業の経営者や役員が加入し、掛金を支払うことで廃業や退職時に共済金を受け取れる制度です。掛金は税法上、会社側での損金算入は不可能ですが、加入者個人の確定申告の際に「小規模企業共済等掛金控除」または「生命保険料控除」の対象になります。


共済や保険の積立金は、周知の通りごく少額です。役員の受け取る給与を増やす必要がなく、損金算入の可否や社会保険料増加の問題は起きません。加えて、掛金は所得税控除の対象になります。

さらに「受給権者=事業の後継者」として相続時に役員貸付金を精算させる計画なら、給付金のうち一定額(500万円×法定相続人の数 )まで相続税は課税されません。

保険や共済のデメリットはこれといって見当たらず、役員貸付金の返済原資を確保する上では有効な手段だと言えます。

3-5.残高の貸倒処理

どうしてもオーナーのポケットマネーで返済できそうにないなら、会社側で貸付金債権を放棄する「貸倒処理」を行う方法が考えられます。ただし、手続きと個人負担の両面でのデメリットは無視できません。

まず、放棄された役員貸付金が「報酬」として扱われることにより、役員個人の所得税負担が増加します。加えて、取締役に対する債券放棄は「会社に損失を与えるかたちで個人的利益を得る行為」(=利益相反取引)であり、会社法上で取締役会あるいは株主総会の承認が必須とされています。

以上の点を考慮すると、貸倒処理は会社とオーナーだけで決めるべきではありません。税理士と相談し、返済原資の確保手段を検討しながら方針を決めるのが良い方法です。

3-6.役員借入金の精算方法

オーナーのポケットマネーから会社が借り入れているケースでは、返済期限を明確にせず、残高精算より経営を優先しているケースがほとんどでしょう。
想定外の支出で資金繰りを悪化させないために、役員借入金には下記のような返済せずに精算する手法が考えられます。

3-7.債務免除(役員借入金の清算方法)

第一の精算方法として、役員側の意志で弁済を受けないようにする「債務免除」が考えられます。

債務免除は役員個人にとって何の問題にもならないことがほとんどですが、会社側の負担は無視できません。法人税においては債権額の益金算入が必要になり、ケースによっては債権が無償譲渡されたものとして贈与税も課税されるのです。

3-8.後継者への債権譲渡(贈与)(役員借入金の清算方法)

第二の精算方法は、先代オーナーが有する債権を後継者に無償譲渡するものです。
本方法での負担は後継者個人に対する「贈与税」のみですが、年度毎に控除額の範囲内(110万円)に抑えて分割譲渡することで課税は回避できます。

3-9.DES(デット・エクイティ・スワップ)(役員借入金の清算方法)

第三の精算方法は、バランスシート上で借入金債務と資本を交換するDES(=”Debt Equity Swap”)を会社側で実行するものです。DESには「現物出資型」と「現金払込型」があり、それぞれ次のように実施します。

  • 現物出資型
    …株式を発行し(第三者割当増資)、債権者である役員に割り当てる方法です。
  • 現金払込型(疑似DES)
    …まず債権者が金銭等で出資し、次に会社がその出資額に応じた第三者割当増資を行い、最後に出資金を原資に負債を精算する方法です。

現物出資型・現金払込型に共通するのは、資本金とともに企業の信用力が増し、融資を受けやすくなる点です。

自社株の相続や贈与が発生する際も、DESによって企業規模が税法上の「大会社」に近づくことで、自社株評価方法を「類似業種比準方式」(純資産額のほかに利益や配当額を考慮内に入れる方法)に切り替えられる可能性にも期待できます。

一方で、会社が今後納めていく税金については問題点があります。
問題点のひとつは、現物出資型で会社側に発生する債務免除益です。

その他、DESの型を問わず、資本金が増えることで地方税(外形標準課税) が上昇し、さらに消費税課税事業者の資本金要件 (資本金1,000万円以上は課税事業者と判定)に引っかかる懸念もあります。

これら課税額に関する問題点を検討し、DES計画の最適解を得るには、企業の税務に長けた専門家によるシミュレーションが必須です。

4.【役員貸付金が精算できない場合】無申告加算税がかからないケースとは

未精算の「役員貸付金」が申告されていないとして所得税が加算される恐れがあるのは、メリット&デメリットの章で紹介した通りです。どうしても精算できない場合は、残高が税務上の「役員報酬」でないことを明確にし、課税そのものを回避するほかありません。

「貸付金か報酬か」を税務署が切り分ける基準は“資金の使い道”です。役員個人の口座に振り込まれ、個人的に費消されている場合は、報酬とみなされてしまいます。

しかし、東京地裁昭和52年3月24日判決のように「(会社役員が簿外預金を)自己の管理下において自己の意思により処分できる場合」でも役員報酬性が否定されているケースを見ると、すべての事例が統一基準にそって切り分けられているとも言えません。

個別のケースについては、類似事例に通じた税理士の診断とアドバイスを得るのが最適解です。

5.【役員借入金が精算できない場合】相続税が課税されない条件とは

こちらもすでに触れた通り「役員借入金」の残高が課税対象になる点は、会社経営者の相続での要解決課題です。どうしても精算できない場合、相続税の課税を回避する方法はあるのでしょうか。

結論として、役員借入金の残高が非課税となるのは「債務者である法人が経営破たんするか同等の状態に陥っている」場合のみです。

その根拠は、相続財産の評価方法を定める“財産評価基本通達” にあります。貸付金債権のうち無担保部分を相続税の課税評価額に算入しない条件として、以下のいずれかが指定されているのです。


【貸付金債権の金額(=残高)を課税評価額に算入しない条件】

  • 手形交換所等における取引停止処分
    …不渡り等が原因で金融機関と取引できなくなり、事実上の倒産状態に陥っている
  • 廃止または6か月以上の休業
    …業績不振等が原因で事業を継続できない状態に陥っている
  • 法的整理の開始
    …会社から民事再生もしくは破産のいずれかを裁判所に申し立てて開始決定を受けるか、債権者等の利害関係者からの申し立て特別清算開始の命令を受けた
  • 私的整理または債権者集会での債権切り捨て
    …民事再生中の債権者集会、あるいは金融機関との債務整理交渉により「5年以上後の返済※」が予定された

※返済開始までの期間(=据置期間)が5年以上の場合、その債権の全部が相続税の非課税対象となります。5年以内に分割返済を開始する場合は、相続開始日から5年経過した時点よりあとに返済を予定している金額部分が非課税対象です。


以上の点を踏まえると、事業承継を予定するような安定した経営状態であれば、役員借入金の残高を非課税とするのは通常は不可能だと考えられます

会社経営と相続の両方に通じた税理士のサポートを得て、なるべく借入残高を精算するよう方向決めすべきでしょう。

6.まとめ

役員貸付金・役員借入金ともに、資金繰りや売上減少を一時的に支える手段として利便性の高いものです。しかし、いつまでも残高を精算せずに放置したり、節税のつもりで恒常的に計上を繰り返したりするべきではありません

「後継者の代で融資を受けるのが難しくなる」「所得税の無申告加算税を相続人に承継させてしまう」「手元にキャッシュがないのに相続税が課せられる」等の事態を回避するために、極力残高を精算しておくのが良い方法です。

会社とオーナーで結んだ金銭貸借契約の問題は、企業・個人の両方の税務に通じた税理士のサポートが必須です。承認機関の決議の要否については、会社法の側面からの弁護士のバックアップも不可欠です。

事業承継に伴う相続税対策は、オーナーの考え方を汲んで提案に反映できるスキルの高い専門家に任せましょう。

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