相続対策は相続税と深い関連がある贈与税と一緒に考えることで、より有利に進めることができます。
元々贈与税は相続税を補完する目的で創設された経緯があるので、二つを切り離すのではなく組み合わせて考えることが大切になってきます。
この章では相続税と贈与税がリンクする相続時精算課税制度について、メリットやデメリットなどを解説していきます。
1.贈与税の節税が期待できる相続時精算課税制度とは?
通常、生前に贈与を行うと基礎控除を超える額については一定の税率で贈与税が課税されます。
これが、合計で2,500万円まで贈与税がかからずに生前贈与を行うことができるのが相続時精算課税制度です。
2.どんな人が利用するとメリットになる?
以下のような人は相続時精算課税制度を利用することで一定のメリットが見込めます。
2.1.元々相続税がかからない見込みの人
相続時精算課税制度で生前に贈与した財産に贈与税がかからなくても、相続時には相続財産に組戻されて相続税の計算がされます。
しかしその他の相続財産も合わせて相続税の基礎控除枠内に収まる見込みであるなど、相続税がかからないことが見込まれる場合には、組戻し計算をされても相続税は発生しません。
従って生前贈与2500万円分が無税になるメリットをそのまま享受できます。 このような場合で生前贈与をしたい事情があるならば検討価値が出てきます。
2.2.値上がりが確実な資産がある人
相続時に組戻し計算される際には、贈与時の価格で計算されます。
従って将来値上がりすることが確実な資産を事前に生前贈与することで、 値上がり分を評価額に算入しなくて済む分お得になります
2.3.収益物件がある人
アパートなどの収益物件から発生する家賃収入等はそのままでは将来の相続時に相続財産として相続税の対象になりますが、相続時精算課税制度で生前に贈与すると以後の家賃収入は受贈者のものになります。
従って相続財産の増加を防ぎその分相続税の負担を減らすことができます。
ただし贈与に伴う登録免許税は相続による場合よりも高くなるので利点だけではないことに留意する必要があります。(関連記事:不動産の相続に関係する税金のまとめ)
3.必ず知っておきたいデメリットについて
h相続時精算課税制度について、必ず押さえておくべきデメリットを見てみます。
3.1.暦年課税制度には戻れない
一度に多額の財産を生前に無税で贈与できるからといって相続時精算課税制度を一度でも利用してしまうと、年間110万円までの贈与税の非課税枠が使える暦年課税制度には二度と戻ることができません。
暦年課税制度は上手に活用することで十分な旨みを享受できるポテンシャルがあるので、よくよく考えたうえでなければかえって損をしてしまうことになりかねません。
3.1.小規模宅地の特例が使えなくなる
一定規模の宅地について相続税評価額を減額計算できる小規模宅地の特例は、相続や遺贈によって取得した財産が対象になり、生前に贈与された財産は特例の対象外になります。
小規模宅地の特例が使えるケースであるのにこれを考慮しないで相続時精算課税制度により生前贈与してしまうと、かえって相続税の負担の方が大きくなる恐れがあります。
4.相続時精算課税制度を使うべきではない人とは?
まず、基礎控除を超えるなどで相続税がかかる可能性がある人は、相続時精算課税制度を使うとかえって税負担が増してしまう恐れがあるので、安易に選択することは控えなければなりません。
5.相続時精算課税制度の利用は必ず税理士に相談すること
相続時精算課税制度は、個別ケースで事情を詳しく精査しないと有利になるか不利になるか分かりません。
将来の相続に関係することでもあるため、不確定要素がつきまとうので予想が難しいという特性もあります。
現在の自身を取り巻く状況を確かめ、これに将来の予想を施したうえで利用の適否を考えることは素人だけでは大変難しいので、必ず税理士に相談のうえで進めるようにしてください。
税理士は相続税と関係が深い贈与税についても守備範囲ですから、リスクのある相続時精算課税制度に頼らない相続対策も検討することができます。
6.まとめ
この章では相続時精算課税制度のメリットやデメリットについて見てきました。
2500万円まで贈与税がかからないということでインパクトがありますが、基本的には相続発生時に相続税で精算するものになりますので、贈与と相続をセットで考えなければならず、全体として必ずしも有利になるわけではないので注意が必要です。
本章で触れたメリットがありそうな人でも、ご自身の取り巻く状況を総合的に考慮すると利用しない方が良いケースもありますから、素人判断は禁物です。
相続時精算課税制度はリスクの高い制度であることを理解して、検討にあたっては必ず税理士に相談のうえで進めるようにしてください。
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