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ーコラムー
生前贈与

相続時精算課税制度とは?必要届出書や手続きの流れや注意点をまとめて解説!

公開日:2019.7.29 更新日:2019.07.29

相続時精算課税制度とは、親から子、祖父母から孫などに行われる贈与について、累計で2,500万円まで贈与税がかからず、相続時にその贈与を精算するという課税方法です。

平成15年度税制改正において創設された制度で、高齢者から次世代への財産の移転を円滑化し、経済社会を活性化させることを目的としています。

生前贈与に関連するこの制度についてメリットやデメリット、手続きの流れを解説します。

目次

1.相続時精算課税制度とは
2.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例
3.相続時精算課税制度の対象になるケース・ならないケース
4.相続時精算課税制度と暦年贈与による暦年課税の違い
5.相続放棄したときの相続時精算課税制度の適用
6.相続時精算課税制度のメリット
7.相続時精算課税制度のデメリット
8.相続時精算課税制度は土地の贈与に注意
9.相続時精算課税制度は孫の納税資金に注意
10.相続時精算課税制度は確定申告の期限内に届け出が必要
11.相続時精算課税制度を選択したときの贈与税の申告方法
12.相続時精算課税制度を選択するかどうかは、専門家とシミュレーションを

1.相続時精算課税制度とは

1-1.相続時精算課税制度とは「相続時」に贈与財産を精算する課税方法

相続時精算課税制度を、もう少し具体的にみていきましょう。

たとえば、長男が父から1,000万円の贈与を受けたとします。通常であれば、贈与を受けた長男は、1,000万円に対する贈与税を納税しなければなりません。

しかし、長男が父からの贈与について、相続時精算課税制度を選択した場合、長男は受け取った1,000万円について贈与税の負担はありません。

その代わりに父が死亡した時、贈与を受けた1,000万円は父の他の相続財産と合算されて相続税の対象になります。

しかしながら、相続の時を待たずに、まとまった財産の贈与を受けられる点にメリットがあります。

1-2.相続時精算課税制度の特別控除額とは

相続時精算課税制度では、特別控除として、贈与を受けた財産の価格から、累計で2,500万円を控除することができます。

仮に複数回にわたって贈与を受けたとしても、その合計が2,500万円に達するまでは特別控除の対象となり、贈与税はかかりません。

たとえば、次のような贈与を受けた場合で考えてみましょう。

回数 贈与額 累計
1回目 1,000万円 1,000万円
2回目 600万円 1,600万円
3回目 800万円 2,400万円
4回目 600万円 3,000万円

この例では、贈与額の全額が特別控除の対象となるは3回目の贈与までです。

4回目の贈与では、特別控除額の残りは100万円ですので、特別控除の範囲内で贈与できるのは100万円までとなります。それを超えた500万円については、特別控除の超過額として、贈与税の課税が生じます。

1-3.特別控除額を超えた分の贈与税と相続税の関係

相続時精算課税制度を選択し、贈与額の累計が特別控除額である2,500万円を超えた場合、その超過額には、一律20%の贈与税が発生し、贈与を受けた翌年の確定申告の申告期限までに納税しなければなりません。

たとえば、相続時精算課税制度を選択して3,000万円の贈与を受けた場合、2,500万円を超過した500万円には、100万円(500万円×20%)の贈与税がかかってしまいます。

ただしこの時負担した贈与税は、相続時に、相続税から控除される方法によって調整されます。

なぜ調整されるのかというと、受け取った3,000万円は、相続時に相続財産として精算されるため、そのまま相続税を計算すると、既に税金の対象となった超過分500万円に対して、贈与税と相続税の二重に税金が課されることになってしまうからです。

贈与時 特別控除額
2,500万円(贈与税0円)
超過分
500万円(贈与税100万円)
相続時 全額が相続税の対象になる

同じ財産に税金が二重に課されることは不当ですので、この場合、相続時精算課税制度によって贈与税を負担した相続人の相続税から、既に支払った贈与税を控除する方法で調整されます。


もし相続時精算課税制度を選択した受贈者の相続税が150万円だった場合、そこから贈与税の100万円を控除し、相続税の納付額を50万円に調整するということです。

このように相続時精算課税制度によって負担した贈与税は、後から相続税で精算されるため、一時的な負担とみることもできます。

1-4.相続時精算課税制度を選択できるのは子供や孫

相続時精算課税制度を選択できる受贈者(贈与を受ける人)は、20歳以上の子供や孫で、贈与者(贈与を行う人)は、60歳以上の親や祖父母になります。

1-5.受贈者は20歳以上の子や孫

相続時精算課税制度を選択できる受贈者は、贈与者の子供や孫です。正確にいうと、贈与者の「推定相続人である直系卑属」と「孫」になります。年齢は、いずれも贈与を受けた年の1月1日において20歳以上でなければなりません。

「推定相続人」とは、相続人となる予定の人のことで、「推定相続人である直系卑属」とは基本的には子供のことを指します。

ただし、代襲相続(※)が起こることが考えられるため、子供と限定せずに、直系卑属と表現されています。

(※)代襲相続とは、親の相続人としての地位を、子が代襲することです。たとえば父が子より先に亡くなり、祖父からの相続が発生した場合、子が父の代わりに相続人になることなどをいいます。


養子についても、子供と同じく相続時精算課税制度の対象です。

ただし、推定相続人となるかどうかは相続時精算課税にかかる贈与が行われた日の状況が基準となるので、たとえば10月に養子縁組を行った養子に、その前月の9月に行った贈与についても相続時精算課税制度を適用するということはできません。

孫については、推定相続人ではありませんが、平成27年から相続時精算課税制度の対象者に加えられています。

1-6.贈与者は原則60歳以上の両親や祖父母

受贈者の要件が「推定相続人である直系卑属と孫」であることから、相続時精算課税制度を適用できる贈与者は、必然的に、受贈者の親や祖父母になります。

贈与者についても年齢要件があり、贈与を行った年の1月1日において60歳以上であることが必要です。

相続時精算課税制度について

2.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例

一定の住宅購入費などに充てる資金の贈与が行われた場合、贈与者の年齢が60歳未満であっても、相続時精算課税制度を選択できるという特例があります。(ただし受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上でなければなりません。)

対象となる贈与は、一定の要件を満たす住宅の購入費や建築費用、増改築費用などに充てる金銭の贈与です。2021年12月31日までの特例となります。

この特例は、贈与税の非課税制度である「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」と併用することができます。

この制度は、親や祖父母などから贈与を受けた場合、契約日や住宅の性能に応じて、一定額が非課税となるというものです。


仮に2019年8月に省エネ等住宅に該当する建売住宅を3,000万円で購入する場合、非課税制度によって、親や祖父母から非課税で贈与を受けられる限度額は1,200万円になります。 この場合、1,200万円を非課税で受け取り、残りの1,800万円について相続時精算課税制度の特別控除額を利用して贈与を受けるということが可能です。

このとき相続時に持ち越されるのは、相続時精算課税制度を適用した1,800万円のみとなります。

住宅取得等資金の贈与に関する相続時精算課税制度や非課税の特例を適用するには、他にも要件がありますので、贈与を行う前に必ず専門家に相談しましょう。

3.相続時精算課税制度の対象になるケース・ならないケース

相続時精算課税制度の対象になる主なケースと、対象にならない主なケースを確認しておきましょう。

<対象になる主なケース>

  • 父(65)から子供(35)への贈与
  • 祖母(75)から孫(25)への贈与
  • 祖母(75)から孫(25)への贈与

<対象にならない主なケースとその理由>

対象にならないケース 理由
父(65)から孫(19)への贈与 受贈者が20歳未満なので適用されません。
母(45)から子(20)への贈与 贈与者が60歳未満なので適用されません。ただし住宅取得等資金の贈与など例外があります。
夫から妻への贈与 配偶者間の贈与には適用されません。
子から親への贈与 若年世代からの贈与には適用されません。
祖父からひ孫への贈与 一般的には子と孫までが適用対象となります。ただし、ひ孫が代襲相続によって贈与時に推定相続人であり、年齢要件を満たしていれば適用可能です。

3-1.相続時精算課税制度は贈与者と受贈者ごとに選択する

相続時精算課税制度は、特定の贈与者と受贈者の間で適用される制度です。

たとえば、父親から贈与を受けた長男Aと長女Bについて、長男Aは相続時精算課税制度を選択し、長女Bは暦年課税のまま贈与を受けることができます。暦年課税とは、贈与税の原則的な課税方法のことで、次項で解説します。

また、父と母から贈与を受けた次女Cが、父からの贈与のみ相続時精算課税制度を選択し、母からの贈与は暦年課税とすることも可能です。

3-2.相続時精算課税制度を複数人との間で選択した場合

さきほどの次女Cの例で、父からの贈与も母からの贈与も相続時精算課税制度を選択した場合、次女Cが受けられる特別控除額がいくらになるかというと、それぞれの間で累計2,500万円ずつ適用されます。つまり、最大5,000万円まで贈与税の負担をすることなく、贈与を受けることができるということです。

4.相続時精算課税制度と暦年贈与による暦年課税の違い

相続時精算課税制度を選択しない通常の贈与は、暦年贈与とみなされます。そのため暦年課税という方法で贈与税が課されます。

暦年課税とは、1月1日から12月31日までの間を課税期間として、この間に贈与を受けた財産の合計から、基礎控除額(110万円)を差し引いた価格に税率をかけて、贈与税を計算する課税方法です。

【相続時精算課税制度と暦年贈与による暦年課税の違い】

相続時精算課税 ・特定の贈与者からの贈与で選択できる課税方法
・贈与財産はすべて相続時に精算
・特別控除額2,500万円まで贈与税負担なし
・超過分には一律20%の贈与税
暦年課税 ・相続時精算課税を選択していない、通常の贈与の課税方法
・税額は、(年間に贈与を受けた財産の価格-基礎控除額110万円)×贈与税率(10%~55%)で計算

4-1.相続時精算課税制度と暦年贈与はどちらがお得?

暦年課税の場合、1年間で多額の贈与を受けると、その分高額な贈与税を納税しなければなりません。

例えば、父から子供への贈与の場合、1年間に贈与を受けた財産の合計額が1,000万円であれば、納付する贈与税額は177万円(※1)です。

しかし、暦年贈与による暦年課税であれば、毎年必ず基礎控除額110万円を適用することができます。

暦年課税の基礎控除額以下で贈与した財産については、贈与時も相続時も、基本的に税金はかかりません。(相続税の生前贈与加算の対象になれば、相続税が課税されることはあります。)

つまり、毎年110万円以下の贈与しか受けることがなければ、暦年課税のままでいる方が節税には効果的といえます。

(※1)
贈与税の対象:1,000万円―基礎控除額(110万円)=890万円
贈与税:890万円×税率(30%)-控除額(90万円)=177万円


暦年課税の税率および控除額はこちらからご確認いただけます。子や孫に贈与を行う場合には贈与税が軽減されます。

関連記事:生前贈与とは?孫に贈与したい時の非課税について

5.相続放棄したときの相続時精算課税制度の適用

相続財産の調査をし、負債の額が財産よりも多いことがわかったときは、多くの場合、相続人は相続放棄を検討することになります。

しかし、相続人が相続時精算課税制度を適用している場合、相続放棄をしてもよいのでしょうか。

答えは、相続時精算課税制度を適用していても、相続放棄は可能です。

相続時精算課税制度は、あくまで課税方法の選択肢であって、相続権の変動とは別問題となります。したがって、相続放棄をすることは自由です。

ただし、相続放棄をした場合でも、相続時精算課税制度によって贈与を受けた財産については相続税を負担することとなります。

相続放棄をしたときの相続時精算課税制度の適用について

6.相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度には、次のようなメリットがあります。

6-1.一度に多額の贈与を行うときはお得

たとえば、財産5,000万円の父が、亡くなる5年前に、長男と次男に1,000万円ずつ贈与したというケース(法定相続人も長男と次男の2人)で、生前贈与を暦年課税で行った場合と、相続時精算課税制度で行った場合で、それぞれ税金を計算してみます。


<暦年課税の場合>
贈与時:贈与税354万円(※2)
相続時:相続税0円

長男と次男が父から、それぞれ1,000万円の贈与を受けた場合、暦年課税では1人177万円、合わせて354万円の贈与税を負担することとなります。

一方、相続財産は、3,000万円(5,000万円-1,000万円×2人)に減少し、相続税の基礎控除額以下となるため、相続税はかかりません。

(※2)
1人あたりの贈与税:(1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円
177万円×2人=354万円


<相続時精算課税制度>
贈与時:贈与税0万円
相続時:相続税80万円(※3)

長男、次男ともに相続時精算課税制度を選択した場合、負担する贈与税は0円です。 相続では5,000万円に対して相続税がかかってしまいますが、相続税の基礎控除額などの効果によって、相続税額は80万円ですみます。相続税は、基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)が大きく、税率も暦年課税の贈与税率より上昇が緩やかであることが特長です。

(※3)
相続税の対象:5,000万円-基礎控除額(3,000万円+2人×600万円)=800万円
800万円×2分の1(法定相続分)=400万円
相続税:400万円×10%=40万円
40万円×2人=80万円


したがって上記のケースでは、相続時精算課税制度を選択した方がお得になります。 ただし贈与税と相続税では、計算方法もその対象も異なるため、どちらがお得かは個別に税理士にシミュレーションを依頼することが大切です。個別の税務相談は、税理士の独占業務となります。

6-2.相続財産が基礎控除額以下であれば使いやすい

相続時精算課税制度は、その課税を相続時に持ち越すものであるため、相続税は必ず発生します。しかしながら、相続税は贈与税に比べると割安な税金といえます。

理由は前述のとおり、相続税は、基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)が大きく、税率も暦年課税の贈与税率より上昇が緩やかだからです。


特に、贈与者の財産がもともと相続税の基礎控除額以下であれば、相続時精算課税制度を選択することに税金のデメリットはありません。

たとえば、相続財産が4,000万円である父から、長男と次男が1,000万円ずつ贈与を受けて相続時精算課税制度を選択した場合、相続時に精算しても、相続財産がもともと相続税の基礎控除額以下なので、相続税は発生しません。

このようなケースであれば、暦年課税と比較する必要はなく、相続時精算課税制度により好きなときに好きなだけ贈与できた方が、メリットがあります。

ただし、相続財産に該当するものには、被相続人の本来の財産以外にもさまざまな財産が存在します。安易に預金や不動産などの財産を見積もって、基礎控除額以下だと決めつけないようにしましょう。

6-3.子や孫の喜ぶ顔を見ることができる

相続時精算課税制度を適用して生前贈与を行っても、相続まで一切贈与を行わずそのままにしておいても、発生する相続税は同じです。

しかし、生前のうちに、子供や孫が必要としているときに財産を渡してあげることができれば、親や祖父母は、そのたびに子供や孫が喜ぶ顔を直接見ることができます。

相続税対策にはならなくても、それまで築いた財産が、大切な家族のために使われていることを自身の目で確かめられる方が、満足度の高い使い道となるのではないでしょうか。

7.相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度には、デメリットもあります。

7-1.暦年課税に戻せない

相続時精算課税制度を選択した贈与者からの贈与については、その後、暦年課税に戻すことはできません。

たとえば、相続時精算課税制度を選択した人が、その後、

  • 贈与を受けた金額の累計が2,500万円に達したから暦年課税に戻したい
  • 選択したもののそこまで多額の贈与は不要だと思い直したので110万円以下の基礎控除額で少しずつ贈与を受けたい

などと考えたとしても、暦年課税には戻すことは認められないということです。1度でも選択した相手からの贈与は、生涯、相続時精算課税制度の対象になります。

ただし相続時精算課税制度は、贈与者ごとに選択できる制度です。
たとえば父からの贈与について相続時精算課税制度を選択していても、母からの贈与について相続時精算課税制度を選択していなければ、母からの贈与については暦年課税で贈与を受け続けることができます。

7-2.贈与時の価格で課税される

相続時精算課税制度で、相続財産に計上される価格は、贈与時の価格となります。たとえば、贈与時には1,000万円だった株式が、相続時には500万円だったとしても、1,000万円の価格で相続税が課税されるということです。

相続時精算課税制度による贈与から相続までは、20年、30年という年月が経過する可能性もあり、株式などのように価格が変動する財産の場合、相続時に価値が下がっていたとしても、贈与時の価格で相続したものとして相続税を支払わなければなりません。

7-3.相続時に他の相続人に知られる

相続税は、相続税の対象となる全ての財産の価格が判明しなければ、計算することができません。

さらに、相続時精算課税制度を選択するには税務署への届け出と贈与税の申告書の提出が必要となるため、税務署は、誰が相続時精算課税制度によっていくらの贈与を受けているかすべて把握しています。

つまり相続時精算課税制度を選択した場合、周囲に贈与を受けたことを隠し通そうとしても、相続税の計算の段階で限界を迎えるのです。


1人だけ多額の生前贈与を受けていたことが発覚したり、もし他の相続人が進めていた相続税対策が、相続時精算課税制度による財産の持ち越しにより計画どおりにいかなくなったりする状況があれば、他の相続人からの反感を買うことになるかも知れません。特別受益とみなされる可能性もあり、そうなると他の相続人から遺留分減殺請求を受ける場合もあります。

相続時に、子供や孫が生前贈与によって肩身の狭い思いをしないで済むよう、贈与者は、他の親族からの理解を得られるよう配慮が必要といえるでしょう。

相続時精算課税制度のメリット・デメリット"

8.相続時精算課税制度は土地の贈与に注意

相続時精算課税制度を使えば、高額な財産も早々に子供や孫に移転させることができることから、不動産の贈与を考えるケースも少なくありません。

しかし、土地の生前贈与については、小規模宅地等の特例が使えなくなることに注意が必要です。

小規模宅地等の特例とは、相続税の計算にあたって、亡くなった方名義の土地を一定の親族が「相続」した場合、要件を満たすことで、その土地の評価額(相続税の計算対象となる価格)を最大8割減額することができる特例になります。

相続時精算課税制度は「生前贈与」ですので、この特例の対象になりません。 適用の可否によって相続税の計算に大きな差がつくため、相続時精算課税制度があるからといって安易に土地を生前贈与しないよう注意しましょう。

相続時精算課税制度による土地の贈与は、こうした不動産特有のコストにも注意が必要です。

9.相続時精算課税制度は孫の納税資金に注意

相続により財産を取得した場合、相続税は、受け取った財産から支払うことができます。 ところが、相続時精算課税制度で受け取った財産以外に相続で財産をもらえなかった場合、相続税の納税資金は自身で調達しなければなりません。

特に、孫は注意が必要です。

孫は、本来は相続人でないため、相続時に新たな財産を得られないことは十分考えられます。 しかも、相続税の計算ルールには、1親等の血族でない人に相続税が発生する場合、その相続税は2割加算されるというルールがあります。

つまり、孫の相続税は、通常の計算による相続税額の1.2倍です。
このことから、特に孫が相続時精算課税制度を選択する場合は、納税資金を確保した上で贈与財産を使用するなど注意が必要になります。

10.相続時精算課税制度は確定申告の期限内に届け出が必要

相続時精算課税制度を選択したい場合は、受贈者は、贈与を受けた翌年の確定申告の申告期間中に、税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければなりません。同じ贈与者からの贈与が複数年にわたる場合は、初めて適用を受ける年のみ提出します。

もし複数人の贈与者からの贈与について、相続時精算課税制度を選択したい場合は、贈与者ごとの作成が必要です。

10-1.相続時精算課税選択届出書の添付書類

「相続時精算課税選択届出書」には次の添付書類が必要です。

  • 受贈者の戸籍謄本や戸籍抄本など…受贈者の氏名や生年月日、贈与者の推定相続人であること(あるいは孫であること)がわかるもの
  • 受贈者の戸籍の附票の写しなど…受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所がわかるものや受贈者の平成15年1月1日以後の住所又は居所がわかるもの(平成7年1月2日以前に生まれた方が贈与を受け、相続時精算課税選択届出書を提出する場合に必要)
  • 贈与者の住民票の写しや戸籍の附票の写しなど…贈与者の氏名や生年月日、贈与者が60歳に達した時以後の住所又は居所がわかるものや受贈者の平成15年1月1日以後の住所又は居所がわかるもの

10-2.相続時精算課税選択届出書を期限内に提出できなかったとき

「相続時精算課税選択届出書」を期限後に提出した場合、相続時精算課税制度の適用を受けることはできません。

さらに、相続税法基本通達では「相続時精算課税選択届出書」を期限内に提出できなかった場合について、宥恕(ゆうじょ)規定はないことが明記されています。宥恕規定とは、やむを得ない事情があって提出が遅れた場合、期限内に提出があったものとして扱ってくれる税務署等の対応を指します。

(注) 提出期限までに相続時精算課税選択届出書が提出されなかった場合における宥恕(ゆうじょ)規定は設けられていない。”

相続税法基本通達21の9-3 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/12.htm#a-21_9_3

「相続時精算課税選択届出書」は宥恕規定による対応の余地がないことから、提出期限は必ず守らなければなりません。


もし提出できなかったときは、相続時精算課税制度ではなく、原則の暦年課税となります。 相続時精算課税制度を選択するつもりで、多額の贈与を受けていた場合、暦年課税で非常に高額な贈与税を負担しなければならない可能性があるため、「相続時精算課税選択届出書」の提出は絶対に忘れないようにしましょう。

なお、「相続時精算課税選択届出書」などの税務書類は、税理士に依頼して作成を代行してもらうことも可能です。

11.相続時精算課税制度を選択したときの贈与税の申告方法

相続時精算課税制度を適用する場合、「相続時精算課税選択届出書」とともに、「贈与税の申告書」を、贈与税の申告期限内に提出しなければなりません。

相続時精算課税制度を適用する場合の贈与税の申告では、申告書第一表とともに、申告書第二表(相続時精算課税の計算明細書)の作成が必要です。

その後も、相続時精算課税制度によって贈与を受けた年は、毎回、贈与税の申告書の提出が必要になります。なお、マイナンバーの記載があるため、マイナンバー関係書類の写しの添付等も必要です。

(関連記事)申告書の記載方法については、前回のコラムをご参照ください。贈与税の申告方法を解説!申告書の作成や無申告について

11-1.申告忘れに注意!期限後申告をしてしまった場合

申告期限を過ぎてから行われた税務申告のことを、期限後申告といいます。
もし相続時精算課税制度を選択している人が期限後申告を行った場合、期限後申告の対象となる贈与については、相続時精算課税制度の特別控除が適用されず、一律20%の課税となるため注意しましょう。

また、期限後申告により、延滞税や加算税が発生することもあります。

12.相続時精算課税制度を選択するかどうかは、専門家とシミュレーションを

相続時精算課税制度は、短期間に多額の贈与を受けるときなどにメリットがありますが、暦年課税に戻すことができないため、その後、相続税対策を行いたいと思い直しても、手段が限られてしまいます。

したがって、相続時精算課税制度の選択は、選択を行う前に、相続まで見越して検討することが重要です。また、期限内に届け出や申告といった手続きを行わなければ、せっかく選択しても意味がありません。

相続時精算課税制度を選択する場合は、選択する前に一度、相続税の専門家に相談し、個別にシミュレーションを行いながら、必要な手続きをしっかり押さえて進めていくことが大切です。