自社株の株価を引き下げることは、スムーズな事業継承に欠かせません。 株価の引き下げの手法のなかで、引退時の退職金はポピュラーです。 ここでは役員引退時の退職金支給について詳しく見ていきます。
目次 |
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1.役員退職金はどのように決められるのか? |
役員退職金はどのように決められるのか?
退職金の計算例を以下に掲載します。 株価を引き下げる手法のなかで、最も多く活用されているのが、役員への退職金の支払いです。 オーナー社長が、事業継承時のタイミングで役員退職金を受け取り、株価の引き下げを行うことは大変多いケースです。 功績倍率は、退職した役員さんのその会社における地位がどのくらいだったのか、ということによって大きな差があります。 創業のオーナーの場合は、通常3倍くらいまでは認められるようです。
税制上の条件
役員退職金の条件としては、下記のようなことが税制上の条件となります。
(1)常勤役員が代表権や実質的な経営上の地位を持たない非常勤役員になるとき (代表からおりて、現役から引退すること)
(2)取締役が監査役になったとき
(3)報酬が50%以上減少したとき (名実ともに経営から退いた場合には、役員報酬は減額して当然ということです) 多額の退職金ですが、生活資金だけでなく、後を継がない者への遺留分にも活用ができます。 役員が思い切って多額の退職金をもらうことで、会社としては、当期利益が減ることで株価が下がり、事業継承しやすい形となることができます。
※役員の退職金は、必ず株主総会での決議が必要となります。
具体例
今回は大企業のA社を事例として取り扱ってみます。
事例A社 大企業
- 業種 サービス業
- 売上 90億
- 課税所得 4億
- 自己資本 40億
- 資本金 750百万円(発行株式数 500千株)
- 社長月額報酬 2.5百万 役員在籍27年
退職金の計算
最終月額報酬 × 役員在籍年数 × 功績倍率 2.5 百万 × 27年 × 3倍 = 約 2億円
課税所得
課税所得は、退職金を支払う場合は、通常の4億から2億円となります。 退職金を支払わない場合は、通常の4億のままです。
自己資本
また自己資本は40億円ありますが、退職金支給の有無で以下の違いが出てきます。
- 退職金を支給しない場合 → 自己資本は42億円になります。 (課税所得の4億のうち半分が税金の支払い、残り2億が自己資本に加算される)
- 退職金を支給した場合 → 自己資本は41億円になります。 (課税所得の4億のうち、2億が退職金、1億が税金。残り1億が自己資本に加算される)
計算結果
株価を500円として計算します。
退職金を支給しない場合
退職金を支給した場合
退職金を支給しなかった場合、9,198円 退職金を支給した場合、5,544円 となりました。
つまりこのケースでは、退職金を思い切って支給した場合、株価は上記のように3,654円下がりました。 退職金を思い切って支給した場合、このケースでは、株価を約40%抑えられたことになります。
このように、役員引退時に退職金を支給することで、株価がとても低く抑えられるということが、数字からもわかります。 つまり、役員退職時の退職金を支給することは、株価の引き下げに効果があると言えます。
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