法人の相続においては、自社株の株価を低くする、という点が重要になってきます。
自社株の株価を低くする手法の中のひとつに、「家賃を一括払いする」という方法があります。 これは家賃を一括前払いすることで、「短期前払い費用の損金処理」が可能になり純資産が圧縮され、株価の引き下げにつなげることができるためです。
ここでは「短期前払い費用の損金処理」について説明していきます。
前払費用とは
前払費用とは、わかりやすく言うと、お金は支払ったけれどもその対価としてのサービスの提供を受けていないもの、ということになります。
たとえば来月の家賃を今月中に支払った場合、今月末の段階では、まだ家屋の利用というサービスを受けていないのですから、前払費用になるわけです。
短期前払費用の損金処理とは?
例えば、1年分の家賃を一気に支払うことで、損金扱いになり純資産が圧縮されるというやり方です。
この損金処理を事業継承の時期に活用することで、株価の引き下げにつながることができます。 (利益を減らすことで、株価にはより大きい効果が期待できるため) 自社ビルでは当然家賃は発生しないため、使うことのできない手法ですが、オフィスが賃貸であれば活用が可能です。
1年ごとに計算をするので、数年かけて継続することで効果がでてきます。契約の種類や内容にも注意をしてください。 家賃以外にも、地代や借入金利息、保険料などにも利用ができるので、短期前払費用の損金処理は、節税の定番的手法です。
クリアすべき要件とは?
家賃を短期前払費用による損金処理にするための要件は以下のとおりです。
- 一定の契約に基づき継続的に役務を受けることとなっているものであること
- その支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものであること⇒費用を前払いしたとして、サービスを1年以内に受けないと適用されません。また、サービスの提供期間が1年以内の支出であることも確認しましょう。
- 継続的に支払事業年度において経費処理していること⇒決算の結果によって、その期だけ適用するということはできません。
- 収益の計上と対応させる必要があるものでないこと⇒借入金利息のうち預金や有価証券で運用するためにかかる利息には適用されません。
そのため、家賃を1年分前払いした場合には、賃貸借契約は1.の「継続的」な契約であり、2.の「1年以内」の条件も満たします。
そして3.の「継続的に経費処理する」を満たせば、一括して経費に算入することが認められます。
今回が初めての支払である場合には、来年以降も一括経費処理することを前提に経費処理が認められますが、前年以前は月次で支払っていたのに今回だけ一括払いをするというのでは否認される可能性が高くなります。
この4つの条件のどれか一つでも欠く場合には、一括経費算入はできませんので、注意しなければなりません。
短期前払費用が適用されないもの
来期の社員研修の費用を先払いしたとします。
来季の社員研修の費用の先払いは、単発の契約であり、継続的なものとは言えません。 そのため研修を実施していない今期において、経費に認められることはできません。
相談内容がその都度異なる税理士や弁護士の顧問料
相談内容がその都度異なる税理士や弁護士の顧問料などは適用されません。 短期前払費用には、継続性、等質性が求められます。
期間限定の雑誌広告掲載料やテレビCM放映料等の広告宣伝費
期間限定の雑誌広告掲載料やテレビCM放映料等の広告宣伝費も適用されません。 期間限定の広告掲載料やテレビCM放映は、継続的なサービスの提供を受けるものとはいえないため、適用されません。
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