遺産相続

固定資産税のお得な支払い方法とは?注意点や支払い時期を解説!

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士

毎年特定の時期を迎えると不動産を所有する人に「固定資産税の納税通知書」が届きます。土地や家屋を所有している人は、すでに支払いを経験したことがあるでしょう。

不動産に課税される固定資産税は、場所や大きさなどによって高額になりやすく、納税者にとって重い負担です。お得に支払う方法はないか、頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。

実は、固定資産税は「お得」に支払う方法があります。本記事では、固定資産税のお得な支払い方法はもちろん、納税時の注意点や支払時期を詳しく解説します。

1. 固定資産税の支払い方法とは?6種類を解説

固定資産税には6つの支払い方法があることをご存じでしょうか。

電子マネーなどの普及で以前よりも選択肢が増えており、ご自身に合った支払い方法を選択できます。

この章では固定資産税の支払い方法を詳しく解説します。

1-1. 現金納付

郵送で届いた固定資産税の納付書を使って、現金で支払う方法です。

納税は自治体窓口に限らず、以下の場所で支払えます。

なお、対象となる金融機関は地域によって異なるため、ご自身の納付書を必ずご確認ください。

現金納付は領収書がその場で発行されます。

  • 金融機関や郵便局の窓口 

納税通知書に記載の銀行、信用金庫、農業協同組合など金融機関や郵便局の窓口

  • コンビニエンスストア

納付書1枚あたりの金額が30万円を超えているものについては取り扱わないため注意が必要

  • 自治体の窓口

各市区町村の窓口でも直接支払いが可能

1-2.口座振替

現金を用意しなくても口座から引き落とされる口座振替も利用可能です。

支払い時期を迎えると自動で引き落としされます。

払い忘れの心配がないメリットがありますが、引き落としができなかった場合は再振替ができず、届いた納付書を使う必要があります。

口座振替を登録したい場合、納税通知書に同封されている口座振替依頼書を各自治体や金融機関の窓口に提出すれば簡単に登録できます。

口座振替は領収書が発行されないためご注意ください。

1-3.クレジットカード

お手持ちのクレジットカードを使って固定資産税を納付することも可能です。

支払い方法は各自治体が指定する納付サイトにアクセスし、クレジットカード情報と納付書情報を入力することで決済します。

金融機関やコンビニ、自治体窓口ではクレジットカード払いはできません。

加えて、納付金額に応じた決済手数料が発生します。

クレジットカード払いも領収書は発行されませんのでご注意ください。

1-4.ペイジー(pay-easy)

ペイジーとは、インターネットを活用して電子決済を行うサービスです。(pay-easyと表記されていることもあります)

ペイジーのマークが付いている納税通知書であれば、インターネットやモバイルバンキング、ATMから支払いが可能です。

スマホで簡単に操作できるため人気がありますが、領収書は発行されません。ペイジーマークや決済方法の確認は以下サイトからご確認ください。

参考:pay-easy

1-5.スマホ決済

多くの自治体が対応している便利な支払い方法にスマホ決済があります。

ご自身のスマホに導入されている決済アプリを起動し、カメラで納付書のバーコードや地方税統一QRコード(eL-QR)を読み込んで支払います。

  • 対応アプリ例  PayPay、d払い、au PAYなど

  • 注意点 自治体やアプリによっては支払いやチャージ方法、支払い上限額が異なる場合があります。
  • 例として、PayPayの場合は納付書1枚につき30万円までしか決済できません。

東京都の場合、納税義務者本人のスマホではなくても決済可能です。

ただし、すでに口座振替登録をしている場合はスマホ決済はできません。

延滞金がある場合は別途納付書が発行されるため、その納付書を用いて支払います。

支払いの注意点は各自治体HPをご確認ください。

スマホ決済は領収書が発行されませんので注意が必要です。

参考:東京都主税局 スマートフォン決済による納付について

1-6.電子マネー

nanacoやWAON、交通系マネーといった特定の電子マネーにチャージして、コンビニエンスストアで支払う電子マネー払いも可能です。

  • 手続き方法
    コンビニのレジで「公共料金の支払い」を伝え、電子マネーで決済します。

  • 注意点
    電子マネーのチャージ上限額(例: nanacoは5万円)があるため、高額な場合は複数回に分けてチャージが必要です。また、nanacoはセブンイレブン、WAONはミニストップで支払う必要があり、使用する電子マネーによっては支払先が限られます。

電子マネー決済は領収書が発行されます。チャージ限度額に注意して支払いましょう。

2. 固定資産税をお得に支払うならどの方法?

毎年発生する固定資産税を支払うなら「少しでもお得にしたい」という人は多いでしょう。

固定資産税をお得に支払うなら、ポイント還元が期待できるキャッシュレス決済がおすすめです。

ただし、手数料とのバランスをよく考えることが大切です。詳しくは以下2点をご確認ください。

2-1. スマホ決済ならポイント付与あり

全国で広く普及しているスマホ決済アプリは、決済手数料がかからないことが多くおすすめです。

アプリによっては税金の支払いも対象となるキャンペーンが行われていたり、お得なポイント還元を受けられたりする時もあります。

また、特定のクレジットカードからスマホ決済アプリにチャージすることで、クレジットカードのポイントを獲得できるため、現金納付などよりお得です。

ただし、税金や公共料金の支払い自体がポイント付与の対象外となるアプリもあります。

ポイント還元率は変更されることも多いため、事前に各アプリの規約を確認しておきましょう。

2-2. 電子マネーならチャージでポイント付与

nanacoやWAONなどの電子マネーを利用してコンビニで支払う場合も、決済手数料はかかりません。

また、電子マネーへのチャージを特定のクレジットカードで行う際に、そのクレジットカードのポイントが付与されることがあります。

例えば、クレジットカードでnanacoにチャージし、そのnanacoで固定資産税を支払うことでクレジットカードのポイントが加算されるものです。

2-3. クレジットカードは手数料に注意

クレジットカードで直接納付する場合、カードのポイントは貯まります。

しかし、納付金額に応じた決済手数料が別途発生します。

この手数料は自治体によって異なりますが、電子マネーやスマホ決済よりも損になりやすいため注意が必要です。

ご自身のクレジットカードの還元率と手数料をしっかりと比較検討し、お得になるかをシミュレーションしてから利用しましょう。

3. 固定資産税の課税対象と支払い時期とは

固定資産税とは、不動産や償却資産に対してかかる税金で、納付先は固定資産が所在する各市町村です。

市町村税として納付しますが、東京都23区内の場合は都に対して納税します。

固定資産税は毎年必ず納める税金です。

ここでは、どのようなものが課税対象になるのか、そしていつ頃納税通知書が届き、いつまでに支払う必要があるのかを詳しく解説します。

3-1. 納税通知書は4~5月頃に到着する

固定資産税の納税通知書は、毎年4月~5月頃に、各市町村から納税義務者(固定資産の所有者)の元へ送付されます。

この通知書には税額や納期限、支払い方法などが詳しく記載されていますので、届いたら必ず内容を確認しましょう

3-2. 原則支払い方法は年4回

固定資産税は、納税通知書に記載されている税額を、原則として年4回に分けて納付することになります。

各期の納期限は、自治体によって異なりますが、おおよそ以下の時期に設定されていることが多いでしょう。

例・2025年度版 東京23区の固定資産税納付期限

  • 第1期: 6月末
  • 第2期: 9月末
  • 第3期: 1月5日まで
  • 第4期: 翌年3月2日まで

参考:東京都主税局 (1)固定資産税・都市計画税の概要について

固定資産税は一括で全額を支払うことも可能ですが、一括払の場合は第一期での納付に間に合わないと延滞金が付いてしまいます。

高額の納税が予定されている場合、各市町村から指定されている納付期限にご注意ください。

3-3. 課税対象となる不動産とは

固定資産税は、毎年1月1日時点での所有者に課税されます。

対象となる不動産は土地や家屋などであり、土地や田畑、店舗、家屋など多岐にわたります。

一方で、定着性のない建物(例・トレーラーハウスなど)は固定資産税の対象外です。

同一の名義人が同一の市町村内で所有する土地・家屋・償却資産の課税標準額のそれぞれの合計額が次の額に満たない場合は、固定資産税は課税されません。

  • 土地 30万円
  • 家屋 20万円
  • 償却資産 150万円

3-4. 不動産を相続するといつから固定資産税を払う?

相続時には被相続人の所有していた相続財産を相続人が承継することになります。

相続財産には不動産も含まれるため、固定資産税の納付義務も承継することになります。

固定資産税の納付は年の途中で不動産を相続した場合でも、その年の1月1日時点でその不動産を所有していた人(つまり、亡くなった被相続人)が納税義務者となります。

しかし、納税通知書が届く頃には被相続人が亡くなっているため、相続人全員が納税義務を負うことになります。

実務上は、相続人の代表者(通常は相続人代表者届出書を提出した人)が納税通知書を受け取り、納税の義務を負います。

遺産分割が完了し相続登記を終えた後は、新たな所有者が固定資産税を払うことになります。

3-5. 相続時に固定資産評価証明書が必要な時がある

不動産を相続する場合、固定資産の価値を評価する「固定資産評価証明書」が必要となるケースがあります。

  1. 相続登記をする時
  2. 相続税申告をする時

相続登記を申請する際や、相続税で固定資産評価額をベースに計算する不動産がある場合、固定資産評価証明書の提出が必要です。

固定資産評価証明書は、納税の通知書とは異なります。不動産が所在する市町村役場で取得する「証明書」です。

不動産の所在地や所有者、地積や床面積(建物)などが細かく掲載されています。

コンビニなどで取得できる自治体もあります。

相続登記や相続税申告はこの他に用意すべき書類も多いため、税理士に相談しながら進めることがおすすめです。

3-6. 固定資産税が払えない!徴収猶予は可能?

固定資産税は高額になることも多く、納税通知書を見たら「払えないかも」と思ってしまう人も多いでしょう。

では、もしも固定資産税が納付できない場合、徴収猶予は可能でしょうか。

この章では固定資産税の徴収猶予や、支払えない場合のペナルティについてわかりやすく紹介します。

3-7. 固定資産税の徴収猶予の要件

もしも納税が困難で、納税猶予を希望したい場合は一定の要件をクリアする必要があります。

要件をクリアすると「徴収猶予」もしくは「換価の猶予」と呼ばれる方法を利用できます。

①徴収猶予(地方税法第15条第1項)

徴収猶予とは納税を一時的に猶予するものです。

  • 納税者が営む事業について、著しい損失が生じた
  • 納税者または生計を同じにする家族が、病気で多額の費用を要する
  • 震災・風水害・火災や盗難にあった など

②換価の猶予(地方税法第15条の6)

換価の猶予とは、納税者の財産の換価(売却)や差押えの猶予を行うものです。

  • 納税することで事業の継続や生活の維持が困難になるおそれある時

①、②のいずれも利用を希望する際は、各市町村に申請する必要があります。

申請期限は各市町村によって異なっており、東京都の場合は原則「納期限まで」です。

参考:東京都主税局 納税が困難な方に対する猶予制度について

3-8. 固定資産税の支払いが遅れるとどうなる?

固定資産税は、納期限が定められており、納付が間に合わない場合はペナルティが発生します。

主なペナルティ内容は以下です。

  • 延滞金が発生する

納期限の翌日から、延滞金が加算されます。

延滞金は、納付が遅れる日数に応じて日割りで計算され、税額に上乗せして支払う必要があります。

(令和7年1月1日~12月31日における延滞金の税率は、納期限の翌月から1ヵ月までは税額に年2.4%、1ヵ月経過後は税額に年8.7%です)

  • 督促状が届く

納期限を過ぎてしばらくすると、自治体から督促状が送られてきます。

地方税法では、納期限から20日以内に督促状を発送することが義務付けられています。

督促状は、税金を速やかに納めるよう促すための正式な通知です。

督促状が届いても対応しない場合、電話や訪問による催告が行われることもあります。

  •  差押予告通知書が届き、財産が差し押さえられる

固定資産税が支払われず放置されていると、自治体から差押予告通知書が送付されます。

この通知書には、指定された期限までに納付がない場合、差し押さえを実施する旨が明記されています。

差押予告通知書に記載された期限までに納税しないと、予告なしに財産が差し押さえられる可能性があります。

固定資産税の支払いが難しいと感じたら、決して放置せず速やかに各市町村の税務担当窓口に相談しましょう。

相談内容によっては分割払が認められたり、納税猶予の制度を利用できたりする可能性があります。

4. 固定資産税の支払いは期限内に!お得な方法を活用してみましょう

本記事では、固定資産税のお得な支払い方法や納税時の注意点について、ペナルティについても触れながら詳しく解説しました。

固定資産税は相続によって新たに納税者となる人も多く、今後お得に支払っていきたいと考える人も多いでしょう。

本記事で紹介した支払方法を参考に、お得な方法を活用してみてください。

また、相続税申告時に不動産評価や計算などでお悩みの際には、お気軽に税理士へご相談ください。

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士

2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

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