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ーコラムー
相続税
税理士監修記事

認知症の人の預金を家族がおろしやすくするため、金融庁が指針作りへ

公開日:2020.9.14 更新日:2020.09.14

2020年3月、全国銀行協会が「認知症患者の預金を家族が引き出しやすくなる業界統一の対応を」と加盟銀行に通達を出す予定だと報じられました(日経電子版10日 )。政府側でも高齢化社会と金融サービスの現状について報告書をまとめ、全国銀行協会と同様の要請を業界に対して行っています。

これら通達や要請の背景には「認知症で本人の判断能力が低下しているにも関わらず、家族が代理で預金を下ろそうとすると、銀行に断られるケース」が多発している問題があります。こうした「認知症発症時の預金凍結問題」への対応の現状を解説します。

目次

1.認知症発症後の「親族による代理引き出し」の現状
2.成年後見制度の問題点
  2-1.認知症の「医学的診断」がでないと利用できない
3.本人にできる「預金凍結対策」とは
  3-1.任意後見制度
  3-2.認知症を想定した信託商品
4.政府報告書が示す「超高齢社会における金融業務のあり方」
5.預金凍結対策&相続対策は健康なうちに行う必要あり

認知症の人の預金を家族がおろしやすく

1.認知症発症後の「親族による代理引き出し」の現状

預金の引き出しは「本人」もしくは「本人が指名した代理人」しか認められません。これは名義人本人に健全な判断能力があることが前提で、認知症を発症したときは、預金保護のため代理人はおろか本人による出金すら認めないのが、銀行業界の通常の運用です。

では、名義人の親族が「本人の医療費等のため」と預金引き出しを申し出た場合、銀行はどのように対応しているのでしょうか。

通達と前後して行われた「認知症の顧客との取引に関するアンケート調査」(朝日新聞報道 )によると、調査対象113行のうち64行(調査対象の約6割)は親族による出金に対応しています。しかし同時に、対応するとした64行のうち45行が「現場の個別判断に任せている」とも回答しており、代理出金を想定して対応基準を設けている銀行は極めて少ないのが現状です。

2.成年後見制度の問題点

認知症発症後の預金引き出しを確実に可能にする手段として「成年後見制度」が挙げられます。

成年後見制度とは、認知症等で判断能力が低下した人について家庭裁判所が審判し、ふさわしい「後見人」を選任して身上保護の義務とともに代理権を与える制度です。後見開始の事実は法務局に登記され、その証明を銀行に提示することで、後見人による預金の代理出金が可能となります。

実際に、先に紹介したアンケート調査では、対象銀行のうち9割程度にあたる105行が「(親族による代理出金の申し出に対し)成年後見制度を提案する」と回答しています。

2-1.認知症の「医学的診断」がでないと利用できない

成年後見制度には2つの問題点があります。

第一の問題は、後見開始の要否を医師の診断だけで判断する点です。
そもそも認知症は段階的に進行するものであり、能力の失われ方には個人差があります。発症初期の「日常生活に不安がある」段階で、すでに金銭管理が不能になっていると本人(または周囲の人)が訴えるケースは珍しくありません。
しかし後見開始が認められるのは、症状が相当に進んで「判断能力が著しく不十分」と医師が判断するタイミングであり、当事者の感じ方が審判で優先されるとは言えません。

成年後見制度の第二の問題は、後見を開始すべきタイミングから実際に開始されるまでのタイムラグです。
後見開始の申立てがあった場合の審理期間は1か月~2か月程度※で、それ以前に申立書類(診断書など)の準備でも当然一定の時間がかかります。そもそも、患者をサポートする親族がすぐ制度にアクセスできるとは限りません。「銀行から提案されて初めて制度の必要性を知った」という例は珍しくないのです。

※参考:『成年後見関係事件の概況』(平成31年1月~令和元年12月分)/裁判所

3.本人にできる「預金凍結対策」とは

認知症を発症すると一切の出金が認められない「預金凍結問題」の対策は、実は2019年以前から制度整備が進んでいます。とはいえ整備の方向性としては、下記のように「預金者本人による事前の対策」の充実に偏りがちでした。

3-1.任意後見制度

政府側の対応としては、平成11年に「任意後見契約に関する法律」を制定し、成年後見制度の弱点を補完しています。

任意後見とは、判断能力が健全なうちに本人と後見人予定者とのあいだで契約を結び、認知症発症が認められたとき速やかに後見を開始する契約です。

本来は家庭裁判所の領域である内容(後見人と後見内容)を本人の意思で決定でき、後見を要する段階から実際に開始されるまでのタイムラグが短縮されます。

3-2.認知症を想定した信託商品

民間では、メガバンク等の一部銀行が取り扱う個人向け信託商品の一種として、預金保護と認知症発症後の出金を可能にするサービスを提供しています。

【信託のサービス例】
契約時に500万円以上の現金資産を信託し、手続代理人を1名指定。 認知症診断書を提出すると中途解約が制限され、一時金として10万円以上の介護費や医療費の払出しが行われるほか、任意で月額50万円以内の定期自動払出しを指定できる。

参考:認知症サポート信託/みずほ銀行

こうした認知症支援を目的とする信託なら、後見開始の審判を申し立てるまでもなく、指名された親族によって患者の医療費・生活費などの必要な資金を確保してもらえます。

4.政府報告書が示す「超高齢社会における金融業務のあり方」

以上のように、従前の制度整備が「預金者本人による事前の対策」を重視していたのに対し、2020年3月から立て続く官民の要請は「認知症発症後に受けられるサービス」を意識しています。

全国銀行協会の通達の後を追うように政府がまとめた報告書では、以下のように提言されました。

例えば医療や介護など明らかに本人のための支出であり、病院に医療費を金融機関が直接振り込むなど、手続が担保されているのであれば、認知判断能力の低下した高齢顧客本人のほか、本人に代わって取引を行う者であっても、手続を認めるなどの柔軟な対応を行っていくことが顧客の利便性の観点からは望ましい。
引用:『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書-顧客本位の業務運営の進展に向けて-』(別紙)/令和2年8月5日公表

以上のような方向性に支えられた制度改革に期待されるのは、親族による代理出金がイレギュラー対応ではなくなり、統一的な「一定の書類提示」や「医療機関への照会」などの要件が公表されることです。

事前対策や家族との話し合いが十分でなかったとしても、以上のようなサービス内容の改定が進むことで、預金者とその家族の経済的環境が途切れることなく維持されるでしょう。

5.預金凍結対策&相続対策は健康なうちに行う必要あり

認知症患者を巡る銀行業界の方針は2020年から大きく動きだし、親族による代理出金が断られるケースは減少していくものと予測できます。

いずれにしても、将来の当事者による事前対策を欠かすことは出来ません。認知症の先には相続があり、遺産の処分については「本人の意思でなされるべきもの」であることに今後も変わりないからです。

認知症対策を考える上では、税務や相続法だけでなく「地方自治体による支援」や「近年の制度改定」に詳しい専門家のアドバイスが役立ちます。 老後から相続までのベストなプランニングは、実績豊富で最新情報に詳しい税理士への相談をおすすめします。

日本クレアス税理士法人 相続サポート

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