ビジネス情報誌「ANGLE-アングルVol.69」(2019年5月1日発行)より、当社執行役員でもある税理士が執筆している相続や事業承継にまつわるトピックスをご紹介します。
今回は、自筆証書遺言方式の改正についてです。今回の改正で、自筆証書遺言がさらに身近なものになり、遺言書を作成される方が増加することが見込まれます。何がどう改正されたのか、遺言の作成を検討されている方にはぜひ押さえていただきたい情報をお届けします。
「『自筆証書遺言方式』の緩和」-相続/事業承継トピックス
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言と3種類ありますが、紙とペンと印鑑があれば作成できる自筆証書遺言が最も簡単な方法ではないでしょうか。
しかし、自筆証書遺言は形式不備と判断された場合には、その効果が無効になり、また内容を変更したい場合、その書き換えも全文自筆となれば一仕事です。
さらにせっかく作った遺言書も発見されなければ全く意味がありませんし、発見後は家庭裁判所での検認が必要ですので、開封できるのは2~3か月後となります。
これらの自筆証書遺言の条件緩和のために、「民法及び家事事件手続き法の一部を改正する法律」のうち、自筆証書遺言の方式の緩和に関する部分が改正されることになりました。
【改正ポイント】大きく3つの内容が改正されることになります。
1_財産目録
財産目録部分に関して、ワープロで作成したものや不動産の登記簿全部事項証明書などの別紙添付等も可能となります。その全てのページに署名捺印が必要ですが、書き換えを含め作成はとても楽になります。
2_保管場所
自筆証書遺言を法務局で保管できるようになります。遺言者の本人確認を行った上、遺言書の画像などの情報が磁気ディスク等に記録されます。遺言者はいつでも撤回することが出来、保管されている遺言書は返還され記録は消去されます。法務局での保管により遺言書の紛失や偽造を防ぐ効果があります。
3_検認
法務局に保管された自筆証書遺言については検認手続きを要しないこととされました。開封までの時間が短縮され、以前より早く遺言執行に取り掛かることが出来ます。
改正時期
2019年1月13日に施行され、同日以降に自筆証書遺言をする場合には、新しい方式に従って遺言書を作成することが可能です。
簡単に作成できる自筆証書遺言ですが、形式不備や紛失、偽造等によりせっかく作成した遺言書が無駄となるケースもあり、その後の検認等にも手間と時間がかかっていました。しかし今後は、法務局で保管してもらえるようになり、その心配もなくなります。
また、自筆で全文を作成することにはかなりの神経を使いますが、最も負担の重い財産目録をワープロで作成することが出来るため、その部分を専門家に委託することが可能となりました。
今回の改正により遺言書の作成が身近な存在となることが期待されます。ただし、気軽に作成した遺言書によって遺産分割の問題が申告にならないように、ご自身で作成される場合にもまずは専門家にご相談されることをお勧めいたします。将来的に事業の引継ぎが必要な方は、是非ご相談ください。
監修:日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士 中川義敬
2007年 税理士登録、2009年に税理士法人コーポレート・アドバイザーズ(現 日本クレアス税理士法人)入社。
2007年から現在に至るまで、東証一部上場企業から中小企業・個人の税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。
医院の新規開業と承継を利用した開業について、事業承継に必要な自社株対策とは?など、社内外のセミナーで講師としても幅広く活躍。税理士及び相続診断士の資格を持つ。 事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。
<講演実績・プロフィール>日本クレアス税理士法人 スタッフのご紹介-執行役員 税理士 |
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