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ーコラムー
法人の相続

事業承継税制とは?改正点やメリット・デメリットを解説!

公開日:2019.10.18 更新日:2019.10.18

事業承継を控える現職経営者において、後継者が負う金銭的コストを心配する想いは共通するのではないでしょうか。

こと自社株移転にかかる税金(相続税・贈与税)は数億円に及ぶことがあり、個人負担の大きい部分です。「有能な後継者候補がいるのに資力不足が原因で継がせられない」というジレンマに陥る企業は少なくありません。

そこで活用できるのが「事業承継税制」です。平成30年に利用条件緩和を中心とした大改正が行われ、納税ゼロでの承継が実現可能になりました。その他にも法人オーナーに強いるリスク・プレッシャーを軽減する変更が行われています。

相続の生前準備を意識する経営者が知っておきたい「事業承継税制による節税効果&適用時の条件」の全てを、平成30年度改正を中心として解説します。

目次

1.事業承継税制とは?
2.平成30年度の改正による事業承継税制の変更点
3.事業承継税制の適用を受けるための要件
4.事業承継税制のメリット
5.事業承継税制のデメリット・注意点
6.まとめ

1.事業承継税制とは?

事業承継税制とは、非上場会社の経営者を対象に自社株式移転に課される相続税(もしくは贈与税)の納税を猶予する制度です。

猶予の前提は企業活動の継続であり、後継者の代で一定の要件を満たせば猶予額が免除されます。実質的には「同族企業向けの課税免税制度」として機能しており、跡継ぎに経営に集中してもらうためにも活用必須の制度と言えます。


制度発足の背景となったのは、ファミリービジネス大国であるという日本の現状です。
引退を意識し始めた同族企業のオーナーにとって「会社の行く末」と「跡継ぎ(=子や孫)の幸福」はトレードオフの関係になりがちです。
「家族に会社という重荷を負わせるくらいなら」という考えに傾く経営者が増加すれば、企業の大量解散による社会問題を引き起こしかねません。

本税制の目的は、こうした社会問題リスクの回避です。法人オーナーの個人負担を軽減することで世代交代を後押しし、廃業数を減らすことで国全体での生産力を維持することが、制定の狙いとされています。

1-1.事業承継税制の適用イメージ

実際に、現経営者から跡継ぎへ会社を移転するときの一般的な流れを確認してみましょう。

【事業承継税制の適用イメージ】相続税を猶予する場合
①後継者の決定
②先代経営者の死亡
③経営者交代→納税猶予開始
④猶予継続届出
⑤後継者の死亡または再承継→課税免除

いったん税制適用を受けると、定期的な猶予継続届出により適用要件を満たしているかチェックを受ける必要があります。

納税猶予中に事業の再承継と認められる条件が発生すると、全額課税免除されます。

反対に、代表権喪失により事業継続が不可能になったときは、ただちに猶予額を全て納税しなければなりません。

1-2.改正の背景

制度発足当時は様々な課題点を抱えており、法人オーナーからの申請数は伸び悩んでいました。

【事業承継税制(旧法)の課題点】
・猶予される金額が少ない(そもそも節税効果が薄い)
・納税猶予額の免除条件が厳しく、適用により経営状態維持のプレッシャーが強くなる
・納税猶予が終了したときの課税額負担が大きすぎる
・「家族共同経営の増加」「親族が大株主」といった中小企業の実態にそぐわない

上記のような問題点を解消し、申請をためらっている現経営者から制度活用の意欲を引き出すために、平成30年度までの2年間に大幅改正が行われています。

2.平成30年度の改正による事業承継税制の変更点

平成30年度の法改正では、大きく以下5つの項目で緩和が行われています。

変更点 改正前 改正後
①納税猶予対象の上限 「移転した全株式数の2/3」かつ「課税額の80%」 「移転した全株式」かつ「課税額の100%」
②雇用継続条件 承継後5年間で平均8割以上 実質的に条件撤廃
③経営困難時の扱い 全額課税される 課税されるが一部免除
④相続時精算課税の併用 可(直系卑属への相続時のみ) 可(子or孫以外への承継も対象)
⑤適用対象となる後継者の数 最大1人 最大3人

※表中の改正内容は、都道府県の認可を得て「特例措置」を受けた法人のみ適用されます。(詳しくは後述)

最も注目に値する変更点は、①により「納税ゼロ承継」が出来るようになった点です。

②~④の変更では、後継者の代で経営状態が落ち込んだときの税負担リスクが軽減されています。変更⑤においては、承継後に共同経営者間での不平等をなくすことに成功しています。

①適用申請時の「納税ゼロ承継」が可能に

従来の事業承継税制では、納税猶予対象となる株式数・猶予割合の2点に制限がありました。今回の法制度では各上限が撤廃され、後継者の代において「承継時にかかる税の全額猶予」が実現可能となりました。

【具体例】600株の移転により事業承継し、全体で300万円の相続税が発生する場合
■旧法(現行法の一般措置):
納税猶予対象となる株式の数=600株÷3×2=400株
納税猶予対象となる株式にかかる相続税=300万円÷3×2=200万円
 →納税猶予される税額=200万円×0.8=160万円

■新法(特例措置):
納税猶予される株式数=600株
 →納税猶予される額=300万円(100%猶予)

※相続人の数・相続財産評価額全体・他の控除等は考慮していません。

以前の制度では、納税猶予による後継者の個人負担軽減が十分とは言えないことが分かります。そして、今回の改正でほとんど無制限とも言える節税効果が得られるようになりました。非上場株式は、オーナーの想定に反して評価額が高くなるケースも多々あります。現状認識している事業価値に関わらず税制適用のメリットを見出せるようになりました。

②「8割以上の雇用確保」が実質不要に

従来の税制では、納税猶予を継続する条件として「雇用平均を承継後5年間の平均で8割以上に保つこと」が盛り込まれていました。この要件の問題点は、もともと従業員数が少ない小規模事業者はもちろんのこと、経営不振に陥り雇用整理を決めた法人も、納税猶予を継続しにくい点です。

【例】相続開始時点で従業員数10人の会社に税制適用するケース
→以降5年以内の同時期に3人以上退職した場合、納税猶予終了のリスクあり(人員の穴埋めが長期化するほどリスクが高まる)

平成30年度の法改正では、雇用平均に関する継続条件は実質的に撤廃されました。
税制適用中に5年間平均で8割以上の雇用を維持できなかった場合でも、都道府県に報告書を提出することを条件に、納税猶予を受け続けることが出来ます。

③「経営困難時の課税額再計算」が可能に

廃業(法人の解散)または事業譲渡を行った場合、その時点で納税猶予が終了します。従来の制度において問題だったのは、猶予終了の背景=経営困難であっても一律で猶予額全額が課税される点でした。

【解散or事業譲渡による経営困難解決が求められる例】
・後継者に健康上の問題が発生しているが、三代目候補が見つからない。
・不況のあおりを受けて売上が低迷しており、経営継続を断念した。
・不採算事業を切り離し、収益性の高い事業だけを継続したい。

上記のような状況に陥ってしまうと、自社株式の価値は損なわれます。事業譲渡(株式譲渡)による対価があったとしても、なお課税額をまかなえない恐れがあるでしょう。


こうした課題を解決するため、平成30年度の改正で「事業の継続が困難な自由が生じた場合の納税猶予額免除(経営困難時の課税額再計算)」が設けられました。

本改正以降、経営困難が理由の解散or事業譲渡の際は、実質的に猶予額の約50%が免除された上で課税が行われます。

「高齢者間の事業承継」「経営戦略の見直しが迫られている」等の問題を抱える会社において、将来の税負担リスクに対する不安が軽減されています。

④「相続時精算課税」が併用可能に

生前の株式移転により事業承継するという手法は、会社の未来を思う現経営者にとって「後継者に対する支援が行き届く」という点でメリットがあります。

その一方で、従来の事業承継税制は「生前承継後に納税猶予が終了してしまうケース」でリスクを抱えていました。

この状況で納税猶予されているのは贈与税であり、相続税に比べて高額です。万が一適用継続要件を満たせなった場合、生前承継だと死後承継に比べて課税額が大きくなってしまうのです。

この欠陥を補うため、平成29年度からは「事業承継税制+相続時精算課税の同時適用」が認められるようになりました。平成30年度にはさらなる法改正が行われ、多様な事業承継パターンに対応できる内容に変更されています。


【併用の具体例あり】相続時精算課税とは?

ここでいったん、相続時精算課税を焦点とします。
そもそも相続時精算課税とは、高齢者から若い世代への生前贈与を促すための税率軽減措置です。事業承継税制とは別の制度として存在しており、会社経営を行っていないケースを含む相続全般に適用することが出来ます。

【相続時精算課税の概要】
適用対象:60歳以上の人から20歳以上への生前贈与
納税額:(課税対象となる贈与額-特別控除2,500万円)×20%

本制度を適用しない場合の贈与税は累進課税であり、税率は最大55%に及びます。数千万円~数億円の株式の贈与を受けるなら、重い負担とならざるを得ません。


【比較】相続時精算課税の併用でどのくらい税額が変わる?

解説内容を戻し、事業承継税制のみ適用したケース・事業承継税制と相続時精算課税の両方を適用したケースで税額を比較します。

【具体例】後継者の代で納税猶予が終了した場合の税額比較
先代後継者Aの存命中、保有する全株式(評価額3億円)を後継者Bに移転し、事業承継税制を適用。※相続人=子1人
その3年後、猶予対象株式の一部譲渡により後継者の代表権が失われ、これに伴って贈与税の納税猶予が終了したケース

(変更前)事業承継税制のみ適用していた場合
   納税 =通常の税率による贈与税(累進課税)
   計算式:(3億円-110万円) ×55%-基礎控除640万円≒1億5,800万円

(変更後)事業承継税制と相続時精算課税を同時適用していた場合
   納税 =相続時精算課税適用時の贈与税(一律課税)
   計算式:(3億円-特別控除2,500万円)×20%=5,500万円

◇参考…生前ではなく相続開始時に株式移転を行った場合
   納税 =相続税
   計算式:(3億円-基礎控除3,600万円)×45%-2,700万円=9,180万円

上記の例では、生前承継における相続時精算課税併用により1億円以上の節税効果が得られていることが分かります。

こうした制度併用による節税効果は、株式評価額に関わらず広くもたらされるものです。先代経営者・後継者ともに、猶予終了時の税額に対する不安から解放され、心置きなく生前承継を選択できるようになりました。

平成30年度からは「直系卑属以外への承継」も併用可に

平成29年度の時点の時点では、相続時精算課税の併用要件として「直系卑属(子・孫)への株式移転」に限られていました。議決権数や株価の調整のため身内保有の株を移転させなければならないとき、通常税率で贈与税が課せられてしまいます。

平成30年度になって親族関係に関する要件がなくなり、先代経営者以外が保有する株式を後継者に移転させたケースでも、相続時精算課税による一律税率が適用されるようになりました。

⑤「複数の後継者による承継」が適用対象に

従来の税制では、税制適用できる後継者は1人に限られます。複数人の跡継ぎで協力し合って会社を維持したいと考えるケースでは、後継者間で不平等が起こるという問題が発生していました。

平成30年度からは、税制適用の対象となる後継者は最大3人まで認められます。

価値観や企業経営の実情が大きく変わった現代、子1人(長子など)に承継させるという常識は崩れつつあります。今回の法改正で、兄弟姉妹で力を合わせて会社経営を続けてほしいと願うオーナーの実情にも沿うようになりました。

後継者候補の経営スキルが十分でないケースでも、今回の法改正は有用です。
信頼できる人物を中継ぎ経営者に据えようとする際、後継者候補との共同承継という形式をとることで、将来起こり得る「経営の主導権を巡って争うトラブル」を防ぐことが出来ます。

2-6.【注意】制度緩和は「特例措置事業者」のみ適用される

これまで解説した改正内容の適用を受けるには、期間内に都道府県へ事業計画書を提出して「特例措置」を受ける必要があります。提出しなかった場合は「一般措置」として旧制度が適用されるため、条件に注意しましょう。

比較項目 特例措置(新制度) 一般措置(旧制度)
特例承継計画の提出 要(期限あり※1) 不要
適用対象 10年以内※2に発生した贈与・相続 なし
納税猶予の対象株式数 100% 移転した株式の2/3まで
猶予割合 贈与・相続ともに100% 贈与は100%・相続は80%
猶予中の雇用確保要件 実質なし 8割(承継後5年間平均)
経営困難時の課税額再計算 あり なし
後継者の数 最大3人 最大1人
相続時精算課税の併用 直系卑属以外への承継も可 直系卑属への承継のみ可

※1:特例承継計画の提出期限…平成30年(2018年)4月1日~令和5年(2023年)3月31日
※2:適用対象となる贈与or相続…平成30年(2018年)1月1日~令和9年(2028年)12月31日

3.事業承継税制の適用を受けるための要件

事業承継税制を活用するには、贈与税または相続税の申告期限までに適用手続きを済ませる必要があります。承継による税申告期限から5年間(=承継期間)は「猶予対象株式全体の保有」が義務となり、猶予を受け続けるための適用継続要件も満たし続けなければなりません。

承継期間が過ぎれば、猶予対象株式の一部譲渡が認められ、適用継続要件も緩和されます。

3-1.事業承継税制のスケジュール

①承継発生

②円滑化法の認定+特例承継計画の提出
…贈与税または相続税の申告期限内(下記)に手続きをとり、都道府県の確認を受けてから税務署に申告。
贈与税:贈与を受けた年の翌年2月15日~3月15日
相続税:相続開始日の翌日から10ヵ月以内

③承継期間内(5年間)
→先代経営者or後継者の死亡→免除
→やむを得ない理由での再承継→免除
→対象株式の一部譲渡→全額課税
→「承継期間内の適用継続要件」を満たせなくなった場合→全額課税

④承継期間終了後
→継続届出書を提出した場合→猶予継続(以降3年毎に届出要)
→継続届出書を提出しなかった場合→全額課税

⑤猶予継続期間(3年間)
→対象株式の一部譲渡→譲渡割合に応じて課税(残りは猶予継続)
→「承継期間後の適用継続要件」を満たせなくなった場合→全額課税

時系列に沿い、税制適用申請時の要件・納税猶予開始後における適用継続条件・納税猶予中の課税または免除のパターンを順に紹介します。

3-2.【適用申請時】人の要件

税制適用にあたっては、先代経営者と後継者のそれぞれが適用要件を満たす必要があります。猶予対象となる税の種類により要件が変化する点に注意しましょう


贈与税を猶予対象とする場合

先代経営者の生前に事業承継にかかる株式移転を行った場合、贈与税の納税猶予は以下の要件をすべて満たす必要があります。

【先代経営者の要件】
・贈与までに代表権を有していた
・贈与時に代表者を退任している
・「総議決権数の50%以上」かつ「議決権者のなかで最多数」を有していた

【後継者の要件】
・贈与時に20歳以上
・贈与時に代表権を有している
・役員の就任から3年以上経過している
・(後継者=1人の場合)「総議決権数の50%以上」かつ「議決権者のなかで最多数」を有している
・(後継者=2人以上の場合)「総議決権数の10%以上」かつ「後継者を除く他の議決権者のなかで最多数」

税制適用する上で、先代後継者に会社法上の代表権を残したまま株式移転をすることは出来ません。

後継者が現状役員でない状態から贈与税の納税免除を行うには、就任させてから3年が経過するのを待つ必要があります。現経営者自身の残り時間が迫っている状態からでは難しいため、なるべく早く事業承継のロードマップを描くよう心掛けましょう。


相続税を猶予対象とする場合

事業承継にかかる株式移転が先代経営者からの相続で行われた場合、相続税の納税猶予は以下の要件をすべて満たす必要があります。

【先代経営者の要件】
・相続開始の直前において役員だった※
・担保提供ができる。
・「総議決権数の50%以上」かつ「議決権者のなかで最多数」を有していた
※60歳未満で死亡した場合、役員でなかった場合も税制適用可。

【後継者の要件】
・相続開始日から5カ月以内に会社の代表権を取得すること
・(一般措置のみ)「総議決権数の50%以上」かつ「議決権者のなかで最多数」を有している
・(特例措置のみ)「議決権者のなかで最多数」を有している
・(後継者=2人以上の場合)「総議決権数の10%以上」かつ「後継者を除く他の議決権者のなかで最多数」を有している

相続税を猶予対象とする上で、必ずしも先代経営者が代表権者である必要はなく、役員であれば十分です。後継者の年齢制限がなく、印鑑登録が可能になる16歳以上なら要件を満たせると解釈できます。

特例措置における後継者の保有議決権数の割合は決められておらず、株式集中が未了で会社に対する支配権が固まっていない状況での相続でも適用可能です。

担保提供の際のポイント

税制適用を行う際は、猶予が終了した場合の課税額に相当する担保提供が必要です。

相続人間のトラブルを避けたい場合・十分な資産を持っていない場合には、猶予対象株式の全部をそのまま担保とすることも可能です。

注意したいのは、先代経営者保有の不動産を提供するケースです。

担保不動産は国税庁設定の抵当権ごと相続財産に含まれるため、先代が亡くなったあとに相続トラブルに発展する可能性があります。トラブル防止のため、担保提供した不動産は遺言で後継者に相続させ、現預金等のほかの資産による遺産分割の手はずを整えておくとよいでしょう。

3-3.【適用申請時】会社の要件

税制適用時の法人要件は「中小規模の非上場企業」です。具体的には、次の条件が設けられています。

【会社】事業承継税制の適用要件(以下①~③の要件を全て満たす必要あり)
①円滑化法の認定を受けていること
②(特例措置の場合)都道府県知事に特例承継計画の確認を受けていること
③次の会社のいずれにも該当しないこと
  -上場会社
  -中小企業者に該当しない会社
  -風俗営業会社
  -資産管理会社

中小企業・資産管理会社の定義については、以下で紹介する税法上の扱いに準じます。


中小企業の定義

税制適用条件で言う中小企業とは、資本金・支配権・従業員数の3点において以下の要件を満たす法人のことです。

【税法上の「中小企業」とは】
以下①~③のすべての要件を満たしていること(租税特別措置法42条4項)
①資本金または出資金が1億円以下
②子会社化されておらず、支配権が代表者にある※
③従業員数1,000人以下

※具体的には、代表者とその身内関係者だけで「発行済株式総数の50%以上」または「出資総額の 2/3以上」を有する状態を指しています。

資産管理会社とは

資産管理会社とは、具体的な営業実態がなく不動産等の資産を管理しているだけの会社を指します。事業承継税制の狙いはあくまでも「国全体で企業活動による生産力を維持すること」であるため、資産管理会社は税制適用を認められません。

【資産管理会社と判断されるケース】
以下いずれかに該当する場合
・特定資産が保有資産全体の70%以上(資産保有型会社)
・特定資産による運用収入が総収入金額の75%以上(資産運用型会社)
※特定資産…有価証券・事業用に使用しない賃貸用不動産・現預金

3-4.納税猶予中の適用継続要件

猶予期間中に守らなければならない適用継続要件は、承継期間中とそれ以降で大きな違いがあります。

事業承継税制の適用継続条件
継続申請の認可要件 承継期間中 承継期間後
(継続届出した場合)
①後継者のポジション 代表者
②雇用確保※ 5年間平均で8割以上 3年間平均で8割以上
③会社規模 非上場会社
④会社の業態 風俗営業会社・資産管理会社の両方に該当しない 資産管理会社に該当しない

※特例措置の場合、承継期間中に②雇用確保要件を満たせなかった場合でも、報告書を提出することで納税猶予を継続できます。

承継期間中、経営者には「代表者として自ら法人の意思執行を行っていること」が求められます。現場から一歩離れて意思決定に集中できるのは、承継期間が過ぎた後です。

税制適用を行おうとする際は、5年間の制約が後継者の経営ビジョンに沿うものか確認した上で検討しなければなりません。

3-5.納税猶予終了時に発生する税額

事業承継税制における納税猶予額は「承継時の株式評価額を基準とした税額」です。課税が発生するときは、左記全額に「承継期間後に発生する利子税」を加えて納税しなければなりません。

ただし、承継期間後に行われた株式譲渡については、譲渡割合に応じた課税が行われます。

3-6.課税または免除のパターン

納税猶予中に猶予終了(課税)または免除が発生する条件は、特例措置と一般措置で大きく異なります。事業整理にまつわる猶予終了時(譲渡・破産・民事再生・解散)については、特例措置による恩恵が目立ちます。

はじめに課税または免除の全条件をまとめておくと、次のようになります

課税or免除される条件
猶予中に発生する条件 特例措置 一般措置
税申告期限から5年経過(承継期間) 全額課税(届出で猶予継続可)
承継期間終了後3年毎
(贈与税のみ)先代経営者の死亡 免除 免除
(相続税・贈与税共通)後継者の死亡
健康上の理由による再承継
猶予対象株式の譲渡 承継期間中 全額課税
承継期間後 譲渡割合に応じた課税 譲渡割合に応じた課税
破産・民事再生 承継期間中 全額課税
承継期間後 免除 全額課税
解散(特別清算等) 承継期間中 全額課税
承継期間後 全額課税 全額課税

青字:特例措置であれば「経営困難時の一部免除」が適用可。

承継後の会社の行く末は「再承継」「事業整理(廃業やM&A等)」の2つのケースが考えられます。特例措置・一般措置のあいだで相違が生じるため、押さえておきたい課税or免除パターンを以下で紹介します。

【一般・特例の違い①】再承継が起きるパターン

再承継が起きるケースでは、特例・一般の両措置に違いはありません。納税猶予が始まった時点から、下記いずれかの条件が発生すれば猶予額は全額免除されます。

【一般・特例共通】再承継による免除
・先代経営者or後継者の死亡
・健康上の理由による後継者から三代目への経営権移譲

【一般・特例の違い②】承継期間中に事業整理を行うパターン

承継期間中に株式譲渡・破産・民事再生・解散等による事業整理が必要になったケースでは、全額課税が行われます。再承継が起きるパターンと同様、特例・一般の両措置に違いはありません。

【一般と特例の違い③】承継期間後に事業整理を行うパターン

承継期間後の事業整理で課税されるかは、整理方法により異なります。

破産や民事再生などの法的整理は全額免除となりますが、M&Aなどの株式譲渡による整理・法人の解散は納税猶予が終了し課税されます。


一般措置・特例措置の違いは「課税額」です。
特例措置を適用していれば、承継期間後に法的整理以外の方法で経営難を解決すると、平成30年度改正に関する項目で紹介した通り「経営困難時の課税額再計算」が適用されます。

【株式譲渡or解散時】「経営困難時の課税額再計算」の適用条件
・特例措置を受けていること
・承継期間後であること
・特定事由※に相当する事情があること

→以上すべての要件を満たすと「譲渡または解散時点での株式評価額(承継時点の株式評価額の50%が下限)+過去5年間の配当+過大給与」を元に課税額が算定される。

※特定事由とは「経営者の体調不良」「業界全体の経営不振」「過去3年間のうち2年以上の売上減(または赤字)」「吸収合併後に経営上の都合で経営者の代表権が失われた場合」が該当します。

事業承継税制とは

4.事業承継税制のメリット

数千万円~数億円の節税効果が見込める点において、事業承継税制を適用しない手はありません。節税が後継者個人の生活や経営意欲にもたらす好影響は、事業価値に比例して大きくなります。

「うちはそれほど儲かっていない」と考える場合でも、税制活用は欠かせません。 自社株相続の現場において、その評価額が経営者の試算をはるかに上回っているというケースは珍しくないからです。

【事業承継税制が適している状況】
・後継者にはなるべくコストやプレッシャーをかけたくない。
・後継者候補の資力に不安があり、承継を決めかねている。
・今後も地に足のついた経営方針を続けたいが、従業員数・売上単価ともに比較的小さく不安が残る。

法改正により適用をためらう原因が軽減・解消されたのも、事業承継税制を推奨する理由のひとつです。さらに詳しくメリットを挙げてみましょう。

メリット1:世代交代後の経営権分散を防げる

事業承継時の税負担をほぼゼロにできる点は、後継者の経済的困窮を防いで自社株式売却を防ぐ効果をもたらします。先代が与えた支配権が保全され、敵対的買収や身内以外との経営権トラブルが起きにくくなるのです。

中小企業の多くがその行く末を社長一人の双肩に委ねる「ワンマン経営」である以上、経営交代時のトラブルを防ぐことは重要な課題です。事業承継税制には、こうした課題を間接的に解決してくれます。

メリット2:後継者候補同士の争いも避けられる

新設の特例措置により、後継者を1人に絞り込む悩ましい作業から解放されます。複数の有能な人物が会社経営の中心にいるケースにおいて、後継者候補間のトラブルを防ぐために「共同で跡を継いでもらう」という道を積極的に選択できるようになりました。

税制の適用内容においては、後継者間の公平性が十分保たれています。
いったん共同承継してもらえば、そのあと共同経営者間の不仲が生じても、承継期間後にそれぞれ別の会社を設立するという道を選び取ることが出来るでしょう。

先々起こり得るトラブルを防げることで、結果として事業承継のプロセスを迅速化できる点もメリットです。

メリット3:親族外承継でも利用できる

本税制は親族外(従業員や創業メンバー)を後継者とする企業でも適用可能です。
適用対象は贈与税に限られますが、その他の条件は親族内承継と変わりません。特例措置であれば、相続時精算課税制度との併用※も認められます。

※親族外承継における相続時精算課税制度併用の注意点
→後継者が自身の家族から相続を受ける際に、相続税を増大させてしまう可能性があります。ケースにより異なるため、併用可否は税理士・弁護士に相談することをおすすめします。


中小企業庁が発表している「2017年版中小企業白書」(第2部中小企業のライフサイクル)(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/html/b2_2_1_1.html)によると、親族外承継の選択率はすでに中規模法人で33%に到達します。「なるべく経営者育成の手間を軽減したい」「子や孫に会社を押し付けたくない」と考える経営者が増加傾向にあり、事業承継税制がこれを後押ししてくれます。

メリット4:万が一のときの企業再生が円滑に行える

平成30年度の法改正により、事業譲渡・会社分割等による企業再生手法がとりやすくなりました。

経営困難時に破産・民事再生等の司法機関を通す事業整理を行ってしまうと、レピュテーションリスク(風評被害)や信用力低下により、経営の立て直しが難しくなります。M&A等による再生を目指すにしても、納税猶予額の課税を恐れて株式交換や売却に踏み切れないでしょう。

新たに設けられた特例措置により課税額が軽減されれば、法的整理だけは回避したいという経営者の意向を優先できます。損金計上が可能な再生手法をとることで、節税効果を増幅させることも可能です。

5.事業承継税制のデメリット・注意点

一方で、事業承継税制には留意点があります。 適用における「会社の要件」については、制定当時からほとんど緩和されていません。円滑化法・特例適用のそれぞれの認可を受ける上で、今後の経営方針を変えなければならない可能性があります。 後継者とも意見交換した上で、慎重に検討しなければなりません。

【事業承継税制が適さない人・企業】
・上場を検討している。
・売却目的で事業価値を高めるスタートアップ型の経営戦略を練りたい。
・株式交換等の手法で、他社の協力も得ながら業種転換したい。
・業界に厳しさを感じており、後継者の代ですぐ廃業するかもしれない。

法改正の注意点を踏まえたうえで、検討を要するポイントを具体的に解説します。

5-1.特例措置を受ける場合は時間がかかりがち

メリットの多い特例措置を受けるにあたり、特例承継計画策定のために様々な手続きを踏まなければなりません。その一つが「認定支援機関(税理士法人または法律事務所)によるサポート」です。

【参考】特例承継計画の策定に必要な手順
認定支援機関による助言・指導
  …雇用確保と現況の見直し・財務の正常化など
承継後5年間の経営計画作成
  …設備投資・事業展開・売上目標・利益目標など

企業の状況により、すぐに助言を受け入れるのが難しいケースもあります。指導内容が多い場合には適正化に時間がかかり、後継者にもよりビジョンを明確化するための猶予が必要です。

特例措置を受けようとする場合には、十分なゆとりを持って承継準備を始めなければなりません。

5-2.経営ビジョンに一定の拘束を受ける

成長率の良好な企業にとって「納税猶予中は非上場かつ中小規模という業態を守らなければならない」という縛りは考えものです。今後資金調達や事業展開を望むとき、以下のようなジレンマに陥る可能性があります。

【承継期間中に発生する制限(一例)】
・より有能な人材と資金を調達したいが、株式公開できない
・小幅な業種転換しか出来ない(特例承継計画から外れる可能性があるため)
・資本提携・株式交換による事業強化ができない

上記のような将来起こり得る事態を回避するなら「承継前に持株会社化→事業継続は設立済の子会社で行う」などの手法を検討する必要があるでしょう。

6.まとめ

後継者に会社を支配させるとき、株式移転に伴う相続税・贈与税をどう節約するかが課題となります。納税猶予後に一定要件を満たせば課税免除される「事業承継税制」の活用を検討することで、後継者の資力不足に対する不安を解消できます。

【平成30年度改正以降】事業承継税制のメリット
・承継に伴う移転株式の全体=納税猶予対象
・一定の雇用確保を意識する必要はほぼなし
・破産・民事再生によらない事業整理=約50%の課税額免除
・「相続時精算課税」の併用により贈与税を大幅節税できる
・最大3人の共同後継者による事業承継も納税猶予対象

改正された税制の恩恵を得るには、都道府県に計画書を提出した上で「特例措置」を受ける必要があります。適用申請時の要件(先代経営者・後継者・会社)が一般措置とは若干異なる点に注意した上で、認定支援機関のサポート期間を織り込んで承継プランを練りましょう。

本税制の適用にあたっては「今の業態(非上場かつ中小規模)のまま5年間事業継続しなければならない」という点も考慮に含めましょう。後継者の持つ経営ビジョンに沿うかという点で、先代と跡継ぎの間でコンセンサスを形成しておくことが肝要です。 上手く制度活用できれば、結果的に後継者の経営スキルを最大限に引き出すことが望めます。

日本クレアス税理士法人は、法人1,370、クリニック・医療法人等550、個人580 、合計2,500ものお客様のサポートを通じて蓄積した豊富な経験なノウハウがあります。相続・事業承継、贈与や相続税の生前対策などでお悩みの場合にはぜひご相談ください。

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