回収できる見込みのない債権を放棄したいけれど、どうやって手続きをすればいいかわからないとお悩みではありませんか。
債権放棄手続きを正しく行えば、回収できない債権を税務上の「損金」として処理できます。課税所得額を抑えられるため、手続きを済ませることが大切です。
本記事では、債権放棄の手続きの流れと、申請に必要な債権放棄通知書のひな形を紹介します。
手続きの際の注意点も解説するので、回収できない債権にお悩みの方は参考にしてください。
【この記事でわかること】
|
目次
1.債権放棄の手続きの流れ
債権放棄は債権者の一方的な意思表示で効力が生じているものですが、税務申告等対外的な証拠を残すためにも、内容証明郵便を使うことが大切です。
また、債権放棄通知書の送付の前にとるべき手順があります。
①支払の催促を行い、回収できなかった事実を残す
債権を損金(損失)にするためには、支払いの催促を行ったにもかかわらず債権が回収できなかった、という事実が必要です。
なぜなら、債権回収できる可能性がある中で債権放棄を行った場合には、「寄附金」を贈与したとみなされることがあるからです。
そのため、支払いの催促を行ったという客観的な証明を残す必要があります。
②債権者の財務状態を調査する
債権放棄が認められるためには、債務者に支払い能力がないということを調査する必要があります。
③債権放棄通知書を内容証明郵便で送付する
債権放棄を行ったことを対外的にも証明するために、内容証明郵便で書面により通知を行います。
内容証明郵便とは、
- いつ
- 誰から誰へ
- どのような内容の文書
を差し出したのかを郵便局が証明するものです。
債権放棄通知書の場合には、相手に送った同じ文面を自分と郵便局が保管します。
この内容証明郵便は税務申告を行う際にも必要になります。
2.債権放棄をする際の注意点
債権放棄をする際には、次のような手順を踏むことが大切です。
- 支払いの催促を何度も行ったが回収できなかった、という証拠を残す。
督促を行わずに債権放棄を行った場合、債務者に贈与したことになり「寄付金」とみなされることがあります。
- 相手方が債務超過の状態が相当期間継続しているときに、通常3~5年以上、債券超過が継続している場合、債権放棄の条件が整ったとみなされます。
- 貸倒認定についてのトラブルを避けるために、会社更生等手続き開始通知書、債権者集会の協議決定通知書、債権放棄通知書(債務免除通知書)などの書類を整えておくことも必要です。
- 証拠を残すために「内容証明」または「配達証明」郵便で相手に通知します。
文面には債権放棄の事実、契約日、商品名、商品代金、商品引渡日、商品代金の支払期限を明記します。
また、債権放棄の日時も明記します。
また、電話や普通郵便による債権放棄の通知は認められず、損金処理が出来なくなるため必ず書面で通知してください。
内容証明郵便の文書は同じ文面のものを3通作成し、自分、相手、郵便局に1通ずつ保管します。
3.債権放棄通知書の参考例(ひな形)
債権放棄通知書のサンプルを掲載します。参考にしてみてください。
債権放棄通知書
(内容証明として通知)
株式会社□□□□(以下「甲」という)は、株式会社△△△△(以下「乙」というに対する、令和〇〇年〇〇月末日現在、下記売掛金債権を有しておりますが、諸般の事情に照らして、本書面をもって書き債権全額を放棄いたします。
記
一 契約日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
二 商品 〇〇〇〇
三 商品代金 金〇〇万円
四 商品の引渡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
五 商品代金の支払期限 令和〇〇年〇〇月〇〇日
以上
令和〇〇年○○月○○日
(甲)住所 東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号
会社名 株式会社□□□□
代表取締役 〇〇〇〇
(乙)住所 東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号
会社名 株式会社△△△△
代表取締役 〇〇〇〇殿
4. ひな形を活用して正しく債権放棄手続きを進めよう
回収できない債権を手続きによって放棄すれば、債権者側は損金として処理することが可能です。
損金を会社の益金から差し引けば課税所得額を抑えられるため、法人税の納付額も少なくなります。
手続きの際は、債権放棄通知書と一緒に書面による債務免除通知書もあわせて送付しましょう。
必要な書類を債務者側に送付すれば確実に債権放棄できるため、双方がメリットを得られます。
本記事で紹介したひな形を活用し、正しい手順を踏んで手続きを進めましょう。
日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬
2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ)
・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数
【お役立ちコンテンツ】
相続相談はどこにするべき?専門家(税理士、司法書士、弁護士)の強み
【クレアスの相続税サービス】
このコラムは「日本クレアス税理士法人」が公開しております。
東京本社
〒100-6033東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング33階
電話:03-3593-3243(個別相談予約窓口)
FAX:03-3593-3246
※コラムの情報は公開時のものです。最新の情報は個別相談でお問合せください