債権放棄通知書の書き方とは?発送や手続きの注意点を解説
「取引先が倒産して売掛金が回収できない」「債権放棄通知書で回収できない債権を放棄したい」
けれど、どうやって手続きをすればいいかわからないとお悩みではありませんか。
企業の倒産などの影響で回収できないお金がある場合、「債権放棄手続き」を行うことで損金処理を行うことが可能です。
この方法なら課税所得額を抑えられるため、早めに処理を進めましょう。
本記事では、事業者が抑えておきたい債権放棄の手続きの流れと、申請に欠かせない債権放棄通知書のひな形を紹介します。
手続き時の注意点も解説するので、未回収の債権にお悩みの方は参考にしてください。
【この記事でわかること】
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目次
1.債権放棄とは?手続きの流れを解説
債権放棄とは、債務者の意志にかかわらず債権者の一方的な意思表示で債務を消滅させることを意味します。
支払いの督促を行っても回収不可となっている債権者に対して「債権放棄通知書」を送ることで、税務申告等対外的な証拠を残しつつ放棄を通知します。
証拠としての効力を持たせるためにも内容証明郵便を使うことが一般的です。
債権放棄通知書の通知までの流れは以下です。
①支払の催促を行い、回収できなかった事実を残す
債権を損金(損失)として処理するためには、支払いの催促を行ったにもかかわらず債権が回収できなかった、という事実が必要です。
なぜなら、債権回収できる可能性がある中で債権放棄を行った場合には、「寄附金」を贈与したとみなされる可能性があるためです。あるからです。
支払いの催促を行ったという客観的な証明を残した上で、通知書の発送準備に入ります。
②債権者の財務状態を調査する
債権放棄が認められるためには、債務者の支払い能力を調査する必要があります。
すでに支払い不能の状態であることを確認した上で放棄を行います。
③債権放棄通知書を内容証明郵便で送付する
債権放棄を行ったことを対外的にも証明するために、内容証明郵便で書面により通知を行います。
内容証明郵便は「いつ、誰が、誰に対して、何を伝えたのか」を明確に示す郵便物です。
裁判などにおいても証拠として採用されています。
内容証明郵便には法的効力をもつ「確定日付」があるため、債権放棄通知の文書が作成された日を確定的に示すことができます。
債権放棄通知書を内容証明で通知した場合、相手に送った同じ文面を自分と郵便局が保管します。
この内容証明郵便は税務申告を行う際にも必要ですので、破棄しないようにしましょう。
2.押さえておきたい債権放棄をする際の注意点
債権放棄をする際には、次のような手順を踏むことが大切です。
- 支払いの催促を何度も行ったが回収できなかった、という証拠を残す。
督促を行わずに債権放棄を行った場合、債務者に贈与したとみなされ「寄付金」とみなされてしまうため、証拠を残しましょう。 - 貸倒認定についてのトラブルを避けるために、会社更生等手続き開始通知書、債権者集会の協議決定通知書、債権放棄通知書(債務免除通知書)などの書類を整えておく。
- 債権放棄通知書は証拠として保管するためにも「内容証明」または「配達証明」郵便で相手に通知する。
文面には債権放棄の事実、契約日、商品名、商品代金、商品引渡日、商品代金の支払期限を明記します。
また、債権放棄の日時も明記します。
電話や普通郵便による債権放棄の通知は認められず、損金処理が出来なくなるため必ず書面で通知してください。
3. 債権放棄の条件はどのように判断できる?
債権放棄を進めるためには、債務者に支払い能力がないことを確認する必要があります。
債権放棄には一定の条件が整っていることが大切です。
以下の3点をクリアしている場合、債権放棄を進めてもトラブルにはなりにくいでしょう。
3-1. ①支払能力の欠如
債務者が経済的に困窮しており、過去や現状をふまえると将来も支払いが不可能であると客観的に判断できる状況が必要です
単に支払いを怠っているだけでなく、債務超過の状態が長期間継続している、事業の継続が困難であるなどの状況が考えられます。
3-2. ②債務超過に陥っている
債務者の資産よりも負債が大幅に上回っている状態も、債権放棄を検討する重要な要素となります。
一般的に、3〜5年程度の債務超過が継続していることが目安です。
3-3. ③事業継続の可能性が低い
代表取締役の死去などで債務者が事業を継続する見込みがなく、清算手続きに入る可能性が高い場合、債権を回収できる見込みは低いでしょう。
そのため債権放棄が検討されることがあります。
4.【ひな形あり】債権放棄通知書を作成してみよう
実際にこれから債権放棄通知書を相手へ通知する場合は、どのように通知書を作成するとよいでしょうか。
この章では債権放棄通知書のサンプルを掲載します。ひな形としてぜひお使いください。
債権放棄通知書
(内容証明として通知)
株式会社□□□□(以下「甲」という)は、株式会社△△△△(以下「乙」というに対する、令和〇〇年〇〇月末日現在、下記売掛金債権を有しておりますが、諸般の事情に照らして、本書面をもって書き債権全額を放棄いたします。
記
一 契約日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
二 商品 〇〇〇〇
三 商品代金 金〇〇万円
四 商品の引渡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
五 商品代金の支払期限 令和〇〇年〇〇月〇〇日
以上
令和〇〇年○○月○○日
(甲)住所 東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号
会社名 株式会社□□□□
代表取締役 〇〇〇〇
(乙)住所 東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号
会社名 株式会社△△△△
代表取締役 〇〇〇〇殿
5. 内容証明を利用し、正しく債権放棄手続きを進めよう
本記事では、債権放棄通知書の書き方や注意点を中心に詳しく解説しました。
債権放棄は、未回収債権の整理や税務上のメリットを得るための大切な手段ですが、手続きを慎重に進める必要があります。
特に、内容証明郵便の活用は、債権放棄の意思表示を明確にし、後々のトラブルや税務上の問題を避ける上で不可欠です。
ひな形を参考にしつつ、個別の状況に合わせて内容を調整し、確実な証拠を残すようにしましょう。
債権放棄で損金を会社の益金から差し引けば課税所得額を抑えられるため、法人税の納付額も少なくなりますが、手続き全般が不安な場合は迷わず税理士に相談することをおすすめです。
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