ーコラムー
法人の相続

回収できない債権は放棄すべき?~債権放棄のメリットと注意点

2016.6.7

事業を行っていると、売上代金をすぐに回収することができず、売掛金となっている場合があります。また融資でお金を貸し付けている場合で、期日がきても返済してくれない場合もありますよね。

そのような場合に、取引相手が倒産してしまったりして、売掛金や貸付金といった債権が回収できないという場合があります。

取引相手が倒産してしまった場合などには、回収の見込みがほとんどありません。このようなときにいつまでも債権として残しておくよりは、債権放棄して、税法上の損金(損失)として計上したほうが良いこともあります。

今回は、債権放棄について解説していきたいと思います。

目次

1.債権放棄(債権免除)とは?
2.債権放棄のメリットと注意点
3.債権放棄の方法
  3.1.支払いの催促を行う
  3.2.債務者の財務状態を調査する
  3.3.内容証明郵便で行う
  3.4.書類を整える
4.債務者が倒産した場合
5.債権放棄のまとめ

1.債権放棄(債権免除)とは?

債権放棄1

債権放棄(債務免除)とは、債務者の意思にかかわらず債権者の意思のみで債務を消滅させることをいいます。 民法上では、「免除」という行為にあたります。

「債権者が債務者に対し債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅する(民法519条)」と規定されているように、債権放棄も法律行為のひとつなのです。

2.債権放棄のメリットと注意点

回収の見込みがない債権を資産として持っておくと、どうなるのでしょうか?

事業承継を検討している場合には、回収の見込みがない資産をそのまま計上しておくと、株価を高くする原因となり、税金が高くなってしまいます。

貸倒引当金を設定して回収見込みのある分だけ売掛金を設定するという方法もありますが、この場合には、税法で貸倒引当金の設定の方法が決まっていて、あくまで見込みによってしか設定することができません。

そこで、債権が回収できないと判断した場合に債権放棄という方法をとるのです。

債権放棄すると、そのぶんの売掛金がなくなり、損金(損失)として処理できます。会社が黒字の場合には、回収できない債権を損失にすることで、節税対策をすることにもなりますね。

このときに気をつけたいことは、その債権は本当に回収できないかどうか、です。

本当は回収できるかもしれない債権を放棄することは、会社のためになりません。もし債権のうちの一部でも回収できる場合には、その一部を確実に回収するようにしましょう。

それでは債権放棄を行うにはどのような手順で行えばいいのでしょうか?

ここからは債権放棄の具体的な方法を解説していきます。

3.債権放棄の方法

3.(1)支払いの催促を行う

債権放棄2

債権放棄を行い債権を損金(損失)にするためには、支払いの催促を行ったにもかかわらず債権が回収できなかった、という事実が必要です。

3.(2)債務者の財務状態を調査する

債務者が支払うことができるのに、支払いを引き延ばしているだけの場合にも、債権放棄は認められません。

通常、債務者の財政状態が悪化して、資産よりも債務のほうが多くなってしまっている「債務超過」の状態が3~5年の期間が継続している場合に、債権放棄をする条件が整っているとみなされます。

3.(3)内容証明郵便で行う

債権放棄は、債権者の意思表示だけで効力が生じます。ということは、相手の確認なしに一方的にできるのです。

とはいっても、債権放棄をしたかどうか、対外的に分からないといけませんので、債権放棄を行うときは内容証明郵便で書面により通知します。

文面には、債権放棄の事実、契約日、商品名、商品代金、商品引渡日、商品代金の支払期限、債権放棄の日時を明記します。 サンプルを掲載しますので、参考にしてみてください。 債権放棄通知書の例

3.(4)書類を整える

最後に、会社更生等手続き開始通知書、債権者集会の協議決定通知書、債権放棄通知書(債務免除通知書)などの書類を整え保管しておきます。貸倒認定でトラブルになったときにそなえて、どこに保管してあるかわかるようにしておきましょう。

4.債務者が倒産した場合

債務者が倒産した場合、清算事務を行い、残余財産の分配をしても回収できない債権は、貸倒損失です。

この場合、手続きに時間がかかってしまいますので、債権が回収できそうもないから早めに損金(損失)として処理したい場合に、債権放棄の方法をとることを検討します。

この場合には、債務者の財産の管理は、債務者ではなく破産管財人がしていますので、破産管財人に対して債権放棄通知書(債務免除通知書)という書類を送ることになります。

5.債権放棄のまとめ

債権放棄の手続きは大変ですが、回収できる見込みのない債権を放置しておくよりは、大変でも債権を整理したほうが、会社経営上も、事業承継を行ううえでも、望ましいのではないでしょうか?

債権放棄をする時期としていつが良いかなどは会社経営の状態にもよりますし、書類の作成などのアドバイスももらえますので、税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

とくに、事業承継を検討されている場合には、税理士の中でも相続を専門としている税理士に相談すると良いでしょう。