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ーコラムー
自己株式
税理士監修記事

自己株式の取得の方法・目的・メリットとは?

公開日:2015.11.2 更新日:2022.06.19

自己株式(自社株式)の取得とは、株式会社が発行した株式を、その株式会社の株主から買い取ることをいいます。 自己株式の取得は、一度株主から調達した資金を株主に払い戻すことになります。

株主にお金を払い戻すという点では、自己株式の取得は、株主への配当金を支払うことと同じです。 ここでは自己株式の取得に関するルールやその活用方法の基本を説明していきます。

目次

1.自己株式(自社株式)とは?
2.自己株式(自社株式)取得の目的
3.自己株式(自社株式)のメリット・デメリット
4.自己株式(自社株式)の取得について
  4.1.平成13年の商法改正
  4.2.現在はどのようなルールになっているか
  4.3.自己株式(自社株式)取得の効果
5.自己株式(自社株式)の取得手続きの流れ
6.実際の活用方法
  6.1.敵対的買収への対抗策
  6.2.合併・買収時の支払対価に利用
  6.3.ストック・オプション制度への活用
  6.4.株価低迷への対抗策
7.まとめ

1.自己株式(自社株式)とは?

自己株式とは、「株式会社が有する自己の株式」のことです。つまり、企業が発行した自己の株式について、発行後にその企業自身が自社株を取得し、保有している株式のことをいいます。 英語では Treasury stockや Treasury shareと言われることから、「金庫株」と呼ばれることもあります。

自己株式(自社株式)取得の目的

自己株式取得の代表的な目的として下記のようなものが挙げられます。

  • 株主への利益還元
  • 事業承継対策
  • 少数株主の整理
  • 敵対的買収の対策

2.1.株主への利益還元

冒頭でも述べた通り、自己株式の取得は、株の発行という形で株主から調達した資金を株主に払い戻すことになります。

株主にお金を払い戻すという点では、自己株式の取得は、株主への配当金を支払うことと同じで、株主への利益還元策として用いられることがあります。

2.2.事業承継対策

中小企業の事業承継対策として、自己株式の取得が行われます。
会社を引き継ぐ後継者は、株式の相続に対して相続税が課せられますが、企業が後継者から自己株式を取得することで、後継者は現金を手に入れることができ、納税資金に充てることができます。

なお、自己株移転に係る税金に関しては、「事業承継税制」が活用でき、後継者が負う金銭的コストを軽減することで事業承継を円滑に行える可能性があります。

事業承継税制の適用要件など詳細はこちらのコラムをご参考ください。:事業承継税制とは?改正点やメリット・デメリットを解説!

2.3.少数株主の整理

株式が多数の株主に分散し、少数株主が多く存在しているケースでは、株主の管理に手間や費用がかかる、意思決定をスピーディーにできなくなる、といったデメリットもあります。

そこで少数株主から自己株式を取得し、株主の整理を行う場合もあります。

2.4.敵対的買収の対策

自己株式を取得することで持ち株比率を高め、議決権の比率を上げることで買収元企業の株式取得を困難にさせます。また、自己株式を取得することは株価の上昇にもつながりますので、買収にかかる資金が上昇することで、敵対的企業の株式取得を困難にさせます。

ただし、敵対的企業がすでに相当数の株式を保有している場合には、自己株式の取得がデメリットになる場合もあります。

3.自己株式(自社株式)のメリット・デメリット

自己株式のメリットとしては、上記に挙げた「株主への利益還元」「事業承継対策」「少数株主の整理」「敵対的買収の対策」等の目的が達成されることです。

一方デメリットは、自己株式の取得により会社内の現金が減るということです。
自己株式を取得するためには、株主に現金で買い取ることになるため、会社にそれだけの資産が必要です。潤沢な資金がある会社ならば良いですが、中小企業の場合には現金が減ったことによる事業計画への支障を懸念しておく必要があります。

自己株式の取得を行った結果、会社の財務基盤が低下し、事業へ悪影響を及ぼすことは避けなければいけません。

4.自己株式(自社株式)の取得について

4.1.平成13年の商法改正

過去より、経済界は自己株式の取得についての規制緩和を求めていましたが、平成13年の旧商法改正以前において、自己株式の取得は、原則として禁じられていました。

その理由として、資本金や資本準備金を財源として自己株式の取得が実施される場合、株主へ出資の払戻しが行われることと同様であり、債権者が不利益を受ける可能性があります。また、相場操作行為やインサイダー取引のおそれもあり、投資家が不利益を受けるおそれがあります。

しかし、自己株式の取得には、敵対的買収や従業員持株制度の整備等のメリットがあることから、一定の規制のもと平成13年の商法改正で、規制緩和されました。

4.2.現在はどのようなルールになっているか

現在では、自己株式の取得は、原則自由化となりました。前述の自己株式の取得の弊害に対しては、会社法155条に規定を置くことで、弊害を防ぐことになりました。 上場会社から中小同族会社まで、株主総会決議があれば全ての会社に自己株式の取得が認められています

さらに臨時株主総会での決議でも可能となったほか、当該決議により承認された取得の期間を1年以内で自由に定めることができるようになりました。

平成32年度末までの時限措置ではありますが、自己株式を対価とした事業買収に応じた株主について、株式の譲渡損益への課税の繰延措置が規定されました。売り手の負担となっている株式の売却益の課税を繰り延べすることで、売却意欲を高めM&Aの活発化を図ることが目的となっています。

さらに、買収手続も簡素化し、買収資金の流出が行われないため、手元資金が潤沢でない中小企業もM&Aがしやすくなるような措置となっています(自社株式を対価とした株式取得による事業再編の円滑化措置の創設)。

自己株式(自社株式)の取得について

出典)経済産業省「平成30年度 経済産業関係 税制改正について

4.3.自己株式(自社株式)取得の効果

自己株式の取得の主なメリットとしては、株主から自社の株式を買い戻し、自社の持株比率を高め、より多くの議決権を保有することによって、敵対的買収を防止することができます。 また、自社の株式が市場で過少評価されているタイミングで、自己株式を取得することによって、市場に対して株価上昇のシグナルを発信することができます。

さらに、既存株主から自社の株式を買い戻すことになると、会計上、自己資本(純資産)、総資産の金額が減少します。仮に、自社の利益数値が同一であるならば、自己株式を取得した場合、ROA(Return On Asset:総資産利益率)やROE(Return on Equity:株主資本利益率、 自己資本利益率)といった収益性指標が改善します。

一方、デメリットとしては、自己株式の取得を行うためには、原則、株主総会決議を経なければならないため、実務上の手続が必要となります。

5.自己株式(自社株式)の取得手続きの流れ

現在、日本における自己株式の取得手続については、市場取引、公開買付け、相対取引の3種類の方法があります。

市場取引・・・株式を上場しており、市場で流通しているのであれば、企業は市場から自己株式を買い取ることになります。

公開買付け・・株式市場で多数の自己株式を取得する場合、株価に影響を与えるため、金融商品取引法上で規定されている取得方法です。不特定かつ多数の者に対して取引所外で自己株式を取得します。

相対取引・・・自己株式の取得にかかる決議によって、売り主となる株主が特定する方法であり、市場外で実施される方法です。

特に、非上場会社が、特定の株主からだけ自社株を買い取るような場合、他の株主からも同じように、自社株を買い取る機会を与えないと平等とはいえません。そこで、会社法では、原則として自己株式を買い取るかどうかは、株主総会の特別決議で承認を得ることとしています。

なお、株式の譲渡を制限している非公開会社の株主は、自分の保有する株式を買い取るよう、会社に請求することができます。既存の株主は自由に株式を譲渡できないため、会社へ買い取りするよう請求することで既存株主の利益を保護しようとする趣旨です。

6.実際の活用方法

それでは、自己株式の取得について、実際の活用方法を見てみましょう。

6.1.敵対的買収への対抗策

企業が敵対的買収に直面していた場合、市場や特定の株主から自己株式を取得することで、敵対的買収を防止することができます。 自己株式を取得し自社の持株比率を高まることによって、自社の議決権比率を高め、買収をしかける企業の議決権比率を下げる狙いがあります。

また、自己株式を取得することで、市場の株価は上昇するため、買収をしかける企業は、通常より高い価格で買収することになるので、買収するインセンティブが低下することもあります。

6.2.合併・買収時の支払対価に利用

合併・買収等を行う場合の支払対価として、自己株式を交付することができます。新株発行と比較して、発行済株式数の増加による価値の希薄化や、将来の配当負担、新株発行コスト等の増加を防ぐことができます。

6.3.ストック・オプション制度への活用

ストック・オプションとは、企業の役員や従業員が、あらかじめ定められた価額で、一定期間内に自社株式を購入できる権利を報酬として付与するものをいいます。取得した自己株式を役員や従業員に付与することで、上場した場合や株価が上昇した時点で売却することができます。

6.4.株価低迷への対抗策

企業が、自社の株価が過少評価されていると判断した場合、自己株式を取得することによって、株価が実際よりも割安だというメッセージを市場に対し、発信することができます。また、自己株式を取得することで、市場に流通している株式数が減少することから、株価上昇を目的とする場合もあります。

7.まとめ

自己株式を取得に関するルール、手続、そして活用方法を説明してきました。 会社法上の取得手続を得なければならないものの、様々なメリットと活用方法があります。さらに、産業競争力強化法の改正を受け、平成32年度末までは自己株式を用いたM&Aの規制を緩和されていますので、自己株式の活用がますます増えるのではないでしょうか。

また、平成30年度の税制改正では「事業承継税制」の要件が大幅に緩和されました。自己株式を用いたM&Aについて関心のある方は、こちらも合わせて確認しておくのはいかがでしょうか。承継のパターンや雇用確保要件、納税猶予となる対象の株式数や納税猶予額について大幅に要件が緩和されています。

※事業承継税制について詳しくはこちら → 事業承継税制とは?改正点やメリット・デメリットを解説!

相続の相談コラム監修

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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