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ーコラムー
贈与税の控除・特例
税理士監修記事

不動産を贈与する際の「配偶者控除」のまとめ

公開日:2017.2.23 更新日:2022.07.12

「贈与税の配偶者控除(ぞうよぜいのはいぐうしゃこうじょ)」というのは、簡単にいうと、マイホームを夫や妻に贈与するときに最高2,000万円、贈与税評価額を減らすことができる制度です。

場合によっては、贈与税がゼロになるかもしれないほど控除額の大きい贈与税の配偶者控除ですが、この制度を受けるための要件や注意点などがいろいろあります。

贈与税の配偶者控除は、制度をしっかり理解すれば節税対策としていかすことのできる制度ですので、今回は、贈与税の配偶者控除についてくわしく説明していきたいと思います。

目次

1.贈与税の配偶者控除とは
2.贈与税の配偶者控除を受けるためには
  (1)20年以上の婚姻期間
  (2)マイホーム用の不動産またはマイホーム用の不動産を購入するためのお金であること
  (3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに実際に生活を開始し、その後も引き続きその場所に住むことが見込みであること
  (4)同じ配偶者で過去に、贈与税の配偶者控除を受けていないこと
3.贈与税の配偶者控除を受けるための手続き
  (1)必要書類
  (2)申告期限と納付期限
  (3)計算式
4.離婚をした/しようと思っている場合
5.相続税対策としての贈与

1.贈与税の配偶者控除とは

不動産を贈与する際の「配偶者控除」のまとめ

贈与税の配偶者控除は、「配偶者」が「居住用不動産」または「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与が行われた場合に適用できる制度です。

つまり、妻への贈与、夫への贈与といった夫婦間で、マイホーム用の不動産か、マイホームのための不動産を購入するためのお金を贈与するときに使うことができます。

贈与税はもともと110万円の基礎控除額があります。贈与税の配偶者控除を使うことができれば、基礎控除額である110万円のほかに2.000万円の控除が使えますので、あわせて2,110万円の控除を受けることができます。

2.贈与税の配偶者控除を受けるためには

贈与税の配偶者控除は、夫婦間のマイホームの贈与であればどんな場合でも適用できるわけではありません。この制度の目的は、妻や夫の生活基盤を安定させるためですので、婚姻期間などの要件が細かく決められています。

この制度を受けるための要件と注意点をくわしくみていきましょう。

(1)20年以上の婚姻期間

贈与税の配偶者控除は、夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に、夫や妻から贈与が行われた場合にしか適用することができません。20年以上かどうかは、入籍してから贈与された日までの期間で判断されます。

したがって、籍をいれていない事実上の夫婦や、婚約しているだけの間柄の年数は20年の期間にカウントされません。

この制度の利用を検討している場合には、戸籍上できちんと婚姻期間が20年以上あるかどうかを確認する必要があります。

(2)マイホーム用の不動産またはマイホーム用の不動産を購入するためのお金であること

贈与税の配偶者控除を受けることのできる贈与財産は、配偶者が住むための、日本国内にある自分が住むためのマイホーム用の不動産か、マイホーム用の不動産を購入するためのお金です。この不動産には、土地、建物以外にも借地権も対象になります。

(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに実際に生活を開始し、その後も引き続きその場所に住むことが見込みであること

贈与された不動産に、今現在、夫婦で住んでおり、今後も引き続き住む予定であれば問題がありませんが、これから住むための購入資金を贈与する場合には、この要件に注意しなければなりません。

贈与された年の翌年の3月15日までに生活を開始している必要がありますので、購入資金を贈与する場合には、漠然と、これからマイホーム用の不動産を建築するための不動産を探して・・・という段階で購入資金を贈与すると、不動産を探して住宅を建築して生活を開始するのが、贈与を受けた翌年の3月15日にまにあわず、思わぬ贈与税がかかってしまうことがあります。

マイホームの完成、引き渡し、生活を開始できる時期に注意して贈与を行う必要があります。

(4)同じ配偶者で過去に、贈与税の配偶者控除を受けていないこと

贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度のみしか適用を受けることができません。

この制度を使うことができれば2,000万円の配偶者控除を受けることができますが、もし、贈与が1,500万円の不動産で配偶者控除でつかうことのできる金額のうち500万円を使うことができなくても、その500万円はその後はもう使うことができません。

贈与税の配偶者控除を使うときには、2,000万円以下の場合には、贈与したいマイホーム用の不動産として他に入れることができるものがないかを確認するとよいでしょう。

ここまで贈与税の配偶者控除を使う際の注意点をまとめました。 

贈与税の配偶者控除は最大で2,000万円の特別控除が受けられるということもあって、検討される方も多いでしょう。ここからは皆様が気になるであろう、配偶者控除を受けるための具体的な手続きについて解説します。

3.贈与税の配偶者控除を受けるための手続き

贈与税の配偶者控除を受けるための手続き

贈与税の配偶者控除を受けるためには、贈与税がかかる場合はもちろん、控除を受けることで贈与税額がゼロになる場合でも、贈与税の申告をする必要があります。

(1)必要書類

贈与税の申告には、上記で説明した要件がきちんと満たされているかを確認するために、以下の書類を添付する必要があります。

  1. 財産の贈与を受けた日から、10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
  2. 財産の贈与を受けた日から、10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  3. 居住用不動産の登記事項証明書など、贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
  4. 贈与財産が居住用不動産の場合には、固定資産評価証明書などのその居住用不動産を評価するための書類

(2)申告期限と納付期限

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月の15日までで、納付期限も同じです。

(3)計算式

贈与税の額を計算するためには、贈与税の申告書にそって記入をしていくことになります。具体的には、下記の贈与税の速算表にあてはめて計算します。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

出典)国税庁ホームページ タックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

たとえば、贈与財産が2,500万円で、贈与税の配偶者控除を受ける場合には、

(贈与財産2,500万円―<配偶者控除2,000万円―基礎控除110万円)×税率10%=39万円

となります。この式から、贈与財産が2,110万円未満であれば贈与税はゼロになることがわかります。


贈与を検討されている方は、一度贈与税のシミュレーションを行ってみるのもよいでしょう。 さてここからは、離婚をした/しようとしている場合の考え方、相続税対策としての贈与、について解説をしていきます。

20年以上の婚姻期間がある夫婦において適用可能な「贈与税の配偶者控除」。最大で2,000万円の特別控除が受けられる可能性がある制度ですが、離婚をした、あるいはしようとしている場合は適用可能なのでしょうか?

また、贈与税の配偶者控除を相続税対策として活用していくには、どのような点に注意していけばよいのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。

4.離婚をした/しようと思っている場合

「贈与税の配偶者控除」離婚をした/しようと思っている場合

よくある質問として、離婚をしようと思っている場合に、離婚をする前とした後のどちらのタイミングで不動産を譲り渡すほうがよいのか、という質問があります。

このような場合には、できれば離婚をしない方向をおすすめするのですが、もう離婚を決意されている場合には、よりお得なほうを考えるしかありません。

離婚をした場合には、贈与税の配偶者控除を使うことはできませんが、離婚にともなう財産分与として贈与税がかからない場合があります。

ただし、財産分与としてふさわしくない過大な財産を贈与した場合には贈与税がかかり、この場合には配偶者控除を使うことができません。

具体的な金額はケースにより異なりますので、具体的には、不動産の贈与にくわしい信頼できる税理士や法律の専門家などにアドバイスを受けるとよいでしょう。

5.相続税対策としての贈与

相続税対策として利用される生前贈与をすることにし、贈与税の配偶者控除を利用することができれば、相続財産が少なくなり相続税の節税にもなり、贈与税も配偶者控除で少なくなります。

夫婦間で相続対策を考えてる場合には、贈与税の配偶者控除が利用できれば、利用を検討すべきでしょう。

ただし、不動産の名義変更には登録免許税や不動産取得税がかかります。これらの税金は、贈与より相続のほうが少なくすみます。もともと、相続財産が少なく相続税がかからないような場合には、相続のほうがお得な場合もあります。

特定の財産を他の相続人ではなく配偶者に渡したいというような相続対策では、生前贈与はとても便利な方法です。

実際の相続対策は、どのような対策をしたいのか、相続人には誰がいるのか、相続財産には何がどれだけあるのかを考慮して考えていく必要がありますので、相続に強い信頼できる税理士にアドバイスを受けながら対策していくことをおすすめします。

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