相続で受け取った家を解体した後に、「滅失登記(めっしつとうき)」という手続きが必要です。

この手続きを怠ると、存在しない建物に対して固定資産税を払い続けることになったり、土地売却時に問題が発生したりする可能性があります。

手続きは自分でも可能ですが、書類の書き方や提出期限など、たくさんのポイントがあるため注意が必要です。

本記事では、滅失登記の基本的な流れから必要書類、費用、注意点までを詳しく解説します。

相続で家を受け取った方、相続した家を解体しようと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

無料相談予約はこちら

1. 建物滅失登記とは?手続きは自分でも可能!

相続した家を解体した後は、建物滅失登記という手続きが必要です。

法的義務でもあるこの手続きは、専門家に依頼するイメージが強いですが、実は自分でも行えます。

滅失登記の概要や必要な理由、手続きを行わなかった場合のリスクを解説します。

1-1. 滅失登記とは建物が消滅したことを登記して知らせること

建物を新築すると登記する必要があります。

一方、火災や災害・解体で建物が無くなった場合、法務局の登記簿から建物が無くなったことを登記する「滅失登記」が必要です。

この手続きによって、登記簿上の建物情報が「存在しない」状態に変更されます。

建物がなくなっているのに、登記簿上では「まだ存在している」という状況を解消するのが目的です。

不動産登記法に基づき、建物が物理的に滅失した日から1ヶ月の期間内に行うことが義務付けられています。

【関連記事】相続登記とは?相続した不動産に必要な手続きや書類・流れを解説!

1-2. 相続した家を解体した場合に滅失登記が必要な理由

相続した家を解体した場合、滅失登記を行わないと、現実と登記簿上の情報に食い違いが生じます。

建物は実際には存在しないのに、登記簿には「建物あり」と記録されたままになっているからです。

この状態を放置すると、さまざまな問題が発生します。

たとえば、土地を売却したい場合や新しい建物を建てる場合に、登記簿上に解体した建物情報が残っていると、手続きが複雑になったり、手続きができない可能性もあります。

以上のことから、相続した家を解体した際には、滅失登記が必要です。

1-3. 滅失登記を行わなかった場合のリスク

建物滅失登記を行わなかった場合、以下のリスクが発生する可能性があります。

以上のことから、滅失登記を行わないと、さまざまなリスクが生じます。

2. 滅失登記が必要になるケースとは

滅失登記が必要になるのは建物が物理的に消滅した、以下のようなケースです。

それぞれの手続きの違いを解説します。

2-1. 老朽化で建物を解体した場合

老朽化で建物を解体した場合も、滅失登記が必要になります。

築年数が経過し、構造的に問題がある建物を安全のために取り壊すケースが該当します。

相続した古い家屋を解体する場合も同様です。

解体業者による計画的な取り壊し作業が行われた場合は、必ず滅失登記の手続きが必要です。

また手続きの際に必要な、解体業者を証明する書類(代表者事項証明書または履歴事項証明書)と建物滅失証明書を解体業者から忘れずに受け取っておきましょう。

ただし、建物の劣化で今にも崩れそうな場合は「滅失した」とはみなされず、滅失登記はできないのが一般的です。

自然崩壊と意図的な解体は法的に区別されています。

2-2. 災害や火災で建物がなくなった場合

建物を壊したり、火災で焼失など、建物がなくなった場合も滅失登記が必要です。

自然災害や火災による建物の消失も、滅失登記の対象となります。

たとえば、地震による倒壊、台風による流失、火災による焼失などが該当します。

これらの場合は、消防署から「罹災(りさい)証明書」を発行してもらう必要があります。

通常の解体とは異なり、災害や火災の事実を証明する公的書類が必要です。

2-3. 相続や売却のタイミングで求められるケース

古い建物とその敷地を相続し、その土地を売却する際に、建物の解体と「建物滅失登記」を求められます。

理由として、建物付きの土地は次の所有者が滅失登記を行わないといけないため、売れづらくなるためです。

建物の所有者が亡くなった後で滅失登記を行う場合、相続人が申請を行うことができます。

相続人が建物滅失登記をおこなう場合、亡くなった建物の所有者との相続関係が分かる書類が必要です。

通常の手続きに加えて、相続関係を証明する戸籍謄本などの追加書類が求められます。

土地活用や売却を検討している方は、それらを円滑に進めるためにも、早期の対応が大切です。

3. 滅失登記を自分で申請する方法と流れ

滅失登記は専門的な手続きに見えますが、必要書類を揃えれば自分でも申請可能です。

手続きに係る費用が抑えられるため、以下のポイントを理解して取り組んでみましょう。

1つずつ解説します。

3-1. 滅失登記に必要な書類とその取得方法

建物滅失登記に必要な書類と取得方法は以下のとおりです。

書類名

取得方法

不動産登記の申請書

法務局ホームページでダウンロード可能

解体した建物に関する書類
(登記簿謄本・公図・地積測量図・建物図面)

法務局

建物滅失証明書

解体業者から受け取れる

解体業者の資格証明書

(代表者事項証明書または履歴事項証明書)

解体業者から受け取れる

該当箇所の地図

GoogleやYahoo!などでマップを出力

(相続の場合)除籍謄本・戸籍謄本

市区町村役場

(手続きを第三者に委任する場合)委任状

自分で作成

たくさんの書類が必要となるため、揃っているかが気になる方は、管轄の法務局に問い合わせてみましょう。

3-2. 管轄法務局への申請方法

必要書類を準備し、管轄の法務局へ滅失登記を申請しましょう。

申請は窓口、郵送、オンラインから可能です。

3つの申請方法がありますが、管轄法務局の窓口への提出がおすすめです。

仮に不備があった場合など、その場で修正できるからです。

オンライン申請や郵送は、不備があった場合のやり取りに時間を要しやすく、申請期限の1ヶ月を過ぎてしまうリスクがあります。

管轄の法務局を調べて、直接行くことをおすすめします。

3-3. 滅失登記にかかる費用と申請の期限

滅失登記にかかる費用と申請の期限は、以下のとおりです。

費用

・自分で申請をした場合:1,000〜3,000円(登記事項証明書の取得費用やコピー代など)
・専門家(土地家屋調査士)に依頼した場合:30,000~50,000円

申請期限

不動産登記法に基づき、建物が物理的に滅失した日から1ヶ月の期間内に行う

必要書類が多く、書類を揃えている間に日にちが経ってしまうため、早めに準備を進めておくと安心です。

4. 自分で滅失登記を行うときの注意点

自分で滅失登記を行う場合、事前に知っておくべきポイントが3つあります。

書類の準備から手続きの流れまで、専門家に依頼する場合との違いを1つずつ解説します。

4-1. 書類に不備があると却下されてしまう

滅失登記の申請書類に不備があると、法務局で却下され手続きが進みません。

特に多い書類の不備は、建物の所在地や家屋番号の記載ミス、取り壊し証明書の添付漏れです。

一度却下されると再申請が必要なため、相続した家を早く処分したくても処分できなくなります。

申請前に必要書類が揃っているか再チェックをし、記載内容を複数回確認することが重要です。

4-2. 自治体によって手続きが異なる場合がある

滅失登記の手続きは基本的に全国共通ですが、自治体によって細かな要求事項が異なります。

たとえば、取り壊し証明書の様式や添付書類の種類、現地調査の方法などです。

事前に管轄の法務局や市町村役場に要件を確認し、スムーズに手続きが進むようにしましょう。

4-3. 土地家屋調査士に依頼する場合との違い

自分で滅失登記を行う場合、法務局や市区町村役場に行き、書類を整えるなどの時間と労力が必要です。

仕事で休みをとりづらい場合は、手続きに数週間かかる場合もあるでしょう。

しかし、専門家である土地家屋調査士なら半日程度で手続きは完了します。

時間と労力のコストは抑えられますが、土地家屋調査士へ依頼する場合、数万円の依頼料は必要です。

家の解体費や相続手続きで、出費がかさむと感じている方は、専門家への依頼と自分での手続きのどちらがよいかを慎重に判断しましょう。

5. 相続や売却との関係性を理解しよう

滅失登記は、相続手続きや土地売却と密接に関わっています。

適切な順番で手続きを進めることで、トラブルを避けスムーズに進めることができます。

上記のポイントを踏まえて、相続と売却の関係性を解説します。

5-1. 相続登記と滅失登記の順番と関係

相続が発生した場合、相続登記と滅失登記の順番が大切です。

手続きの順番は、建物の有無によって異なります。

これは登記簿上の所有者でないと、滅失登記を申請できないためです。

相続人が複数いる場合は、代表者を決めて手続きを進めるか、相続人全員の同意を得る必要があります。

順番を間違えると手続きが複雑になり、時間と費用が余計にかかってしまうので注意しましょう。

5-2. 空き家対策・管理義務と滅失登記の関係

相続で受け取った家を使わない場合、空き家として適切に管理する必要があります。

管理を怠ると自治体から指導や命令を受ける可能性があり、「特定空家」に指定されると固定資産税の優遇措置が解除されて税負担が大幅に増加します。

このような状況を回避するため、使用予定のない建物は早めに取り壊して滅失登記を行うことが有効です。

ただし、土地の管理責任は継続するため、草刈りや清掃などの基本的な管理は引き続き必要です。

5-3. 滅失登記をしておかないと土地が売却できない理由

土地を売却する際、建物の登記が残っていると売買契約が成立しません。

なぜならば買主は建物も含めて購入することになり、余計な費用負担や法的責任を負うリスクがあるためです。

また、金融機関も建物登記が残った土地への融資を嫌がる傾向があります。

また解体し建物が存在しない場合でも、登記簿上に記載があると「建物付き土地」として扱われ、売却価格にも悪影響を与えます。

滅失登記を完了させ、安心して取引できるようにしましょう。

6. 滅失登記についてよくある質問とその答え

滅失登記に関するよくある質問は、以下のとおりです。

1つずつ解説します。

6-1. 建物の登記がない場合でも滅失登記は必要?

建物の登記がない(未登記建物の)場合、滅失登記は不要です。

滅失登記は登記簿に記載された建物を消除するための手続きのため、登記されていない建物には適用されません。

古い建物や増築した建物は、未登記建物の可能性があります。

取り壊し後に自治体への建築確認申請の取り下げ手続きや、固定資産税の課税台帳からの削除申請を行いましょう。

建物が登記されているかどうかは、登記簿謄本を取得して確認できます。

古い建物でも登記されている場合があるため、事前に確認しましょう。

6-2. 滅失登記を忘れていた場合のペナルティは?

滅失登記を忘れた場合、まずは行政指導を受けます。

その後も行政指導を何度も無視し続けると、10万円以下の過料が科せられます。

さらに、ペナルティではありませんが、解体しても固定資産税の課税が継続されるといった経済的な損失も発生します。

気づいた時点で速やかに滅失登記を行うことが大切です。

6-3. 費用を抑えて自分でやるにはどうすればいい?

滅失登記を自分で行うことは可能です。

書類取得費用として数千円程度が必要ですが、費用を最小限に抑えることができます。

一方で時間と手間を要する可能性も大きいです。

必要な書類や申請書の様式は、法務局のホームページに記載されています。

また、法務局で手続きに際しての相談を無料で行ってくれます。

法務局で必要書類を確認し、効率的に進めましょう。

7. 相続後の滅失登記は放置せず早めに対応を

相続で受け取った家を解体した場合、滅失登記は1ヶ月以内に行う法的義務があります。

この手続きを放置すると、固定資産税の無駄な支払いが発生してしまいます。

自分で行えば費用を抑えることができますが、書類不備や手続きミスのリスクも。

一方で土地家屋調査士に依頼すれば確実性が高まりますが、3~5万円程度の費用がかかります。

どちらの方法を選択しても、相続した不要な建物の管理義務や維持費負担が無くなるため、早めの対応が最も重要です。