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ーコラムー
事業承継
税理士監修記事

個人事業主は要チェック。個人事業を法人化することで得られる相続税の節税効果

公開日:2019.4.15 更新日:2022.06.19

個人事業は少ない元手でも始めやすく開業の手続きも簡易なため、会社等の法人を設立せずに自ら事業を行う「個人事業主」としてビジネスをスタートさせる方は多いです。

 自由度も高く良い面も多いですが、相続を考えた時には節税を目的に法人化を検討する余地が大いにあります。

この章では個人事業の法人化による節税効果について解説します。

目次

1.法人化で相続税を減らすためには、課税対象への理解が必要
2.報酬や給与として財産を移転することで、贈与税の面でもメリット
3.最初は建物だけを法人所有にする
4.土地は相続時に売却する
5.法人化のメリットを強化するための注意点は?
  5.1.相続人予定者を役員もしくは従業員にする
  5.2.被相続人予定者を役員にするかどうかは要検討
  5.3.資本金は1,000万円未満にする
6.まとめ

1.法人化で相続税を減らすためには、課税対象への理解が必要

法人化で相続税を減らす

まずは何故個人事業を法人化することで相続税を減らせるのか、全体的な仕組みを理解しましょう。

 個人事業主が死亡し相続が起きた場合、事業によって得られた財産はもちろん、事業用の車・機械・設備など事業用の財産も全て事業主個人の相続財産として扱われます。したがって、その全てが相続税の課税対象にされてしまいます。

これを、事業を法人化して事業用の財産を法人に移転したとしましょう。

すると事業主個人の財産はその分減りますから、事業主が死亡した際に相続財産として課税される財産が減少し、その分相続税の負担が軽くなります。

 法人に移転された財産は、法人を介して相続人予定者に上手に分配することで、相続税にまつわるメリットを生みながら財産を移転することが可能になります。

以下では具体的な分配方法をご紹介します。

2.報酬や給与として財産を移転することで、贈与税の面でもメリット

法人に移転された財産は会社の役員や従業員に役員報酬や給与として支払うことができます。

■ 相続人予定者を法人の役員あるいは従業員に据えれば、報酬や給与として財産を移転することができるので、贈与税の心配をする必要もありません

■ 報酬や給与は所得税の対象になりますが、複数人の相続人予定者に給与として小分け分配することで所得税の累進税率を低くすることができ、課税面で有利になります。

■ また給与等は法人の損金算入も可能になるので、法人運営の面でもメリットが出ます。

3.最初は建物だけを法人所有にする

不動産経営などで土地と建物がある場合、相続税の節税を目的に法人化をする際には建物だけを法人所有にします。

建物の移転は売却によって行いますが、その際に売り主に譲渡所得税がかからないように一定の配慮をします。

事業用資産として土地と建物はセットで考えがちですが、収益を生み出すのは土地ではなく建物の方なので、法人の所有にするのは建物だけで十分です。

土地まで移転してしまうと登記費用などで余計な出費が増えてしまうので、法人化の場面では土地の移転は行いません。

■ 法人は土地を利用させてもらうことになりますが、地代を支払ってしまうと所有者である事業主側の財産が増加し、相続税の軽減作用が薄れてしまいます。

■ また地代は不動産所得となるので事業主側においては所得税の課税対象にされてしまうので、できれば避けたいところです。

■ 無償で貸すとした場合でも、税務署は地代相当の支払いがあったものとみなして権利金の認定課税を受けてしまう恐れがあります。

4.土地は相続時に売却する

土地については事業主が死亡し相続が起きた時に法人に売却し、相続税の納税資金とします。

 法人側は購入資金を調達しなければなりませんが、金融機関から資金を借り入れる際の利息は事業経費とすることができます。

5.法人化のメリットを強化するための注意点は?

法人化によるメリットは個別のケースで重視するものが違ってくるので留意すべき点も異なりますが、この項では一般論として注意すべき点を挙げてみます。

5.1.①相続人予定者を役員もしくは従業員にする

法人に移転した事業主の財産は報酬や給与として支払うことで相続税や贈与税の負担を軽減できるメリットが生まれますから、相続人予定者は全員を役員もしくは従業員に据えるようにします。

5.2.②被相続人予定者を役員にするかどうかは要検討

 事業運営の面で、将来被相続人となる事業主本人が法人の役員になったほうが良い場合もありますが、せっかく法人化して事業主の財産を移転しても、役員として報酬等を受け取ると将来の相続財産を増加させることにつながります。

一方で役員になれば退職金や弔慰金などの扱いでお得になるという側面もあります。

将来被相続人となる事業主本人を役員にするかどうかは、経営面と税金面を考慮して税理士等と相談して決めましょう。

5.3.③資本金は1,000万円未満にする

 法人化の際には資本金を1,000万円未満にすることで、法人化当初の消費税を免除してもらうことができます。

これを超えてしまうと法人化当初から消費税を課税されてしまい、出費が増えてしまうので注意してください。

法人化のメリットを強化するための注意点

6.まとめ

この章では個人事業を法人化することによる節税効果について見てきました。

 将来相続財産となる事業主の資産を法人に移転することで、相続税だけでなく贈与税の面からも大きなメリットを得られますが、節税対策の中でも法人を利用する手法はテクニック的に非常に難しい部類に入ります。

細かいテクニックを駆使してリスクを避けつつメリットを十分に引き出すには、ぜひ信頼できる税理士に相談をしてください。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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