政府は、生産緑地に関する改正を含む「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が、平成29年6月15日に施行しました。
これまで政府のスタンスは「生産緑地」は「宅地化されるべきもの」でしたが、この方針が大きく見直され、「生産緑地」が都市にとって「潤いのある豊かな都市をつくる上で欠かせない場所」との認識を示した上で、都市農地の保全・活用を促す内容となっています。地主にとっては、影響のある改正となります。
日本クレアス税理士法人が発行するビジネス情報誌「ANGLE(アングル)」2017年10月号・11月号で連続して取り上げた「生産緑地に関する改正」についてご紹介します。
生産緑地とは?
生産緑地とは、都市で緑地を保全するための大都市圏における市街化区域内の農地を指します。農業を継続することを条件に固定資産税や相続税が優遇されている一方、農作物の生産以外には使えないといった制限があります。
生産緑地制度によって農地保護されている土地は、国土交通省の平成25年都市計画現況調査によると、全国で13,859ヘクタール(4,192万坪)、東京都に3,388ヘクタール(1,024万坪)あるそうです。
「生産緑地」に関する改正の概要
生産緑地に関して、下記のような改正を行い、民間の知恵や活力を活かしながら保全・活用していく方針です。
◆生産緑地に関する主な改正のポイント
現行 | 改正 | |
---|---|---|
面積要件 | 500㎡以上 | 市区町村の条例により300㎡以上で可能に |
設置可能施設 | 直接に農業に関する施設 | 直売所・農家レストラン等の設置が可能に |
30年経過後の対応 | 自由に買い取り申し出 ⇒行為制限解除 |
市町村が重要な生産緑地を特定生産緑地に指定 ⇒10年間行為制限が延長 |
2022年問題
現行の生産緑地法は2022年に30年を迎えます。
これは「2022年問題」と呼ばれており、農地面積の急激な減少や、農地から転用された宅地が増えることによる不動産所有者の資産価値の低下等が懸念されています。
今回の改正を受け、生産緑地を維持していくか、それとも2022年に生産緑地の解除の申請をして農業を辞めるかなど、将来の方向性をご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
特定生産緑地制度の導入
現行の生産緑地法は2022年に30年を迎えることから、2022年に生産緑地の解除が相次ぎ、農地面積の急激な減少などが懸念されています。こうした背景から、今回の改正(2017年6月15日施行)では、「特定生産緑地制度」が盛り込まれました。
これは、市区町村が重要な生産緑地については、緑地の保存を目的に「特別生産緑地」として指定するもので、この制度により買取りの申出ができる時期を10年間先送りすることができます。
2022年問題への対応として「特定生産緑地制度」を活用することにより、農地面積の維持を意図しています。
生産緑地の解除(普通の農地にする)
「農業をしていた親が亡くなってしまった」「農業が続けられない」といった場合には、生産緑地の指定を市区町村に解除してもらい、普通の農地にすることができます。そうした生産緑地の解除のためには、次の要件にあてはまる必要があります。
- 生産緑地指定後30年経過
- 病気などの理由で農業に従事できない
- 本人が死亡し相続人が農業に従事しない
上記のいずれかの要件に当てはまることが必要です。また、証明するための書類も必要となります。
生産緑地の解除の方法>
買い取りの申し出を受けた市区町村は、(A)土地を買い取る、(B)意欲ある農業者に土地を斡旋する、といった手順を踏みます。
実際には、(A)や(B)が上手くいくことはごく稀です。そのため、解除の申し出をすると生産緑地としての義務が解除されることがほとんどとなります。
生産直地を解除するメリット
生産緑地を解除することで、農業に従事しなくてもよくなります。また、土地活用の自由度が高まり、土地の売却や賃貸物件の経営などができるようになります。資産価値の高いエリアに土地をお持ちの方は、検討の余地があるでしょう。
生産直地を解除するデメリット
生産緑地を解除するデメリットとしては、税の優遇がなくなり固定資産税などの負担が大きくなることや、相続税の納税資金の確保が課題となるかもしれません。
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