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ーコラムー
事業承継
税理士監修記事

事業承継税制とは?平成30年・31年改正の内容を踏まえて分かりやすく解説(メリット・デメリットも)

公開日:2019.9.12 更新日:2022.06.19

事業承継税制では、先代経営者から後継者に引き継がれた非上場株式について、一定の要件下で、その贈与税・相続税の「納税猶予」を行い、その後、さらに一定の要件を満たした場合は、納税猶予した税額を「免除」するという制度になります。

事業承継税制について、平成30年・31年改正の内容を踏まえて解説をします。

目次

1.事業承継税制とは?
2.制度改正の背景は?
3.平成30年度税制改正による改正点(特例措置・免除・相続時精算課税制度の適用)
4.平成31年度税制改正による改正点(個人版事業承継税制の創設・納税猶予)
5.事業承継税制の「納税猶予」から「免除」までの流れ
6.事業承継税制の法人版・個人版とは
7.事業承継税制適用の流れ
8.納税猶予額の計算方法
9.メリットとデメリット

1.事業承継税制とは?

中小企業の事業承継は、先代経営者から後継者に、その持ち株の贈与や相続を行うことによって会社を引き継ぎますが、この持ち株には、非上場株式の相続税評価額に基づく贈与税や相続税が発生します。

非上場株式の相続税評価額は、その会社の業績等によってはかなり高額なものとなることから、事業を引き継ぐには、まず納税の計画から立てなければならないという状況がありました。

このような状況から、事業承継を円滑に行えるよう制定されたのが、事業承継税制です。

2.制度改正の背景は?

中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、中小企業の休廃業・解散件数は増加傾向にあり、2016年の休廃業・解散件数は過去最高となりました。企業の倒産件数は2008年をピークに減少傾向にあることから、中小企業の休廃業・解散件数の増加は、事業承継が円滑に進んでいないことが要因とみられます。

少子高齢化が進む日本において、中小企業の事業承継が経済に与える影響は大きく、円滑な世代交代を通じた生産性の向上が国の課題となっています。

事業承継税制は、円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。(国税庁)

事業の次世代への承継を加速化することを目的に、従来の事業承継税制の見直しが行われました。

3.平成30年度税制改正による改正点

平成30年度税制改正により、法人版事業承継税制の「特例措置」が創設されました。

それまでの税制は「一般措置」として区別され、中小企業は、一般措置と特例措置を選択できるようになりました。

有利なのは「特例措置」ですが、こちらは、10年間の時限措置となります。

特例措置 一般措置
事前計画の策定 特例承継計画の提出
(2023年3月31日まで)
なし
都道府県の認定 必要 必要
適用期限 2018年1月1日~2027年12月31日 なし
対象株式 全株式 総株式数の2/3まで
納税猶予割合 相続税、贈与税ともに100% 相続税:80%
贈与税:100%
適用後継者の数 最大3人 1人
メリット ・雇用確保要件が柔軟
・事業の継続が困難の事由が生じた場合の免除あり
・相続時精算課税制度の適用拡大
・適用期限がない
・事前の計画策定が不要

3‐1.特例措置の特徴(一般措置からの改正)

円滑化法に基づく都道府県の「認定」を受けることは共通ですが、特例措置では認定を申請する前に、「特例承継計画」を策定し、2023年3月31日までに都道府県地知事に提出しなければなりません。

これにより、一般措置よりも手続きは増えましたが、特例措置では、納税者向けに要件がいくつか改善されています。

特例措置が受けられる間は、あえて一般措置を選択することにメリットはありません。

3‐2.対象株式の引き上げ

一般措置で納税猶予の対象となる株式は、全体の3分の2までという上限があり、もし全株式を承継した場合、残りの3分の1に納税猶予の適用はありませんでした。

特例制度では、対象株式の引き上げが行われ、全株式が納税猶予の対象となります。

3‐3.納税猶予額の引き上げ

一般措置では、相続の場合の納税猶予額が80%で、20%は通常の納期限内に納めなければなりませんでした。

特例措置では、この納税猶予額が100%に引き上げられ、贈与・相続ともにその全額が納税猶予の対象となりました。

3‐4.後継者の人数の引き上げ

一般措置では、納税猶予を受けられる後継者は1人でしたが、特例措置では最大3人になりました。

3‐5.雇用確保の要件等が緩和

一般措置では、「経営贈与承継期間の末日に、贈与・相続時の8割の雇用を継続しなければ、納税猶予中の税額が免除されなくなる」という要件がありましたが、特例措置では、この要件は実質的になくなりました。

ただし、下回った理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、確認を受けることは必要です。

3‐6.事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除がある

一般措置では、経営承継期間の経過後も、納税猶予を受けている非上場株式の譲渡を行った場合、その譲渡部分に対応する贈与税・相続税を利子税と併せて納付しなければなりません。(経営承継期間内であれば、譲渡部分にかかわらず、全額納付)

しかし経営がうまくいかなくなり、後継者が会社を譲渡せざるを得なくなることは、どの事業にも可能性があるはずです。

そのような時でも、納税猶予額を利子税付きで納付しなければならないとあれば、安心して納税猶予を受けられません。

このことから特例措置では、経営承継期間の経過後に、会社の赤字や後継者の心身の故障等など、事業の継続が困難な一定の事由が生じたことによって、納税猶予中の非上場株式を譲渡した場合は、納税猶予中の税額の一部が免除されるようになりました。

3‐7.相続時精算課税制度の適用

通常、相続時精算課税制度を適用できる受贈者は推定相続人・孫ですが、特例措置では、20歳以上の者であれば、推定相続人・孫でなくとも相続時精算課税制度を適用できるようになりました。

4.平成31年度税制改正による改正点

平成31年度税制改正で、個人版事業承継税制が創設されました。

法人の場合は、株式の譲渡で事業承継が完結し、事業用の資産などは、法人名義のまま個人を経由することなく引き継ぐことができます。

これに対し、個人事業の事業承継においては、個人から個人への事業用資産の移転が必要で、法人同様に後継者の税負担が非常に大きいことから、平成31年度税制改正において、事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する「個人版事業承継税制」が創設されました。

なお、個人版事業承継税制は、法人版(特例措置)と同様に、10年間の時限措置となります。

個人版事業承継税制 法人版事業承継税制(特例措置)
計画の策定 個人事業承継計画の提出
(2019年4月~2024年3月末)
特例承継計画の提出
(2018年4月~2023年3月末)
都道府県の認定 必要 必要
適用期限 10年
(2019年1月~2028年12月末)
10年
(2018年1月~2027年12月末)
納税猶予の対象資産 特定事業用資産 非上場株式
納税猶予割合 相続税、贈与税ともに100% 相続税、贈与税ともに100%
適用後継者の数 原則1人 最大3人
円滑化法認定の有効期限 最初の承継から2年間 申告期限から5年間

4‐1.納税猶予の対象となる事業用資産とは

個人版事業承継税制で、納税猶予・免除の対象となる事業用資産のことを「特例事業用資産」といいます。「特例事業用資産」に該当するものは、次のとおりです。

  • 宅地等…事業用の土地、土地の上に存する権利等(棚卸資産を除く)
  • 建物…事業用の建物(棚卸資産を除く)
  • 減価償却資産…固定資産税が課税される償却資産(構築物、機械装置、器具備品等)や自動車税・自動車税において営業用の標準税率が適用される自動車 等

ただし、不動産貸付業、駐車場業及び自転車場業の用に供されていた資産や棚卸資産を除きます。

また納税猶予が受けられるのは、宅地等は400平方メートルまで、建物は800平方メートルまでとなります。これを超えていても、円滑化法の認定は受けられますが、超過部分は納税猶予の対象になりません。

5.事業承継税制の「納税猶予」から「免除」までの流れ

事業承継税制の適用要件や手続きについては、詳しくは後述しますが、大まかな流れは、
・「納税猶予」を受ける
・「納税猶予」を継続する
・「免除」を受ける
というものになり、それぞれ一定の要件を満たす必要があります。

まず、納税猶予を受けるためには下記の要件があります。

・円滑化法(※)に基づく都道府県の「認定」を受けること
・税務署で納税猶予に関する手続きを行うこと(申告書などの提出、担保の提供等)

(※)中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律

そして納税猶予を受けた後は、納税猶予を継続するために、税務署に定期的に届出を提出し続ける必要があります。

なお、「経営承継期間」という一定の期間内において、納税猶予を受けた非上場株式を譲渡したり、会社の代表でなくなったりすると、納税猶予が受けられなくなることがあるため注意が必要です。

「経営承継期間」は、税務申告期限の翌日から5年となる場合が多いですが、個別の要件で期間が変わることがあるため、納税猶予が受けられなくなる要件と併せて、税理士に確認しましょう。

6.事業承継税制の法人版・個人版とは

事業承継税制には、法人の事業承継のための法人版と、個人事業の承継のための個人版があります。

従来、事業承継税制は法人版事業承継税制のみでしたが、令和元年度(平成31年度)税制改正において、個人版事業承継税制が創設されました。

なお、法人版事業承継税制についても、平成30年税制改正によって「特例措置」と呼ばれるものが創設され、従来からある税制と選択適用できるようになっています。

平成30年、平成31年と立て続けに創設されたこれらの事業承継制度は、いずれも10年間の期限付きとなります。

7.事業承継税制適用の流れ

法人版事業承継税制を適用するための流れを、贈与税・相続税のパターンで解説します。なお、特例措置を選択したものとして解説します。

6‐1.法人版事業承継税制(贈与)の流れ

法人版事業承継税制(贈与)の流れ

【特例承継計画の策定、提出】
・2023年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出
・認定経営革新等支援機関(税理士、商工会、商工会議所等)の所見の記載が必要

  ↓

【贈与】
・先代経営者から株式の贈与を受ける(贈与後に、上記の特例承継計画を作成しても可)

  ↓

【円滑化法による認定申請】
・道府県知事に円滑化法による認定申請を行う(贈与を受けた年の翌年1月15日までに申請が必要)

  ↓

【贈与税の申告】
・税務署に贈与税の申告書及び一定の書類の提出(申告期限:確定申告の申告期限に同じ)
・申告とともに税務署に「担保」を提供する

  ↓

【事業の継続】
・納税猶予が受けられなくなる要件に抵触しないよう注意しながら、事業を継続
・税務署に、毎年「継続届出書」を提出
・都道府県に、毎年「年次報告書」を提出

  ↓

【免除】
・先代経営者(贈与者)の死亡等によって免除。
・「免除届出書」、「免除申請書」を提出

法人版事業承継税制(相続)の流れ

法人版事業承継税制(相続)の流れ

【特例承継計画の策定、提出】
・2023年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出
・認定経営革新等支援機関(税理士、商工会、商工会議所等)の所見の記載が必要

  ↓

【相続開始】
先代経営者から株式を相続する(相続後に特例承継計画を作成しても可)

  ↓

【円滑化法による認定申請】
・都道府県知事に円滑化法による認定申請を行う(相続開始後から8ヶ月以内に申請が必要)

  ↓

【相続税の申告】
・税務署に相続税の申告書及び一定の書類の提出(申告期限:相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)
・申告とともに税務署に「担保」を提供する。

  ↓

【事業の継続】
・納税猶予が受けられなくなる要件に抵触しないよう注意しながら、事業を継続
・税務署に、毎年「継続届出書」を提出
・都道府県に、毎年「年次報告書」を提出

  ↓

【免除】
・後継者(被相続人)の死亡等によって免除。
・「免除届出書」、「免除申請書」を提出

7.事業承継税制適用の要件

法人版事業承継税制(特例措置)を適用するためには、下記についても、それぞれ必要な要件を満たさなければなりません。それぞれ次項で確認します。

・適用対象となる会社
・後継者
・先代経営者
・税務署に提供する担保

7‐1.対象会社の要件

・中小企業であること
・上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
・資産管理会社(自ら使用していない不動産等が70%以上ある会社など)

7‐2.後継者の要件

後継者(受贈者、相続人)の要件は、贈与と相続で変わります。

贈与 相続
・会社の代表権を有していること
・20歳以上であること
・役員の就任から3年以上を経過していること
・後継者とその特別な関係がある者が50%超えの議決権数を保有することとなること
・後継者の有する議決権数が一定数あること
・相続開始日の翌日から5ヶ月以内に、会社の代表権を有していること
・相続開始時に、後継者とその特別な関係がある者が総議決権数の50%超えの議決権数を保有することとなること
・相続開始時に、後継者の有する議決権数が一定数あること
・相続開始の直前において、会社の役員であること(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く)

注意点は、贈与時、相続開始時にそれぞれ下記の議決権数を保有していなければならないことです。

・後継者とその特別な関係がある者(親族など同族関係者。以下「同族関係者」)・・・50%超えの議決権数

・後継者単独・・・以下のいずれかを満たす
  ア)後継者が1人の場合:後継者が、親族など同族関係者の中で最も多くの議決権数を保有すること
  イ)後継者が2人または3人の場合:各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ、各後継者が同族関係者のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと

7‐3.先代経営者の要件

先代後継者(贈与者、被相続人)の要件も、贈与と相続で変わります。

贈与 相続
・会社の代表権を有していたこと
・贈与の直前において、贈与者とその特別な関係がある者が50%超えの議決権数を保有し、かつ後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
・贈与時に会社の代表権を有していないこと
・会社の代表権を有していたこと
・相続開始の直前において、被相続人とその特別な関係がある者が50%超えの議決権数を保有し、かつ後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

7‐4.担保の要件

贈与、相続ともに、納税が猶予される税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。

納税猶予を受ける非上場株式等の全てを担保とした場合は、納税が猶予される税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。

このほか、不動産、国債・地方債、税務署長が認める有価証券なども、担保として提供することが認められています。

8.納税猶予額の計算方法

法人版事業承継税制(特例措置)における、納税猶予額の計算方法を、贈与・相続で解説します。

8‐1.贈与の納税猶予額の計算方法

暦年贈与の場合、1年間に受けた贈与財産の総額で贈与税を計算しますが、納税猶予額は、そのうち対象株式に該当する税額のみとなります。

もし、1年間に対象株式以外の贈与を受けていなければ、その贈与税が納税猶予額となりますが、対象株式のほかにも財産の贈与を受けている場合は、対象株式の贈与にかかる税額のみを計算する必要があります。


【例】1年間に、父(先代経営者)から非上場株式1,000万円、母から現金500万円の贈与を受けている場合

■納税猶予額
対象株式(非上場株式1,000万円)以外の贈与がなかったと仮定して計算します。
<計算式>
(1,000万円-110万円}×30%(贈与税率)-90万円(控除額)=177万円
⇒納税猶予額は177万円です。


■納期限までに納付する税額
納税猶予額を除いた贈与税額は、通常どおり納期限内に納税が必要です。
<計算式>
(1,000万円+500万円-110万円)×40%(贈与税率)-190万円(控除額)=366万円
366万円-177万円(納税猶予額)=189万円
⇒納税額は189万円です。


(参考)贈与税の計算方法、税率、控除額等はこちらのコラムをご参考ください。
贈与税はいくらからかかるのか?基礎控除額と計算方法について

8‐2.相続の納税猶予額の計算方法

相続税は、相続財産の総額から相続税を計算し、それを実際の取得財産の額に応じて分配するしくみです。

納税猶予額は、後継者が対象株式しか相続しなかったと仮定して計算した相続税となります。

 


・長男(後継者)
非上場株式2,000万円
現金2,000万円

・次男
不動産3,000万円
現金1,000万円

■納税猶予額
納税猶予額は、後継者が対象株式しか相続していないものと仮定して計算します。したがって、相続財産は6,000万円(長男の非上場株式2,000万円+次男の不動産3,000万円+現金1,000万円)となります。

<計算式>
6,000万円-(3,000万円+600万円×2人)=1,800万円
1,800万円×1/2=900万円
900万円×10%(相続税率)=90万円

⇒納税猶予額は90万円です

なお、一般措置の場合、相続税の納税猶予額は80%であるため、さらに20%に該当する部部分を控除する計算過程が必要となります。

■納期限までに納付する税額
納税猶予額を除いた通常の相続税額は、通常どおり納期限内に納税が必要です。
相続財産は8,000万円となります。


<計算式>
8,000万円-(3,000万円+600万円×2人)=3,800万円
3,800万円×1/2=1,900万円
1,900万円×15%(相続税率)-50万円(控除額)=235万円
235万円+235万円=470万円
470万円-90万円(納税猶予額)=380万円

⇒納付税額は380万円(長男と次男で納付)です


(参考)相続税の計算方法、税率、控除額等はこちらのコラムをご参考ください。
相続税はいくらからかかるのか?節税対策の必要性と金額の計算方法

 

 

9.メリットとデメリット

最後に、事業承継税制のメリットとデメリットを見ていきましょう。

9‐1.事業承継税制のメリット

■相続税、贈与税の節税になる
事業承継税制の最大のメリットは、最終的に納税額の免除が受けられることです。通常どおり相続、贈与を行ったときよりも、大幅に相続税、贈与税の節税になります。

■会社の将来や相続を専門家と考える機会ができる
事業承継税制を適用するには、どのタイミングで特例承継計画を提出するか、贈与はいつ誰に行うかなど、すべて計画した上で実行する必要があるため、税理士など専門家のサポートは不可欠です。

専門家の手を借りなければならないような手続きであることは、経営者にとってはデメリットですが、その反面、経験豊富な専門家に出会えれば、思いつかなかったような事業承継の方法や、その後の相続対策について有利な方法を提案してもらえます。

このように事業承継税制を活用すれば、会社の将来や相続を専門家と考える機会ができます。

9‐2.事業承継税制のデメリット

■猶予期間が長期間
事業承継税制は、納税猶予を適用し始めてから納税免除となるまで、非常に長期間となります。5年、10年とかかることもあるため、あらかじめこうした長期の制度であることは覚悟しておきましょう。

■手続きが複雑
事業承継税制は、都道府県の「認定」をベースに、税務署からの納税猶予の適用判断が行われるという構造です。

このことから、適用を受けるまでは双方に必要な書類を提出し要件をクリアしなければならず、さらに納税猶予の適用開始後も2つの行政機関に対して届出や報告が必要になるなど、非常にわかりづらい手続きが続きます。

■納税額が増えることも
納税猶予額には利子税が発生します。この利子税は、たとえば経営承継期間内に、納税猶予を受けた非上場株式を譲渡するなどしてしまい納税猶予が受けられなくなると、本来支払うべき税額に上乗せされて徴収されます。

万が一、免除の時まで納税猶予が受けられなくなった場合は、かえって高額な税負担となる場合もあるということです。

10.まとめ

事業承継税制は、非常に複雑な制度ですが、中小企業には欠かせない税制です。 早めの計画と、良い専門家を選ぶことが、事業承継を円滑に進めるポイントとなります。

特に税理士は事業承継税制のプロであると同時に、経営指導や相続のプロでもあるため、経営者が抱く会社への思いや、どのように引き継いでもらいたいかという構想を聞きながら、現経営者と後継者一族にとって最もよい事業承継の方法を、相続対策まで見越して提案できます。

また、特例措置の特例承継計画には、中小企業庁が認定する「認定経営革新等支援機関」の所見の記載が必要です。日本クレアス税理士法人は認定経営革新等支援機関の認定を受けており、個人の相続や法人の事業承継の実績が数多くあります。
事業承継に関するお悩み事はぜひ当社にご相談ください。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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