成年後見制度は、高齢者や障害者など判断能力が不十分な人々を法的に保護し、彼らの財産や生活を管理するための重要な制度です。
制度を利用するためには、家庭裁判所への申し立ての際に、判断能力の低下を証明するための「診断書」が必要となります。
診断書は、後見人の選定や本人の保護において極めて重要な役割を果たしますが、診断書の取得方法や必要な手続きについてくわしく知らないという方も多いでしょう。
そこで本記事では、成年後見制度の申し立てにおいて診断書がなぜ必要なのか、その取得方法や過去の改訂内容、さらに診断書に関するよくある質問について解説します。
成年後見における診断書の重要性や取得方法を理解し、スムーズに申し立てを行えるようになりましょう。
目次
1. 成年後見制度の申し立てに必要な診断書とは?
出典:裁判所HP
診断書は、家庭裁判所が適切な後見人を選定するための重要な情報(本人の現在の健康状態・過去の病歴・日常生活の支障の度合いなど)を記載した書類です。
成年後見制度の申し立てにおいて、診断書は極めて重要な書類の一つで、申し立てを行う際に必要な、医師による判断を示す文書であり、後見人の選定における基準を明確にするための証拠にもなります。
成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害などで判断能力が低下した人々を保護し、その財産や生活を適切に管理することを目的とした制度です。
そのため申し立てには、本人の判断能力がどの程度低下しているかを客観的に示す必要があり、診断書は制度の運用において非常に重要な役割を果たします。
1-1. 申し立てに診断書が必要な理由
成年後見制度の申し立てには、その人の判断能力が不十分であることの証明が必要なため、診断書が必要なのです。
診断書は証明を行うための重要な証拠となり、医師がその人の精神状態や病歴を詳細に記載することによって、適切な後見人の選定が可能となります。
たとえば、認知症の程度や進行状況・具体的な症状などが記載され、裁判所はこれを基に本人にどれだけの支援が必要かを判断します。
また、診断書は後見人が選定された後も、その人の健康状態や治療方針を確認するための重要な資料となるでしょう。
本人の判断能力を証明するため、ひいては本人に適切な支援を提供するために診断書が必要なのです。
1-2. 診断書だけでなく鑑定が必要になる場合も
成年後見制度の申し立てにおいて、診断書だけでは不十分とされる場合には、追加で鑑定が必要になることがあります。
鑑定は専門医による詳細な診断を含み、本人の能力をより正確に把握するために実施されます。
たとえば、判断能力の低下が明らかでない場合や、症状が複雑で診断書のみでは判断が難しい場合などです。
鑑定は通常、専門の精神科医や臨床心理士によって行われ、その結果は診断書と同様に家庭裁判所に提出されます。
鑑定は診断書よりも費用や時間がかかることが多いため、申し立てを行う際にはその点も考慮する必要があるでしょう。
2. 成年後見制度の申し立てに必要な診断書のもらい方
診断書を取得するためには、まず担当医師に成年後見制度の申し立てを行う旨を伝える必要があります。
以下の手順で診断書の取得を進めていきましょう。
- 担当医師に相談:医師に成年後見制度の概要を説明し、診断書の必要性について理解を求めることが重要
- 診察の予約:診断書の作成には詳細な診察が必要なため、通常の診察とは別に予約を取ることがおすすめ
診察の際には、本人の病歴や現在の症状について詳細に説明することが求められる - 診断書の発行依頼:診察を受けた後、医師に正式に診断書の作成を依頼
診断書の作成には時間がかかることがあるため、早めに依頼することがおすすめ
診断書をもらうためには、まずかかりつけの医師に相談することが重要です。
日頃から診てもらっている医師の方が理解をしてもらいやすく、より詳細な診断書を発行してもらえるでしょう。
3. 成年後見制度の診断書は過去に様式が改訂されている
実は成年後見制度の診断書の様式は、これまでに数回改訂されており、直近では2019年に大幅な改訂が行われました。
この改訂は成年後見制度をより普及させるための取り組みの一環であり、診断書の内容がより明確で、本人の意思が尊重されるように変更されています。
具体的には、診断書の後見レベルの判定基準が明確化され、医師の判定根拠がチェック式になりました。
また、「本人情報シート」が新設されたことも大きな変更点です。
福祉関係者によって作成されるシートによって、より正確な診断が可能になりました。
以下に2019年の改訂内容をまとめましたのでご覧ください。
改訂項目 | 従前の内容 | 改訂後の内容 |
---|---|---|
補助レベル | 自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある | 支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある |
保佐レベル | 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である | 支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない |
後見レベル | 自己の財産を管理・処分することができない | 支援を受けても契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない |
判定の根拠 | 自由記入の書式 | チェック式で、より正確に理解力や判断力を判定 |
本人情報シートの新設 | 無 | 福祉関係者が作成し、医師の診断の補助資料として使用 |
この改訂により、診断書の信頼性が向上し、後見人選定がより適切に行われるようになりました。
4. 成年後見制度の診断書についてよくある質問
成年後見制度の診断書についてよくある質問をまとめましたのでご覧ください。
- 診断書発行を断られた場合はどうしたらいい?
- 診断書をもらうまでにどのくらいの期間がかかる?
- 診断書の発行にかかる費用は?
疑問を解消して、診断書をスムーズに発行できるようになりましょう。
4-1. 診断書発行を断られた場合はどうしたらいい?
診断書の発行を断られた場合は、他の医師に相談することがおすすめです。
場合によっては、専門医や精神科医に診てもらうことも検討する必要があるでしょう。
また、地域の成年後見支援センターに相談することもおすすめです。
診断書の発行を断られる理由としては、医師が成年後見制度に対する理解不足や、診断書作成の負担が大きいことが考えられます。
このような場合には、他の医療機関や専門医に相談することで、診断書を取得できる可能性が高いです。
4-2. 診断書をもらうまでにどのくらいの期間がかかる?
診断書の発行には、一般的に2週間から1ヶ月程度かかります。
医師のスケジュールや診察の内容によっても異なるため、早めに予約を取ることが大切です。
成年後見制度における診断書の発行には、詳細な診察による情報の記載が必要なため、ある程度の時間がかかることを理解しておきましょう。
また、医師のスケジュールや診察の内容によっては、さらに時間がかかることがあります。
状況によってはすぐに発行してもらえる場合もありますが、事前に医師に確認しておくと安心です。
4-3. 診断書の発行にかかる費用は?
診断書の発行費用は医療機関によって異なりますが、一般的には5,000円から10,000円程度です。
詳細な費用については、診断書を依頼する際に医療機関に直接確認してください。
診断書の発行にかかる費用には、医師の診察料や診断書の作成料が含まれます。
医療機関によっては、さらに追加の費用がかかる場合もありますので、事前に確認することが重要です。
また、その際には、費用の支払い方法についても確認しておくと良いでしょう。
下記記事では、診断書を含めた成年後見制度にかかる費用について詳細に解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】成年後見人の費用はいくら?毎月の報酬はいつまで払う?申立費まで完全解説!
5. 成年後見制度を申し立てる際は診断書が必要!
成年後見制度の申し立てには診断書が欠かせません。
診断書は成年被後見人の判断能力を証明する重要な書類であり、正確かつ適切に取得することで、後見人の選定や制度の円滑な運用を実現できます。
診断書の発行には1ヶ月程度の時間を要する場合もあるため、早めに準備を行い、かかりつけ医としっかり連携を取れるようにしておきましょう。
成年後見制度の申し立てに不安がある場合には、司法書士や弁護士などの専門家に相談することもおすすめです。
手続きを代行してもらえるだけでなく、専門家の立場から貢献開始後もサポートしてもらえるでしょう。
このコラムは「日本クレアス税理士法人」が公開しております。
東京本社
〒100-6033東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング33階
電話:03-3593-3243(個別相談予約窓口)
FAX:03-3593-3246
※コラムの情報は公開時のものです。最新の情報は個別相談でお問合せください