「子どもにお金を贈りたいけれど、贈与税はかかるの?」「贈与税はいくら払えばいい?」
子どもへの贈与を検討している方は、こんな悩みをお持ちではないでしょうか。
お金や不動産などの財産を贈与すると、受け取る側に贈与税の納税義務が生じます。
親子間であっても贈与税は発生するのか、発生する場合はどれくらいかかるかなど、気になる点がいくつも出てくるでしょう。
そこで本記事では、親子間の贈与に贈与税はかかるのかを解説します。
贈与税額や非課税になるケースも紹介するので、親子間での贈与を考えている方はぜひご覧ください。
1. 親から子への贈与でも贈与税はかかる
個人から個人への無償の贈与は、原則贈与税がかかります。
親から子どもへの贈与であっても贈与税は発生するため、贈る前に税金について考慮することが大切です。
ただし、親子間の贈与は非課税になるケースも多くあるため、贈与目的によっては税金を払わずに済むかもしれません。
非課税にはどのようなケースがあるのか、以下でくわしく解説します。
2. 親子間の贈与で贈与税がかからないケース
原則、親子間の贈与であっても贈与税は発生しますが、なかには非課税になるケースもあります。
該当するケースがあれば受け取る子どもが税金を払わずに済むため、贈与前にチェックしておきましょう。
2-1. 生活・教育費としての贈与
扶養義務者から生活費や教育費を贈与された場合は、原則非課税です。
扶養義務者とは民法第877条第1項で定められており、生計をともにする親族(父母や祖父母・兄弟姉妹など)が該当します。
生活費とは、子どもが通常生活を送るために必要な費用をいいます。
生活費の項目についてまとめたのでご覧ください。
<生活費に該当する項目>
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続いて、教育費の項目を見てみましょう。
<教育費に該当する項目>
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これらの項目に該当し、子どもの通常生活において必要だと判断されれば、贈与したお金は非課税になります。
ただし、生活・教育費として贈与したお金を別の用途で使用した場合は贈与税の対象になるので注意が必要です。
2-2. 年間110万円(基礎控除額)以下の贈与
贈与税には基礎控除があるため、その年の1月1日~12月31日までに受け取った総額が110万円を超えなければ非課税になります。
子どもが独立するまでの間に、生活費や教育費以外で財産を贈与する機会もあるでしょう。
生活費や教育費は金額を問わず非課税になるものの、それ以外だと納税義務が生じます。
しかし、年間に受け取った金額が110万円以下であれば、控除の適用によって課税金額が0円になるので安心です。
生活・教育費以外の費用を贈与する際は、年間110万円以下に抑えましょう。
一点注意しておきたいのが、数年にわたって年間110万円以下の贈与を繰り返すことです。
毎年一定金額を贈っていることが税務署に知られれば、定期贈与と判断されます。
定期贈与は年間の金額ではなく、贈与総額から課税対象かを判断するため、場合によっては贈与税が発生します。
まとまったお金を贈与したいなら、数年に分けて贈るのではなく、非課税措置や特例を活用して一括で送ることがおすすめです。
3. 住宅購入や結婚・子育て・教育資金は特例を使えばかからない
住宅の購入や結婚、子育てなど、贈与目的にあわせて非課税措置や特例が用意されています。
生活・教育費以外の贈与を考えており、110万円を超える財産をを贈りたい場合は特例を確認してみましょう。
特例をまとめたのでご覧ください。
<贈与で使える特例>
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それぞれの特例について、くわしく解説します。
3-1. 住宅取得等資金贈与の非課税措置
マイホームの購入、またはリフォームを検討している方への贈与は、住宅取得等資金贈与の非課税措置を利用しましょう。
新しく家を建てたり、既存物件をリフォーム・リノベーションする際には高額のお金が必要です。
購入費用をサポートしてもらう場合には、通常の贈与だと110万円を超えた分に贈与税がかかるため特例を活用しましょう。
非課税措置には限度額が定められており、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円と定められています。
省エネ等基準を満たしており、基準を満たしていることを一定の書類で証明できる場合は1,000万円までの贈与が非課税になります。
非課税措置適用後、贈与の課税対象が残っている場合は、暦年課税か相続時精算課税制度の利用が可能です。
たとえば、省エネ等基準を満たしたマイホームを新築する際、3,000万円の贈与を受けたとします。
非課税措置によって1,000万円の控除を受けられますが、残りの2,000万円は贈与の課税対象です。
そこで相続時精算課税制度を利用することで、累計2500万円までの贈与税が非課税になるため、贈与税の支払いは発生しません。
ただし、控除を除いた贈与分は贈与者死亡後の相続財産に加算されるので、相続時に高額の税金が発生する恐れがあると考えておきましょう。
3-2. 教育資金一括贈与の非課税措置
教育に必要な資金を一括で贈りたいと考える方は、教育資金一括贈与の非課税措置を利用しましょう。
非課税措置を利用すれば、0~29歳の受贈者1人につき、1,500万円までの贈与が非課税になります。
遠方の学校に通う、または留学する方へのサポートに使いましょう。
一点注意しておきたいのが、受贈者の口座に振り込めば非課税措置が適用されるわけではない点です。
非課税措置を受けるには、贈与契約書を作成し、教育資金非課税申告書を金融機関を通じて税務署に提出しなければなりません。
口座は教育資金の振り込み用として新たに開設する必要があるので、既存の口座を使わないようにしましょう。
また、金融機関に領収書を提出してからでないと、お金を引き出せない点にも注意が必要です。
高額のお金が非課税になるものの、いくつか守るべきポイントがあるため、贈与者・受贈者双方が非課税措置の内容をしっかり理解しておかなければなりません。
3-3. 結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置
結婚や子育てにかかる費用を支援するなら、結婚子育て資金一括贈与の非課税措置を利用しましょう。
結婚と子育てはどちらも高額のお金がかかるため、事前に貯蓄することが大切です。
しかし、多くのお金を貯める必要があることから、なかなか進まずに悩む方もいるでしょう。
そんな時に活用できるのが、この非課税措置です。
結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置は、結婚資金は300万円まで、子育て資金は1,000万円までの贈与が非課税になる制度です。
貯蓄で足りない部分を父母などから非課税措置を利用した贈与で補えば、すぐに挙式の準備を始められるでしょう。
子育ては長期間お金が必要になるため、上限1,000万円を目処に、可能な範囲で贈与することがおすすめです。
ただし、非課税措置の適用は2025年3月末で終了します。
適用が終了すると、贈与された残額は贈与税の課税対象になるかもしれません。
制度が延長される可能性はあるものの、現時点では不明なので、残高を残さないよう使い方を工夫することが大切です。
4. 相続時精算課税制度を使えば2,500万円まで非課税
いくつかの非課税措置の適用要件を満たさない場合は、相続時精算課税制度を使えば、2,500万円までの贈与が非課税になります。
相続時精算課税制度とは、18歳以上の子ども・孫が、60歳以上の父母や祖父母から贈与を受ける際に利用できる特別控除です。
制度を利用するには、贈与者と受贈者が直系血族でなければなりません。
双方の年齢も定められているため、適用要件をしっかり確認したうえで贈与を行いましょう。
2,500万円までの贈与が非課税になるものの、贈与分は贈与者の相続財産に持ち戻されます。
相続で発生した財産に贈与分が加算されるため、相続税の支払いが大きくなる恐れがあると考えておきましょう。
メリットとデメリットを持つ相続時精算課税制度がおすすめな人は以下の通りです。
<相続時精算課税制度がおすすめな人>
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財産を相続すると相続税が発生しますが、基礎控除によって税額は抑えられます。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」によって算出されるため、事前に計算しておきましょう。
たとえば、配偶者と2人の子どもが法定相続人の場合は「3000万円+600万円×3=4800万円」が基礎控除です。
相続時精算課税制度で2,500万円をもらい、相続時に1,000万円の財産をもらった場合は総額3,500万円になり、基礎控除の範囲内になります。
贈与分と相続分の総額が基礎控除の範囲内に抑えられるなら、贈与税も相続税も発生しないため、受贈者に大きなメリットがあるのです。
また、贈与時には基礎控除があるため、年間110万円以内なら贈与税は発生しません。
110万円以下の場合には基礎控除額で足りるため、相続時清算課税制度を利用するメリットは少ないでしょう。
ただし110万円の超過分は課税対象になるため、110万円以上の贈与がある場合には相続時精算課税制度がおすすめです。
5. 親子間の贈与で贈与税がかかるケース
親子間の贈与は税金が発生するケースとしないケースがあります。
贈与税が発生するケースは以下の通りです。
<親子間の贈与で税金が発生するケース>
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それぞれのケースについてくわしく解説します。
5-1. 生活・教育費として使っていない
贈与されたお金を生活・教育費として使っていない場合は、贈与税の対象になります。
前述のように生活に必要な生活・教育費は、親からの贈与であれば原則非課税です。
上限額も定められていないため、高額の贈与であっても、生活・教育費に使うお金だと認められれば税金を払わずに済みます。
しかし、通常生活に必要のないところに使っていることが発覚すれば、贈与税の対象と判断されるので注意が必要です。
もらったお金だから自由に使っていいと考えず、贈与分は生活や教育への出費に充てましょう。
5-2. 親が保険料を払った生命保険金を受け取る
親が支払った生命保険の保険金を子どもが受け取る場合も、贈与税の対象です。
配偶者と離婚している、またはすでに死亡している場合は、生命保険の受取人に子どもを指定するパターンもあるでしょう
その場合、生命保険の満期を迎える・解約する・死亡した場合は、受取人である子どもが保険金を受け取り、固有の財産にできます。
ただし、これは民法上の話です。
税法上では保険料を納めていた親が、保険料を納めていない子どもに贈与したお金だとみなされます。
そのため、生命保険の保険金を受け取った場合は、贈与税の申告をしなければなりません。
5-3. 親が困窮者でない子の借金を肩代わりする
生活が困窮していない子どもの借金を親が肩代わりすると、贈与税が発生します。
子どもが多くの借金を抱えている状態を見て、不憫に思った親が返済を肩代わりするケースは少なくありません。
しかし、親が肩代わりすることで借金返済分を贈与したとみなされるので注意が必要です。
借金がなくなっても贈与税の支払いが発生するため、肩代わりしてもらった金額に応じて税金を支払わなければなりません。
ただし、生活が困窮している子どもの肩代わりであれば贈与税の対象外です。
贈与対象が困窮者であれば代わりに借金を返済してあげても、子どもが贈与税の支払いを求められることはないため、状況から適切に判断しましょう。
5-4. 困窮者でない子に安価で財産を譲る
生活が困窮していない子どもに価値の高い財産を格安で譲ると、一定額の贈与税が発生します。
資産価値の高い美術品や宝石は、売却すると大きな財産になるでしょう。
無償で贈ると贈与税の対象になるかもしれないと考え、破格の値段で譲るケースもあるかと思います。
しかし、資産価値に見合っていない破格の値段で譲ると、物の時価と支払った額の差額が課税対象になります。
資産価値の高いものは課税対象になる額も大きくなるため、後々高額の税金を納めなければなりません。
なお、借金と同様に、生活が困窮している子どもに資産価値の高い美術品や宝石を安価で譲る場合は、贈与税の対象外です。
子どもの経済状況を確認したうえで財産を譲りましょう。
6. 親子間で贈与する場合の注意点
親子間で贈与する場合の注意点は以下の通りです。
<親子間で贈与する場合の注意点>
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それぞれの注意点についてくわしく解説します。
6-1. 親子間の贈与でもバレる
親子間でのお金のやり取りならばれないと考える人も多いかと思いますが、相続時や不動産登記などのタイミングでばれるため注意が必要です。
税務署は個人の資産の動向をある程度把握しています。
資産の動きに怪しい点があったり、相続財産で気になったりする点があれば「お尋ね」が入るため、親子間の贈与もばれる可能性があるのです。
不動産を贈与した場合は、登記変更を行う際に親子間の贈与がばれてしまうので、何らかのタイミングで贈与が知られると考えておきましょう。
6-2. 贈与契約書を必ず作成する
生前贈与だと証明するためにも、贈与する際に必ず贈与契約書を作成することが大切です。
「親子間でのお金や不動産のやり取りに契約書が必要なの?」と疑問を抱く方も多いでしょう。
親子間でやり取りする場合であっても、生前贈与と証明するための書類は残しておくことが得策です。
たとえば、相続税対策に生前贈与を行ったとします。
その際、いつ・誰から・どのくらいの財産を受け取ったのか証拠がなければ、税務署の調査が入った時に説明できるものがなくなってしまいます。
悪いパターンでは生前贈与分が相続財産に加算されてしまい、相続税の支払いが増えてしまうため、子の負担が大きくなるのです。
贈与契約書を作成しておけばその心配もないので、贈与のたびに契約書を作成しましょう。
6-3. 贈与税の申告を怠らない
親子間での贈与ならばれないと思って申告せずにいると、後々高額の税金を請求される可能性が高いです。
申告期限内に申告すれば、贈与税の支払いだけで済みます。
しかし、期限を過ぎて申告した場合は贈与税とともに、重いペナルティが課されます。
ペナルティについてまとめたのでご覧ください。
<贈与税の無申告ペナルティ>
ペナルティ |
加算税率 |
無申告加算税 |
5~30% |
重加算税 |
35~50% |
過少申告加算税 |
5~15% |
延滞税 |
2.4~8.7% |
無申告加算税は、期限後の自主申告、または税務署から連絡・指摘を受けた後に申告をした場合のペナルティです。
どのタイミングで申告をしたかによって、加算税率が変わります。
重加算税は贈与税が発生していることを知りながら、故意に申告しなかった場合のペナルティです。
過去5年以内に贈与税の支払いでペナルティを受けたことがあるか、無申告・過少申告のどちらに該当するかによって加算税率が変わります。
過少申告加算税は申告したものの、申告額が少額であった場合に課されるペナルティです。
ほかのペナルティに比べて負担は少ないですが、不要な支払いを招くため、申告額を入念にチェックしておきましょう。
延滞税は贈与税の利息のようなもので、ペナルティとあわせて加算されます。
申告期限の翌日から2ヶ月以内であれば「延滞日数×2.4%」、2ヶ月以降は「延滞日数×8.7%」が課されます。
延滞する期間が長くなるほど支払額も増えるため、早めに自主申告することが大切です。
7. 親子間でも贈与税はかかるため注意が必要!
親子間で現金や不動産のやり取りをしてもばれないと考える人も多いですが、何らかのタイミングで贈与はばれます。
ばれるタイミングは相続時や不動産の登記変更のタイミングが多いため、すぐにばれないと聞いてホッとした方も多いでしょう。
しかし、贈与税の無申告は多大なペナルティが課されます。
期間が長くなるほど延滞税も増えるため、ばれた時期によっては払えないほどの額になるかもしれません。
どうせばれないだろうと思わないで正しく申告することが大切です。
また、本記事で紹介したように非課税措置を利用できるパターンがいくつかあるので、多額の贈与を行う場合には適用要件を確認してみるといいでしょう。
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