贈与税

贈与税がかからない7つの方法!注意点やそもそも非課税なケースを税理士が解説

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士

「お金をもらったら必ず贈与税を支払わなければならない?」「贈与税が発生しないケースはどんなとき?」

お金や不動産などを受け取る予定がある方は、こんな悩みをお持ちではないでしょうか。

実は、一定の条件を満たせば、お金や不動産などを受け取っても贈与税がかからないケースは多くあります。

贈与税の知識がないまま受け取り方を間違えると、本来払わなくてもよかった税金を支払うことになってしまうおそれもあります。

そこで本記事では、贈与税がかからない7つの方法について詳しく解説します。

あわせて非課税となるケースや注意点についても解説しますので、「これから贈与を受け取る予定がある」「節税を考えている」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

1. 贈与税とは?

1. 贈与税とは?

贈与税とは、個人から財産を贈与されたときに、受け取った財産に対して課される税金です。

財産を贈る人を贈与者、財産を受け取る人を受贈者といいます。

子どもや孫を金銭面でサポートするためにお金を贈る人もいれば、相続税対策の一環で生前に財産を贈る人もいるでしょう。

贈与税は相続税の支払いから逃れようとする行為を防ぐためにできた税金で、相続時の支払いを贈与時に済ませる目的があります。

贈与税額は贈る金額と相手との関係性によっても異なるため、贈与前に確認することが大切です。

贈与税の税率についてまとめたので、ご覧ください。

<贈与税の税率>

直系卑属とは、自身と直通する系統の親族で、子どもや孫が該当します。

直系卑属以外の人にお金を贈るときは税率も高くなるため、支払い負担を考慮したうえで贈与することが大切です。

2. 贈与税の2つの制度

2. 贈与税の2つの制度

贈与税には、課税方法が異なる2つの制度があります。

どちらを選ぶかによって、贈与税の有無や将来の相続税の負担が大きく変わるため、それぞれの特徴をしっかり理解しておくことが大切です。

<贈与税の2つの制度>

  • 暦年課税制度
  • 相続時精算課税制度

贈与税がかからない方法に深くかかわる制度なので、内容を整理しておきましょう。

2-1. 暦年課税制度:年間110万円まで無税

暦年課税制度とは、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を利用した贈与制度です。

1月1日~12月31日までの間に、110万円以下の贈与であれば無税、110万円を超した場合は贈与税が発生します。

ただし、贈与者が亡くなった場合は、相続開始7年以内の贈与額が相続税の対象になるため、贈与の時期を慎重に見極めなければなりません。

相続開始3年以内の贈与分は全額、4~7年前の贈与分は総額100万円を差し引いた分が相続財産に加算されます。

相続開始の5年前に500万円の財産を受け取った場合は、100万を差し引いた400万円が相続財産に加算されます。

このように、「非課税だから安心」と思っても、相続まで見据えて贈与のタイミングを判断することが重要です。

2-2. 相続時精算課税制度:総額2,500万円まで無税

相続時精算課税制度は、申告によって贈与税の特別控除を受けられる制度です。

累計2,500万円までなら贈与税が発生せず、相続時に贈与分を持ち戻して相続税の計算を行います。

2,500万円の特別控除に加え、年間110万円の基礎控除も適用できるため、贈与の仕方によっては節税することも可能です。

相続税を払うならメリットを感じられないと考える方も多いでしょう。

しかし、相続時は、法定相続人の数に合わせて基礎控除を受けられます。

具体的には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で相続税の基礎控除額は決定します。

つまり、相続人の数が多くなるほど基礎控除額が増えるため、贈与分を加算しても、税金の支払い負担が軽く済むかもしれません。

また、相続時精算課税制度は、贈与時の評価額をもとに相続時の計算をおこなう点もメリットとして挙げられます。

たとえば、贈与時に100万円、相続時に500万円といったように財産が値上がったとします。

この場合は100万円分の相続税を支払うだけで、500万円の財産を相続できるため、支払い負担を大きく抑えられるのです。

法定相続人が多く、高額の贈与を受ける予定がある場合は、相続時精算課税制度を利用しましょう。

制度を利用できる条件についてまとめたので、ご覧ください。

<相続時精算課税制度の利用条件>

  • 贈与者は原則60歳以上の父母や祖父母
  • 受贈者は18歳以上の直系卑属
  • 贈与額を問わず、制度利用時に申告する

利用条件を満たしていれば、贈与税のかからない方法で財産を受け取れます。

ただし、暦年課税と相続時精算課税制度を併用することはできないので、状況に応じてどちらがよりメリットが大きいかを慎重に考えることが大切です。

3. 贈与税がかからない7つの方法

3. 贈与税がかからない7つの方法

贈与税を発生させずに子どもや孫をサポートしたいと考える方は、贈与税がかからない工夫を施しましょう。

贈与税を発生させない方法についてまとめたので、ご覧ください。

<贈与税がかからない7つの方法>

  • 暦年課税による年間110万円の控除枠
  • 相続時精算課税制度の2,500万円・年間110万円の枠
  • 夫婦間の贈与における配偶者控除(おしどり贈与)
  • 結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置
  • 教育資金一括贈与の非課税措置
  • 住宅取得等資金一括贈与の非課税措置
  • 特定障害者に対する贈与税の非課税措置

それぞれの方法について、わかりやすく解説します。

3-1. 暦年課税による年間110万円の控除枠

年間110万円以内の財産を贈るなら、暦年課税制度を活用しましょう。

年間110万円の控除枠は1人あたりなので、同世帯にいる2人の孫それぞれに110万円以下のお金を贈っても、税金は発生しません。

1月1日~12月31日までに110万円以下の贈与を受けた場合は申告不要ですが、110万円を超えた場合は課税対象になるため、贈与税の申告が必要です。

3-2. 相続時精算課税制度の2,500万円・年間110万円の枠

高額のお金、または不動産を贈与したい場合は、相続時精算課税制度の活用がおすすめです。

相続時精算課税制度は2,500万円の特別控除を利用できるため、資産価値の高い財産を贈るときに最適な制度だといえます。

特別控除のほかに、年間110万円の基礎控除も受けられるので、制度利用の申告をしたうえで贈与をおこないましょう。

ただし、一度でもこの制度を選択すると、暦年課税制度には戻れない点に注意してください。

3-3. 夫婦間の贈与における配偶者控除(おしどり贈与)

居住用の不動産、または居住用不動産を取得するために必要なお金を夫婦間でやり取りする場合は、配偶者控除の利用がおすすめです。

配偶者に居住用不動産やその取得資金を贈与する場合、「配偶者控除(おしどり贈与)」を活用することで、最大2,000万円まで贈与税がかかりません。

夫婦それぞれでマイホームの購入費用を貯めている家庭も多いでしょう。

購入のタイミングでどちらかにお金を渡さなければならないものの、高額のお金を贈与したとなれば、税務署の調査が入る恐れもあります。

スムーズにマイホーム購入費用を渡すためにも、夫婦間の贈与の際には配偶者控除の申請をおこないましょう。

配偶者控除の適用条件は以下の通りです。

<配偶者控除の適用条件>

  • 結婚20年以上の夫婦間でおこなわれた贈与である
  • 贈与の目的が居住用不動産、または居住用不動産の購入費用である
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与で受け取った不動産、または購入した不動産に受贈者が住んでいる
  • 贈与で受け取った不動産、または購入した不動産に受贈者が住み続ける見込みである

条件を満たす場合は配偶者控除を受けられるため、必要書類を用意して税務署に申告しましょう。

申告に必要な書類についてまとめたので、ご覧ください。

<配偶者控除の申告に必要な書類>

  • 贈与日から10日経過後に作成された戸籍謄本、または妙本
  • 贈与日から10日経過後に作成された戸籍の附票の写し
  • 不動産の登記事項証明書その他の書類で、受贈者が不動産を取得したことを証明する書類

不動産取得のためのお金を受け取った場合は上記の書類を用意しましょう。

不動産を受け取った場合は上記の書類に加え、不動産の評価明細書も用意しなければなりません。

この制度は、1回限りの特例ですが、条件を満たせば大きな節税効果が見込めるでしょう。

3-4. 結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置

子どもや孫に結婚・育児資金を贈りたいなら、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置を利用しましょう。

非課税措置は、18歳以上50歳未満の受贈者が、父母や祖父母などの直系尊属から1,000万円以内のお金を受け取る際に適用されます。

多額のお金が必要になる結婚・育児の大きな助けになるため、適用条件を満たすのであれば必ず手続きを済ませましょう。

非課税措置の手続きは下記の流れで進めていきます。

<結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置の手続き>

  1. 金融機関と結婚・子育て資金管理契約を結ぶ
  2. 資金を受け取るための口座を開設する
  3. 結婚・子育て資金非課税申告書を、金融機関を通じて税務署に提出する

手続きの流れが通常の贈与と異なるため、間違えないよう進めましょう。

注意しておきたいのが、前年度の所得額によっては適用されない点と、結婚・子育て資金管理契約が終了した際の受け取り残額が課税対象になる点です。

お金を受け取った年の前年度に、受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は非課税措置が適用されません。

お金を受け取る前に、前年度の所得金額を調べておくことが大切です。

また、結婚・子育て資金管理契約は、受贈者が50歳になった・受贈者が死亡した・口座残高が0円になった時点で終了します。

贈与された金額をすべて使い終えている、または受贈者が死亡した場合は無税のままですが、受贈者が50歳になった時点で残っている場合は、残高が課税対象になります。

非課税だったものに税金が発生するため、50歳までに結婚・育児資金として使い切りましょう。

注意が必要なのは、「結婚・子育て」に関連していても対象外の支出がある点です。たとえば、以下のような費用は非課税対象にならない可能性があります。

  • 結婚後の生活費
  • 自家用車の購入費用
  • 娯楽や旅行に使った費用

制度を利用する前に、具体的な使い道が対象となるか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

3-5. 教育資金一括贈与の非課税措置

子どもや孫の学業を金銭面でサポートしたいなら、教育資金一括贈与の非課税措置を利用することがおすすめです。

非課税措置は、30歳未満の受贈者が、父母や祖父母などの直系尊属から1,500万円以内のお金を受け取る際に適用されます。

学費だけでなく、習い事や留学時の渡航費にも使えるため、学業に関するさまざまな面で使えるでしょう。

教育資金の一括贈与の非課税措置も、通常の贈与とは手続きが異なるため、事前に確認することが大切です。

手続きについてまとめたのでご覧ください。

<教育資金一括贈与の手続き>

  1. 贈与者と受贈者で贈与契約を結び、契約書を作る
  2. 受贈者が金融機関と教育資金管理契約を結ぶ
  3. 資金を受け取るための口座を開設する
  4. 贈与者が口座に資金を振り込む
  5. 金融機関を通じて、教育資金非課税申告書を税務署に提出する

教育資金管理契約は、受贈者が30歳になった・口座残高が0円になった、受贈者が死亡した場合に終了します。

受贈者が30歳になった時点で学校に通っている場合は契約が40歳まで延長されるため、金融機関に届出をしておかなければなりません。

届出を出していない場合は30歳になった時点で契約が終了し、残った資金残高は贈与税の対象になります。

課税を避けるためにも、孫の将来に必要な金額を大まかに算出したうえで、支援金額を決めることが大切です。

ただし、使徒は教育関連費に限定されていて、日常の生活費や衣食住にかかる費用は対象外となる点に注意しましょう。

3-6. 住宅取得等資金一括贈与の非課税措置

子どもや孫が住むための家を購入、または増改築に必要な費用を援助するなら、住宅取得等資金一括贈与の非課税措置を利用しましょう。

非課税限度額は省エネ等住宅の場合は1,000万円まで、それ以外の住宅の場合は500万円までです。

省エネ等住宅に該当する要件は以下の通りです。

<省エネ等住宅に該当する要件>

  • 断熱等性能等級4以上、または一次エネルギー消費量等級が4以上である
  • 耐震等級2以上、または免震建築物である
  • 高齢者等配慮対策等級3以上である

省エネ等住宅の該当要件が定められているだけでなく、受贈者の要件も決まっているため、あわせてチェックしましょう。

<受贈者の要件>

  • 贈与者の直系卑属である
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上である
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である
  • 平成21年~令和3年までに住宅取得等資金の非課税の適用を受けていない
  • 対象の住宅が受贈者の配偶者や親族などから贈られたものではない、または配偶者や親族などとの請負契約によって新築・増改築をしたものではない
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与金額すべてを使って新築・増改築をおこなっている
  • 贈与を受けた際に日本国内に住所を有している
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、新築・増改築した住居に住む見込みがある

住宅取得等資金の非課税措置を受けるには、さまざまな要件を満たさなければなりません。

贈与前に条件を満たすかを確認することが大切です。

3-7. 特定障害者に対する贈与税の非課税措置

特定障害者に該当する方へのサポートを検討しているなら、特定障害者に対する贈与税の非課税措置を利用しましょう。

贈与は直系卑属でなくてもおこなえるため、受け取る人との関係性について気にする必要はありません。

非課税額は特別障害者であれば6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者は3,000万円までです。

特別障害者は重度の心身障害がある人、特別障害者以外の特定障害者は中軽度の知的障害・障害者等級2級、または3級の精神障害がある人が該当します。

この制度は、信託銀行を通じて管理・運用される信託型の贈与です。

具体的には、以下のような流れで進みます。

  1. 贈与者が信託銀行に資金を預ける
  2. 信託銀行が、生活費や医療費など必要な費用を定期的に支給(本人の状況に応じた定額支給など)
  3. 受贈者(障害者)は、信託銀行に「障害者非課税信託申告書」を提出
  4. 税務申告は信託銀行が行う

書類提出や申告作業は主に信託銀行が代行してくれますが、保護者や代理人は事前に書類の準備や署名などが必要です。完全に「何もせずに済む」わけではないため、その点は注意しましょう。

4. そもそも贈与税がかからない4つのケース

4. そもそも贈与税がかからない4つのケース

贈与税をかからないよう工夫せずとも、そもそも贈与税が発生しないケースもあります。

贈与税が発生しないケースについては、以下の通りです。

<贈与税がかからないケース>

  • 扶養義務者からの生活費・教育費の贈与
  • 社会通念上必要なものの贈与
  • 障害者に対する給付金
  • 借金の肩代わりなどの財産贈与(困窮者に対する)

それぞれのケースについて、くわしく見ていきましょう。

4-1. 扶養義務者からの生活費・教育費の贈与

父母や祖父母などの扶養義務者から生活費・教育費の贈与を受けた場合は、課税対象にはなりません。

扶養義務者は父母や祖父母だけでなく、配偶者や兄弟姉妹なども該当します。

生活費は通常の生活を送るために必要な費用、教育費は子どもや孫が教育上必要とする費用です。

たとえば以下のようなケースです。

  • 大学進学のための仕送りや家賃補助
  • 子どもの教材費や通学定期代、文房具代
  • 高校受験に向けた塾の費用

仕送りと贈与税の関係についてより詳しく知りたい方は、下記記事も併せてご覧ください。

関連記事:仕送りには贈与税がかかる?確定申告の必要性や節税方法を解説!

4-2. 社会通念上必要なものの贈与

社会通念上必要なものの贈与についても税金が発生しないので、受け取った側が気にする必要はありません。

<社会通念上必要なものとして認められるお金>

  • 祝儀金
  • 弔慰金
  • 香典
  • お花代
  • 見舞金
  • お中元
  • お歳暮

該当するお金は非課税なので、贈与税の申告をせずに済みます。

ただし、一般的な相場を超えるお金をもらった場合は、相場を超える部分が贈与対象になる恐れがあるので注意が必要です。

結婚で高額のお金を受け取る場合は、結婚・育児資金の非課税措置を利用しましょう。

4-3. 障害者に対する給付金

地方自治体が交付する心身障害者扶養共済制度における給付金も非課税なので、給付対象の方は必ず受け取ることがおすすめです。

心身障害者扶養共済制度とは、障害を持つ子どもを育てている保護者が亡くなった場合、障害のある方に対して一定額の年金が支払われる制度です。

毎月掛け金を支払う必要があるものの、年金の支給は一生涯おこなわれるため、手厚い保障を受けられます

給付金を受け取る権利は障害のある方が有しています。

何らかの事情で給付金を受け取る権利を他者に贈与、または相続した場合も贈与税・相続税の対象にはなりません。

4-4. 借金の肩代わりなどの財産贈与(困窮者に対する)

借金の返済ができずに困窮している親族の肩代わりをした場合も、贈与税はかかりません。

ただし、これは受贈者が一定の要件を満たしている場合です。

要件についてまとめたのでご覧ください。

<贈与税の対象外になる財産贈与>

  • 借金の返済ができないほど生活が困窮している
  • 貸し借りの証拠を持っている

何らかの事情で働けず、借金の返済ができないほど生活が困窮している方への財産贈与は非課税対象です。

後々贈与者に全額返済される見込みがあれば、税務署の調査が入ることもないでしょう。

しかし、肩代わりが口約束で終わる恐れもあるため、貸し借りの証拠として、契約書を作成することがおすすめです。

契約書を提示すれば、返済の意思があるとみなされ、贈与税が課税対象から外れます。

5. 使用貸借や一時的な立て替えも合法的に贈与税がかからない

5. 使用貸借や一時的な立て替えも合法的に贈与税がかからない

祖父母や両親などから何かを借り、のちに返還する契約である使用貸借、または借金を一時的に立て替えてもらう場合は贈与税がかかりません。

ケース別にいくつかの注意点があるので、ここで紹介します。

5-1. 【追徴課税を逃れるために】贈与と判断されないために契約書の作成を

追徴課税を逃れるためにも、贈与と判断されないようにすることが大切です。

たとえば、子どもが1,000万円の負債を抱えており、親が借金を立て替えたとしましょう。

親と子の間で返済について話し合われていても、税務署はお金を贈与したと判断するかもしれません。

この場合、1,000万円の贈与があったとして贈与税が発生するので、貸し借りに関する契約書を作成することが大切です。

贈与ではないことを証明するために、金銭消費貸借契約書を作りましょう。

契約書があれば、税務調査が入っても贈与ではないことを証明できます。

5-2. 【使用貸借の注意点】利息や家賃等は取らなくてよい

お金や不動産などの貸し借りを贈与と判断されないために、利息や家賃などをとる必要はありません。

親が子どもにお金を貸す際に利息を求めたり、親が所有する土地を子どもに貸す場合に家賃を取れば、贈与ではないと証明できるでしょう。

ただし、お金や不動産を借りる側である子どもに負担が生じるため、無理に利息や家賃を請求する必要はありません。

前述したように、貸し借りを証明する契約書があれば税務署に説明できます。

契約書を1通作成するだけで済むので、双方に損がない内容の契約書を作成しましょう。

5-3. 【立て替えの注意点①】出世払い・有る時払いの催促なしはNG

契約書を作成したうえで子どもにお金を貸す場合は、必ず返済してもらうことが大切です。

前述したように、贈与と判断されないためには貸したお金を返してもらわなければなりません。

返済は出世払い、またはあるとき払いでいいと約束すると、税務署から贈与とみなされるので注意が必要です。

親族間での貸し借りに利息は必要ありませんが、毎月数万円を返済する旨を契約書に記載しておくといいでしょう。

5-4. 【立て替えの注意点②】相続税申告時に貸付金を計上する

亡くなった人が立て替えていたお金は債権として扱われるため、相続税申告時に貸付金として計上しましょう。

債権とは、貸したお金の返還を請求できる権利です。

被相続人が生前、誰かにお金を貸していた場合、債権を受け継ぐ相続人が代わりに返済を請求できます。

一見マイナスの財産のように思えるものの、返済されればプラスとなります。

6. 贈与税がかからない方法を利用する際の注意点

6. 贈与税がかからない方法を利用する際の注意点

贈与税がかからない7つの方法を実践すれば、節税効果は大きくなります。

しかし、使い方を間違えると逆に課税されるリスクもあるのです。

以下では、よくある注意点と回避方法について解説します。

<贈与税がかからない方法を利用する際の注意点>

  • 利用要件や事前手続き・申告に注意する
  • 贈与しすぎて老後資金を削らないよう注意する
  • 相続税への持ち戻しに注意する
  • 贈与は「記録に残る方法」で行うよう注意する

それぞれの注意点について、くわしく解説します。

6-1. 利用要件や事前手続き・申告に注意する

贈与税がかからない7つの方法は、それぞれで利用要件や手続き方法、申告期限が異なるため、事前に確認することが大切です。

たとえば、相続時精算課税制度や夫婦間の贈与における配偶者控除などの申告場所は税務署ですが、結婚・育児資金や教育資金の申告書は金融機関を通じて税務署に提出します。

特定障害者に対する贈与に関しては信託会社を通じて税務署に提出するため、書類の提出場所を間違えないようにしなければなりません。

申請場所と同じように、申告期限についても異なります。

相続時精算課税制度や住宅取得等資金は贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日まで、結婚・育児資金の贈与は資金受け取りの口座開設日までに申告書を提出する必要があります。

いずれも贈与税対策であるものの、内容に大きく違いがあるため、事前に確認しておきましょう。

6-2. 贈与しすぎて老後資金を削らないように注意する

贈与税がかからない方法を実践しているからといって、多くを贈与すると自身の老後に影響を及ぼします。

子どもや孫を金銭的にサポートしたいと考える方も多いでしょう。

しかし、老後資産を削ってまでサポートすると、自身の生活が困窮する恐れがあるため、可能な範囲で援助することがおすすめです。

贈与税がかからない方法を実践しても、援助額の範疇を超える場合は課税対象と判断されるかもしれません。

課税対象になると受贈者が税金を払わなければならないので、贈る金額を慎重に検討することが大切です。

6-3. 相続税への持ち戻しに注意する

暦年課税や相続時精算課税制度で贈与税が非課税になっても、相続時に税金が発生することを考慮しましょう。

暦年課税制度を利用すれば、年間110万円までの贈与に税金はかかりません。

しかし、相続が発生する7年前からの贈与分が、相続時の遺産に加算されます。

相続時精算課税制度も累計2,500万円までの贈与は非課税ですが、基礎控除年間110万円を差し引かれた分が相続時の遺産に加算されるため、相続税が多くなるかもしれません。

贈与時に税金が発生しなくても、相続時に高額の税金が課される恐れがあると考えておきましょう。

「今は税金がかからない=最終的に非課税になる」とは限らないため、相続までを見据えた対策を心がけてください。

6-4. 贈与は「記録に残る方法」で行うよう注意する

子どもや孫に現金を贈与すると、不明瞭なお金の流れを税務署から指摘される恐れがあります。

現金での贈与は通帳にも残らないため「税務署に気づかれないのでは?」と考える方も多いでしょう。

しかし、贈与のためのお金を口座から引き出した記録は通帳に残ります。

税務署は使途不明金と判断し、贈与者に調査をおこなうかもしれません。

すぐにばれなくても、数年後に指摘を受ける可能性もあるため、申告が必要な贈与に関してはきちんと手続きを済ませましょう。

使途不明金と疑われないためにも、金銭のやり取りは口座を介しておこなうことがおすすめです。

7. 贈与税がかからない方法を利用して贈与しよう

贈与税がかからない方法をうまく活用することで、大切な家族への支援が、税金の心配なく行えるようになります。

生活費や結婚資金、教育資金など、さまざまな項目で控除が用意されています。

控除を活用すれば非課税対象になるため、贈与後に子どもや孫に負担をかけることもありません。

控除を受けるには、申告が必要な制度もいくつかあります。

制度によって申告方法や場所、期限が異なるため、利用する制度内容を入念にチェックしておきましょう。

正しい知識を身につけて、思いやりの気持ちをしっかり届けましょう。

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士

2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

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