ビジネス情報誌「ANGLE-アングルVol.45」(2016年12月1日発行)より、当社の執行役員でもある税理士が執筆を行った税務トピックスをご紹介します。
贈与税や相続税の課税漏れを避けるため、平成30年1月1日以後、保険契約者の死亡や変更があった場合、保険会社等から税務署長へ異動に関する報告がされるようになります。
この改正により、国税庁は、今まで以上に相続財産の把握が可能となり、さらに保険金を誰がどれだけ負担したかを詳細に知ることとなります。
改正の背景
死亡保険金や満期保険金の支払いがあった場合、保険会社は「生命保険契約等の一時金の支払調書」(右図)を税務署に提出します。
この支払調書では、保険金受取人、保険契約者、被保険者、払込保険料等が記載されています。現在のところ支払調書には、保険金支払い時の最終契約者しか掲載されません。
税務署が把握したいのはなぜか? 具体例でみてみましょう!
生命保険契約の契約者(保険料負担者)を「父親」から「自分」に変更したとします。これまで「父親」が払っていた保険料を、今後「自分」が負担することにしました。
こうした変更を満期直前に行った場合、本来は、「父親」が負担した保険金額は贈与税の対象となります。しかし、現在、支払調書には保険金支払い時の最終契約者しか掲載されませんので、途中で契約者変更があったことを税務署は把握できません。
そのため、「自分」が一時所得として満期保険金を申告すると、所得税は負担するものの、贈与税については課税漏れが発生している状況でした。
改正の内容
「保険契約の異動に関する調書」の創設
(1) | 保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による「契約者変更情報」及び「解約返戻金相当額」等を記載した調書を、税務署長に提出しなければならないこととする。 |
(2) | 生命保険金等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払い時の契約者の払込保険料等を記載することとする。 |
(1)については、契約者死亡による名義変更について支払調書提出により相続財産の把握、(2)については、死亡保険金支払いの際、過去に名義変更した契約については誰がどれだけ保険料をしはらっていたかを把握することが目的。
平成30年1月1日以後、既に払い込んだ保険料の全額と、現契約者が払い込んだ保険料の双方が掲載されるようになります。契約者本人が負担していない部分があれば、前契約者からの贈与とみなされます。生命保険に関し「親子間の贈与」等について税務署からのお尋ね(指摘)が増える可能性があります。
さらに、親が死亡して子供が契約を引き継いだ場合に発生する解約返戻金相当額等についても、漏れなく把握がされるでしょう。相続財産が今まで以上に詳しく把握されますので、申告漏れがないように注意していく必要があります。
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