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税理士監修記事

事業承継補助金とは?採択率や申請方法についても解説!

公開日:2021.4.14 更新日:2022.06.19
目次

1.事業承継補助金とは
2.【2021年最新情報】「事業承継・引継ぎ補助⾦」の措置が決定
3.事業承継補助金の採択率
4.事業承継補助金の募集要項
  4-1.補助対象者・補助対象事業の要件
  4-2.申請時点において事業承継が未了の場合の要件
  4-3.事業承継形態の要件
  4-4.補助上限額と補助率
  4-5.補助対象となる経費
5.事業承継補助金の「加点事由」とは
  加点事由1:私的整理の実施
  加点事由2:適正な会計ルール
  加点事由3:行政庁からの認定・承認
  加点事由4:地域への貢献度
  加点事由5:地方公共団体からの委嘱
6.事業承継補助金の申請書
  6-1.共通の申請書類一式
  6-2.申請事例により必要な追加書類
7.事業承継補助金の手続きの流れ(申請から交付まで)
  Step1.申請前の確認&相談
  Step2.交付申請~交付決定
  Step3.実績報告
  Step4.補助金の受け取り
8.事業承継補助金の事例
9.事業承継補助金申請の注意点
  9-1.申請要件は必ず満たさなければならない
  9-2.補助金交付は「後払い式」
  9-3.審査のポイント
10.まとめ

1.事業承継補助金とは

事業承継補助金とは、代表者交代やM&A(会社合併や買収の総称)を機に経営革新等に挑戦する中小企業者等に対し、その取り組みにかかる経費の一部を補助する制度で、不定期に公募が行われています。

補助にあたっては、予算成立後に期間を設けて公募が実施され、審査の上で採択された企業へ経費精算が行われています。令和元年度補正予算に基づき実施された公募(※申請受付は終了しています)では、対象となる廃業費の幅を広げた上で、最大1,200万円まで補助されました。

本制度創設の背景にあるのは、高齢化・人口減少・人材不足といった日本の現状です。
上記のような問題の影響で事業継続を断念せざるを得ないケースを鑑みて、地域の経営資源の保全を目的とし、平成29年(2017年)からスタートしました。

日本クレアス税理士法人は日本経済新聞「事業承継税制プロフェッショナル税理士30選」に掲載されました(2021年3月22日)

総合型会計事務所の強みを活かし、事業承継計画の策定から実行支援を行います。

自社株対策や事業承継税制に関するご相談だけではなくM&Aの仲介など、お客様に合わせて最適な出口戦略をご提案。事業の円滑な継続をサポートします。

2.【2021年最新情報】「事業承継・引継ぎ補助⾦」の措置が決定

令和3年(2021年)の事業承継補助金については、新型コロナウイルス感染症の流行を受け成立した、令和2年度3次補正予算で「事業承継・引継ぎ補助⾦」の措置が決定しています。

※本コラムは2021年3月8日の情報を元に執筆しています。

上記予算額は56.6億円に及び、さらに政府が3月末成立を目指す令和3年度当初予算案では、新規で16.2億円の計上がありました。これら令和2年度3次補正予算・令和3年度当初予算案を合わせた「15か月予算」により、過去最大規模の補助が行われる予定です。

認知度向上や現在の情勢、さらに補助率を原則1/2から一律2/3へと引き上げた上で補助上限額も拡大する見込みであることを考えると、今後開始される「事業承継・引継ぎ補助金」には多数の応募があると予測されます。

今後応募を予定する事業者は、採択を目指して入念に準備を進めましょう。

【2021年3月8日現在の情報】
「事業承継・引継ぎ補助金」の公募はまだ開始されていません。今後に関しては、まず補助実施のため必要な事務局を2月25日~3月16日の間に公募し、決定の上で中小企業者向けの周知がされる見込みです。

3.事業承継補助金の採択率

気になるのは、応募した場合「どのくらいの確率で事業承継補助金に採択されるか」です。
実際のところ、補助事業の開始当初は予算が少なく、採択率は約12.5%(採択数65件/応募総数517件)とわずかでした。しかし、2018年の公募以降は、予算の拡充により採択率が飛躍的に向上しています。

【表】事業承継補助金の採択率(平成29年度補正予算分~令和元年度予算分)

補助事業の実施分 後見者承継支援型(I型) 事業再編・事業統合支援型(II型)
平成29年度予算分
(2018年申請受付分)
採択653件/応募総数829件
(78.0%)
※一次募集~三次募集の総数
採択144件/応募総数263件
(54.7%)
※一次募集~二次募集の総数
平成30年度予算分
(2019年申請受付分)
採択655件/応募総数1,093件
(59.9%)
※一次募集~二次募集の総数
採択138件/応募総数325件
(42.4%)
※一次募集~二次募集の総数
令和元年度予算分
(2020年申請受付分)
採択348件/応募総数455件
(76.4%)
採択117件/応募総数194件
(60.3%)

補助事業の認知度が急上昇した平成30年度第2次補正予算分は、応募数増加により採択率が一転急落しています。また、二次募集でI型が40.7%・II型が24.7%(それぞれ一次募集時は73.3%・52.9%)とのように、一次募集に比べて二次以降は採択率が落ちる傾向も見られました。

令和元年度予算分に関しては、公募は1回しか行われていません。そのため、応募数・採択数ともに減少しています。

以上の点から、個別事例で採択される確率を上げるには、各年度の予算に基づく補助事業が開始されしだい速やかに申請する必要があると考えられます。

※採択率表記(%)は小数点第二位以下を切り捨てて表記しています。

4.事業承継補助金の募集要項

事業承継補助金では、交付規定等に記載された募集要項を全て満たす必要があります。補助タイプが2種類用意されており、上限額や補助率が異なる点に要注意です。

ここで紹介する「申請可否や審査に関わる項目」は計4点です。後の章で解説しますが、審査に影響し採択されやすくなる「加点事由」があることも見逃せません。

【事業承継補助金】申請前に押さえておきたい募集要項
1. 補助対象者と補助対象事業の要件
2. 申請時点において事業承継が未了の場合の要件
3. 事業承継形態の要件
4. 補助上限額と補助率
5. 補助対象となる経費

以下では、上記リストの各項目についてそれぞれ詳しく解説します。

4-1.補助対象者・補助対象事業の要件

事業承継補助金を申請できるのは、補助対象者・補助対象事業の要件を全て満たす「事業の承継者」です。下記要件に関しては、申請時に証明資料を提出しなければなりません(詳細は後述)。

【補助対象者の要件】

  • 日本国内で居住し事業を営んでいる
  • 雇用等で地域経済に貢献している
  • 経営について一定の実績や経験を有している
  • 匿名性確保の上での情報公開への同意や、アンケート調査への協力ができる
  • 法令遵守する上での問題を抱えていない
  • 反社会勢力と関係を持っていない(資金提供を受けることも含む)
  • 経産省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていない

【補助対象事業の要件】

  • 事業承継を契機に、経営革新や事業転換に挑戦する
  • 認定経営革新等支援機関の記名・押印がある確認書を提出できる
  • 公序良俗に反したり、社会通念上不適切であると判断されたりする事業ではない
  • 事業期間中、国や独立行政法人から他の補助金・助成金等の交付を受けていない(補助対象事業と類似の別事業含む)

<補助対象になる「中小企業者等」とは?>

補助対象となる「中小企業者等」には、会社だけでなく個人事業主も含まれます。
事業承継補助金では、対象者の規模等について下記のように定義されています(会社・個人事業主共通)。

業種分類 資本金(または出資総額) 従業員(常時使用する数)
製造業 ゴム製品製造業(一部を除く) 3億円以下 900人以下>
上記以外 3億円以下 300人以下
サービス業 旅館業 5千万円以下 200人以下
ソフトウエア業・情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
上記以外 5千万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下

注意点として、上記表の定義に当てはまらない大企業(※)が多額の出資をしている等の「みなし大企業」は、補助対象になりません。

※「中小企業投資育成株式会社」や「投資事業有限責任組合」は除きます。

4-2.申請時点において事業承継が未了の場合の要件

本補助金は、まだ事業承継が完了していないケースでも申請可能です。
ただし、承継後に経営革新等に取り組めることが補助の前提である以上、今後承継者の代表を務める人には、下記いずれかの「一定の経験」が求められます。

【申請時点で事業承継未了の場合】承継者の代表の要件

  • 役員または個人事業主として3年以上の経験がある
  • 補助対象事業で継続6年以上雇用され(または同業種の別の企業等で通算6年以上)、業務に従事した経験がある
  • 創業・承継に関する指定の研修(※)を受けている

※①認定特定創業支援等事業、②地域創業促進支援事業(潜在的創業者掘り起こし事業)、その他③中小企業大学校の実施する経営者や後継者向けのもののいずれかです。

4-3.事業承継形態の要件

補助金申請時は、個別の承継形態に沿ってI型とII型のいずれかを選択しなければなりません。いずれも今後経営革新や事業転換に挑戦することを前提としていますが、上限額をはじめとして下記のような違いがあります。

【I型】後継者承継支援型とは
後継者承継支援型(I型)の対象は、親族・社員・外部人材などが新たに経営者となるケースです。補助枠は原則225万円で、廃業費がかかる場合は枠が上乗せされます。

(具体例)後継者支援型(I型)を申請できるケース

  • 後継者教育を受けた社員が代表者に就任する(した)
  • それぞれ個人事業主である兄弟間で事業譲渡する(した)
  • 個人商店を営む親が事業譲渡し、承継者である子が法人成する(した)

 

【II型】事業再編・事業統合支援型とは
事業再編・事業統合支援型(II型)の対象は、後継者不在が原因で、今後の事業継続のためM&A(合併・買収など)を選択せざるを得なくなったケースです。
補助枠は原則450万円で、廃業費がかかる場合は枠が上乗せされる他、建物等の移転・移設費も廃業費として認められます。

(具体例)事業再編・事業統合支援型(II型)を申請できるケース

  • 地域の特産品を販売する個人商店の経営者が、法人へ事業譲渡する(した)
  • 自身の高齢化に悩む法人の代表が、別の法人との間で合併や買収に合意する(した)

【補助対象にならないケース】

事業承継補助金の審査・採択では、承継の実質から判断されます。言い換えれば、下記のように「実質を伴わない事業承継の形態」では申請できません。
(一例)補助対象にならない事業承継の形態
・グループ内の事業再編(重複する事業の統合等を目的とするもの)
・法人から過半数の議決権を有する個人事業主へ事業譲渡し、かつ承継者が法人成しない場合

4-4.補助上限額と補助率

事業承継補助金には、上限額と補助率が設けられています。
また、I型・II型共通で、特定要件を満たすと「ベンチャー型事業承継枠」あるいは「生産性向上枠」が適用され、上限額・補助率ともにアップします。

【表】事業承継補助金の補助上限額(※カッコ内は補助率)

補助タイプ 原則枠 ベンチャー型事業承継枠
生産性向上枠
後継者承継支援型(I型) 225万円(1/2以内)
廃業費がかかる場合:+ 225万円
300万円(2/3以内)
廃業費がかかる場合:+300万円
事業再編・事業統合支援型(II型) 450万円(1/2以内)
廃業費がかかる場合:+450万円
600万円(2/3以内)
廃業費がかかる場合:+600万円

<補助枠引き上げの要件とは>

上記表で紹介した「ベンチャー型事業承継枠」と「生産性向上枠」は、それぞれ全ての要件(下記参照)を満たした承継者に適用されます。

【ベンチャー型事業承継枠の要件】

  • 新商品や新役務の開発・提供、あるいは事業転換による新分野への進出を行う計画である
  • 定められた期間内に従業員数を一定以上増加させる計画である
  • 補助事業実施期間中、補助事業に直接従事する従業員を1名以上雇い入れたと確認できる(※有期雇用契約は対象外)

【生産性向上枠の要件】

  • 平成29年4月1日以降から交付申請日までの間に、申請する補助事業と同一の内容で「先端設備導入計画」または「経営革新計画」のいずれかの認定を受ける

個別の申請事例で注意したいのは、自己申告制が採用されている点です。
要件を満たせるケースでは、忘れず申請フォームの該当欄にチェックを入れなければなりません。

4-5.補助対象となる経費

補助対象となる経費は「事業費」と「廃業費」の2つに区別され、それぞれ細かく項目が定められています。見込まれる経費について補助金対象になるか、申請前に検討しなければなりません。

【補助対象費用①】事業費

人件費 賃金、法定福利費
店舗等借入費 店舗等の賃借料、共益費、仲介手数料
設備費 店舗等の工事費、機械器具等の調達費
原材料費 試供品やサンプル品の製作費
知的財産権関連経費 補助対象事業に必要な特許権等取得にあたり、かかった弁理士費用
謝金 補助対象事業を実施するため専門家等に支払った経費
旅費 国内外出張にかかる交通費、宿泊費(販路開拓等を目的とするもの)
マーケティング調査費 自社で行う市場調査等の費用
広報費 商品宣伝等にかかる費用
会場借料費 一時的に借りたイベント会場等の借料費(販路開拓や商品宣伝を目的とするもの)
外注費 業務の一部を外注(委託)するために支払う経費

【補助対象費用②】廃業費

廃業登記費 廃業に関する登記申請に伴い、司法書士等に支払う作成経費
在庫処分費 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費
解体・処分費 既存事業の廃止に伴う建物等の解体・処分費
原状回復費 レンタル設備等を返却する際、義務とされていた原状回復を行うための費用
移転・移設費用※II型のみ補助対象 効率化のため設備等を移転(または移設)するために支払われる経費

5.事業承継補助金の「加点事由」とは

既に触れた通り、事業承継補助金の募集要項では「加点事由」が定められています。審査時に以下5ついずれかの事由が認められた場合、審査で高評価を得て採択されやすくなるのです。

加点事由1:私的整理の実施

債権者調整プロセス(事業再生ADR等)を経ている、または抜本的な金融支援を含む事業再生計画(債権放棄や第二会社方式等)を策定している

加点事由2:適正な会計ルール

「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けている

加点事由3:行政庁からの認定・承認

中小企業庁が統括する経営サポート事業により、経営力向上計画の認定や、経営革新計画の承認を得ている

※先述の通り、一定期間内に経営革新計画の認定を得ると「生産性向上枠」に認定される可能性があります。

加点事由4:地域への貢献度

仕入や販売の状況、地域経済活性化プロジェクトで担った役割などから、個別に「地域経済への貢献度が高い」と認められる

加点事由5:地方公共団体からの委嘱

申請時点で「地域おこし協力隊」等として委嘱され、かつ承継者が経営革新等の取り組みをその地域で行う

6.事業承継補助金の申請書

事業承継補助金の申請にあたっては、各申請要件や加点事由を証明するため、複数の書類を組み合わせて提出しなければなりません。

以下では、まず「共通の申請書類一式」を押さえ、続いて「申請事例により必要になる追加書類」を紹介します。

6-1.共通の申請書類一式

全申請事例で共通する必要書類は、基本的に事業承継の当事者が協力し合って用意しなければなりません。

共通の申請書類一式を証明事項ごとに大別すると、下記①~③に分かれます。このうち②・③に関しては、承継者と被承継者それぞれの分が必要です。

【共通の申請書類①】申請要件に関するもの

  • 認定経営革新等支援機関による確認書(※所定の様式で、支援機関の印鑑があるもの)

【共通の申請書類②】承継者・被承継者それぞれの代表個人に関するもの

  • 住民票(発行3か月以内のもの)
  • 在留資格等に関する証明(申請者が外国籍の場合のみ要)

【共通の申請書類③】承継者・被承継者それぞれに関するもの

A.個人事業主の場合 直近の確定申告書B(第一表・第二表)※1 所得税青色申告決算書(P1~P4)※1 開業届(※開業初年度で申告前の場合のみ) 開業前の場合はその旨を記載した書類
B.法人の場合 履歴事項全部証明書(発行3か月以内のもの) 直近の確定申告書B(第一表・第二表・第四表)※1 直近の確定申告書の基になる決算書書(貸借対照表・損益計算書) 設立前または設立初年度の場合、その旨を記載した書類
C.特定非営利活動法人の場合 履歴事項全部証明書(発行3か月以内のもの) 会社の定款 直近の事業報告書+活動計算書+貸借対照表※2 設立前または設立初年度の場合、その旨を記載した書類

(※1)確定申告書と所得税青色申告決算書に関しては、税務署受付印があるものに限られます。
(※2)こうした経営状況を示す資料は、被承継者の分につき「承継前の状況が反映されたもの」であることが条件です。

なお、補助金交付が決定した後は、事業承継の形態に応じて「実際に経営者交代等が行われたこと」が分かる書類を提出しなければなりません。例として、事業譲渡契約書、承継にかかる議事録、役員交代に関する官報公告等が挙げられます。

6-2.申請事例により必要な追加書類

先で触れたように、下記3点のいずれか(もしくは複数)に該当する場合、増えた証明事項に対応する書類を追加提出します。

■生産性向上枠で申請する場合
…「先端設備等導入計画の認定書の写し」または「経営革新計画の認定書の写し」を追加

■申請時点において事業承継が未了の場合
…承継者の一定の経験が証明できるものを追加
(例)確定申告書、経歴書、各種研修にかかる証明書や確認書等

■加点事由に該当する場合
…その事由を証明できる資料を追加
(例)事業再生計画書、会計ルール適用に関する証明書、各種認定書や承認書、地域での売上規模が分かる資料、地域おこし協力隊員の身分証明書等

7.事業承継補助金の手続きの流れ(申請から交付まで)

事業承継補助金の交付を受ける時は、下記Step1からStep4までの流れで手続きを進めます。ここで押さえたいポイントは、電子申請用のアカウントが必要になること(令和元年度予算分以降)、補助金交付は事業承継の完了後であることの2つです。

Step1.申請前の確認&相談

募集要項を確認し、地域の認定経営革新等支援機関(検索サイト)に相談して確認書を受け取ります。

また、電子申請では「gbizIDプライムアカウント」が必要です。アカウント取得はGビスID(手続きはこちらから)からオンラインで手続きできますが、取得完了まで2週間から3週間程度の時間を要します。

Step2.交付申請~交付決定

作成した電子申請用のアカウントで申請マイページにアクセスし、申請手続きを開始します。申請完了分は事務局を通じて審査委員会による選考にかけられ、補助金交付が決定した時は上記マイページ内で通知されます。

Step3.実績報告

承継者による補助対象事業は、交付決定の通知後30日以内かつ事務局の定める期間内に開始します。また、承継にかかる経費はいったん当事者が負担しなければなりません。
事業承継が完了した時は「実績報告」が必要となり、この時初めて経費を計上できます

Step4.補助金の受け取り

実績報告を受け、計上した経費について補助要件を満たしているかチェックするための「確定検査」が行われます。検査が完了すると、申請マイページに確定した補助金の交付額が通知され、事務手続き後に指定した金融機関へ振り込まれます。

また、交付後5年間にわたり、補助対象事業にかかる「事業化状況」や「収益状況」に関する報告義務が発生します。この間、補助対象事業で取得した財産を適切に管理し、経理の証拠資料も管理・保存しなければなりません。

8.事業承継補助金の事例

事業者の多くは、補助金があると知っても、なお「事業承継の是非についてなかなか決められない」「どうせ自社は採択されない」と二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。

実際に補助金活用で経営革新等に成功した例は、事務局サイト「事業承継補助金事例集」で確認できます。下記以外にも業種・地域・事業承継方法ごとに様々な事例が紹介されており、今後の事業計画のイメージ固めに役立てられます。

【活用事例①】有限会社大歩危食品

食品製造を行う本企業では、商品について「すぐ盛り付けられるようカット済の状態で納品してほしい」という顧客要望を受けていましたが、衛生面や効率性の問題から対応できない状況でした。

上記のような問題を解決するため、高付加商品の開発・新規顧客の開拓を商品価格の引き上げをしないまま実現することを最終目標とし、新設備導入を具体的な目的として補助金申請が行われました。

業種 製造業
事業所所在地 徳島県三好市
資本金 9,000千円
従業員数 19名
業務内容 おせちやオードブルとして使える冷凍食品・鶏肉を主体としたお惣菜の製造
補助タイプ 【Ⅰ型】後継者承継支援型
補助金申請の目的 超音波カッター導入費(付帯設備費含む)

【活用事例②】有限会社三陽

自動車整備を行う本企業では、車輛の性能向上に伴う市場縮小・同業者の増加・顧客の高齢化に伴う免許返納数の増加から、売上減少が懸念されていました。また、事業所所在地で起こった災害(熊本地震)でも、設備面の理由で災害関連車両の整備対応を断らざるを得ない場面があり、今後の地域貢献のため新設備の導入を課題として認識していました。

補助金申請は、他社との競争におけるプライオリティ・認知度向上・業界の地位向上を目標とし、設備導入費を目的として行われました。

業種 サービス業
事業所所在地 熊本県合志市
資本金 4,000千円
従業員数 4名
業務内容 自動車販売修理業
補助タイプ 【Ⅰ型】後継者承継支援型
補助金対象経費の内訳 設備費(門型2柱リフト、2t低床型エアジャッキ導入費)

【活用事例③】株式会社米のキムラ

米の卸しや加工を行う本企業では、東日本大震災以降に業績が低迷しましたが、学校給食・ホテル・介護施設を中心に販売するなどの営業努力を行って業績回復を実現しました。また、過去5年間で地域の65歳以上の高齢者を5名雇用し、毎年2%以上の賃上げも行った実績も持ちます。

補助金申請は、雇用での地域貢献だけでなく「地産地消の推進」を実現するため、生菓子製造部門への進出に必要な設備費を目的として実施されました。

業種 卸売・小売業
事業所所在地 愛知県北名古屋市
資本金 10,000千円
従業員数 16名
業務内容 米の卸し、加工、小売
補助タイプ 【Ⅰ型】後継者承継支援型
補助金対象経費の内訳 自動個包装機、自動粉付け機導入費

9.事業承継補助金申請の注意点

事業承継補助金の手続きは、企業税務に詳しい専門家の支援が欠かせません。その理由として、下記で挙げる「申請の注意点」を指摘できます。

9-1.申請要件は必ず満たさなければならない

補助金申請では、補助対象となる人・事業・経費などの要件を必ず満たさなくてはなりません。言い換えれば、例え加点事由があっても、募集要項にある基本的な要件を満たさない限り、採択されることはないのです。

難しいのは、事業承継の形態に関する要件や、計上可能な経費の見極めでしょう。要件適合に関しては個別判断が必要で、募集要項を深く理解する支援者による客観的な分析が不可欠となります。

9-2.補助金交付は「後払い式」

また、承継経費の補助は「後払い」で行われる点については、申請から交付までの流れで見た通りです。つまり「経費をいったん全額負担できる程度の資力」も申請要件の1つと考えなければなりません。

この点に関しても、申請準備の段階で外部専門家とよく相談する必要があります。

9-3.審査のポイント

最後に注意したいのは、補助金申請後に採択されるためのアピール事項です。なお、実施を委託された事務局では、下記のような着眼点で審査に取り組むと公表されています

【事業承継補助金】審査の着眼点

  • 独創性技術・ノウハウ・アイデアに基づき、顧客や市場にとって新たな価値を生み出す商品・サービス等を自ら編み出しているか
  • 収益性ターゲットが明確で、商品・サービス等のニーズを的確に捉えており、事業全体の収益性の見通しについても妥当性と信頼性があるか
  • 取り組みで実現する商品やサービスについて、その具体化までの手法やプロセスが明確であり、人員や事業パートナーの確保の目途も立っているか
  • 事業実施計画が明確で、当初計画した通りに進まない場合も事業継続できる対応が考えられており、売上と利益の計画に妥当性・信頼性があるか

※公募要領(令和元年度補正 事業承継補助金 公募要領(PDF))を元に、意味を読み取りやすく編集しました。

補助金交付対象となる採択数には、その年度の予算に応じて限りがあります。申請内容に自信があっても、必ず採用されるとは言えません。

可能であれば承継プランに変更を加える、申請フォームに記入する内容を最適化する等、ケースに合った審査対策を練る必要があります。

10.まとめ

経営者交代やM&Aにかかる経費を対象とする「事業承継補助金」は、近年採択数が上がり、交付事例の詳細も多数公表されています。これにより、申請時の審査対策も練りやすくなりました。

【事業承継補助金のポイント】※令和元年度予算分

  • 事業承継の形態によりI型・II型を選択する必要がある
  • 特定の要件を満たせば補助枠引き上げが行われる
  • 地域経済への貢献度等の「加点事由」が設けられている
  • 交付後5年間に渡って報告義務が課せられる
  • 原則として電子申請(GビスIDでのアカウント取得要)

令和元年度予算分では申請の障壁として「要件の複雑さ」「提出書類の多さ」「補助金が後払い式であること」などがあることは否めません。

出来るだけ公募が開始される前から、企業における経理・監査経験を豊富に持つ税理士に相談し、事務局にアピールしたい事項や承継プランについてじっくり練る必要があります。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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