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ーコラムー
家族信託
税理士監修記事

家族信託が必要ないケース|制度の特徴や必要性を解説!

公開日:2023.8.29 更新日:2023.08.29

家族信託は認知症による財産凍結への対策として、近年注目度が高まっている財産管理法です。

家族信託を利用することでさまざまなメリットを享受できますが、どのような状況でも家族信託は有効な方法なのでしょうか。

そこで本記事では、家族信託が必要ないケースを中心に制度の特徴や必要性を解説。

また、家族信託が必要なケースや利用する際のポイントも紹介します。

家族信託の利用を迷っている方はぜひご覧ください。

1. 家族信託が必要ない5つのケース

家族信託は、下記5つのケースにおいては必要ないでしょう。

<家族信託が必要ないケース>

  • 不動産がなく金銭も少額など財産が少ない
  • 財産を託せる人がいない
  • 家族仲が悪く、悪用可能性がある
  • 子供や孫に財産名義をすでに移している
  • 委託者本人がまだ若く健康である

それぞれのケースで、なぜ家族信託が必要ないのかみていきましょう。

1-1. 不動産がなく金銭も少額など財産が少ない

財産が少ない場合には、家族信託を利用する必要はないです。

家族信託は認知症対策以外にも、さまざまな目的を持って利用されます。

しかし大前提として、家族信託は財産管理法であるため、管理する財産が少ない場合には利用する必要がないでしょう。

少ない財産であっても口座凍結のリスクなどはありますが、対策の方により大きな費用がかかってしまう可能性が高いです。

たとえば、不動産もなく金銭も少額しかないという場合には、無理に家族信託を利用する必要はないでしょう。

1-2. 財産を託せる人がいない

財産を安心して託せる人がいない場合には、家族信託を利用する必要はないでしょう。

家族信託は下記の3者から構成されている制度です。

<家族信託の仕組み>

  • 委託者:元々の財産の所有者で受託者に財産を委託する人。
  • 受託者:委託者から財産の運用・管理を委託される人。
  • 受益者:信託財産から発生した収益を受け取る人。

家族信託を利用する場合には、上記の3者がいなければなりません。

受託者にかかる負担はとても大きく、さまざまな義務を負うことになりますが、その分信託財産に対して大きな裁量権を持ってしまいます。

身内に頼れる人がいない場合や居たとしても任せたくない、という場合には家族信託を無理に利用する必要はないでしょう。

どうしても家族信託を利用したいという場合には、財産を託せる人を探すことから始める必要があります。

1-3. 家族仲が悪く、悪用可能性がある

家族仲が悪い場合には、家族信託によって信託した財産が悪用される可能性があるため、無理に利用する必要はないでしょう。

家族信託における受託者は大きな裁量権を持つため、受託者の独断でさまざまなことが可能です。

たとえば、財産の処分や大幅な投資なども受託者のみで可能。

収益の報告や使い道についてをブラックボックス化させることもできるため、受託者がその気になれば財産を悪用できてしまうのです。

そのため受託者となる者と家族仲が悪いという場合には、家族信託は必要ないでしょう。

むしろ利用しないことの方が得策な場合もあります。

1-4. 子供や孫に財産名義をすでに移している

所有している財産の名義をすでに子供や孫に移しているという場合には、家族信託を利用する必要がないでしょう。

生前贈与などを用いて、すでに財産を渡しており、親の介護費や医療費を賄える体制が整えられていれば家族信託を利用しなくても問題ありません。

ただ、財産が複数あり、信託財産としての価値が高い収益不動産がある場合などは、贈与にくわえて家族信託を利用してもいいでしょう。

1-5. 委託者本人がまだ若く健康である

委託者となる財産の所有者が若く健康である場合には、すぐに家族信託を利用する必要はないでしょう。

認知症対策として家族信託を利用する場合、早めに動くことはとても大切です。

しかし家族信託を利用して財産を信託すると、財産に対してさまざまな制約を受けることになります。

たとえば不動産の入居契約においては、名義人である受託者にその都度契約を行なってもらわなければなりません。

仮に「自分が元気であるにも関わらず」です。

そのため、40〜50代など心身ともに健康である段階では、まだ家族信託は必要ないでしょう。

2. 家族信託が必要な8つのケース

家族信託が必要となるケースを8つピックアップして紹介します。

<家族信託が必要なケース>

  • 認知症に備えて財産の凍結対策をしたい場合
  • 両親の判断力や記憶力などが低下してきている
  • 障がいのある子どもの将来が心配な場合
  • 2次相続まで相続方法を指定したい
  • 本人の財産から介護・医療費用を捻出したい
  • 収益が見込める財産を所有している
  • 家族に財産の管理や運用を任せたい
  • 事業承継を希望通りに実現したい

それぞれ家族信託が必要な理由をみていきましょう。

2-1. 認知症に備えて財産の凍結対策をしたい場合

認知症に備えて財産の凍結対策をしたいという場合には、家族信託が必要になります。

認知症を発症してしまうと、所有している財産に対して下記のような制限がかかってしまいます。

<認知症に伴う財産管理の制限>

  • 銀行預金を引き出せない
  • 定期預金を解約できない
  • 自宅の処分・運営ができない
  • 株式の整理・売却ができない など

認知症を発症してしまうと意思能力が欠如しているとして、所有している資産がさまざまな形で凍結されます。

そうなると、たとえ配偶者であっても簡単に財産を管理できなくなるため、家族信託が必要になります。

家族信託を利用することで、信託財産の管理・処分権を受託者に譲渡でき、委託者が認知症になった場合でも自由に財産を扱うことが可能です。

2-2. 両親の判断力や記憶力などが低下してきている

加齢に伴って、両親の判断力や記憶力が明らかに低下してきている場合には、家族信託の利用を検討しましょう。

上述のように、認知症になってしまうと「資産凍結」に遭ってしまいます。

財産管理が自由にできなくなるのは、認知症だけが原因ではないため、病気リスクなどを両親に対して感じ始めたら、家族信託が必要になってきているサインです。

認知症や病気によって意思能力が欠如してしまった後では、家族信託の利用ができませんので、兆候を感じたらすぐに家族信託の利用を検討しましょう。

2-3. 障害のある子どもの将来が心配な場合

家族信託は、両親や祖父母に対してだけでなく、子どもに対して利用することも可能です。

知的障害などを持っている子どもには「親亡き後問題」がついてまわります。

死亡によって親が面倒を見れなくなってしまった場合に、障害を持つ子どもが路頭に迷ってしまわないかとても心配でしょう。

そのような場合には、受益者を障害を持つ子どもに設定することで対策が可能です。

<例>

委託者:父

受託者:信頼できる息子

受益者:障害を持つ子ども

たとえば、このように家族信託を利用すれば、父が持つ財産から発生する収益で障害を持つ子どもを生活させることが可能です。

しかし、受託者の負担が大きくなるため、事前に当事者間でしっかりと話し合うことが必要になるでしょう。

2-4. 2次相続まで相続方法を指定したい

家族信託では「帰属権利者」を指定することができます。

帰属権利者とは、家族信託の終了自由が満たされた場合に、財産の承継者となる人です。

ほとんどの場合、委託者の死亡が終了事由とされるため、帰属権利者に対して相続が発生します。

そのため、家族信託は遺言書のような側面を持っているのです。

また、家族信託では子の代だけでなく、孫の代の相続方法を指定することもできます。

たとえば「自分が亡くなった場合Aに財産を承継する。Aが亡くなった場合にはBに財産を承継する。」など。

これは「受益者連続信託」と呼ばれ、指定した人に順次財産を承継することが可能です。

2次相続まで相続方法を指定したいという場合には、家族信託を利用しましょう。

2-5. 本人の財産から介護・医療費用を捻出したい

家族信託を利用することで、本人の財産から介護や医療にかかる費用を捻出できます。

認知症などにより、意思能力が欠如してしまうと、自由に財産が扱えなくなってしまいます。

そうなると、子どもや親族個人の財産を介護・医療費に充てなければいけません。

余裕がある場合には問題ありませんが、状況によっては難しい場合もあるでしょう。

本人の財産から費用を捻出することは可能ですが、それには家族信託が必要になります。

家族信託によって、事前に金銭を信託しておくなど、将来を見越して制度を利用しましょう。

2-6. 収益が見込める財産を所有している

賃貸不動産や株式など、収益が見込める財産を所有している場合には、家族信託が必要です。

万が一、所有者が認知症を発症するなど意思能力が欠如してしまった場合には、契約行為などが一切できなくなります。

不動産では入居者の契約更新や入居契約が、株式では売却や購入自体ができなくなってしまいます。

資産が縮小してしまう可能性や周りに迷惑がかかってしまう可能性があるため、そのような財産を保有している場合には、家族信託を利用しておきましょう。

自分が動けなくなった後も、財産はすぐに動かせる状態を作ることが大切です。

2-7. 家族に財産の管理や運用を任せたい

まだ心身ともに元気ではあるが、家族に財産管理や運用を任せたいという場合には、家族信託が必要になるでしょう。

加齢は、少なからず判断力の低下を招くため、財産を今まで通り運用できなくなる可能性があります。

そうなってしまうと財産が縮小してしまう可能性があるため、若く判断力が高い家族に運用を任せることがおすすめです。

自分が元気なうちに管理・運用を先んじて任せ、承継者となる受託者に慣れてもらうといったことも家族信託では実現できます。

認知症対策を見据えつつ、財産価値を保ちたいという場合でも家族信託は有効な手段です。

2-8. 事業承継を希望通りに実現したい

家族信託では株式を信託財産とすることも可能なため、事業承継にも利用できます。

前述の通り、家族信託においては帰属権利者を指定できるため、実質的な相続人を指定可能です。

たとえば、一定割合以上の自社株式を信託財産として承継することで、実質的な事業承継が実現できます。

財産だけでなく、事業承継を希望通りに行いたいという場合でも、家族信託は有効な手段です。

3. 家族信託が利用できないケース

下記2つの状況の場合には、家族信託が利用できません。

<家族信託が利用できないケース>

  • 委託者の意思能力が欠如してしまっている
  • 成年後見制度を利用してしまっている

なぜ家族信託が利用できないのか解説します。

3-1. 委託者の意思能力が欠如してしまっている

認知症や病気などによって、委託者の意思能力が欠如してしまっている場合には、家族信託が利用できません。

なぜなら、家族信託を利用する際には、委託者と受託者の間で信託契約を結ぶ必要があり、契約行為には意思能力が必要になるからです。

意思能力が欠如してしまっていると、不当な契約を結ばされる可能性があるなどの理由から、契約には意思能力が求められます。

そのため認知症になってしまった後では、家族信託を利用できません。

認知症対策として家族信託を行う場合には、早めに動き出すようにしましょう。

3-2. 成年後見制度を利用してしまっている

成年後見制度を利用している場合には、家族信託の利用ができません。

なぜなら、成年後見制度と家族信託を併用することはできないからです。

また成年後見制度が利用できるタイミングでは、すでに判断能力を失ってしまっているので、家族信託を同時に開始するといったこともできません。

なお、成年後見制度は家族や親族などが、家庭裁判所に後見開始の審判を請求することで利用できます。

4. 家族信託の必要性をメリットデメリットから考察

家族信託が必要なケースと必要ないケースをみてきました。

状況によって家族信託の利用は判断が分かれますが、そもそも制度自体の必要性はどの程度あるのでしょうか。

家族信託のメリットとデメリットを比べ、必要性を考察してみましょう。

4-1. 家族信託のメリット

家族信託の利用メリットは大きく8つあります。

<家族信託のメリット>

  1. 家族の認知症対策ができる
  2. 判断能力の高い者に財産管理を任せられる
  3. 財産管理の自由度が高い
  4. 遺言の代わりとして使える
  5. 相続手続きにおいて遺族負担を軽減できる
  6. 2次相続にも備えられる
  7. 倒産隔離機能がある
  8. 事業承継対策も可能

家族信託は認知症対策に利用できるだけでなく、相続対策にもなる強力な制度です。

また倒産隔離機能があるため、資産の保護という観点でも優れています。

なお、倒産隔離機能とは「将来的に信託財産と関係ないところで委託者や受託者が債務を負ってしまった場合でも信託財産は差し押さえられない」というものです。

続いてデメリットをみていきましょう。

4-2. 家族信託のデメリット

家族信託のデメリットは大きく下記の7点です。

<家族信託のデメリット>

  1. 受託者が決まらない可能性
  2. 家族信託が利用できない財産がある
  3. 委託者の意思能力がないと利用できない
  4. トラブルの種になる可能性
  5. 両親の同意を得づらい
  6. 直接的な節税効果はない
  7. 身上監護がないため認知症対策には不十分

家族信託は、委託者の意思能力が求められる点や受託者への負担が大きい点・利用できない財産があるなど、開始までのハードルがやや高い制度です。

また、直接的な節税効果がない点や身上監護まではできない点など、不十分な側面もあります。

しかし家族信託を利用した結果、不利益を被るといった状況は想定しづらいです。

家族信託を利用することで得られるメリットは、ほかの制度では得られないものも多いため、家族信託制度の必要性は高いといえるでしょう。

5. 希望通りの家族信託を実現するポイント

希望通りの家族信託を実現するためには、下記5つのポイントを押さえましょう。

<家族信託のポイント>

  1. 早めに動き始める
  2. 専門家に相談して内容を決定する
  3. 家族全員で共通認識を持つ
  4. 適切な信託財産を選定
  5. 介護費用などを事前に見積もっておく

1つずつみていきましょう。

5-1. 早めに動き始める

大前提として、家族信託を検討している場合には早めに動き始めましょう。

なぜなら、認知症などによって委託者が意思能力を無くしてしまった後では、家族信託が利用できないからです。

現代の日本では65歳以上の約16%が認知症を発症しています。

認知症は記憶力や判断力の低下などの症状から始まっていくため、兆候が現れ始めたら早めに動き出すことが大切です。

5-2. 専門家に相談して内容を決定する

家族信託を利用する場合には、家族間だけでなく専門家の意見を取り入れながら内容を決定しましょう。

専門家に相談して意見を取り入れることで、さまざまな面から最適な家族信託が作り出せます。

ただ、弁護士や司法書士・税理士など家族信託の専門家は数多くいますが、最近需要が増えてきた制度のため、特化して行なっている専門家の数はそう多くありません。

知識だけを持っている専門家の方も多くいますので、相談・依頼する場合には実務として経験の豊富な専門家を選びましょう。

5-3. 家族全員で共通認識を持つ

希望通りの家族信託を実現するためには、家族間でもよく話し合い、共通認識を持つことが大切です。

家族信託は3者から成り立つ制度ですが、実際には家族間での助け合いが必要な場面も出てくるでしょう。

全員が納得して共通認識を持っていれば、トラブルに発展する可能性もなく、希望通りの家族信託が実現できる可能性が高いです。

5-4. 適切な信託財産を選定

家族信託では、すべての財産を信託する必要はありません。

専門家に依頼する場合には、信託財産に比例して報酬が大きくなるため、目的に合わせて適切な信託財産を選定する必要があります。

たとえば認知症対策が目的なら、認知症発症後の生活費や医療費が賄える分の財産を信託財産にするなどです。

信託財産が多すぎると管理が大変で、費用も嵩んでしまいます。

受託者の負担も考慮に入れながら、信託財産を選定しましょう。

5-5. 介護費用などを事前に見積もっておく

信託財産を絞り、適切な家族信託を実現するために、あらかじめ介護費用などの必要になる金額を見積もっておきましょう。

受託者には無限責任があるため、信託財産で賄いきれなかった生活費などは個人資産から補填しなければなりません。

そうなってしまうと、受託者の負担が金銭面にも及び、ただでさえ大きい負担がさらに膨れ上がってしまいます。

費用を見積もったうえで、どのくらいの財産が必要なのか考えるようにしましょう。

6. まとめ

ここまで家族信託は必要ないのかという観点を中心に解説してきました。

家族信託にはデメリットがあり、必要ないというケースも存在します。

ただ、家族信託でしか得られないメリットもあるため、状況に応じて適切に制度を利用する必要があるでしょう。

しかし、家族信託は最近知られるようになった制度のため、正常な判断が難しい面もあります。

そのため、利用の判断がつかないという場合には専門家に相談しましょう。

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