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ーコラムー
家族信託
税理士監修記事

家族信託契約書を公正証書にしないとどうなる?意義や作成手順

公開日:2023.9.29 更新日:2024.03.01

家族信託を利用する際には信託契約書の作成が必要になります。

家族信託では公正証書での契約書作成が推奨されていますが、実際公正証書にしなかった場合にはどうなるのでしょうか。

家族信託は近年注目を集め始めた制度のため、あまり馴染みがないという方がほとんどでしょう。

そこで本記事では、家族信託契約書を公正証書で作成する意義や作成手順を中心に解説。

また、公正証書にしなかった場合に陥る事態やメリット・デメリットも紹介します。

家族信託の利用を検討している、公正証書で作成する理由が知りたいという方はぜひご覧ください。

目次

1. 家族信託契約書は公正証書で作成しよう

家族信託契約書は私文書ではなく、公正証書で作成することが推奨されています。

なぜなら、公正証書で作成しなかった場合のデメリットが、私文書で作成するメリットよりも大きいためです。

公正証書で作成しなかった場合にどうなるか、そのメリットやデメリットをみていく前に公正証書の持つ力や作成意義について整理しておきましょう。

1-1. そもそも公正証書とは?

公正証書とは、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書です。

公正証書には公正の効力が生じるため、反証がない限り完全な証拠力を有します。

また信用力も高い書類のため、私人間のやり取りはもちろん、金融機関などとやり取りする場合でも効力が疑われることがありません。

なお、当事者間の契約についても公正証書が作成できるため、家族信託においても公正証書によって契約書の作成が可能です。

公正証書は締結した内容を完全に証明でき、外部に向けて高い信用を与えることができる書類となっています。

1-2. 公正証書で家族信託契約書を作成する意義

公正証書は、公証人が当事者の意思を確認したうえで作成する書類です。

これは公正証書作成時点で、当事者の意思能力があることを認めたことになります。

家族信託は認知症対策において利用される機会が多い制度ですが、契約の締結には委託者本人の意思能力がなければいけません。

たとえば私文書で作成した場合、数年たった後に契約当時の意思能力の証明は難しいでしょう。

もし数年経った状態でも本人に意思能力があれば問題ありませんが、認知症対策を目的としていた場合には意思能力が欠落している場合が多いです。

そうなってしまうと、信託契約自体が無効とされてしまう可能性もあります。

家族信託は長期に渡る契約のため、後から証拠力を確認されることも珍しくありません。

公正証書にはさまざまな利点がありますが、契約を無効にしないという点だけでも公正証書で作成する意義は十分でしょう。

2. 家族信託契約書を公正証書にしないとどうなる?

家族信託契約書を公正証書にしなかった場合には、下記のような事態に陥ってしまう可能性があります。

<公正証書で作成しなかった場合に想定できる状況>

  • 家族信託関係者から訴訟される可能性がある
  • 紛失・盗難時に再発行ができず内容を証明できない
  • 公正証書の提示が求められた場合に対応できない

家族信託の遂行において重大な問題になるため、危険性を理解しておきましょう。

2-1. 家族信託関係者から訴訟される可能性がある

公正証書で作成していない場合には、家族信託の関係者から訴訟を起こされてしまう可能性があります。

家族信託は財産管理法ではありますが、遺言のような効力を有しており、財産承継にも関わる制度です。

そのため相続発生時に、財産を巡って親族同士の相続争いに発展してしまう可能性があります。

もし公正証書で作っていなかった場合には証拠能力に疑いをかけ、家族信託自体が無効だという訴訟を起こされてしまうこともあるでしょう。

私文書で作成している場合には、後からの改ざんや捏造などを疑われてしまうと訴訟で負けてしまう可能性もゼロではありません。

公正証書であれば証拠能力が高いので対抗できますが、私文書ではそうでないため、公正証書での作成が推奨されているのです。

2-2. 紛失・盗難時に再発行ができず内容を証明できない

私文書で作成していた場合には、紛失・盗難に遭ってしまった際に、契約内容を証明できなくなってしまいます。

なぜなら、たとえ契約内容を一言一句覚えていたとしても、私文書を再発行することはできないからです。

契約書がない限り、家族信託契約が交わされていることを証明できないため、問題が発生した際に契約が無効化されてしまいます。

しかし公正証書で作成していれば、原本が公証役場に保管されているため再発行ができます。

繰り返しにはなりますが、証拠力という点において公正証書は絶対的な効力を有しているのです。

2-3. 公正証書の提示が求められた場合に対応できない

私文書で作成していた場合には、公正証書での提示を求められても対応することができません。

家族信託では信託財産としての不動産・株式の管理において金融機関とやり取りをする場面が発生することがあります。

金融機関はほとんどの場合、信用力の高い公正証書の提示を求めてくるため、公正証書がないとそもそも対応してもらえない可能性が高いです。

とくに家族信託専用口座である信託口口座の開設においては、ほとんどの場合で公正証書の提示が求められます。

家族信託をスムーズに進めていくという観点からも、契約書は公正証書で作成しておくことがおすすめです。

3. 家族信託契約書を公正証書で作成するメリット

以下では、改めて家族信託契約書を公正証書で作成するメリットを整理します。

<公正証書で作成する3つのメリット>

  • 信用力・証拠力が高くトラブルが回避できる
  • 元本が保管されるため紛失時に再発行できる
  • 信託口口座を開設しやすくなる

メリットを整理することで、公正証書で契約書を作成する意義がより理解できるでしょう。

3-1. 信用力・証拠力が高くトラブルが回避できる

公正証書は信用力・証拠力が高い公文書のため、さまざまトラブルを回避できます。

たとえば、契約書の紛失や盗難・改ざんにあった場合など。

また、家族信託契約の効力について訴訟を起こされた場合などでも、明確に対抗することが可能です。

過去の遡って証拠力を疑われてしまった場合でも、公正証書であれば反証がない限り完璧な証拠力を有するため安心できます。

そして外部に向けた信用力も高いため、公正証書であれば問題なくさまざまな手続きが可能です。

私文書の場合には、過去に遡って効力を証明することが難しく外部に向けての信用力も低いため、この点は公正証書の大きなメリットとなるでしょう。

3-2. 元本が保管されるため紛失時に再発行できる

家族信託契約書を公正証書で作成していれば、元本が公証役場に保管されるため紛失してしまった場合でも再発行が可能です。

また紛失だけでなく、悪意あるものに盗難されてしまった場合でも再発行ができます。

たとえば、家族信託の内容が不利な相続人が契約書を奪って隠してしまうことも想定できるでしょう。

そういった場合でも、公正証書で作成していれば元本が公的な機関に保管されているため安心です。

3-3. 信託口口座を開設しやすくなる

公正証書で家族信託契約書を作成しておくことで、信託口口座を開設しやすくなります。

信託口口座とは、家族信託において信託財産を管理するための口座です。

家族信託では、受託者に分別管理義務が生じるため、私用の口座とは別に口座を設けて信託財産を管理しなければなりません。

通常の口座を新しく作成しても管理できますが、信託口口座で管理することには下記のメリットがあります。

<信託口口座を利用するメリット>

  • 受託者が破産した場合でも差し押さえられない
  • 受託者・委託者が亡くなっても凍結されない

信託口口座には「倒産隔離機能」や凍結されないというメリットがあるため、信託財産の管理に推奨されています。

信託口口座は対応している金融機関で作成可能ですが、そもそも公正証書でなければ開設を受け付けてもらえない場合がほとんどです。

メリットが大きい信託口口座が開設しやすいという点においても、公正証書で契約書を作成するメリットがあります。

4. 家族信託契約書を公正証書で作成するデメリット

家族信託契約書を公正証書で作成するデメリットは下記の3点です。

<公正証書で作成するデメリット>

  • 公正証書を作成する費用がかかる
  • やり取りに時間がかかる
  • 形式が指定されるなど自由度が低くなる場合がある

メリットだけでなく、デメリットも理解したうえで公正証書での作成を検討しましょう。

4-1. 公正証書を作成する費用がかかる

公正証書の作成には費用がかかるため、数百円ほどで作れる私文書に比べると作成費用がデメリットになるでしょう。

詳しくは後述しますが、信託財産の評価額により「5,000円~25万円」ほどの費用がかかります。

ただ、公正証書で受けられるメリットは大きいため、費用を支払うだけの価値はあります。

4-2. やり取りに時間がかかる

公正証書の作成には費用だけでなく、時間がかかります。

公正証書は公証役場にて、公証人と作成するため面談や作成などで、数回公証役場に行かなければなりません。

しかし公証役場は平日の9〜17時までしか開庁していないため、時間を作るのが難しいという方もいるでしょう。

そのような場合には、別途費用はかかりますが専門家に公正証書の作成を依頼することがおすすめです。

4-3. 形式が指定されるなど自由度が低くなる場合がある

公正証書では公証人と作成するため、形式の指定などによって自由度が低くなる場合があります。

たとえば、公証人の意向によって公証役場指定の雛形を使用するなどです。

また、信託口口座の開設において、契約書を一部変更をしなければ要件を満たさないと言われる場合もあります。

そうなってしまうと、完全に自分の理想通りの信託内容を契約することが難しい場合も出てきます。

私文書であれば自由に形式・内容を決定できるため、この点は公正証書で作成する場合にデメリットとなるでしょう。

5. 公正証書で家族信託契約書を作成する流れ

家族信託契約書を公正証書で作成する場合には、下記の流れで進めていきます。

<家族信託契約書を公正証書で作成する手順>

  1. 家族信託の契約内容を決定する
  2. 公証役場での面談予約をする
  3. 公証役場で公証人と面談・作成日の予約をする
  4. 公証人立ち会いのもと公正証書を作成する
  5. 公正証書の正本・謄本を受け取る

それぞれのステップにおいて行うことをみていきましょう。

5-1. 家族信託の契約内容を決定する

まずは家族信託の契約内容を、当事者間で話し合い決定しましょう。

家族信託において、下記の事項は必ず決めておく必要があります。

<家族信託契約の必須事項>

  • 家族信託の趣旨
  • 家族信託の利用目的
  • 家族信託の対象財産
  • 委託者・受託者・受益者・帰属権利者
  • 受託者の権限・管理方法
  • 家族信託の終了時期

後々のトラブルを避けるためにも、すべての項目について関係者全員の同意を取りましょう。

ただ、全員が納得できる家族信託の設計には、法律や相続・税金の知識が必要になるため、専門家に依頼することがおすすめです。

5-2. 公証役場での面談予約をする

家族信託の契約内容が決定できたら、公証人との面談を予約しましょう。

公証役場に連絡して、家族信託契約を公正証書で作成したい旨を伝えます。

公証役場は全国にあるわけではないため、最寄りの公証役場に電話などで連絡を取りましょう。

5-3. 公証役場で公証人と面談・作成日の予約をする

面談日になったら公証役場に行き、公証人と面談しましょう。

初回の面談は、家族信託契約の内容に問題がないか確認するための面談になります。

そのため、決定した家族信託の内容を説明できる資料や、内容をまとめた書類を持参するとスムーズでしょう。

また、初回面談時には下記の持ち物が必要です。

<必要な持ち物>

  • 本人確認書類 運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど
  • 印鑑

面談の結果問題がなければ、改めて公正証書の作成日を決め日時の予約をしましょう。

5-4. 公証人立ち会いのもと公正証書を作成する

作成日になったら再び公証役場に行き、公証人立ち会いのもと公正証書を作成します。

公証人が本人確認を行い、証人の前で公正証書の原案を読み上げ、公正証書を作成していきます。

作成された内容に問題がなければ、全員が順番に署名・捺印を行います。

所定の手続きが完了したら、公正証書の作成費用を支払いましょう。

5-5. 公正証書の正本・謄本を受け取る

すべてのやり取りが完了したら、2週間ほどで公正証書が作成されるため、正本・謄本を受け取りましょう。

なお、立ち合いのもと作成した元本は公証役場に保管されます。

ここまで完了したら、公正証書の作成手続きは終了です。

6. 家族信託契約書を公正証書で作成した場合にかかる費用

家族信託契約書を公正証書で作成した場合には、必ず実費がかかります。

また、専門家に依頼した場合には実費とは別に費用がかかりますので注意しましょう。

それぞれの費用について解説します。

6-1. 公正証書の作成にかかる実費

公正証書の実費は、信託財産の価額によって手数料が変化します。

内訳は下記の通りで、5,000円〜25万円ほどが相場となっています。

目的の価格

参考:日本公証人連合公式サイト

この費用は公正証書を作成する場合に必ずかかる費用なため、信託財産を決定したら事前に見積もっておきましょう。

6-2. 公正証書の作成を依頼した場合にかかる専門家報酬

公正証書の作成を専門家に依頼した場合には、実費とは別に報酬が発生します。

依頼先によって専門家報酬が異なりますが、10〜15万円ほどが相場となっています。

平日に時間を作ることができない場合などには、専門家に依頼するといいでしょう。

7. 家族信託契約書を公正証書で作成した方がいいケース

基本的に家族信託契約書は公正証書での作成が推奨されていますが、とくに公正証書での作成がおすすめなケースを2つ紹介します。

  • 家族信託中に金融機関とやり取りする場合
  • 相続トラブルに発展しそうな場合

それぞれのケースにおいて、なぜ公正証書での作成がおすすめなのかみていきましょう。

7-1. 家族信託中に金融機関とやり取りする場合

家族信託中に金融機関とやり取りする場合には、信用の面から公正証書での作成がおすすめです。

具体的には、抵当権付きの不動産や株式を信託財産とする場合。

銀行や証券会社が、信託財産として不動産や株式の手続きを行う際には、規定により公正証書が必要とされます。

金融機関とのやり取りが想定される信託財産の場合には、手続き自体ができなくなってしまうため公正証書で家族信託契約書を作成しましょう。

7-2. 相続トラブルに発展しそうな場合

家族信託によって相続トラブルに発展しそうな場合には、公正証書で信託契約書を作成しましょう。

具体的には、推定相続人が複数いる・家族や親族間の仲が悪い場合です。

家族信託は実質的に遺言と同じような効力を有するため、家族信託によって相続トラブルが起こる可能性があります。

その場合、相続に不利な状況を作り出されてしまった相続人やその親族が、契約の無効を主張して訴訟を起こしてくるかもしれません。

万一に備え、証拠力があり申し立てに対抗できる公正証書で作成するといいでしょう。

8. 家族信託契約書の形式についてよくある質問

家族信託契約書の形式について、よくある質問をピックアップして紹介します。

  • 私文書で作成するデメリットが知りたい
  • 公正証書の作成にはどのくらい時間がかかる?

家族信託契約書についての疑問を払拭しましょう。

8-1. 私文書で作成するデメリットが知りたい

私文書で家族信託契約書を作成するデメリットは大きく2つあります。

1つ目は、証拠・信用力が不十分な点です。

もし契約の無効を主張されてしまった場合、私文書だと契約書の捏造や改ざんが容易なため証拠として不十分とされる可能性があります。

また、金融機関では公正証書の契約書を前提としているため、信用力が低いという点もデメリットです。

2つ目は、紛失・盗難時に再発行できない点です。

公正証書とは異なり元本がどこにも保存されていないため、再発行ができないというのは大きなリスクとなるでしょう。

どちらも家族信託の契約満了に大きな影響を及ぼすデメリットであるため、公正証書での作成が推奨されているのです。

8-2. 公正証書の作成にはどのくらい時間がかかる?

家族信託契約を公正証書で作成するには、最短で1ヶ月ほどの期間が必要でしょう。

公正証書自体の作成に、公証役場側で2週間ほどの期間が必要です。

公証役場への依頼前には、家族信託の内容を固める期間が必要になるため、最短でも1ヶ月程度かかることが想定されます。

もちろん、内容の決定に時間がかかればそれだけ所要期間は伸びていくため、早めに公正証書の作成に取り掛かるといいでしょう。

9. 家族信託契約書は必ず公正証書で作成しよう!

家族信託の契約書は公正証書での作成がおすすめです。

万一の可能性を考えた場合、私文書では契約自体が無効になってしまうことがあるため、家族信託という制度を活用するためにも公正証書で作成しましょう。

公正証書で契約書を作成していれば、予期せぬ事態が起こった場合でも証拠・信用力の高さから十分に対応可能です。

公正証書は自分でも作成可能ですが、契約内容の作成から考えると専門家への相談がおすすめです。

日本クレアス税理士法人では、弁護士や司法書士などの士業と連携して家族信託をトータルサポートいたします。

家族信託の内容や公正証書作成の代行も可能ですので、お気軽にご連絡ください。

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