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ーコラムー
家族信託
税理士監修記事

銀行が行う家族信託とは?手続きの流れや信託口口座の開設方法

公開日:2023.8.29 更新日:2023.08.31

家族信託は認知症対策などを目的として利用される、財産管理方法の1つです。

家族信託は銀行などの金融機関でも利用できますが、実は一般的な家族信託とは異なる点があります。

では、銀行などの金融機関が取り扱う家族信託とは、どんな方法なのでしょうか。

そこで本記事では、銀行が行う家族信託の概要や手続きの流れを解説。

また、信託用の口座である「信託口口座」の開設方法も紹介します。

銀行で行う家族信託について知りたい、信託口口座の開設方法が知りたいという方はぜひご覧ください。

目次

1. そもそも家族信託とは?仕組みを解説

家族信託とは、認知症対策など特定の目的を持って自身の財産を信頼できる人に託し、その運用や処分を任せることができる仕組みです。

具体的には、財産の所有権を受益権(財産権)と管理・処分権に分け、後者を家族などの信頼できる人に譲渡します。

そんな家族信託は、下記の3者によって構成されます。

<家族信託の仕組み>

  • 委託者:財産の所有者で受託者に財産を信託する人。
  • 受託者:委託者から財産を信託され、管理・運用を行う人。
  • 受益者:信託された財産から発生した利益を受け取る人。

委託者は受託者として信頼できる人物を選出し、自分の財産を託します。

なお、家族信託という名前がついていますが、受託者は家族以外でもよく、その範囲に制限はありません。

委託者は自分の財産を「どのように管理・運用してほしいか」を信託目的として自由に決定し、受託者と信託契約を結びます。

そして受託者は、信託目的に沿って財産を適切に管理・運用し、発生した利益を受益者が受け取ります。

一般的な家族信託の場合には、委託者と受益者が同一人物になることが多いです。

たとえば、父が自分の財産を息子に信託し、その利益は父が受け取るなど。

家族信託は「自分の財産を自分や周りの人のために役立てられるよう、信頼できる人物に管理・運用をお願いできる制度」なのです。

2. 銀行の家族信託と一般の家族信託は異なる!

実は銀行の家族信託と一般の家族信託は、同じ家族信託でも内容が異なります。

そもそも信託には「商事信託」と「民事信託」の2種類があり、前者が銀行の、後者が一般の家族信託にあたります。

商事信託は「受託者が営利目的で信託を引き受ける信託」です。

商事信託の場合には、信託銀行や信託会社など信託業を行える法人が受託者となります。

一方民事信託は「受託者が営利目的なしに信託を引き受ける信託」です。

民事信託の場合には、子供をはじめとした血縁者や親族が受託者となります。

では前提を踏まえたうえで、それぞれの信託の概要をみていきましょう。

2-1. 銀行の家族信託(商事信託)の概要

銀行が行っている家族信託(商事信託)では、信託銀行や信託会社などが受託者となり、委託者の財産を管理・運用する代わりに報酬を受け取るという仕組みが一般的です。

銀行や会社が受託者を行ってくれるということから、委託者は安心感を得られます。

また、委託者が亡くなった場合には、遺産分割協議無しにすぐ財産を受け取ることができるなどの特徴があります。

財産の受け取りに関しては「全額を一括でもらう」・「分割して毎月もらう」といった方法が選択できる点も大きな特徴です。

ただ、銀行や会社に依頼することになるため、その分の費用が発生してしまいます。

また、商品として信託を売り出しているため、その範囲内でしか自由が効かなく、委託者の要望を100%反映できない場合があります。

そして、銀行の家族信託ではほとんどの場合で、「金銭」のみしか信託財産としての取り扱いがありません。

しかも、最低利用ラインが設けられていることが多く、利用は最低100万円からといった場合が多いです。

金銭のみが取り扱われているため、不動産や有価証券などは、信託財産にできない可能性が高い点に注意しましょう。

2-2. 一般の家族信託(民事信託)の概要

一般的な家族信託(民事信託)は、委託者自身が財産を管理することが難しい状況を想定して、事前に家族などに財産を信託する方法です。

商事信託とは異なり、一般的な家族信託では信託財産にほとんど制限がありません。

不動産や有価証券をはじめ、基本的には財産価値のあるものであれば信託財産にすることが可能です。

しかし、下記の財産については信託財産にできませんので注意しましょう。

  • 農地
  • 預貯金の口座
  • 年金受給権や生活保護受給権などの一身尊属権

ほかに異なる点として、信託目的を自由に決定できることが挙げられます。

委託者や家族の意思を反映して信託内容が作れる点は、民事信託の大きなメリットです。

2-3. 銀行の家族信託に起こっている変化

銀行の家族信託は商品化されたものが多く、取り扱える財産や信託内容に制限が設けられていることが一般的です。

しかし近年、家族信託(民事信託)の需要が増加していることから、民事信託のコンサルティングサービスを提供し始める金融機関も登場しています。

基本的には、信託内容の設計・専門家の紹介・信託契約書の作成サポートなどがまとめられて、商品化されています。

ただ、信託財産に制限がある・利用条件が定められているなど、商品によって内容が異なりますので、必ず下調べをしてから利用を検討しましょう。

3. 銀行の家族信託を利用するメリット・デメリット

銀行の家族信託を利用するメリット・デメリットをまとめて紹介します。

<メリット>

  • 相続開始後すぐに財産を引き出せる
  • 銀行が受託者として財産を管理してくれる
  • 信託財産の受け取り方法が選べる

<デメリット>

  • 最低利用ラインが設けられている
  • 対応している財産は金銭のみ
  • 家族信託の内容を自由に決められない
  • 家族信託の専門家が銀行に少ない

メリットデメリットを理解したうえで、銀行の家族信託を利用するか検討しましょう。

3-1. メリット①相続開始後すぐに財産を引き出せる

銀行の家族信託を利用することで、相続開始後にすぐ財産を引き出すことが可能です。

家族信託の終了自由は、委託者の死亡とすることが一般的なため、家族信託の終了=相続の開始を意味します。

通常の相続では、「遺産をまとめて遺産分割協議を行い、遺産の名義変更を相続人ごとに行う」ここまで完了してはじめて遺産を引き出すことが可能です。

しかし、その間にも葬儀など費用が発生する場面があるため、相続人の財産がすぐに使えないと遺族の負担になってしまいます。

その点、銀行の家族信託を利用していれば、相続の開始後すぐに財産を引き出すことが可能です。

財産の受け取り方法も、一括や分割などがあるため、状況に合わせて選択できる点も大きなメリットでしょう。

3-2. メリット②銀行が受託者として財産を管理してくれる

銀行の家族信託では、銀行が受託者として財産管理を行ってくれるというメリットがあります。

家族信託を利用するうえで、受託者の役割は非常に重要です。

受託者には信託財産を管理・処分する一切の権利が与えられるため、裁量権が大きい一方、定期的な収支報告が必要になるなど、負担も大きくなります。

そのため、財産が大きくなればなるほど受託者の負担が増え、適切に受託者としての業務を遂行することが困難になっていきます。

また、裁量権が大きいため受託者が財産を悪用してしまう危険性もあります。

その点、銀行が受託者として財産を管理してくれれば、悪用されることはまずありえません。

また、財産管理のプロに運用を任せられるため「適切な運用」という点にも心配はないでしょう。

3-3. メリット③信託財産の受け取り方法が選べる

銀行の家族信託を利用することで、信託財産の受け取り方法を選ぶことが可能です。

下記2つの方法のいずれかで財産の受け取りができます。

<銀行の家族信託における財産の受け取り方法>

  • 一括(一時金型)
  • 分割(年金型)

受託者は、葬儀や当面の費用を賄うために一括で受け取ることもできれば、年金のような形で定期的に受け取ることも可能です。

3-4. デメリット①最低利用ラインが設けられている

銀行の家族信託はほとんどの場合で、金銭のみしか信託財産とすることができませんが、その金銭に対しても最低利用ラインが設けられていることが多いです。

金融機関によっても異なりますが、預入金額100万円からといった銀行が多く、少額での利用はできませんので注意しましょう。

しかし、少額での家族信託の利用は、家族信託を利用する費用の負担が大きくなるため、そもそもあまりおすすめできません。

3-5. デメリット②対応している財産は金銭のみ

銀行の家族信託では、信託できる財産が金銭のみというデメリットがあります。

一般的な家族信託では、不動産をはじめ有価証券も信託財産にできるため、事業承継にも利用できます。

しかし、銀行の家族信託では、現金のみが信託財産の対象となるため、自由度が低い点に注意しましょう。

3-6. デメリット③家族信託の内容を自由に決められない

銀行の家族信託は、信託できる財産や内容があらかじめ決められているため、内容を自由に決めることができません。

自由がまったくないという訳ではありませんが、決められた範囲内でしか自分の希望を実現できないのです。

一般の家族信託では自由に内容を決定できるため、複雑な内容で家族信託を利用したいという場合には大きなデメリットとなるでしょう。

3-7. デメリット④家族信託の専門家が銀行に少ない

銀行などの金融機関には、家族信託を専門としている人が少ないというデメリットがあります。

そもそも家族信託は近年注目を集めている方法なため、弁護士や司法書士・税理士のなかでも実務として扱っている専門家は少ない状況があります。

そのため、銀行などに在籍している専門家の数はもっと少ないことが容易に想像できるでしょう。

家族信託では、法律・相続・税金などさまざまな知識が求められるため、実務を行っている専門家に依頼することがおすすめです。

4. 家族信託の財産管理では「信託口口座」がおすすめ

家族信託の受託者には分別管理義務があるため、信託財産を管理する際に、個人資産と明確に分けて管理する必要があります。

そのため、家族信託の財産管理方法として「信託口口座」を利用することがおすすめです。

信託口口座とは、信託財産専用の口座で、一部の銀行で開設できます。

信託口口座では、口座名義が「委託者A受託者B信託口」のような形で連名になることが、1つの特徴としてあります。

下記では、信託口口座以外の財産管理方法や方法ごとの違いを解説します。

4-1. 信託専用として普通口座を開設することも可能

信託財産の管理方法として、信託専用の普通口座(信託用口座)を利用することも可能です。

前述の通り、信託口口座は委託者と受託者の連名で口座を開設しますが、普通口座の場合には受託者名義で口座を開設します。

つまり、受託者が信託財産用に新しく開設する普通口座です。

なお、信託口口座を利用することは法律上義務付けられていないため、信託専用として普通口座を利用しても問題はありません。

4-2. 信託口口座と信託用口座(普通口座)の違い

信託口口座と信託用口座(普通口座)には、下記のような違いがあります。

  • 開設に伴う審査・費用
  • キャッシュカードの利用有無
  • インターネットバンキングなどオンライン取引の利用有無
  • 取り扱っている銀行の数
  • 口座凍結に対する安全性
  • 差し押さえに対する安全性
  • 開設の条件

それぞれにメリットデメリットがあるため、両者には相違点が存在します。

信託用口座の場合には、ほぼすべての銀行で取り扱いがあり、審査も簡易的で費用もかからない銀行がほとんどです。

キャッシュカードやオンライン取引に対応しているため、通常の口座と同じように扱えるというメリットもあるでしょう。

しかし、口座凍結や差し押さえに対する安全性は低いというデメリットがあります。

では、信託口口座にはどのようなメリットデメリットがあるのか、くわしくみていきましょう。

5. 信託口口座を利用するメリット

信託口口座を利用するメリットは下記の2点です。

<メリット>

  • 受託者が破産した場合でも差し押さえられない
  • 受託者・委託者が亡くなっても凍結されない

メリットは2点のみですが、それぞれが家族信託にとって大きいメリットとなっています。

くわしくみていきましょう。

5-1. 受託者が破産した場合でも差し押さえられない

信託口口座を利用することで、受託者が破産した場合でも信託財産が差し押さえられることがなくなります。

家族信託には「将来的に信託財産と関係ないところで委託者や受託者が債務を負ってしまった場合でも信託財産は差し押さえられない」という「倒産隔離機能」があります。

信託用口座は受託者の個人名義の口座になるため、そこで財産を管理していると、個人資産として差し押さえの対象となる場合があるのです。

しかし、信託口口座は委託者と連名で作成され、信託財産用の口座であることが証明されているため、差し押さえの対象となることはありません。

倒産隔離機能を活かすためにも、信託口口座の利用がおすすめです。

5-2. 受託者・委託者が亡くなっても凍結されない

信託口口座を利用している場合には、受託者・委託者が亡くなっても凍結されることはありません。

通常の口座の場合には、口座名義人の死亡が確認された時点で口座が凍結されてしまいます。

しかし、信託口口座は委託者と受託者の連名で作成され、どちらの個人資産にもあたらないため、凍結されることはないのです。

どちらかが亡くなってしまった後でも、すぐに資産を引き出すことが可能なため、財産管理の自由度が非常に高くなっています。

6. 信託口口座を利用するデメリット

信託口口座にはメリットだけでなく、下記のようなデメリットも存在しています。

<信託口口座のデメリット>

  • 信託用口座よりも開設に手間と費用がかかる
  • 条件を満たさなければ口座が開設できないことも
  • 信託口口座を取り扱っていない銀行が多い

デメリットも理解したうえで、信託口口座の開設を検討しましょう。

6-1. 条件を満たさなければ口座が開設できないことも

信託口口座は通常の口座とは異なるため、条件を満たさない場合には開設自体ができないこともあります。

銀行によって条件はさまざまですが、最低預入金額〇〇〇万円などといった形で指定されていることが多いです。

一般の家族信託で利用する場合には、信託内容などを見られることもありますので注意しましょう。

6-2. 信託用口座よりも開設に手間と費用がかかる

信託口座の開設には条件があることにくわえ、手間や費用がかかるといったデメリットがあります。

必ず金融機関の審査を受けなければいけなく、その審査には書類が複数必要です。

<信託口口座開設審査に必要な書類>

  • 信託契約書
  • 本人確認書類
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 印鑑
  • 不動産に関する書類(信託財産に不動産を含む場合)など

信託する財産によっては、追加で必要な書類が出てくるため注意しましょう。

この審査は長いと1ヶ月以上もかかる場合があります。

また、金融機関によっては5〜10万円ほどの開設費用がかかることがありますので、費用面でも注意が必要です。

6-3. 信託口口座を取り扱っていない銀行が多い

信託口口座は、取り扱っている銀行が少ないというデメリットもあります。

現在、信託口口座は一部の銀行でしか取り扱いがないため、遠方まで出向いて口座を開設しないといけない場合もあるでしょう。

家族信託は近年注目を集めてきている方法なため、まだ対応している銀行が少ないのです。

<家族信託に対応している銀行※2023年8月時点>

オリックス銀行

もみじ銀行

愛媛銀行

横浜銀行

横浜信用金庫

沖縄銀行

紀陽銀行

宮崎銀行

京都銀行

京葉銀行

広島銀行

広島信用金庫

三井住友信託銀行

三重銀行

山形銀行

山口銀行

四国銀行

七十七銀行

秋田銀行

十六銀行

常陽銀行

仙台銀行

千葉興業銀行

千葉銀行

第三銀行

第四銀行

池田泉州銀行

中国銀行

長野銀行

東和銀行

栃木銀行

肥後銀行

武蔵野銀行

福岡銀行

平塚信用金庫

北九州銀行

琉球銀行

家族信託の利用者数は増えてきているため、今後取り扱う銀行が増えていく可能性はあるでしょう。

7. 信託口口座を開設する方法|手続きの流れを解説

信託口口座の開設は下記の流れで進めていきましょう。

<信託口口座 手続きの流れ>

  1. 専門家とともに信託契約書を作成
  2. 銀行の審査を申し込む
  3. 信託契約書を公正証書で作成
  4. 必要書類を持参して、窓口で信託口口座を開設

それぞれのステップをくわしくみていきましょう。

7-1. 専門家とともに信託契約書を作成

信託口口座の開設には、信託契約書が必要になりますので、家族信託の専門家とともに信託契約書を作成しましょう。

なお、銀行の家族信託商品やコンサルティングを利用する場合には、銀行が契約書の作成もサポートしてくれます。

一般の家族信託を利用する場合には、実務経験のある専門家に依頼することで、希望通りの家族信託が実現できるでしょう。

自分で作成することも可能ですが、信託目的や内容が信託契約書の中でしっかり決められていないと、信託口口座の審査に通らない可能性があります。

最悪の場合には、家族信託の利用自体が難しくなるため、専門家とともに作成することがおすすめです。

ただ、専門家に相談することはもちろんですが、関係者全員で話し合い、信託契約について共通認識を持つことを忘れないようにしましょう。

財産が絡む契約ですので、後々のトラブルを避けるためにも話し合いが大切です。

7-2. 銀行の審査を申し込む

信託契約書が完成したら、信託口口座を扱っている銀行に申し込み、審査を受けましょう。

信託の目的や内容・委託者と受託者の関係性などについて、問題がないか確認されます。

銀行によっては、必ず含めて欲しい項目を定めている場合があるため、差し戻されることもあります。

また、銀行が指定する専門家のチェックを受けるよう求められることもあるようです。

審査は長いと1ヶ月ほどかかってしまうため、時間に余裕を持って申し込みを行いましょう。

7-3. 信託契約書を公正証書で作成

信託契約書の審査が完了したら、信託契約書を公正証書で作成しましょう。

公正証書とは、公証役場で公証人立ち合いのもと作成される公文書です。

証拠・信用力に優れた文書のため、長期契約が前提となり、財産も絡む家族信託には必須といっても過言ではないでしょう。

また、信託口口座の開設においては私文書の場合、そもそも受け付けてもらえないことがほとんどです。

そのため、信託口口座を開設する場合には、必ず公正証書の作成が必要になります。

<公正証書で作成する手順>

  1. 関係者全員で信託内容を決定
  2. 専門家とともに信託契約書を作成
  3. 公証人との面談を予約
  4. 公証役場で公証人立ち会いのもと作成
  5. 公正証書に不備がないか確認
  6. 正本・謄本を受け取る

公正証書の作成は上記の手順で行いましょう。

なお、信託財産の金額によっては、金額が大きく変動する場合があるため注意が必要です。

7-4. 必要書類を持参して、窓口で信託口口座を開設

信託契約書を公正証書にできたら、必要書類とともに窓口に持参して、信託口口座の開設手続きを行います。

事前審査に通っていれば、問題なく手続きを進められるでしょう。

なお、銀行によっては委託者と受託者のどちらも同席を求められる場合がありますので、事前に確認が必要です。

何も問題がなければ、7〜10日ほどで通帳やキャッシュカードが届くでしょう。

通帳などが届いたら、委託者の口座から信託する財産を信託口口座に送金します。

ここまで完了できたら、受託者の管理・運用が開始されます。

8. 家族信託用口座の選び方をケースごとに紹介

家族信託用口座は「信託口口座」と「信託用口座(普通口座)」の2種類があります。

全体的にみれば、信託口口座の方がおすすめですが、場合によっては信託用口座を利用した方がいいケースも存在します。

<家族信託でみられるケース>

  • 受託者の相続人との仲が悪い場合
  • 受託者の財産状況が悪い場合
  • 近くに信託口口座を扱う銀行がない
  • 普通の口座と同じように使いたい
  • 信託財産で融資を検討している場合

下記では、パターン別にどちらの口座がおすすめであるかを解説します。

8-1. 受託者の相続人と仲が悪い場合

受託者の相続人と仲が悪い場合には、信託口口座の利用がおすすめです。

委託者よりも受託者の方が先に亡くなってしまった場合には、信託用口座という見分けが金融側ではつかないため、受託者のすべての口座を解約しなければなりません。

受託者の相続人がその解約手続きを行い払い戻しなどを受けるため、仲が悪いと信託口座の金銭を引き渡してもらえない可能性があります。

そのため、受託者が先に亡くなった場合でも信託口座だと証明できる、信託口口座の利用がおすすめなのです。

8-2. 受託者の財産状況が悪い場合

受託者の財産状況が悪い場合には、信託口口座の利用がおすすめでしょう。

なぜなら信託用口座の場合には、財産状況が悪く破産などに及んだ際に、差し押さえられてしまうからです。

その点、信託口口座であれば倒産隔離機能が働くため、差し押さえられる心配はありません。

8-3. 近くに信託口口座を扱う銀行がない

近くに信託口口座を扱う銀行がない場合には、信託用口座の利用がおすすめでしょう。

なぜなら遠方で信託口口座を開設してしまうと、資金の引き出しや振り込みに大きな手間がかかるためです。

委託者の医療費など、頻繁に現金が必要な状況になった際、受託者の負担が大きくなってしまいます。

そうなると、受託者としての義務を果たすことが難しくなる可能性があるため、なるべく近くの銀行ですぐ動ける状態を作っておくと安心です。

8-4. 普通の口座と同じように使いたい

信託口口座の場合には、基本的にインターネットバンキングを利用することができません。

また、銀行によってはATMの利用も制限される場合があるため、普通の口座と同じように使うことは難しいでしょう。

そのような場合には、信託用口座の利用がおすすめです。

受託者の経済状況や親族関係など、信託口口座でなくても安心な状況であれば、利便性の高い信託用口座で十分に財産管理ができるでしょう。

8-5. 信託財産で融資を検討している場合

銀行によっては、信託財産を担保として融資を受けられる信託内借入を行っています。

もし信託内借入を検討している場合には、信託口口座の開設がおすすめです。

なぜならほとんどの銀行では、信託口口座の開設を前提として信託内借入を実施しているため。

ただ、信託内借入を利用するためには、信託契約によって受託者に借入権限が与えられていないといけませんので注意しましょう。

9. 銀行の家族信託・信託口口座についてよくある質問

銀行の家族信託や信託口口座について、よくある質問をまとめましたのご覧ください。

<よくある質問>

  • 信託口口座はATMで取引できる?
  • 年金は信託口口座で受け取れる?
  • 銀行の家族信託と一般の家族信託はどちらがおすすめ?

疑問を解消して、銀行の家族信託を利用する際にお役立てください。

9-1. 信託口口座はATMで取引できる?

信託口口座でATMが利用できるかは、利用する金融機関によってさまざまです。

銀行によってキャッシュカードを発行してもらえない場合もあり、ATMが使えるかもその銀行がATMに対応しているかどうかで分かれます。

なお三井住友銀行は、キャッシュカードの発行・ATMの利用に対応しています。

9-2. 年金は信託口口座で受け取れる?

年金は信託口口座で受け取ることができません。

なぜなら、年金受給権は一身尊属権に含まれるためです。

また、現在の年金事務所の運用では、信託口口座で年金を受け取ることができなくなっています。

しかし、毎月個人口座から信託口口座に送金するといったことは可能です。

9-3. 銀行の家族信託と一般の家族信託はどちらがおすすめ?

銀行の家族信託と一般の家族信託は、内容や状況によって最適な方が異なるため、一概にどちらがおすすめとはいえません。

たとえば、家族をはじめ頼れる人物がいないという場合には、代わりに受託者となってもらえる銀行の家族信託がおすすめです。

一方、実現したい信託内容が銀行の家族信託では実現できないという場合には、一般の家族信託がおすすめになるでしょう。

このように、状況や内容に合わせてどちらの家族信託を利用するか選ぶ必要があります。

10. まとめ

ここまで、銀行の家族信託について解説してきました。

実は信託には商事信託と民事信託の2種類があり、銀行の家族信託は商事信託にあたります。

銀行の家族信託には、銀行が受託者となってくれる、信託財産の受け取り方法が選べるなどのメリットがあります。

また、信託財産の管理法である信託口口座には、倒産隔離機能や口座が凍結されないといったメリットが存在します。

内容や状況によって、商事信託を選ぶか民事信託を選ぶか、信託口口座を利用すべきかは異なります。

しかし判断は難しいため、迷った際には、実務としての実績を持つ専門家へ相談しましょう。

日本クレアス税理士法人 相続サポート

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