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税理士監修記事

現代でも起きる!?家督相続について徹底解説!

公開日:2019.11.14 更新日:2022.07.05

家督相続とは、分かりやすく言うと「長男が財産の全てを受け継ぐ」相続の方法です。明治憲法下の旧民法における相続制度で、昭和22年5月2日まで施行されていましたが現在は廃止されています。

しかし、廃止されていながらも家督相続が現在の相続に影響を及ぼすことがあります。このコラムでは「家督相続」の特徴と、現在ではどのようなケースで起こりえるのかをご紹介します。

目次

1.そもそも「家督」ってなに?
2.「家督相続」とは?
3.「家督相続」の特徴とは?
4.「家督相続」はどのような場合に起きる?
5.まとめ

1.そもそも「家督」ってなに?

家督(かとく)とは、もともと「一家の長」を意味する言葉です。 昔の日本には、武士の時代から、一家の長が家の財産のすべてを1人で相続して家族を統率するというルールがありました。

このことから家督という言葉には、その長が相続する一家の長としての「地位」と「家の財産」という両方の意味があります。

このような「単独相続」の制度は、明治憲法下の旧民法において「家督相続」と定められ、戦前まで施行されていました。

2.「家督相続」とは?

「家督相続」とは、明治憲法下の旧民法における相続制度のことです。明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで施行された制度になります。

この時代の家制度は、戸主(こしゅ)と呼ばれる一家の長が家族をまとめ、戸主には家族を扶養する義務がありました。戸主が死亡すると、その地位や家の財産を、特定の家族が1人で承継し、次の戸主となって他の家族を扶養するというしくみです。

このように、戸主から次の戸主に家督が承継されることを「家督相続」といい、家督相続によって家督を承継する相続人のことを「家督相続人」といいました。

なお、昔の民法では戸主を被相続人とする相続を「家督相続」とし、戸主以外の家族が死亡したときの相続のことを「遺産相続」として区別していました。

<旧民法の相続制度>
・家督相続・・・戸主から次の戸主への相続
・遺産相続・・・家族から他の家族への相続

家督相続人になるのは長男

家督相続において家督相続人(次の戸主)になるのは、被相続人(戸主)の直系卑属です。
被相続人との親等が最も近いものから選ばれるため、通常は、被相続人の子が家督相続人になります。

子が男女で複数いる場合、家督相続人になるのは、原則、長男です。もし子に女子しかいなければ、長女が家督相続人となります。家督相続人の優先度は、次項で解説します。

3.「家督相続」の特徴とは?

家督相続には、相続人の人数や相続順位、相続の発生事由、相続の効果について、現代の相続とは異なる特徴があります。

相続人の人数

現代の相続において、相続人の人数に制限はありません。相続人の要件に該当する者が複数いれば、全員が相続人となります。

これに対し、家督相続における相続人は、一家に1人です。兄弟が何人いても、財産を承継するのは1人となります。

相続人の相続順位

現代の相続では、子が第一順位の相続人です。その際、男女の区別はなく、すべての子が相続人となります。認知されている子であれば、嫡出子・非嫡出子の扱いにも差はありません。さらに、配偶者は必ず相続人となります。子がいなければ、直系尊属(親や祖父母など)、兄弟姉妹の順で相続権が移りますが、これに関係なく、配偶者は常に相続人です。

これに対して、家督相続では、被相続人の直系卑属から最も優先度の高い1人が家督相続人となります。

家督相続 現代の相続
相続人 直系卑属のうち最も優先度の高い1人 配偶者
 ┣・第一順位 子
 ┣・第二順位 直系尊属
 ┗・第三順位 兄弟姉妹

家督相続人は1人ですから、直系卑属がいれば配偶者は家督相続人になりません。
直系卑属の優先度は、次のルールによって判定します。

判定内容 具体例
1 被相続人の直系卑属のうち、被相続人と最も親等が近い者 【子と孫】…子の優先度が高い
2 同じ親等の者に男子と女子がいれば、男子 【兄弟姉妹】…兄弟の優先度が高い
3 男子が複数いれば、先に生まれた者 【長男と次男】…長男の優先度が高い
4 3に嫡出子(婚姻関係にある男女の子)とそうでない子がいれば、嫡出子 【長男(非嫡出子)と次男(嫡出子)】…次男の優先度が高い
5 同じ親等が女子のみであれば、先に生まれた者 【長女と次女のみ】…長女の優先度が高い
6 5に嫡出子(婚姻関係にある男女の子)とそうでない子がいれば、嫡出子 【長女(非嫡出子)と次女(嫡出子)のみ】…次女の優先度が高い

なお家督相続で、被相続人に直系卑属がいない場合は、遺言書で家督相続人に指定された人が家督相続人になります。それもなければ、被相続人の一定の親族によって選定された人が家督相続人となります。

相続の発生事由

家督相続は、戸主の死亡または隠居等により発生します。死亡には、失踪宣告による法律上の死亡も含まれます。

隠居とは、通常、仕事をやめて引退して自由に暮らす人を指したり、高齢の方を指したりしますが、家督相続では「生前に家督を譲ること」を意味します。

隠居には、戸主が満60歳を迎え、自ら隠居を届け出て行われるものや、戸主に病気などやむを得ない事情があるときに裁判所の許可を得て行われる隠居がありました。

これに対し、現代の相続の発生要件は、被相続人の死亡のみです。
隠居という制度は、現代の相続にはありません。

相続の効果

家督相続・現代の相続ともに、相続が発生したときは、被相続人の一身に専属する権利などを除いた財産を相続人が承継するという法律上の効果が生じます。

さらに家督相続に限っては、戸主としての地位や事業、お墓や仏壇といった祭祀にかかる財産も、相続人が承継します。

祭祀の承継者については、現代の相続でも定めがありますが、必ずしも相続人である必要はありません。

現代の相続における祭祀の承継者は、被相続人が指定する者、慣習に従って決めた者、慣習が不明であれば家庭裁判所が決めた者となります。

「家督相続」はどのような場合に起きる?

4.「家督相続」はどのような場合に起きる?

家督相続という制度は、現行の法律からはなくなりましたが、現代の相続に影響を及ぼすことがあります。

被相続人が家督相続を希望する場合

家督相続の背景にあるものは、「家や家業は長男が継ぐもの」といった、昔ながらの考え方です。被相続人がこの考え方を支持する場合、遺言書で「全ての財産を長男に相続させる」という遺言を行うことがあります。

「家督相続が廃止されているのなら、無効では?」と思われるかも知れませんが、この遺言書の内容は、現代でも有効です。

遺産についての被相続人の意思は、なるべく尊重されます。
ただし、他の遺族も生活をしなければなりませんので、一定の相続人には、遺留分の主張が認められています。

遺留分とは兄弟姉妹を除く相続人に認められる、最低限の相続分のことです。
具体的には、それぞれの法定相続分の2分の1で、相続人が直系尊属のみときはその法定相続分の3分の1となります。

相続分が遺留分に満たない場合、これらの相続人は遺留分を侵害した他の相続人に対し、これを請求することが可能です。つまり、被相続人が家督相続を行うために遺言書を作成することは有効ですが、遺留分の請求等によって必ずしも実現するわけではないということです。

(参考)相続発生前に押さえておきたい「遺留分侵害額(減殺)請求」のポイント

相続人が家督相続を主張する場合

もし相続人の1人が家督相続を主張する場合は、遺産分割協議で解決を図ることとなります。たとえば長男が、「自分が長男だから、すべての財産を相続するのは当たり前だ!」と主張するようなケースです。

家督相続は、法律上廃止されていますので、現代の相続ではこのような主張は認められません。しかし遺産分割協議は1人でも反対する相続人がいると成立しないため、どのような主張でも相手の話をよく聞くことが大切です。

このようなケースでは、なぜすべての財産を1人で取得する権利があると思うのか、その理由を聞き出し、その上で冷静に話し合いを進めましょう。

よくよく聞いてみると、実は寄与分や特別受益といった、現代の相続のルールに適った主張である可能性もあります。(「長男の功労によって相続財産が維持形成された」等)
なお、相続人同士で遺産分割協議を成立させることが難しければ、最終的には調停、審判といった手続きで解決することになります。

(参考)遺産分割マニュアル|揉めない、損しない遺産分割

不動産の相続登記を行う場合

相続登記が何代も行われていない不動産を相続した場合、家督相続が登場するケースがあります。

<相続登記の放置はなぜ起こる?>
まず、意外なことかもしれませんが、相続登記をすることに法律上の義務はありません。登記をしなくとも、不動産を所有することは可能です。

しかし、登記が最新の状態でないと、第三者に所有権を主張することができません。
たとえば、不動産の売却ができないといった不都合が生じます。こうした不都合を回避するために、不動産を相続したら必ず相続登記の手続きを行いましょう。

相続登記が行われずに放置されている「所在者不明土地」とそこから起こりえるトラブルについてはこちらの記事をご参考ください。
(参考)相続登記の義務化もあり得る?相続登記の簡素化が求められる所有者不明土地

さて、何代も登記が行われていない不動産の相続登記を行う場合、原則、最後の登記上の所有者から順に、相続登記の手続きを行います。たとえば、最後の名義人が祖父であれば、祖父から相続人(父など)への相続登記を行い、その相続人から自身にたどりつくまでの登記手続きを行います。

ただし、何代も前に亡くなった人の相続登記を行う場合、その相続の発生日によっては、旧民法が適用されます。つまり、昭和22年5月2日以前の相続であれば、家督相続の対象になるということです。この場合、家督相続人への相続登記を行う必要があります。

家督相続には、遺産分割協議がないため、戸籍謄本で親族関係を証明すれば、相続登記を行うことができます。

5.まとめ

家督相続について、家督の意味や家督相続の特徴、現代でも家督相続が起こりうるケースなどを解説しました。

まとめるとこのようになります。

<家督相続とは>
・戸主(一家の長)から次の戸主に家督が承継されること
・明治憲法下の旧民法における相続制度で、昭和22年5月2日まで施行されていた
・不動産の相続登記を行う場合など、現在でも家督相続が行われるケースがある

家督相続は、法律上は廃止されていますが、現在でも家督相続を経験した世代に特にみられるのが「長男に全ての財産を継がせたい」という考え方です。相続が「争続」にさせないために、家族との定期的にコミュニケーションを取り、相続についての認識を同じくしておくことが大切ではないでしょうか。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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