父母や祖父母からお金を受け取ったけれど、確定申告で贈与の申告をすればいいの?とお悩みではありませんか。
確定申告は、前年の所得を申告するものです。
受け取ったお金が所得になるのなら、一度の申告で済ませられるのではと考えるでしょう。
この記事では、確定申告と贈与税申告の違いについて解説します。
申告しなければならない人や申告方法、必要な書類も紹介するので、父母や祖父母からお金を受け取った方はぜひ参考にしてください。
1. 確定申告とは別で贈与税申告をする必要がある
自営業で報酬を得ている人が父母や祖父母からお金を受け取った場合、確定申告とは別に贈与税の申告をしなければなりません。
確定申告は前年度の所得を申告するもの、贈与税の申告は受け取ったお金にかかる税金を申告するものです。
父母や祖父母などから無償で受け取ったお金は、所得とみなされません。
そのため、確定申告で一緒に申告することはできないと考えておきましょう。
ケース別に行わなければならない手続きは以下の通りです。
- 会社に勤務する人:所得の申告は年末調整、贈与の申告は贈与税の申告
- 自営業の人:所得の申告は確定申告、贈与の申告は贈与税の申告
- 未成年・無職の人:贈与税の申告
確定申告は2月中旬から3月中旬まで、贈与税申告は財産をもらった年の翌年2月1日~3月15日までに済ませまなければなりません。
それぞれで申告が必要なため、余裕を持って手続きを進めることが大切です。
2. そもそも贈与税とは?
贈与税とは、無償で受け取った財産に課税される税金です。
相続税を抑えるために、生きているうちに子どもや孫に財産を与える方も多いでしょう。
生きているときに財産を分与すれば相続税はかかりません。しかし、贈与税が発生するので注意が必要です。
贈与税は、年間110万円の基礎控除に加え、暦年課税と相続時精算課税制度の2つの種類があります。
暦年課税は基礎控除を超える部分が課税対象となるもの、相続時精算課税制度は2,500万円までの贈与を非課税とするものです。
相続時精算課税制度のほうがメリットが大きく見えるものの、非課税となった財産は相続財産に加算されます。
贈与税を払わずに済んでも、相続時に払うことになるため、どちらかの税金を納めなければならないのです。
ただし、贈与税よりも相続税のほうが基礎控除が大きく税率も低いことから、場合によっては相続時精算課税制度を選んだほうが得だといえます。
暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを選択すべきかわからないときは、税理士に相談してみることがおすすめです。
3. 贈与税の申告義務者とは|義務の発生要件を解説
贈与税を申告する義務があるのは、財産を受け取った人です。
財産を譲る側には義務がないので、受け取った人は必ず申告するようにしましょう。
申告する方は、贈与税の課税方法を押さえておくことも大切です。
課税方法別に適用条件が異なるため、利用できる方法はどれかを確認してみてください。
3-1. 暦年課税で基礎控除額を超える場合
暦年課税を選ぶ場合は、基礎控除額の110万円を超える部分が課税対象になります。
金額別の税率は以下の通りです。
【一般税率】
【特例税率】
引用:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
18歳以上の人が父母や祖父母などの直系尊属から贈与された場合は、特例税率が適用されます。
条件を満たさない場合は一般税率です。
たとえば、18歳以上の人が年間800万円の贈与を受けたとしましょう。
父母から贈与を受けた場合は800万円-基礎控除110万円=690万円、690万円×税率40%-控除額125万円=151万円です。
直系尊属以外から贈与を受けた場合は、800万円-基礎控除110万円=690万円、690万円×税率30%-控除額90万円=117万円です。
一般税率の方が納税額は多くなると考えておきましょう。
年間の贈与合計額が基礎控除の110万円以下であれば、申告も納税も不要です。
ただし、受け取ったお金が贈与であることを証明しなければならないので、贈与契約書を作成しておきましょう。
3-2. 相続時精算課税を利用する場合
暦年課税ではなく、相続時精算課税制度を利用する場合は、通算2500万円までの贈与が非課税となります。
制度を利用できる条件は以下の通りです。
- 財産を譲る年の1月1日時点で、贈与する人の年齢が60歳以上である
- 財産をもらう1月1日の時点で、受け取る人の年齢が20歳以上である
- 直系卑属の推定相続人、または孫が財産を受け取る
年齢の条件が設けられているため、祖父母から孫への贈与の際に利用できると考えておきましょう。
2,500万円までの贈与は非課税となるため、贈与税は発生しません。
2,500万円を超える部分には20%の税率が課されるため、通算額を覚えておくことが大切です。
また、2,500万円以下の贈与であっても、贈与分は相続財産に加算されます。
贈与税は払わなくても、相続税を支払うことになります。
3-3. 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)を使う場合
配偶者に財産を譲る場合は、配偶者控除を利用できます。
配偶者控除は基礎控除の110万円に加え、2,000万円の控除を適用できるので、合計2,110万円までのお金にかかる贈与税が免除されます。
控除の利用条件は以下の通りです。
- 婚姻期間が20年以上である
- 同じ配偶者につき、控除の利用は1回まで
- 配偶者が住む物件、または住居を購入する費用である
- 贈与された年の翌年3月15日までに購入した住居に引っ越している
贈与税の配偶者控除は、夫、または妻が居住するための物件や購入費用にのみ適用できます。
お金を受け取った年の翌年3月15日までに、もらった物件や購入した住居に引っ越す必要があるため、早めに住み変えることがおすすめです。
また、婚姻期間が20年以上であること、同じ配偶者につき1回までしか控除を適用できない点にも注意しておきましょう。
婚姻期間が満たない、または以前控除を適用したことがある場合は使えないので、控除なしで高額の贈与税を納めなければなりません。
3-4. 個人とみなされる法人
個人とみなされる法人にお金を贈与した場合、贈与税が発生します。
基本的には、個人間でのやり取りにのみ贈与税がかかります。
法人の場合は税金が発生しないものの、一部の法人は個人とみなされるので注意が必要です。
個人とみなされる法人は以下の通りです。
- 人格なき社団
- 公益法人
人格なき社団とは、法人ではないが、法人と同等の活動をしている団体のことです。
学校のPTA・労働組合・マンションの管理組合などが人格なき社団に該当します。
公益法人とは、営利を目的としない公益に関する事業を行う法人のことです。
学術やそのほかの公益に資する出版業・体育や福祉などの事業に関する請負業・緊急医療などが該当します。
どちらかに贈与する場合は、個人とみなされないので贈与税が発生します。
受け取る側が納税しなければならないので、その旨を伝えたうえで贈与を行いましょう。
3-5. 国外にいる
海外に住む人が日本に住む親族からお金を受け取った場合は、ケース別に課税対象の範囲が変わります。
引用:国税庁「No.4432 受贈者が外国に居住しているとき」
票の黒塗りになっている部分に該当する方は、贈与税を納めなければなりません。
海外に住んでいるが、贈与を受けた際に日本国内に住所を持っている場合は、住んでいる地域を管轄する税務署に税金を納めます。
お金を受け取ったときに日本国内に住所がなかった場合も同様に納税する必要があります。
ただし、日本国内に住所がない場合は納税先もないため、自身で納税地を決めることが可能です。
日本国籍を持たない人は、受け取ったお金のうち、日本にあるお金のみが課税対象となります。
受け取ったものが日本になければ納税する必要はありません。
4. 贈与税の申告方法
これまでに贈与税の申告をしたことがない方は、どのような流れで進めるかを把握することがおすすめです。
流れを知ることで慌てず手続きを進められるため、ここで紹介する流れを確認しておきましょう。
4-1. 贈与税を申告するまでの流れ
贈与税を申告する流れは以下の通りです。
- 申告する方法を検討する
- 必要な書類を確認し、用意する
- 納税額を計算する
- 申告書に必要事項を記入する
- 申告書と必要な書類を提出する
贈与税の申告方法は、窓口・郵送・e-Taxの3つから選べます。
申告方法を決めたら、手続きに必要な書類を用意し、贈与税額を計算しましょう。
税額がわかったら申告書を作成し、最初に決めた方法で申告します。
贈与税の流れをより詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
4-2. 贈与税の計算方法
贈与税額を算出する前に、一般贈与財産と特例贈与財産について確認しておきましょう。
18歳以上の人が直系尊属から財産をもらった場合は特例贈与、直系尊属以外からもらった場合は一般贈与が適用されます。
それぞれで控除額や税率が変わるため、まずは誰からもらったものかを確認することが大切です。
贈与税の計算は、もらった財産額-基礎控除=課税対象額、課税対象額×税率-控除額=贈与税額です。
2,000万円をもらった場合の一般・特例の計算例を見てみましょう。
- 一般贈与:2,000万円-110万円=1,890万円、1,890万円×50%-250万円=695万円
- 特例贈与:2,000万円-110万円=1,890万円、1,890万円×45%-265万円=585.5万円
贈与税の計算方法を詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。
5. 贈与税申告に必要な書類
贈与税の申告に必要な書類は、ケース別に異なります。それぞれで必要な書類を見てみましょう。
暦年課税 |
贈与税の申告書 第1表 |
相続時精算課税制度 |
・贈与税の申告書 第1表と第2表 ・相続時精算課税選択届出書 ・財産をもらう人の戸籍謄本 |
配偶者控除の特例 |
・財産をもらう人の戸籍謄本 ・財産をもらう人の戸籍の附票のコピー ・登記事項証明書 |
住宅取得等資金の非課税 |
・贈与税の申告書 第1表の2 ・財産をもらう人の戸籍謄本 ・贈与の合計額を証明する書類 ・取得する住宅の証明書 |
住宅取得等資金の贈与を受ける相続時精算課税制度の適用 |
・財産をもらう人の戸籍謄本 ・贈与の合計額を証明する書類 ・取得する住宅の証明書 |
教育資金の非課税 |
教育資金非課税申告書 |
結婚・子育て資金の非課税 |
結婚・子育て資金非課税申告書 |
贈与税の申告書 第1表は、暦年課税や相続時精算課税以外でも必要になります。
申告時は、必ず第1表を作成するようにしましょう。
特例や非課税を適用する際は用意する書類が多くなるので、早めに動くことがおすすめです。
必要な書類を用意しておけば、贈与税の申告期限内に問題なく提出できるでしょう。
6. 確定申告だけでなく贈与税も忘れずに申告しよう
確定申告と贈与税申告は別物なので、必要に応じてそれぞれの申告を済ませることが大切です。
申告時期は確定申告が2月中旬から3月中旬、贈与税は2月1日から3月15日とかぶるため、どちらも行う必要がある方は、早めに準備を始めましょう。
申告時は、ケースにあわせて書類を用意しなければなりません。
書類を準備してから贈与税額を計算し、納税する必要があります。
すべきことがいくつかあるだけでなく、期限も定められているので、ここを参考に手続きを始めてみてください。


このコラムは「日本クレアス税理士法人」が公開しております。
東京本社
〒100-6033東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング33階
電話:03-3593-3243(個別相談予約窓口)
FAX:03-3593-3246
※コラムの情報は公開時のものです。最新の情報は個別相談でお問合せください