7月3日に相続税や贈与税を計算するときの参考になる、平成29年の路線価が公開されました。不動産や土地への関心が高まっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ところで「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」という制度をご存じでしょうか。
住宅を購入するための資金を贈与される場合、一定の要件をみたすと、ある金額まで贈与税が非課税になるという制度です。この制度は、住宅を購入しようとしている場合等の資金の贈与ですので、土地や住宅の贈与についてはあてはまりません。
住宅を購入しようとしている方は、この「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」をうまく使うことができれば、かなりの節税になります。詳しく見ていきたいと思います。
目次 |
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1.制度の概要 |
1.制度の概要
父母や祖父母など直系尊属といわれる人からの贈与でお金をもらった場合、自分が住むための住宅を購入する資金や増改築などにそのお金を使うために贈与を受けたときには、下で説明する金額まで贈与税が非課税になります。
この制度は、平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、住宅を購入するため等の資金として贈与を受けた場合のみ適用されます。
期限が決まっているので、住宅を取得したり改築をしたいと思っている方で、そのための資金の贈与を受ける予定があるのであれば、この期間内に行うと節税対策になります。
2.制度を適用するための要件
この制度を適用するためには、いくつかの要件がありますので確認してみましょう。
(1)資金使途
住宅の取得や改築のための資金を贈与され、その贈与で実際に住宅の購入や改築を行うことが必要です。したがって、土地や住宅といった不動産の贈与を受けた場合は適用されません。また、住宅を購入したあとに贈与を受けた場合にも適用されません。
(2)直系尊属
贈与を受ける側からみて、贈与をする人が直系尊属であることが必要です。つまり、父母、祖父母といった関係で適用することができます。
(3)贈与を受ける側の年齢
この制度を適用するには、贈与を受ける側の年齢が、贈与を受けた年の1月1日において満20歳以上でなければなりません。贈与を受ける側が成人に達してないと適用されないのです。
(4)年間所得の制限
贈与を受ける人の年間所得についての制限があり、年間所得2,000万円までであることが要件になっています。
(5)住宅取得のタイミングと居住の要件
贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、かつ居住するか居住することが確実であることが必要です。具体的には、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに物件の引渡を受けることが必要で、その日までに住み始めるか、確実に住む予定でありその年の12月31日までに実際に住み始めなければなりません。
このほかにも、贈与を受けたときに日本国内に住所があることや、平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で住宅取得等資金の非課税の適用を受けたことがないことなどの細かい要件もありますので、要件にあてはまるかどうかは、専門家である税理士に確認してもらうことが確実ですね。
3.家屋についての要件
この制度を適用できる住宅は、日本国内にあるもののみです。
住宅を新築する場合には、新築するときの住宅が建てられる敷地である土地の取得も含みます。同様に、住宅を購入する場合や増改築を行う場合には、その住宅の購入や増改築をするための土地である敷地も含みます。
(1)住宅の新築や取得の場合
①建物の登記簿面積が50㎡以上240㎡以下であることが必要です。マンションなどの区分所有建物の場合は、専有部分の床面積で判断します。
その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が、贈与を受ける側の居住スペースとなることが必要です。
②取得した住宅は、次のいずれかにあてはまる必要があります。
イ.建築してから使用されたことのない建物であること。
ロ.中古住宅の場合は、マンションなどの耐火建築物なら25年、木造などの耐火建築物以外なら20年以内に建築されたものであること。
なお、対価建築物かどうかは、建物の構造で判断します。具体的には、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などのものをいいます。
中古住宅の場合、さらに地震に対する安全性に係る基準に適合していることか、耐震改修によって耐震基準に適合することとなったことについての証明が必要です。
(2) 増改築などの場合
①新築の場合と同様に、増改築などの後、建物の登記簿面積が50㎡以上240㎡以下であることが必要です
マンションなどの区分所有建物の場合は、専有部分の床面積で判断します。 その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が、贈与を受ける側の居住スペースとなることが必要です。
②増改築などの工事は、自己所有で、かつ自分が住んでいる住宅について行われたことが必要です。基準をみたした工事に該当するかどうかについての証明書も必要になります。
③増改築などにかかった費用が100万円以上のものにしか、この制度を適用することはできません。
ここまで見てきたとおり、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度で、贈与税の非課税の適用を受けようとするには、かなり細かい要件が必要なことがわかります。
実際にこの制度を適用できるかどうかは専門家である税理士に確認してもらったほうが確実です。また、相続対策で生前贈与を行う場合にも、せっかく対策をしても要件にあてはまらずに制度を適用できないということにならないように、要件にあてはまるかどうかを慎重に検討していく必要があるでしょう。
ここからは、どのくらいの金額まで非課税になるのか、具体的な手続きはどうしたらよいのかなどを説明していきたいと思います。
4.住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の適用要件
ここで「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」の概要と適用条件について簡単に振り返ります。
住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は、父母や祖父母などの直系尊属からの贈与でお金をもらった場合、住宅購入資金や増改築資金の贈与を受けたときに、一定金額まで贈与税が非課税になる制度です。
この制度は、平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、住宅購入資金などの贈与を受けた場合のみ適用され、期限が決まっているので、注意しなければなりません。
適用要件についても、どのような場合に適用できるのかについて細かく決まっています。
たとえば、贈与を受ける側が、贈与を受けた年の1月1日において成人に達してないと適用されなかったり、建物の面積等にも細かい規定があります。要件にあてはまるかどうかは、専門家である税理士に確認してもらうことが確実です。
5.非課税限度額
贈与を受ける人ごとに住宅の種類によって、どのくらいの金額が非課税になるのか決まっています。 ポイントは、「住宅の取得などをした契約の締結日がいつか」と、「住宅が省エネなどの基準を満たすかどうか」です。 原則として、非課税となる金額は次のようになります。
契約の締結日 | 省エネ等住宅 | それ以外 |
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平成27年12月31日まで | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月1日~平成32年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
ただし、住宅の新築などにかかった金額に含まれる消費税等の税率が10%である場合には金額が変わってきます。
また、以前にこの改正された非課税制度の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります。
省エネなどの基準を満たす住宅かどうかは、エネルギー使用の合理化にかなった住宅であるかどうか、大規模地震に対する安全性のある住宅かどうか、高齢者が自立した日常生活のできる構造や設備のある住宅かどうか、が基準となります。
非課税限度額についても、非課税となる金額はいくらなのかの判断の難しいポイントがたくさんあり、専門家に判断してもらうことが確実です。
6.手続きについて
この「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」の特例の適用を受けるためには、贈与税の申告期間内に贈与税の申告書と添付書類などを提出しなければなりません。
贈与税の申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間です。必要な書類は、贈与税の申告書、戸籍の謄本、登記事項証明書、住宅購入などの契約書の写しなどです。
マイナンバー制度が導入されたために、申告時には各書類にマイナンバーを記載する必要があり、さらに個人番号カードなど本人確認書類の提示をするか写しを添付する必要があります。
必要書類の種類も多いので、専門知識がない方が一人で手続きをしようとすると大変です。税理士は専門家であり税務手続きを代理することができますので、手続きも税理士に任せてしまうほうが確実だといえます。
7.まとめ
「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」は、これから住宅を新築、購入、改築しようとしている方で贈与を受ける予定のある方にとっては、ぜひ活用したい制度です。
ただし、贈与は相続税対策にもかかわってきますので、生前贈与を活用したほうがよいのかどうか、生前贈与を活用するのであればどのような方法で受けることが最適なのか、は、その方の状況によって変わってきます。
相続税の対策を進めるにあたっては長期的な視点で生前から進めることが望ましいので、相続の専門家である税理士にアドバイスを受けながら、その方にとって一番良い方法を選択していくことが良いでしょう。
制度にもいろいろあり、今回ご説明した住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を使うことができるのかどうか、使う場合の手続きをどのようにしたらよいのかについても、信頼できる税理士がいれば、安心して任せることができるのではないでしょうか。
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