相続税

お布施の書き方・マナーとは?金額相場や封筒・渡し方などの基本を解説

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士

お布施とは、読経や戒名を受けたお礼として、僧侶や寺院に渡す金銭のことを指します。

葬儀や法要で、お布施を渡す場面になり「書き方やマナーが分からない」と戸惑うことがあるでしょう。

金額の相場や使用する封筒、表書きの書き方などのマナーを知っておくと、お寺との関係を良好に保てます。

本記事では、お布施の基本的な書き方や金額の目安、封筒の選び方までを解説します。

最後までご覧いただき、スムーズな法事・法要を執り行えるように準備をしましょう。

1. お布施の書き方【読経・戒名】

お布施の封筒は、記載内容や書き方にマナーがあります

また「表書き」だけでなく、「中袋」「裏面」のそれぞれ記載項目が異なります。

マナーを知っておかないと、失礼にあたる可能性があるため注意しましょう。

1-1. 表書きの書き方

お布施の表書きは、「御布施」または「お布施」と「フルネーム」または「〇〇家」を縦書きで、丁寧に書きます。

以下を参考に記入しましょう。

表書きの書き方

1-2. 中袋の書き方

中袋は、お布施のお金を入れる封筒です。

表面に金額、裏面に住所・氏名を書きましょう。

表面には「金〇万円也」、裏面の左下に「郵便番号」「住所」「喪主のフルネーム」を縦書きで記載します。

連絡がくる場合を考え「電話番号」も記載しておくと良いでしょう。

1-3. 裏面の書き方

お布施の封筒の裏面には、特に記載するものはありせん。

ただし、中袋がない場合は、左下に「金額」と「郵便番号」「住所」を縦書きで書きましょう。

裏面は、中袋の有無によって、記載内容が変わります。

2. お車代・御膳料・式場使用料・心付けの書き方

お車代・御膳料・式場使用料・心付けは、それぞれ別の封筒を用意します。

表と裏面の記載は、お布施の際と同様です。

表書きは、封筒の中央部に「名目」と「フルネーム」を記載します。

また裏面は、封筒の左下に「郵便番号」「住所」「金額」を縦書きで記載します。

3. お布施を書く際の3つの注意点

お布施を書く際には、以下の3つの注意点があります。

  • 黒墨(濃いやつ)でボールペンはNG
  • 住所や金額も記載
  • 金額は漢数字

1つずつ解説します。

3-1. 黒墨で(濃いやつ)ボールペンはNG

お布施の表書きは、必ず濃い黒墨で書き、ボールペンや薄墨は使わないようにしましょう。

香典の場合は、悲しさを表すために薄墨を使用します。

一方で、お布施は「感謝の気持ち」を伝えるため「濃い黒墨」を使用するのがマナーです。

「マジックやペンも可能」と言われる場合もありますが、相手に「手を抜いている」「軽んじている」と受け取られる場合もあるでしょう。

お布施を書く際は毛筆か筆ペンを使い、黒くはっきりと書くようにします。

3-2. 住所や金額も記載

お布施には、必ず住所と金額を記入しましょう。

お寺が誰からどのくらいのお布施を受け取ったかを正しく記録するためです。

たとえば、複数の人が同じ日にお布施を持参した場合、封筒に住所や金額が書かれていないと、どれが誰のものか分からなくなります。

そのため、中袋には金額と差出人の住所・名前を記入しましょう。

中袋をつけない場合は封筒の裏面に記載します。

3-3. 金額は漢数字

お布施の金額を書くときは、必ず「旧字体」の漢数字を使いましょう。

漢数字は改ざんされにくく、正式な場で使われる丁寧な表記だからです。

たとえば、「30,000円」とアラビア数字で書いてしまうと、「マナーを知らない」と悪い印象を与えたり、不正に書き換えられたりするおそれがあります。

以下の対応表を参考に、金額を記載しましょう。

  • 旧字体漢数字対応表

4. 宗教によって書き方が異なる

宗教によって、お布施の書き方やルールが異なります。

宗教ごとの違いを知っておかないとマナー違反になる可能性もあるため注意しましょう。

今回は、以下の宗教のお布施の書き方を紹介します。

  • 神道
  • 仏教
  • 浄土真宗
  • キリスト教

1つずつ書き方を解説します。

4-1. 神道

神道のお布施は、神職に対するお礼です。

そのため、お布施の表面には以下のいずれかを記入します。

  • 御玉串料
  • 御神前料
  • 御祭祀料
  • 御祈祷料
  • 御礼

4-2. 仏教

仏教では、お布施の表面には以下のいずれかを記載するのが一般的です。

  • 御布施
  • お布施
  • 御回向
  • 御経
  • 御礼

ただし「御経料」や「戒名料」などの「~料」という記載は、労働への対価のように感じられる方もいます。

「感謝の気持ち」であることを伝えるために、「~料」は省くのが良いでしょう。

4-3. 浄土真宗

浄土真宗では、お布施の表書きには「御布施」または「お布施」と書くのがマナーです。

浄土真宗は、僧侶や寺院に対してではなく、阿弥陀如来に対する感謝を表すものとしてお布施を渡します。

「回向料」「読経料」「志」「戒名料」という表書きは、僧侶に向けたもののため浄土真宗の場合は、表記しないように注意しましょう。

4-4. キリスト教

キリスト教では、お布施の表書きは宗派によって異なります。

  • プロテスタント:「献花料」「御花料」「忌慰料」
  • カトリック:「御花料」「御霊前」「御ミサ料」

キリスト教では「お布施」とは記載しないため注意しましょう。

5. お布施の封筒を選ぶ際のポイント

お布施をの封筒を選ぶポイントは、以下の3つです。

  • お布施の封筒は白無地か奉書紙
  • お車代・御膳料・式場使用料は白い封筒
  • 心付けは不祝儀袋やポチ袋でもOK

1つずつ解説します。

5-1. お布施の封筒は白無地か奉書紙

お布施の封筒は、白無地か奉書紙を使いましょう。

奉書紙は、厚手の和紙で、お布施を包む際に使用されます。封筒は、お布施を包む簡易的な方法です。印字が無い白無地のものを選びます。

感謝の気持ちを、しっかりと伝えたい場合は奉書紙を選ぶと良いでしょう。

5-2. お車代・御膳料・式場使用料は白い封筒

お車代・御膳料・式場使用料などは、お布施と別の白い無地の封筒に入れましょう。

封筒への記載内容は、お布施の時と同様です。面の中央に、「名目」と「フルネーム」を記載し、裏面左下に「郵便番号」「住所」「金額」を記載します。

使用する封筒の選び方や書き方は、お布施と同様です。お布施用の封筒は、多めに購入しておきましょう。

5-3. 心付けは不祝儀袋やポチ袋でもOK

心付けは、葬儀の進行を手伝ってくれた方へお礼の気持ちを表すものです。

包むものは、不祝儀袋やポチ袋でも問題ありません。

感謝を伝えるもののため、相手が受け取りやすいポチ袋を使用するとよいでしょう。

6. お布施の包み方とマナー

お布施の包み方とマナーで気を付けたいポイントは以下の4つです。

  • 奉書紙の包み方
  • 白封筒の包み方
  • 紙幣の表側・肖像画が上側
  • 新札・くたびれていない紙幣

1つずつ解説します。

6-1. 奉書紙の包み方

お布施を包むときは、奉書紙で丁寧に包むのが正式なマナーです。

まずは半紙を使って、紙幣を「中包み」で包んだ後、中包みを奉書紙で包みます。

  • 中包みの方法
  1. 半紙を斜めに置いて、紙幣の肖像画を上にして置く。
  2. 下の角を上に折る。
  3. 左端、右端の順番で中央に向かって折る。
  4. 紙幣の大きさに合わせて、下に向かって折る。
  5. 余った部分を裏側に折り返す。
  6. 折り返しの三角が右下にくるようにして表書きをする。

奉書紙の包み方

  •  奉書紙の包み方
  1. 奉書紙のザラザラ面を上にして置く
  2. 中央に中包みを置き、左→右→下→上の順に折る

6-2. 白封筒の包み方

白封筒は、印字のない白封筒を選びます。

表面に「お布施」または「御布施」のみが印字されているものであれば問題ありません。

封筒の表側かつ上部(入り口)に肖像画がくるように、紙幣を入れます。

また白封筒を使用する場合は、中袋は不要です。

6-3. 紙幣の表側・肖像画が上側

お布施に入れる紙幣は、表側(肖像画のある面)を上にし、お札の向きをすべて合わせます。

また表側を上にして封筒を開けた時に、最初にお札の肖像画が見えるように入れましょう。

香典の場合は、お金の入れ方は反対です。

お布施は感謝の気持ちを伝えるものです。

そのため、お布施の紙幣の入れ方は、祝い事と同じだと覚えておきましょう。

6-4. 新札・くたびれていない紙幣

お布施には、新札やきれいな紙幣を使うのがマナーです。

お布施は、僧侶への感謝や敬意を伝えるもののため、新札を渡すと相手に丁寧な印象を与えます。

しかし、葬儀は急なことのため銀行に行けず、新札が準備できないことがあります。

そのときは、汚れやシワが少ないキレイなお札を選びましょう。

7. お布施の金額相場

お布施で、いくらを包めばよいかを悩む方もいるでしょう。

宗派や居住地域によって相場は異なります。

今回は以下の6つの金額相場について解説します。

  • 読経
  • 戒名
  • お車代
  • 御膳料
  • 式場使用料
  • 心付け

7-1. 読経

読経は、僧侶がお経を読んでくれたお礼の気持ちを表すものです。

読経に対するお布施の相場は、1回で3〜5万円程度とされています。

読経のお布施は、相場である3〜5万円を目安にしつつ、故人や家族の気持ちを込めて準備しましょう。

7-2. 戒名

戒名は、仏様の世界の故人の名前です。

戒名をつけてもらうときの相場は、10~50万円程度です。

金額は戒名の位によって変わります。

ただし、宗派や地域で違いもあるため、住職に相談して無理のない金額にしましょう。

7-3. お車代

お車代とは、僧侶が自宅や式場へ来てくれた際の交通費を感謝の気持ちとして包むものです。

お車代の相場は、3千〜1万円程度です。

地域や距離によって金額に差はありますが、あくまで気持ちを伝える意味が大きいため、高すぎる必要はありません。無理のない範囲で渡しましょう。

7-4. 御膳料

御膳料とは、本来なら会食でもてなす代わりに渡す食事代のことです。

御膳料の相場は、5千〜1万円程度が一般的です。

お車代と同じく、地域や宗派によって差があります。

形式的な費用ではなく、感謝を形にするものと考えましょう。

7-5. 式場使用料

式場使用料のお布施相場は、およそ3〜10万円が目安です。

葬儀を行う会場を借りるための費用で、場所の広さや設備、地域によって金額は異なります。

公民館の一室や火葬場と併設の公営斎場は、安く借りられます。

事前に見積もりをとり、予算に合った式場を選ぶことが大切です。

お布施の中でも式場使用料は必要な支出として考えられるため、無理のない金額で準備しましょう。

7-6. 心付け

心づけとは、葬儀の手伝いをしてくれた人への感謝の気持ちとして渡すお金です。

感謝の気持ちを形にしたもので、必ずしも決まった金額があるわけではありません。

例えば、火葬場で働く人や受付をしてくれた人に、1〜5千円ほど包むことが多いです。

心づけは、必ずしも必要なものではありません。形式ではなく、感謝の心を大切にしましょう。

8. お布施を渡す際のマナー

お布施を渡す際には、タイミングや渡し方のマナーがあります。

葬儀は準備の段階からバタバタと人が動くこともあり、渡すタイミングは難しい場合があります。

また渡し方にもマナーがあるため、失礼のないように渡すのも大切です。

お布施を渡す際のマナーを確認しましょう。

8-1. お布施を渡すタイミング

お布施は、読経が始まる前の控室で静かに渡すのがマナーです。

しかし、葬儀の進行状況によっては渡せないこともあります。

その場合は、葬儀後に渡しましょう。

タイミングが分からない場合は、葬儀社の方に事前に聞いておくと安心です。

8-2. 手渡しNG!切手盆か袱紗を使う

お布施は、直接手渡しせず、切手盆(きってぼん)か袱紗(ふくさ)にのせて丁寧に渡します。

お布施を手渡しで渡したり、袱紗に包んだまま渡したりするのは、マナー違反です。

切手盆や袱紗に載せて、僧侶からお布施の表書きが正面になる向きで渡しましょう。

8-3. 複数ある場合には重ね方に注意

お布施を含む封筒が複数あるときは、一番上にお布施がくるように重ねます。

封筒は、上から以下の順番で重ねます。

  • お布施
  • 戒名
  • お車代
  • 御膳代

重ね方ひとつにもマナーがあるため注意しましょう。

9. お布施を書く際は意味を知っておこう!

お布施を書くときは、その意味をしっかり知っておくことが大切です。

お布施の意味が分かると、すべてのマナーを把握しなくても、失礼なことをしてしまうことが無くなります。

また葬儀の場で渡すものに「香典」があります。香典との違いを含めて、お布施とは何かを解説します。

9-1.お布施は何に対して渡すの?

お布施は、お坊さんの読経や供養に対する「感謝の気持ち」を表すために渡すものです。

つまり、お経を読んでもらった対価ではなく、感謝を伝えるためのものです。

葬儀の場で渡すものですが、お悔やみの気持ちを表すものでないため「慶事」と同じようなマナーで整える必要があります。

9-2. 香典とは何が違う?

お布施と香典の大きな違いは、「渡す相手」と「目的」です。

  • 目的
    ・お布施:お坊さんへの感謝を表す
    ・香典:故人の家族へのお悔やみの気持ちを表す
  • 渡す相手
    ・お布施:お坊さん
    ・香典:遺族

お布施は「慶事」と同じマナーですが、香典はお悔やみの気持ちを表現することから、お布施とは正反対のマナーです。

10. お布施は相続税の控除対象

お布施は、相続税の計算をするときに「葬式費用」として差し引くことができます。

ただし、領収書やレシートなどの記録を残しておくことが必要です。また、初七日や四十九日で使ったお布施や、香典返しなどは相続税の控除対象にはなりません。

お布施は単なる出費ではなく、相続税の控除にもつながるもののため注意しましょう。

11. お布施の書き方・マナーを身につけよう

お布施は、ただ渡せばよいというものではなく、正しい書き方やマナーを守ることが大切です。

葬儀は突然のことのため、葬儀マナーが分からず不安になる方も多いでしょう。

そのため、事前に確認することで葬儀が円滑に進みます。

また、お布施は相続税の控除対象のため、相続税に悩んでいる方は税の専門家である税理士に相談するのがおすすめです。

日本クレアス税理士法人は、幅広い顧客層から得られた豊富な経験やノウハウをもとに幅広いサービスを提供し、全国11拠点を展開しています。

相続税に不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士

2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

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