相続税の計算・申告は終了したけど、納付の方法がわからないという方もいるでしょう。相続税は申告・納付期限が「相続開始から10ヶ月以内」と定められているので、納付が遅れてしまうとペナルティが課せられます。
そこで本記事では、「納付書はどこでもらえるの?」「書き方や提出先・方法が知りたい」という方に向けて相続税の納付について解説します。
相続税納付書の取得方法が知りたい、納付を正確に行いたいという方はぜひご覧ください。
目次
1. 相続税の納付書はどこでもらえる?提出先は?
相続税の納付書は税務署や銀行・郵便局にてもらうことができます。
基本的に相続税を納付する場合には、相続税とともに納付書を準備しなければなりませんので、納付書も忘れずに準備しましょう。
提出先は税務署が基本ですが、納付の方法によっては納付書自体が必要ないケースもあります。
下記では納付書が必要な場合を想定して、各窓口で納付書をもらう方法や納付書の必要枚数を解説します。
1-1. 相続税の納付書を税務署でもらう2つの方法
相続税の納付書は税務署の窓口でもらうことができます。
住所地の税務署でなければならないなどの制約はないため、最寄りの税務署を訪ねましょう。窓口で依頼する際に納税地の税務署名を伝えることで、その税務署用の納付書を発行してもらうことが可能です。
また、何らかの理由で税務署を訪れることが難しい場合には、郵送で納付書の送付依頼を出すこともできます。
送付依頼を出す場合には、送付依頼書・返答用の封筒を同封して税務署へ送りましょう。
<送付依頼書に書く内容>
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なお、すべての税務署が郵送依頼に対応しているかは定かではありませんので、事前に電話して確認をとりましょう。
1-2. 銀行や郵便局でもらう方法
相続税の納付書は税務署だけでなく、銀行や郵便局でもらうことも可能です。
しかし、地方の銀行や郵便局には置かれていないことも多いため、みずほ・三菱UFJ・三井住友銀行などのメガバンクを訪ねるといいでしょう。
相続税の申告書は国税庁のホームページからダウンロードが可能ですが、納付書についてはネット上からダウンロードができないため注意が必要です。
1-3. 相続税の納付書は何枚必要?
相続税の納付書は、相続税を納める相続人1人につき1枚必要です。そのため、相続人が5人いた場合には最低でも5枚、書き損じてしまった場合を考えて1人2枚ほどもらっておくといいでしょう。
2. 相続税の納付書の書き方|項目ごとに解説!
相続税の納付書は記入項目がさまざまありますので、書き方や注意点を項目ごとに解説します。
<相続税納付書の項目>
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それぞれの書き方を理解して適切に納付できるようにしましょう。
2-1. 年度
まずは年度から記入していきましょう。
この年度の部分には相続税を納付する会計年度を記入します。会計年度は、4月1日から次の年の3月31日までを一区切りとして設定されている期間です。
たとえば、相続税の納付日が令和5年度の4月1日から令和6年度の3月31日であれば、令和5年度を表す「05」を記入します。
2-2. 税目番号
税目番号は、税金の種類ごとに定められている番号でどの税金を納付するのかを表します。
相続税の税目番号である「050」を記入しましょう。
2-3. 税務署名・税務署番号
税務署にはそれぞれに固有の税務署番号が割り当てられているため、税務署名とともに記入しましょう。
税務署は相続人の住所地ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄している税務署になりますので注意しましょう。
国税庁のホームページから管轄の税務署を調べ、管轄の税務署に税務署番号を確認しましょう。
また、国税庁相談センターに問い合わせても税務署番号を知ることができます。
しかし、管轄の税務署にて納付書をもらう場合にはすでに税務署名と税務署番号が印字されている場合がほとんどです。
2-4. 整理番号
整理番号とは税務署が納税者に対して付与する数字です。
税務署側が記入する項目のため、こちらでは何も記入する必要はありません。
2-5. 税目
税目は税の種類を記入する欄になっているため、「相続」または「ソウゾク」と記入しましょう。
漢字・カタカナどちらであっても問題ありません。
2-6. 納期等の区分
納期等の区分は上段と下段がありますが、上段のみ記入します。
上段には、相続の開始日である被相続人が亡くなった日を記入しましょう。
たとえば、被相続人が亡くなった日が令和5年の5月1日の場合には、「05.05.01」と記入します。
なお、下段に関しては記入不要です。
2-7. 申告区分
申告区分はどのような申告であるのかを選択する欄です。
相続税の期限内に納付する場合には、「4 確定申告」の部分に⚪︎印をつけましょう。
2-8. 住所(所在地)・電話番号
住所(所在地)の欄には、相続人と被相続人どちらの住所も記入します。
上段に被相続人の住所、下段に相続人の住所を記入しましょう。
電話番号の部分に関しては、相続人の電話番号(連絡が取りやすい番号)を記入します。
2-9. 氏名(法人名)
氏名(法人名)の欄にも同じように相続人と被相続人の氏名を記入します。
上段に被相続人の名前、下段に相続人の名前です。
その下のフリガナの欄には相続人の名前のフリガナを記入しましょう。
2-10. 本税
本税の欄には相続税の金額を記入しましょう。
相続税を計算しておくとスムーズに記入を進められます。
下の欄には重加算税や延滞税などを記入する欄がありますが、こちらは記入不要です。
仮に重加算税などが発生している場合でも税務署のほうで記入されます。
2-11. 合計額
合計額には本税の欄で入力した相続税の金額の先頭に「¥」をつけて記入します。
ほかの記入箇所に関しては、書き損じた場合に二重線で訂正が可能ですが、合計額の欄は修正ができませんので注意しましょう。
そのため間違ってしまった場合には、新しい納付書で書き直さなければなりません。
3. 相続税の7つの納付方法
相続税の納付方法は近年増加しており、今ではスマホアプリからも納税できる仕組みが整備されています。
全部で7つの方法がありますので、すべて紹介します。
<相続税の納付方法>
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それぞれの方法の特徴を理解して、自分に合った納付方法を選択しましょう。
3-1. 税務署
スタンダードな方法としては、税務署の窓口で直接納付する方法が挙げられます。
税務署に納付する場合には納付書に不備があれば、すぐに指摘してもらうことができるなど、確実性が高いというメリットがあります。
しかし下記の2点には注意しましょう。
<税務署で納付する場合の注意点>
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平日の日中に仕事の都合などで時間が取れない場合には、ほかの方法を選択しましょう。
3-2. 金融機関
金融機関でも相続税を納付することは可能です。
基本的に銀行・郵便局・信用金庫など、どこでも納付できます。
しかし、窓口は平日の15時ほどまでしか空いていない金融機関がほとんどです。
3-3. ダイレクト納付(e-Tax)
ダイレクト納付とは、相続税の申告をe-Taxで行っていた場合に利用できる方法です。
申告したe-Taxからそのまま納付ができるため、オンラインで完結できる点がメリットでしょう。
しかし毎年行う確定申告とは異なり、1回の相続のためにe-Taxを利用するには手間がかかりすぎるため、あまりおすすめできません。
なお利用する際には、e-Taxへの登録にくわえ、納付利用開始届(1ヶ月ほどかかる)を税務署に提出する必要があります。
3-4. クレジットカード
クレジットカードで相続税を納付するのも1つの方法です。
クレジットカードで支払う場合には、納付書を作成する必要がない点、ポイントつけられる点がメリットでしょう。
しかし、下記の2点には注意が必要です。
<クレジットカードで納付する際の注意点>
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また、ポイントはクレジットカードの会社によって、付かない場合もありますので注意しましょう。
3-5. コンビニ
納付用のQRコードがあれば、コンビニで相続税を納付することも可能です。
しかし、QRコードは税務署に直接申し出るか、国税庁のホームページから自分で作成する必要がありますので注意しましょう。
また、クレジットカードや電子マネーが使えない点、1回につき30万円までしか納税できない点にも注意が必要です。
3-6. インターネットバンキング
インターネットバンキングに対応している金融機関であれば、インターネットバンキングで相続税を納付可能です。
しかし、e-Taxと連携する必要があるため、手間が大きい点はデメリットでしょう。
インターネットバンキングでの納付については、国税庁のホームページから詳しい内容が確認できます。
3-7. スマホアプリ
令和4年12月1日から、スマホアプリ(○○Pay等)を利用して、国税を納付できるようになりました。
相続税も例外ではなく、「国税スマートフォン決済専用サイト」から納付できます。
<2023年7月時点で利用できる決済サービス>
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しかし、1回につき30万円までしか納付できませんので注意しましょう。
4. 相続税を納付する際の注意点
相続税を納付する際に、とくに注意すべき点を4つピックアップしましたので紹介します。
<相続税を納付する際の注意点>
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注意点を理解し、適切な方法で相続税を納付しましょう。
4-1. 申告・納付期限を過ぎるとペナルティがある
相続税の申告・納付には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」という期限が設けられています。
この期限を過ぎてしまった場合には、加算税・延滞税などのペナルティが課せられてしまいますので注意しましょう。
特別な理由がある場合には期限の延長も認められますが、ほとんどの場合では延長はできませんので注意が必要です。
4-2. 納付は現金一括が原則
相続税の現金一括での納付が原則とされていますので注意しましょう。
振込での納付はインターネットバンキングしか対応していませんので、窓口で納付する場合には現金を用意する必要があります。
しかし、現金での一括納付が難しい場合には下記の手段を用いることが可能です。
<現金一括が難しい場合に利用できる手段>
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物納とは相続財産のなかから、不動産屋株式など価値のある財産を現金の代わりとして納付する方法です。
また、延納は相続税を分割して払う方法で原則としては5年間ですが、特定の条件を満たす場合には20年間の延納が認められる場合があります。
4-3. ほかの相続人の肩代わりすると贈与税が課せられる
ほかの相続人の相続税を肩代わりしてしまうと、贈与したとみなされ贈与税が課される場合がありますので注意が必要です。
そのため、相続税を納める際は必ず自分の口座のお金から支払いましょう。
ただ、すぐに精算している一時的な肩代わりであれば、贈与とはみなされませんので安心してください。
4-4. 連帯納付義務に注意する
相続税には連帯納付義務があり、1人でも相続人が相続税を払わなかった場合には、ほかの相続人にも支払い義務が生じます。
実際に相続税法の34条では下記のように定義されています。
引用元:相続税法第三十四条 |
相続税を支払わないと、ほかの相続人にも迷惑がかかってしまいますので注意しましょう。
5. 相続税の納付や納付書についてよくある質問
相続税の納付や納付書についてよくある質問を5つ紹介します。
<よくある質問>
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疑問点を解消し、相続税の納付で間違わないようにしておきましょう。
5-1. 「領収済通知書」とは何ですか?
領収済通知書は納付書のことを指し、税務署や金融機関で納付書をお願いするともらえる書類です。
領収済通知書の左側に、(納付書)と記載されているはずですので安心してください。
5-2. 納付書の書き方を間違えてしまったときはどうしたらいい?
納付書を書き損じてしまった場合には、二重線で取り消して修正しましょう。
ほとんどの場合は二重線での訂正が認められていますが、合計額の欄に限り修正が認められていません。
もし合計額の欄を書き損じてしまった場合には、新しい納付書で書き直す必要があります。
5-3. 申告・納付期限が土日・祝日の場合はどうする?
申告・納付期限が土日・祝日と重なっている場合には、その次の平日が申告・納付の期限となります。
たとえば、土曜日が納付期限で月曜日が祝日の場合には、次の平日である火曜日が申告・納付の期限です。
5-4. 納付と申告に適切な順番はありますか?
相続税は申告と納付どちらも漏れてはいけませんが、適切な順番はありません。
期限内であれば、申告・納付どちらから行っても問題ありませんので安心してください。
5-5. 相続した現預金から払ってもいいの?
相続手続きが終了していれば、相続した財産から相続税を支払うことができます。
相続税は相続人の財産から払うことが原則とされていますが、手続きが終了していれば自分の財産とみなされるからです。
そのため相続した財産のなかに現預金があれば、そこから相続税を支払っても問題ありません。
6. 相続税納付書の記入方法を知り正しく納付しよう!
ここまで相続税の納付書について詳しく解説してきました。
相続税の納付書は、最寄りの税務署や金融機関でもらうことができますので、本記事を参考に正しく記入して納付しましょう。
現在ではさまざまな納付方法が選択できますので、自分に合った納付方法を選ぶことが大切です。
なかにはポイントが貯まる方法もありますので、少しでもお得に相続税を納付するといいでしょう。
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