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ーコラムー
家族信託
税理士監修記事

家族信託手続きの流れを解説!所要期間や費用を紹介

公開日:2023.8.29 更新日:2023.09.01

家族信託手続きとは、特定の目的を持って自身の財産を信頼できる人に託し、運用や処分を任せることができる仕組みです。

財産管理方法の1つで、認知症による資産凍結を防げるなどのメリットがあります。

家族信託を開始する場合には、信託契約を結ぶなどの手続きが必要ですが、どのような流れで進めていけばいいのでしょうか。

本記事では、家族信託手続きの流れや所要期間・費用を解説します。

家族信託の手続きについて知りたいという方はぜひご覧ください。

1. 家族信託手続きの流れ・やり方の流れ

家族信託手続きは下記の流れで進めていきましょう。

<家族信託手続きの流れ>

  1. 家族信託を利用する目的や内容を話し合い決定
  2. 信託契約書の草案を作成
  3. 信託契約書を公正証書で作成
  4. 信託財産を受託者名義に変更
  5. 信託口口座など信託用の口座を開設
  6. 家族信託の財産運用を開始

家族信託は認知症対策の方法として、近年需要が増加している財産管理方法です。

手続きには法律・相続・税金などさまざまな知識を必要とするため、専門家とともに手続きを進めていきましょう。

下記では、それぞれのステップについてどんな手続きが必要になるのか、やり方を解説します。

1-1. 家族信託を利用する目的や内容を話し合い決定

家族信託手続きを行う際は、まず利用する目的や内容を話し合って決定しましょう。

家族信託をどういった目的で利用するのか、誰を受託者としてどの財産を信託するのかなど、家族信託の設計には話し合いが必要です。

家族信託の関係者はもちろん、影響を受ける可能性がある人達とも必ず話し合いましょう。

全員が納得する形で合意できなければ、後からトラブルの原因となってしまうため、この過程を疎かにしてはいけません。

1-2. 信託契約書の草案を作成

全員で納得する内容が出来上がったら、信託契約書の草案を作成しましょう。

家族信託では、委託者と受託者が委託契約を結ぶ必要があるため、信託契約書が必要になります。

信託契約書はインターネット上にテンプレートが掲載されていますが、制度自体が新しいため、契約書の形式も確立されたものではありません。

そのため、必須項目を含めることができれば、自分で作成することも可能です。

信託契約書を作成する際には、下記の項目を必ず記載しましょう。

<信託契約書の必須項目>

  • 委託者・受託者
  • 受益者・二次受益者
  • 信託目的
  • 信託する財産
  • 信託する財産の管理方法
  • 信託の変更・終了事由
  • 財産の帰属先

ただ、内容や形式をミスしてしまうと契約書としての効力が発揮されないため、専門家に依頼することがおすすめです。

費用はかかってしまいますが、希望通りの家族信託を実現させるためには、専門家の力を借りることが近道になります。

1-3. 信託契約書を公正証書で作成

信託契約書の草案が完成したら、公正証書で契約書の作成を行いましょう。

公正証書とは、公証役場で公証人立ち会いのもと作成される公文書です。

作成した契約書の原本が20年間公証役場に保存されるので、紛失や盗難・改ざんの危険性が一切ありません。

また、証拠・信用力に優れているため、公正証書にすることで契約を確実なものにできます。

公正証書での作成は、下記の手順で行いましょう。

<公正証書にする手続きの流れ>

  1. 公証役場の予約を取る
  2. 費用や書類を持参し公証人と面談する
  3. 公正証書の作成日を決定する
  4. 公証役場で公正証書を作成する
  5. 公正証書の正本・謄本を受け取る

公正証書の作成には、実費として5,000円~25万円ほどが必要ですので注意しましょう。

なお、費用は信託財産の金額に比例して高くなります。

1-4. 信託財産を受託者名義に変更

契約書を作成するだけでは、信託財産の管理・処分権は譲渡されません。

信託財産の管理を行うためには、委託者の名義から受託者の名義に変更する必要があります。

たとえば不動産がある場合には、信託登記を行います。

不動産を信託財産とする場合には、その不動産が信託財産であることを公示しなければなりません。

公示するための登録手続きが信託登記となり、登録免許税がかかりますので注意しましょう。

1-5. 信託口口座など信託用の口座を開設

信託財産は分別管理義務に則り、個人資産とは明確に分けて管理しなければなりません。

信託財産を管理する方法としては、信託口口座を開設するか、信託用の普通口座を開設するかの2つの方法があります。

どちらで管理しても問題はありませんが、信託口口座の場合には、差し押さえの対象にならない、口座凍結しないといったメリットがあるためおすすめです。

しかし、信託口口座を取り扱っている銀行は多くないため、対応している銀行を探す必要があります。

信託口口座では「委託者〇〇受託者△△信託口」というように連名で口座を開設します。

どちらの個人資産にもあたらない資産になるため、どちらかが亡くなった場合でも口座が凍結されることがありません。

通常の口座でもメリットはありますが、信託口口座で作成しておくと、万が一の際でも安心でしょう。

1-6. 家族信託の財産運用を開始

ここまでが完了したら、家族信託の財産運用を開始しましょう。

信託財産が金銭の場合には、委託者の口座から信託口口座に送金してはじめて、運用を開始できます。

受託者にはさまざまな義務が課せられているため負担も大きいですが、適切に管理できるように進めていきましょう。

<受託者に定めれらた義務>

  • 善管注意義務(信託法29条)
  • 忠実義務(信託法30条)
  • 分別管理義務(信託法34条)
  • 信託事務を第三者に委託する際の選任・監督義務(信託法35条)
  • 帳簿等の作成・報告・保存義務(信託法36条・37条)

とくに、帳簿作成・報告・保存の義務は重く、定期的に信託財産の収支を委託者に報告しなければいけません。

また税務署への申告も必要になるなど、会計の知識も求められるでしょう。

2. 家族信託の手続き前に決めるべきこと

家族信託の手続きを始める際には、事前に下記の項目を決めておきましょう。

<家族信託手続きに際して決めるべきこと>

  • 家族信託を利用する目的
  • 家族信託の利用期間
  • 家族信託で信託する財産
  • 帰属権利者
  • 信託監督人・受益代理人の設置
  • 期間満了後、家族信託をどうするか

すべての項目について、関係者全員で話し合い共通認識を持ちましょう。

どのように決めていくのか、それぞれの項目について解説します。

2-1. 家族信託を利用する目的

まずは家族信託を利用する目的を決定しましょう。

家族信託は、認知症対策として注目を集めている財産管理法ですが、さまざまな目的を持って利用することが可能です。

<家族信託の目的例>

  • 親亡き後問題の対策
  • 事業承継
  • 財産管理の自由度を上げたい
  • 子供や孫の負担を減らしたい など

よく勘違いされている場合がありますが、家族信託に節税効果はありませんので注意しましょう。

目的によって信託内容が大きく変わりますので、まずは何を目的とするのか決めることが大切です。

2-2. 家族信託の利用期間

目的が決定したら、家族信託の利用期間を決定しましょう。

委託者は信託の存続期間を定める必要があり、信託が存続する期間のことを信託期間と呼びます。

原則として信託期間には制限が設けられていないため、期間を長く設定することも可能です。

実務においては信託目的が達成できるだけの期間を検討し、設定することになるでしょう。

一般的な家族信託では下記のような終了事由によって、期間が設定されることが多いです。

<家族信託の終了事由の例>

  • 受益者が死亡するまで
  • 受託者が死亡するまで
  • 当初受益者・第二受益者が死亡するまで
  • 受益者及び受託者の合意があったとき など

なお、受益者連続信託では、信託期間に法的な制限があるため注意が必要です。

第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

引用:信託法第91条

このように、受益者連続信託では30年を限度として期間が設定されています。

2-3. 家族信託で信託する財産

家族信託で信託する財産は慎重に選ぶ必要があります。

目的に合わせた財産内容になっているのか、委託者が管理・運用できなくても問題ないかなど、さまざまな観点から信託財産を選択しましょう。

たとえば、事業承継を見据えている場合には自社の株式が信託財産に、認知症対策であれば不動産や金銭が信託財産になることが多いです。

2-4. 帰属権利者

家族信託が終了した際に財産が残っていれば、その財産は指定した人に承継されます。

この財産を承継する人のことを帰属権利者と呼び、信託契約では財産の承継先を指定できます。

家族信託の終了事由を「委託者の死亡」としていた場合には、帰属権利者が実質的な相続人になります。

そのため、帰属権利者を指定する際は、相続のことも考えて選ばなければいけません。

相続人同士の不平等感を生んでしまわないか、遺留分は侵害していないかなど、さまざまな観点を考慮し帰属権利者を指定しましょう。

2-5. 信託監督人・受益者代理人の設置

家族信託では「信託監督人」・「受益者代理人」という立場の人を設置可能です。

信託監督人とは受託者を監督する人を指し、適切に財産が運用されているか、法律や信託の目的が遵守されているかなどを確認します。

信託監督人は、委託者が高齢などで受託者を満足に監視することができない場合に設置されることが多いです。

受託者は大きな裁量権を持っていますので、信託監督人を設置することでほかの家族や親族も安心できるでしょう。

受益者代理人とは、文字通り受益者の代理を務めることができる人を指します。

信託法において「受益者のために受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」ことが規定されています。

受益者が認知症などになってしまった場合でも、受益者代理人がいれば代わりにさまざまなことを行うことが可能です。

両者は必ず設置しなければいけない役割ではないため、状況に合わせて設置するか検討しましょう。

2-6. 期間満了後、家族信託をどうするか

家族信託の終了自由を満たし、期間が終了した後に家族信託をどうするかという点も決めておきましょう。

具体的には信託を終了して相続人に財産を分配するか、新たな受益者を立てて信託を継続するかの2つの方法があります。

これは委託者の意思も含めて、関係者全員で話し合って決定する必要があるでしょう。

3. 家族信託手続きにかかる費用

家族信託手続きには、下記の費用がかかります。

<家族信託手続きにかかる費用>

  • 専門家のコンサルティング報酬
  • 公正証書の作成費用
  • 各種税金

家族信託では初期費用が一番大きくなるため、事前に費用を見積もっておくと安心です。

それぞれの費用についてみていきましょう。

3-1. 専門家のコンサルティング報酬

家族信託は専門家へコンサルティングを依頼することが一般的ですが、コンサルティング報酬は信託財産の0.5~1%が相場となっています。

たとえば信託財産が1,000万円だった場合、5~10万円が相場になります。

家族信託全体のコンサルだけでなく「契約書の作成だけ手伝って欲しい」・「公正証書を作成してほしい」など、部分的な依頼も可能です。

ただ、内容や金額は依頼する専門家によって異なるので注意しましょう。

安くても高くても、相場から離れている場合には、内容と見合っているか確認することが重要です。

3-2. 公正証書の作成費用

公正証書の作成には、公証役場に支払う費用が発生します。

実費として5,000円~25万円ほどが必要になりますので、事前に用意しておきましょう。

<公正証書の作成にかかる費用>

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11,000円
500万円を超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円を超え1億円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

引用:日本公証人連合会公式HP

信託財産の価額に伴って、上記のようにかかる費用が異なります。

3-3. 各種税金

家族信託を利用すると、下記の税金がかかる可能性があります。

<家族信託でかかる可能性のある税金>

  • 所得税(住民税)
  • 相続税
  • 贈与税
  • 登録免許税(信託登記)

家族信託では、信託内容によってかかる税金が異なります。

委託者と受益者が同一の自益信託では、所得税と相続税がかかります。

一方、委託者と受益者が異なる他益信託の場合には、贈与税と相続税の対象になります。

そして、信託財産に不動産がある場合には信託登記が必要になり、信託登記には登録免許税がかかります。

税額は対象となる金額によって異なるため、一概にこのくらいの費用がかかるということはいえません。

ただ、受け取ることになる利益や財産価額が分かれば、おおよその費用を求めることは可能です。

4. 家族信託手続きにかかる期間

家族信託の開始手続きは、1ヶ月程でできる場合もあれば、半年以上かかる場合もあります。

なぜなら、家族信託は利用する人によって内容が異なるため、必要な手続きが異なるからです。

また、信託内容がなかなかまとまらないといったことも想定できるでしょう。

信託口口座を作成したり、公正証書を作成したりといったことでも必要な期間が異なってきます。

半年ほどかかることを想定して、早め早めに動き出すといいでしょう。

5. 家族信託手続きについてよくある質問

家族信託手続きについて、よくある質問をまとめましたので紹介します。

<家族信託手続きについての質問>

  • 家族信託の30年ルールとはなんですか?
  • 家族信託手続きは専門家に依頼するべき?

疑問を解消し、家族信託を利用する際にお役立てください。

5-1. 家族信託の30年ルールとはなんですか?

家族信託では「30年ルール」というものが存在します。

この30年ルールとは、受益者連続信託における、信託期間の制限のことです。

具体的には「信託開始から30年を経過した後は、受益権の承継は1度しか認められない」というルールが定められています。

5-2. 家族信託手続きは専門家に依頼するべき?

家族信託の手続き自体は、自分でも行うことができますが、専門家に依頼することがおすすめです。

なぜなら家族信託手続きには、相続・税金・法律などさまざまな知識を必要とするため。

また、比較的新しい制度でまだまだ確立されていない部分もあるからです。

自分だけで行おうとすると、契約に効力を持たせられなかったり、内容に矛盾が生じてしまったりと、後々トラブルになる可能性があります。

家族信託手続きは、専門家に依頼して行いましょう。

6. まとめ

ここまで家族信託手続きについて解説しました。

家族信託の手続きは全6ステップで行いますが、それぞれのステップごとに大切な手続きが存在します。

とくに家族信託を利用するうえでは、家族や関係者全員の合意を得ることが大切です。

法律や相続などについての知識を必要とする場面もありますので、不安・分からないという場合には専門家に相談するといいでしょう。

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