財産を所有していた人が亡くなった場合、残された財産(相続財産)については相続税が課税されることになります。
相続財産の金額が大きいほど相続税の負担も大きくなりますから、「生前に家族に分配するなどの形で相続財産の金額を少なくしておく」というのが相続税対策の基本です。
ただし、生前贈与によって相続税対策を行う場合には注意点があります。(関連記事:節税を目的に生前贈与をする時の5つの注意点)
相続が発生した日から遡って3年以内に、相続人となる人が生前贈与を受けていた場合には、相続税の計算上、生前贈与を受けた金額を相続財産に含めなくてはならないというルールがあるためです。
以下では、相続開始に先立って生前贈与を行なっている場合に、相続税の計算がどのように行われるのかについて具体的に解説していきます。
目次 |
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1.なぜ相続開始前3年以内の贈与には注意が必要なのか |
1.なぜ相続開始前3年以内の贈与には注意が必要なのか
相続税法上、相続の開始前3年以内に行われた贈与については、相続財産にその贈与したものの金額を加算して相続税を計算しなくてはなりません(相続税法19条)。
このようなルールがあるのは、財産所有者が危篤となったときに、駆け込み的に生前贈与が行われることによって、相続税の課税対象となる財産が少なくなってしまうという弊害を避けるためです。
簡単にいうと、相続税を脱税する方法として生前贈与が多用される…という事態を避けるためにこのようなルールが設けられているということがいえます。
2.加算される贈与財産の範囲と、控除する贈与税額
相続税の計算にあたって加算される贈与財産については、以下のようなルールがあります。
2-1.加算される贈与財産の範囲
相続税計算時に加算されるのは、相続人となる人が亡くなった方(被相続人)から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産です。
贈与税の計算では基礎控除額として年間110万円以内の贈与であれば非課税となりますが、相続税の計算ではこの非課税範囲内の贈与についても加算対象となります。
2-2.加算しない贈与財産の範囲
「贈与税の配偶者控除」、「住宅取得資金の贈与」といった特別に非課税の扱いとなる生前贈与については、相続開始前3年以内の贈与であったとしても相続財産に加算されません。
2-3.すでに支払った贈与税額は控除される
「相続の開始前3年間に行われた贈与を相続財産に加算する」といっても、生前贈与の際に贈与税をすでに負担しているという場合には、単純にこのルールを適用すると「贈与税と相続税を二重取りされる」ということになってしまいかねません。
法律ではこのような事態にならないよう、相続開始前3年間に行われた贈与については相続財産に含めるものの、すでに支払った贈与税がある場合には計算した相続税の金額から控除されます。
例えば、生前贈与を受けた際に支払った贈与税が100万円あり、その後に相続が発生して相続税が500万円となった場合には、すでに支払った贈与税100万円は控除して相続税は400万円だけ支払えばOKという扱いになります。
ただし、生前贈与の際に支払った贈与税の方が高額であるという場合、相続税計算時に贈与税の控除は行いますが、マイナスになった金額については還付されないので注意しておく必要があります。
3.まとめ
以上、相続時に相続財産に加算される相続開始前3年以内の贈与のルールについて簡単に解説しました。
相続税対策は生前に親族に対して財産をできる限り分配しておくことが基本となりますが、財産分配を行う時期や方法によっては効果的な節税対策とならないことがあります。
残された家族のために確実に相続税の負担を小さくすることを考えるのであれば、税金の専門家である税理士のアドバイスを受けながら計画的に相続対策を進めていくことが大切です。
相続税対策は始める時期が早ければ早いほど高い効果を得ることができますから、少しでも早く対策を講ずることを検討してみてください。
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