「土地に贈与税はかかるの?」
「いくらからかかるのか計算方法が知りたい」
土地を持っている方の中には、所有権を子供や友達に譲りたい方もいるでしょう。
相手との関係性によって譲り方はいくつか考えられますが、どのような場合でも贈与税は必ずかかってしまうのでしょうか。
無税または少額の贈与税で譲れるならその方法を知りたいですよね。
そこで本記事では、土地に対してどのような場合にいくらから贈与税がかかるのか解説。
実際の計算・申告方法とともに、土地の贈与税を節税する方法や注意点も紹介します。
生前贈与で土地の譲渡を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. 土地の贈与税がかかる代表的なケース
実際の状況において、贈与税が発生してしまう主要なケースを5つ紹介します。
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それぞれのケースにおいて、なぜ贈与税が発生してしまうのかくわしくみていきましょう。
1-1. 他人・親子関係なく、土地の名義変更をした場合
親子であるなど贈与者と受贈者の関係性は全く関係なく、無償で土地の名義変更を行った場合には贈与税の対象となります。
自分名義の土地を息子名義に変更するという場合でも、贈与税の対象となるので注意しましょう。
ただし、関係性や状況によって適用される税率は異なる場合があります。
なお、土地の名義変更は所有権移転登記と呼ばれ、その土地を管轄する法務局で手続きが可能です。
1-2. 土地を著しく低い価額で譲ってもらった場合
関係性がある相手などから土地を著しく低い価額で譲ってもらった場合にも、贈与税の対象となります。
具体的には、本来の土地の価額と譲ってもらった価額の差額分が贈与税の対象です。
<例>
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著しく低い価額に明確な定義はありませんが、一般的には「土地の時価の80%以上」であれば問題ないといわれています。
絶対的な定義ではないため、不安な場合には税理士などの専門家に相談するといいでしょう。
1-3. 土地の共有持分を変更した場合
共同所有している土地の持分を無償で変更した場合には、持分が増加した分に対して贈与税がかかります。
土地の所有者という点は変わりませんが、増加した分はその人の保有財産が増えたとみなされるため贈与税の対象となるのです。
1-4. 共有名義の土地を分筆した場合
共有の土地を分筆した際に、分筆後に所有する土地の価額が元々の共有持分よりも多い場合には贈与税の対象となります。
分筆とは、登記簿上一つである土地を複数の土地に分割して登記し直すことです。
たとえば、土地A(1,000万円)をBとCが7対3の割合で共同所有していた場合、Bは700万円、Cは300万円の財産を持っていることになります。
この土地Aを半分に分筆してそれぞれ所有した場合、分筆後の持分はBとCそれぞれ500万円です。
すると元々300万円の持分であったCは、分筆によって200万円分財産が増えたことになるので、この部分に対して贈与税が発生します。
1-5. 負担付贈与を行なった場合
土地を負担付贈与した場合にも、贈与税の対象となります。
負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。
個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることになります。
引用:国税庁
国税庁の説明にもあるように、土地の取引価額と負担分の差額がある場合には贈与税が発生します。
<例>
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借入を負担した場合でも、それ以上に土地の価値がある場合には贈与税の対象となることを覚えておきましょう。
2. 土地の贈与税はいくらから?2つの課税制度と計算方法
土地の贈与税がいくらからかかってくるのかは、選択する贈与税の課税方式によって異なります。
贈与税には「暦年課税」・「相続時精算課税」の2つの方式があるので、それぞれいくらから贈与税が発生するのかみていきましょう。
2-1. 暦年課税|110万円以上から
暦年課税とは、1年間(1月1日〜12月31日)に贈与を受けた財産の合計額に応じて課税される方式です。
基礎控除額として毎年110万円の枠が設けられているため、110万円以上の贈与から贈与税が発生します。
裏を返せば、暦年課税の場合、評価額110万円以下の土地であれば贈与税がかかりません。
基本的な課税方式であるため、何も申請をしない場合には原則として暦年課税方式が全ての人に適用されます。
一点、暦年課税には生前贈与加算期間が7年設けられているため注意が必要です。
贈与から7年経たないうちに贈与者が亡くなってしまった場合には、贈与税はかからないものの相続税がかかってしまいます。
毎年110万円の基礎控除額が復活するため、少額ずつ贈与を行う場合に適している課税方式です。
2-2. 相続時精算課税|2,610万円以上から
相続時精算課税とは、期間関係なく累積贈与額が2,500万円までは贈与税が非課税になる課税方式です。
また、令和6年度からは基礎控除額110万円が新設されているため、2,500万円の非課税枠にプラスして110万円の基礎控除が利用できます。
つまり、相続時精算課税を選択している場合には、2,610万円以上の贈与から贈与税が発生します。
ただし2,500万円の非課税枠に関しては、相続時精算課税という名前が付いているように、相続時の計算に持ち戻す必要があるので注意しましょう。
また、相続時精算課税は自分で適用を申請する必要があり、一度適用してしまうと生涯適用されてしまいますので注意が必要です。
土地の評価額が大きい場合など、基礎控除枠では収まらない財産を贈与したい場合におすすめの課税方式です。
3. 土地の贈与税評価額の調べ方
贈与税を算出する際には贈与財産の評価額を求める必要がありますが、他の財産に比べ土地の贈与税評価額を求める方法は少し複雑です。
具体的には2種類の方法があり、贈与する土地の状況によって適用する方法が異なります。
それぞれの計算方式についてみていきましょう。
3-1. 路線価方式
贈与する土地に路線価が定められている場合には、路線価方式によって贈与税評価額を算出します。
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
引用:国税庁
たとえば、路線価が1,000円で面積が200平方メートルの土地の評価額は下記の計算式で求められます。
「1,000 × 200 = 200,000円」
土地の形状が複雑な場合には、奥行価格補正率も考慮する必要があるのでもう少し計算が複雑になります。
3-2. 倍率方式
倍率方式とは、路線価が定められていない土地を評価する際に採用する計算方式です。
倍率方式では、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて贈与税評価額を算出します。
たとえば家屋の場合には固定資産税評価額に1.0を乗じて計算しますが、分譲マンションなどの場合には、敷地全体の評価に敷地権の割合を乗じて評価額を計算する必要があります。
所有している土地の属性によって、評価額の算出方法が異なるので注意しましょう。
4. 土地の贈与税申告方法
土地の贈与税を申告する方法を3ステップで紹介します。
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それぞれのステップで行うことをみていきましょう。
4-1. 贈与税額を算出
まずは、贈与税額を算出するところから始めましょう。
先ほど解説したように土地の贈与税評価額は、路線価方式または倍率方式によって算出可能です。
評価額=贈与税額ではないので、評価額が算出できたら下記のステップを経て実際の贈与税額を算出しましょう。
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基礎控除額は令和6年度から全ての人に110万円が適用されるので、基礎控除額は110万円。
そのほか非課税枠がある場合には、評価額から差し引きしましょう。
ここまで算出できたら、下記の税率を乗じて実際の贈与税額を算出します。
実は贈与税では、贈与者と受贈者の関係によって適用される税率が異なります。
<一般税率:特例贈与財産に該当しない場合>
基礎控除後の 課税価格 |
200万円 以下 |
300万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円 以下 |
1,500万円 以下 |
3,000万円 以下 |
3,000万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
引用:国税庁
<特例税率:受贈者が18歳以上かつ直系尊属からの贈与である場合>
基礎控除後の 課税価格 |
200万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円 以下 |
1,500万円 以下 |
3,000万円 以下 |
4,500万円 以下 |
4,500万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
引用:国税庁
特例税率が適用できる場合には贈与税を抑えることができるので、贈与者との関係を整理してどちらの税率が適用されるのか明確にしましょう。
4-2. 贈与税申告書の作成
贈与税額が算出できたら、贈与税申告書を作成しましょう。
贈与税の申告書は3種類あり、申告する内容によって使用する書類が異なります。
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基本的には第一表のみで問題ありませんが、住宅取得資金等の特例や相続時精算課税を利用する場合には、追加で第一表の二や第二表が必要です。
4-3. 必要書類の準備・申告
贈与税申告書が作成できたら、その他の必要書類を準備して申告しましょう。
なお、贈与税の申告期間は贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までとなっています。
必要書類は状況によって異なりますが、土地を贈与された場合には「評価証明書」が必要です。
申告方法はアナログな提出方法を含め、e-Taxなどさまざまあるので自分に合っている方法を選択しましょう。
具体的な贈与税申告書の作成方法や必要書類・申告方法については、下記記事を参考にしてみてください。
関連記事:贈与税の申告方法や必要書類!申告書の書き方や申告不要な場合も解説
5. 土地の贈与税がかからないケースや方法
土地の贈与を受けた場合には基本的に贈与税がかかりますが、ケースによっては贈与税がかからない場合もあります。
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具体的な5つのケース・方法を解説しますので、土地の贈与税を節税する際の参考にしてみてください。
5-1. 親の土地を一部無料で借りる
名義変更や共有持分を設定せず、親の土地の一部を無償で借りるという場合には贈与税はかかりません。
通常土地の一部を借りる場合には、土地の所有者に対して地代や権利金が発生しますが、相手が親である場合には請求されることは基本的にないでしょう。
土地の一部を無償で借りることを「使用貸借」といいますが、親子間で行われる場合には使用貸借の権利価額はゼロとみなされ、贈与税が課されることもないのです。
5-2. 住宅取得等資金贈与の特例を利用する
住宅取得等資金贈与の特例を利用した場合には、最大で1,000万円が非課税になります。
住宅取得等資金贈与は基本的に住宅の購入や建築費用に対して適用されることが多いですが、一定の条件を満たすことで土地の取得資金にも適用可能です。
<土地の購入に適用する条件>
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上記のいずれかに該当する場合には、土地の購入資金にかかる贈与税を大幅に節税できます。
なお、住宅取得等資金贈与の特例を適用する場合には、贈与税が発生しなくなったとしても申告の必要があるので注意しましょう。
5-3. 相続時精算課税の非課税枠を利用する
相続時精算課税に設けられている2,500万円の非課税枠を利用すれば、贈与税がかからずに土地を贈与可能です。
土地の評価額が2,500万円以下の場合には全て贈与しても贈与税がかかりませんし、2,500万円分の土地を共同所有・分筆する方法もあります。
生涯を通じて1度しか利用できない非課税枠ですが、2,500万円というのはとても強力なので、土地の贈与に利用してもいいでしょう。
5-4. 暦年課税の基礎控除を利用する
暦年課税の基礎控除をうまく利用すれば、贈与税がかからずに土地を贈与可能です。
毎年110万円の基礎控除枠があるので、20年に渡って利用すれば2,000万円以上の土地を非課税で贈与できます。
たとえば、共有持分を設定して毎年110万円の範囲内で持分を上げていくなど、贈与の方法はさまざまです。
ただし、毎年決まった金額・時期などに贈与を行うと、もともとその金額を受け取る予定だったとして基礎控除が適用されないケースがあります。
そのため、暦年課税を利用して贈与税を節税したい場合には、贈与契約書を作成するなど贈与の方法も工夫しましょう。
5-5. おしどり贈与(配偶者控除)を利用する
贈与税の配偶者控除はおしどり贈与とも呼ばれ、婚姻期間が20年以上の夫婦間で適用できる特例です。
おしどり贈与を利用すれば最大で2,000万円まで、居住用不動産の贈与や購入資金を贈与する場合に贈与税がかかりません。
土地に適用する場合には、居住用不動産の取得に伴って取得する必要がある土地に限られますので注意しましょう。
6. 土地の贈与税に関する3つの注意点
土地の贈与税についての注意点を3つまとめて解説します。
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節税を検討した結果不利益を被らないよう、注意点を整理したうえで贈与税の節税を行いましょう。
6-1. 親子間であっても土地の贈与に贈与税は発生する
土地の贈与税は、贈与者と受贈者がたとえ親子であったとしても発生する税金です。
ただし、すべての場合で贈与税が発生するわけではなく、土地の一部を借りる・基礎控除内に収まる評価額などの場合には贈与税はかかりません。
贈与税が発生するかどうかは、贈与する土地の大きさや場所・状況などケースにより異なるので、不安な場合には税の専門家である税理士に相談するといいでしょう。
6-2. 贈与税とは別に登録免許税・不動産取得税がかかる
土地を贈与する際には贈与税がかかりますが、そのほかにも「登録免許税」・「不動産取得税」が別途でかかります。
登録免許税とは不動産を登記する際にかかる税金で、土地の所有権移転登記(名義変更)を行う場合の税率は2%です。
また不動産取得税は土地や建物などの不動産を取得した際にかかる税金で、土地の場合には4%の税率が設定されています。
たとえば、評価額1,000万円の土地を贈与された場合には、贈与税のほかにそれぞれ下記の税金を支払わなければなりません。
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土地の贈与を行う際には、贈与税だけでなく登録免許税・不動産取得税にも注意して贈与を検討しましょう。
6-3. 加算期間(7年)に該当する生前贈与は相続税がかかる
暦年課税方式を選択している場合には、生前贈与について相続税への加算期間が7年間設けられています。
存命中に行われる生前贈与ですが、贈与後7年以内に贈与者が亡くなってしまうと相続税の対象となってしまうため注意しましょう。
加算期間は令和5年度の税制改正大綱によって変更が確定され、令和6年度から適用されています。
改正内容や仕組みについて、下記記事で詳しくまとめていますのでぜひご覧ください。
関連記事:暦年贈与の改正内容とは?令和5年税制改正大綱のポイントを解説!
7. 土地の贈与税は計算が複雑なため税理士に相談しよう!
土地の贈与を行う際には、贈与税をはじめ登録免許税や不動産取得税も考慮しなければなりません。
また贈与税の算出には、正確に土地を評価する必要があり、その計算方法はほかの財産に比べ難しい傾向にあります。
正しく計算できないと無申告・過少申告になってしまう可能性もあり、その場合には追加で税金の支払いを命じられてしまうでしょう。
ただ、適切に税理士に相談を行い基礎控除枠や特例を利用すれば、受贈者にかかる負担を大幅に減らすことが可能です。
土地の贈与を検討している場合には、受贈者に迷惑をかけないためにも専門家である税理士に相談しましょう。
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