子どもや孫にできるだけお金を残してあげたいけれど、贈与税や相続税のことを考えると躊躇してしまうとお悩みの方も多いでしょう。
贈与税を発生させずに資産を増やしてあげたいなら、新NISAを活用することがおすすめです。
旧制度と異なる点を確認すれば、新制度を活用した生前贈与対策を実施できます。
この記事では、新NISAとは何か、旧制度との違いはどのような点かを解説します。
活用することでのメリット・デメリット、新NISAの活用方法も紹介するので、生前贈与を検討している方はぜひ参考にしてください。
1. 新NISAとは?
NISAとは、2014年に始まった少額投資非課税制度です。
小額から始められる投資制度で、投資で得た利益は非課税で手に入れられます。
2014年からスタートした制度は、2024年に内容を変えて新NISAとなりました。
ここでは、新しくなった制度は何に活用できるのか、旧制度と何が変わるのかを解説します。
1-1. 生前贈与対策に利用できる
新NISAを活用することで、生前贈与対策を行うことが可能です。
生前贈与とは、財産を持つ人が生きている間に、子どもや孫に財産をゆずることをいいます。
少しずつゆずっていくことで、ゆずる側の財産が減っていくため、相続税対策としても有効です。
生前贈与でゆずったお金をもとに、新NISAで投資を始めれば、子どもや孫は初期費用なしで投資を始められます。
何度か生前贈与を行うことで、負担なく資産を増やしていけるでしょう。
一点注意したいのが、年間の贈与額が110万円を超えると贈与税がかかる点です。
効率よく資産を増やせるように110万円以上のお金を渡すと、受け取る側が贈与税を支払うことになります。
納税が発生すると生前贈与対策の意味が薄れるので、ゆずる金額をよく考えましょう。
1-2. 新NISAと旧NISAの違い
新旧のNISAには、それぞれ大きな違いがあります。
2024年から何が変わったのかを見てみましょう。
旧NISA |
新NISA |
|
枠の種類 |
・一般NISA ・つみたてNISA |
・成長投資枠 ・つみたて投資枠 |
枠の併用の可否 |
不可 |
可能 |
年間の投資上限額 |
・一般NISA:120万円 ・つみたてNISA:40万円 |
・成長投資枠:240万円 ・つみたて投資枠:120万円 |
生涯における非課税限度額 |
・一般NISA:600万円 ・つみたてNISA:800万円 |
1,800万円(このうち、成長投資枠は1200万円) |
売却後の限度額 |
- |
買い付け額分の投資枠を再利用できる |
非課税での保有期間 |
・一般NISA:5年 ・つみたてNISA20年 |
無期限 |
一般NISA・成長投資枠は、投資信託や上場株式などへの投資で得た配当金の非課税枠です。
つみたてNISA・つみたて投資枠は、積立投資によって得られる利益の非課税枠となります。
旧制度は2つの枠を併用できず、それぞれの年間投資上限額も低くなっています。
1年で限られた金額しか投資できず、生涯における非課税での投資限度額も低いといえるでしょう。
また、保有期間を過ぎると口座に入っているお金が課税対象になる点もデメリットです。
新制度では、2つの枠の併用が可能・年間の投資上限額が大幅にアップ・生涯における非課税での投資限度額も1,800万円と非常に高くなっています。
NISAで買った商品を売却した後は、買い付け額分の投資枠を使って再度別商品を購入できるため、効率よく資産を増やせるでしょう。
非課税での保有期間も無期限なので、長期的な資産形成が可能となりました。
【参考】金融庁公式サイト「NISAを知る」
2. 新NISAを活用する3つのメリット
旧制度からさまざまな点が変更された新NISAには、3つのメリットがあります。
- 非課税枠が大きくアップしている
- 投資の自由度が高い
- 非課税期間が無期限になる
新NISAは非課税枠が1,800万円と大幅にアップしているため、まとまった資産を形成することが可能です。
保有期間の上限も撤廃されたので、期間を気にしながら投資を行う必要もありません。
また、投資の自由度が高い点も新制度の魅力です。
つみたて投資枠は金融庁が定める基準を満たし、届出を済ませた投資信託とETFのみに投資できます。
その一方で、成長投資枠は上場株式・ETF・REIT・投資信託などの幅広い選択肢から選ぶことが可能です。
3. 新NISAを活用する際の3つの注意点
新NISAにはいくつものメリットがあるものの、注意しておきたいポイントもあります。
- 旧制度に引き続き、内容が複雑
- 投資リスクが伴う
- 管理に手間がかかる
NISAは制度内容が複雑なので、旧制度のことから利用することを躊躇しているという方も多いでしょう。
成長投資枠とつみたて投資枠のどちらを利用すればいいのかを考えるだけでなく、それぞれの年間投資上限額を考えて購入する必要があるため、個人の投資と比べると複雑だといえます。
また、NISAだけでなく、投資にはリスクも伴います。
金融商品の価格値下がりや金利の変動などによって思うように利益を得られない可能性もあるため、投資先を慎重に選ぶことが大切です。
資産を分散し、複数の商品を購入する場合は、商品別の口座を管理する手間もあります。
1つの金融機関に絞れば管理しやすくなるため、複数の金融機関ではなく、さまざまな商品を取り扱う金融機関に申し込むことがおすすめです。
4. 生前贈与対策としての新NISA活用法
生前贈与対策として新NISAを活用する際に、しておくべきことがいくつかあります。
ここで紹介するポイントを実施することで、相続税対策も行えるため、ぜひ参考にしてください。
4-1. 家族全員でNISA口座を開設し資産を形成する
生前贈与をする際は、家族全員で新NISA用の口座を開設することがおすすめです。
新制度の場合、生涯における非課税限度額は1人あたり1,800万円です。
3人家族であれば5,400万円、4人家族なら7,200万円の資産を非課税で所有できます。
投資資金を贈与されるお金で賄うなら、誰にどれくらいの金額をゆずるかを事前に話し合いましょう。
たとえば、父親が子どもに1,000万円を渡した場合、子どもは基礎控除額の110万円を差し引いた額に課税される贈与税を支払わなければなりません。
投資用の資金を十分に確保できたとしても、税金が差し引かれるので得をしたとはいえないでしょう。
祖父が子どもと配偶者、孫2人にそれぞれ110万円を贈与すれば、基礎控除の範囲内なので全員が納税せずに済みます。
ゆずってもらったお金を元手に、全員が投資を始められるため、効率よく資産を形成できるでしょう。
4-2. 生前贈与と新NISAの非課税枠を活用して相続税対策する
生前贈与で少しずつ財産を減らしていけば、相続税対策にもつながります。
まとまった資産があるにもかかわらず、生前贈与をしないという方もいるでしょう。
まとまった資産は相続時に法定相続人に引き継がれますが、基礎控除の範囲を超えた部分は課税対象となります。
場合によっては高額の相続税が発生するので、法定相続人の負担が重くなる恐れがあります。
生前贈与をしておけば少しずつ財産を減らしていけるため、相続時の財産が少なくなり、納税額も抑えられるでしょう。
相続税対策を実施したい方に始めてほしいのが、子どもや孫に年間110万円以内の贈与をすることです。
相続財産を減らしつつ、子どもや孫が新NISAで得た配当金や利益を非課税で受け取れるため、税負担を抑えて資産を残してあげられます。
5. 新NISAを利用した生前贈与対策は税理士に相談しよう!
新NISAは生前贈与・相続税対策におすすめの制度です。
旧制度から新制度に移行するにあたって、変更点がいくつかあります。
制度内容が複雑なので、これまでNISAをしていなかった方は、利用を躊躇してしまうでしょう。
しかし、新NISAは限度額以内の配当金や利益は非課税で受け取れます。
投資が成功すればまとまった資産を形成できるため、これまで利用していなかった方もぜひ始めてみてください。
新NISAで資産を形成しつつ、生前贈与・相続税対策も実施したい方は、税理士に相談することがおすすめです。
人によって、最適な相続税対策の方法が異なります。
専門の知識を持つ税理士であれば、個人の状況に適した相続税対策のアドバイス、新NISAの活用方法を教えてくれます。
相続税対策についてさらに詳しく知りたい方は、下記記事も併せてご覧ください。
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