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ーコラムー
贈与税
税理士監修記事

贈与税の時効はいつから6年?7年の場合や成立が難しい理由を解説

公開日:2024.3.3 更新日:2024.03.07

「贈与税の時効はいつから6年?」
「贈与税の時効が6年から7年になる場合もあると聞いたけれど本当?」

祖父母や両親から資産を贈与してもらったけれど、贈与税を支払っていないという方はこんな悩みをお持ちではないでしょうか。

時効が成立すれば税金の支払いから逃れられるものの、時効が成立しなかったらどうなるのか、不安を覚える方も多いかと思います。

そこで本記事では、贈与税の時効はいつから6年か、7年に延長されるのはどのようなケースかをくわしく解説します。

贈与税の申告漏れによるペナルティも記載するので、贈与税の未払いがある方はぜひ参考にしてください。

1. 贈与税の時効は原則6年だが7年になる場合も

贈与税の時効は原則6年だが7年になる場合も

贈与税の時効は、相続税法第37条で6年と定められています。

6年が経過すると税務署長が贈与税額や申告書の提出期限を決められなくなるため、時効が成立したとみなされます。

ただし、故意に贈与税を支払わなかった場合は期限が7年に延長されるので注意が必要です。

時効期間は贈与税が発生することを知らなかったときは6年、贈与税の発生を知っていながら放置していた場合は7年と考えておきましょう。

贈与税の時効が成立する正確な日付を把握するには、時効の起算日を知る必要があります。

ここでは、贈与税の時効の起算日についてみていきましょう。

1-1. 贈与税の時効の起算日はいつ?

贈与税の時効の起算日は、申告期限の翌日です。

例として、2020年の7月に祖父母から1,000万円の資産を受け取ったケースを見てみましょう。

<ケース別の時効成立日>

  • 贈与税の発生を知らなかった:2027年3月16日に時効成立
  • 贈与税の発生を知りながら支払わなかった:2028年3月16日に時効成立

贈与税は資産を受け取った年の翌年2月1日~3月15日の間に申告しなければならないので、2021年の2月1日~3月15日の間に手続きを済ませなければなりません。

手続きをしなかった場合は、2021年3月16日が時効の起算日となり、6~7年後の3月16日に時効が成立します。

2. 贈与税の時効が成立しないケース

贈与税の時効が成立しないケース

贈与税の支払いから逃れるために、故意に手続きを行わない方もいるでしょう。

起算日から7年が経過すれば安心と考えるかと思いますが、なかには時効が成立しないケースもあります。

成立しないケースに該当すると、7年経過後に高額の支払いを命じられる可能性もあるため注意しましょう。

ここでは、贈与税の時効が成立しない2つのケースをくわしく解説します。

2-1. 贈与と認められないケース

祖父母や両親から贈与を受けたと思っていても、贈与と認められないケースもあります。

贈与は一方が財産を渡すだけで成立するものではありません。

民法第549条で定められている通り、一方が自身の財産を渡すと伝え、もう一方が財産の受け取りを承諾することによって成立します。

贈与の定義を踏まえ、認められないケースをまとめました。

<贈与と認められないケース>

  • 名義預金をしていた
  • 贈与者の判断能力が乏しい
  • 贈与契約書を作成していない

名義預金とは、口座の名義人と口座を管理している人が違うことをいいます。

たとえば、子ども名義の口座を親が貯蓄目的で管理しているケースは名義預金に該当します。

親が預金のことを伝え、子どもが受け取りを承諾すれば贈与は成立するものの、子どもの承諾を得ないまま渡せば贈与と認められません。

預金は親の財産と判断されるので、後々相続税の支払いを命じられる恐れがあります。

そのほかにも、贈与者の判断能力が疑われる場合も贈与税として認められないケースがあるため、受け取りの際に注意が必要です。

贈与契約書や贈与に関する明確な証拠が残っていないケースについては、次でくわしく解説します。

参考:法務省「民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(16)」

2-2. 贈与の明確な証拠がないケース

贈与契約書を作っていない・贈与の明確な証拠がない場合も、贈与として認められません。

贈与の定義を満たしたうえで贈与契約書を作成していれば、贈与の明確な証拠になります。

税務署から調査が入ったとしても証拠を提示すれば、相続ではなく贈与だと認められるでしょう。

ただし証拠がなければ贈与と認められないので、相続税を支払わなければなりません。

贈与の時効が成立せず、相続税の支払いを命じられるケースも多いため、金額が高額になる前に手続きを済ませることがおすすめです。

3. 贈与税の時効成立は難しい

贈与税の時効成立は難しい

贈与契約書や贈与を証明する明確な証拠を持っていたとしても、贈与税の時効を成立させることは難しいでしょう。

とくに高額の贈与はばれる可能性が高いため、故意に支払いを遅らせていたと判断される前に、申告をしておくことが大切です。

ここでは、なぜ贈与税の時効成立が難しいのかくわしく解説します。

3-1. 申告漏れは税務調査でばれる

税務調査によって申告漏れはばれやすいため、時効成立前に支払いを命じられる恐れがあります。

税務署は国税総合管理システムを使い、納税者のお金の動きを管理することが可能です。

収入とは異なる高額のお金が見つかれば、贈与や相続の可能性を疑い税務調査を実施します。

税務調査によって無申告がばれ、ペナルティを課されたケースも少なくありません。

6~7年の月日が経過する前に見つかる可能性が高いため、時効の成立は難しいと考えておきましょう。

3-2. 時効の年月が経っても成立しなかった判例

贈与税の時効が経過したにもかかわらず、時効が成立せずに税金の支払いを命じられた判例もあります。

名古屋高裁にて、平成10年に判決が下った事例を見てみましょう。

昭和60年3月14日、父親であるAは自身が所有する不動産を息子のXに贈与しました。

贈与したことを証明する公正証書も、公証人が作成しています。

しかしAは贈与税の支払い負担から逃れるために、不動産の名義や登記情報を変えずにいました。

当時は贈与税の時効が5年だったので、時効成立後に不動産名義をXに変更すれば、贈与税の支払いから逃れられると考えたからです。

Xは約8年9ヶ月後の平成5年12月13日に不動産の名義・登記情報を変更しました。

変更後、贈与税や相続税の申告がなかったことを税務署が不審に思い調査が入ったのです。

調査の結果税務署は、平成5年12月13日の贈与と判断しXに贈与税と無申告加算税の支払いを命じました。

Xは異議申し立てを唱え、支払い取り消しの訴えを求めて名古屋高裁で争われています。

裁判時の双方の主張についてまとめました。

<裁判時の双方の主張>

  • 税務署:贈与されたのは名義や登記変更がおこなわれた平成5年12月13日なので、時効が成立していない
  • X:公正証書の通り、贈与は昭和60年3月14日におこなわれているため、時効が成立している

公証人によって公正証書が作られていたものの、書類は贈与税から逃れるために作られたと高裁で判断されています。

実際に不動産が贈与されたのは名義や登記変更がおこなわれた平成5年12月13日なので、税務署の主張が認められXの訴えは棄却されました。

参考:東京弁護士会「税法入門」

このように時効の成立を狙って策を講じても、その意図が疑われると調査が入り、追徴課税を命じられる可能性が高いので注意しましょう。

4. 時効前に贈与税の申告漏れがばれた場合のペナルティ

時効前に贈与税の申告漏れがばれた場合のペナルティ

時効が成立する前に贈与税の申告漏れがばれた場合は、重いペナルティが課されます。

<贈与税の申告漏れがばれた場合のペナルティ>

  • 無申告加算税
  • 過少申告加算税
  • 重加算税
  • 延滞税
  • 刑事罰

どのようなケースでペナルティが課されるのかをくわしく解説しましょう。

4-1. 無申告加算税

無申告加算税とは、支払い期限内に申告しなかったときに課されるペナルティです。

無申告加算税が適用される要件をまとめました。

<無申告加算税の適用要件>

  • 支払い期限内に申告をしていない
  • 支払い期限後に申告をした
  • 期限後の申告内容に不備があった
  • 所得金額の決定を受けている

参考:財務省「加算税の概要」

贈与税の支払い期限内に申告をしなかった場合は、無申告加算税が課されます。

支払い期限後に申告をしてもペナルティを加えた額の支払いを命じられるため、期限内に申告を済ませることが大切です。

無申告加算税の課税割合についても見てみましょう。

<無申告加算税の課税割合>

対象金額 無申告課税の課税割合
50万円以下の部分 15%
50~300万円以下の部分 20%
300万円以上の部分 30%

参考:財務省「加算税の概要」

たとえば、150万円の贈与税を申告しなかった場合は50万円の部分に発生する7.5万円と、100万円の部分に発生する20万円を合計した27.5万円が追徴課税されます。

贈与税とあわせて177.5万円の支払いになるため、負担が大きくなると考えておきましょう。

ただし、申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告をしたときと、申告が遅れる正当な理由があると判断される場合は無申告加算税が適用されません。

申告が遅れる正当な理由があるのなら、税務署に伝えておくことがおすすめです。

4-2. 過少申告加算税

過少申告加算税は、税の申告後に記載内容の不備が見つかった際に課されるペナルティです。

過少申告加算税の課税要件と割合をまとめました。

<過少申告加算税の課税要件と割合>

課税要件 課税割合
期限内に申告した内容に不備があり、修正申告があった 10~15%

参考:財務省「加算税の概要」

最初に申告した税額または50万円のうち、多い金額を超える部分に15%が課税されます。

たとえば200万円の申告をしていたけれど、修正によって500万円の税額に変わったとしましょう。

最初に申告した税額は50万円よりも大きい200万円なので、200万円を超えた部分に15%が課税されます。

申告当初より増えた税額は300万円になるため、200万円までの10%、残りの100万円の15%に課税した35万円のペナルティが課されます。

当初より増えた納税額についても支払う必要があるので、追加で335万円の税金を支払わなければなりません。

ただし、過少申告加算税は、正当な理由がある場合と税務署から指摘される前に修正申告を行えば不適用になります。

申告後に不安を感じたときは申告内容を見直し、指摘される前に修正した書類を提出しましょう。

4-3. 重加算税

重加算税は、支払うべき税金を隠した・金額が少なくなるよう仮装した場合に課される重いペナルティです。

重加算税の課税要件と割合をまとめました。

<重加算税の課税要件と割合>

課税要件 課税割合
故意に申告税額を隠したり、少なくしたりした 35%
故意に税金の申告をしなかった 40%

参考:財務省「加算税の概要」

たとえば、申告した税額よりも100万円少なく申告していた場合は、35万円のペナルティが課されます。

100万円の税額を故意に申告しなかった場合は40万円のペナルティが課されるので、合計140万円を支払わなければなりません。

重加算税は、わざと申告額を少なくする・隠す・申告しないと判断されたときに適用されます。

ペナルティのなかでもとくに負担が重いため、早めに申告を済ませることが大切です。

4-4. 延滞税

延滞税は、納税期限を過ぎたときに課されるペナルティです。

重加算税や無申告加算税とは別に延滞税も支払う必要があるので、期限を過ぎたときはできるだけ早めに申告しましょう。

国税庁のホームページに延滞税を計算するツールが用意されているため、算出しなければならない方は、ツールを活用することがおすすめです。

国税庁:「延滞税の計算はこちら」

4-5. 刑事罰

支払っていない納税額が大きいときや、悪質だと判断されたときには刑事罰が科される恐れもあります。

ケース別の刑事罰の内容をまとめました。

<ケース別の刑事罰>

ケース 科される刑事罰
虚偽や不正行為によって納税から逃れようとした 10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金
わざと申告しなかった 5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金
正当な理由なく申告しなかった 1年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金

刑事罰が科されるのは、悪質な申告逃れだと判断されたときです。

正当な理由があった、または悪意なく申告を忘れていた・少なく申告してしまったときは刑事罰が科される心配もないため、不安を感じる必要はありません。

ただし長く納税をせずにいると、故意に申告をしなかったと判断される可能性があるので、時効成立を待たず早めに申告を済ませましょう。

5. 時効成立の判断は専門家への相談がおすすめ

時効成立の判断は専門家への相談がおすすめ

贈与税の時効を成立させたいと考えている方は、専門家に相談することがおすすめです。

贈与税の時効を成立させることは簡単ではありません。

贈与税と認められず相続税として徴収されるケースも多いため、何らかの形で納税することになるでしょう。

ただし、なかには贈与税の時効が成立したケースもあるので、必ずしも成立できないとは言い切れません。

時効が成立するかどうかは、税や法の専門家に判断してもらいましょう。

専門家に相談して、時効成立まで待つか、ペナルティが重くなる前に申告するかを決めることが大切です。

6. 贈与税は時効の成立を期待せず申告しよう

贈与税は起算日から6~7年で時効が成立し、納税の義務がなくなります。

贈与された資産が高額の場合は、時効成立まで申告せず、納税から逃れたいと考えるでしょう。

しかし、納税義務から逃れることは難しいといえます。

税務署の調査によって無申告がばれると、さまざまなペナルティを課されます。

悪質だと判断されれば高額のペナルティを支払うことになるため、最悪のケースを考えて早めに申告することがおすすめです。

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