相続税

一親等とは誰を指す?該当する人や相続時の注意点を解説

相続や遺言書の作成時には、法定相続人の範囲を確認するために「親等」という言葉に触れる機会があります。

では、一親等とは一体どのような意味で、誰が該当するのでしょうか。

そこで、本記事では「一親等」について、数え方や範囲の詳細を詳しく解説します。

相続時に押さえておきたい注意点にも触れますのでぜひご一読ください。

目次

1. 一親等とは?対象となる人を解説

1. 一親等とは?対象となる人を解説

一親等は、どのような人が対象になるのでしょうか。

なれる人や数え方のルール・間違えやすいケースを紹介します。

1-1. 一親等の対象となる人とは

「一親等(いっしんとう)」とは、自分から数えて1世代離れている親族を指します。

直系の尊属または卑属へ1世代移動した関係にある人が一親等であり、具体的にはご自身から見た父母と子が該当します。

親等の数え方は、ご自身をゼロとし世代が1つ離れるごとに、一親等ずつ増やしていくものです。

数字が小さいほど親族関係が近く、数字が大きいほど遠くなると覚えておきましょう。

1-2. 一親等は相続時に「法定相続人」になる

一親等は非常に近しい関係の親族であり、ご自身が亡くなった時に「法定相続人」になります。

法定相続人になれる人は民法で定められています。

該当しない人は親族や長年連れそった近しい人であっても法定相続人にはなれません。

被相続人(亡くなられた人)との関係 相続の順位と親等
配偶者 常に相続人になる(親等では数えない)
第1順位(一親等)
父母 第2順位(一親等)
兄弟姉妹 第3順位(二親等)

相続時には上記の相続人に限らず、代襲相続や相続放棄、相続欠格などを理由に相続人からみた孫(二親等)や祖父母(二親等)などが相続人になるケースもあります。

被相続人の家族構成や、その後の相続放棄などの手続きによって法定相続人の範囲は変化するためご注意ください

1-3. 一親等を数える際に迷いやすいケース

一親等が誰なのか調べる際には、離婚や養子縁組など家族構成が複雑なケースにおいて迷う場合があります。

そこで、よくある迷いやすいケースを以下で紹介します。

  • 配偶者
    配偶者は親等では数えません。また、離婚後は婚姻関係が終了するため配偶者の親族は姻族に数えません。
  • 内縁の配偶者、内縁の配偶者との子
    内縁の配偶者は法律婚をしておらず、親等には数えません。
    内縁の配偶者との間に子がいる場合、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子は、認知を受けることで父との間に一親等の血族関係が生じます。
    認知されていない場合は、法律上の親子関係はありません。

1-4. 二親等以降の数え方とは

親等は、自分をゼロとし親族へ世代を1つ移動するごとに一親等ずつ数えます。

例として、二親等や三親等は以下のとおりです。

  • 二親等 祖父母、兄弟姉妹、孫 (一親等からもう一世代移動する)
  • 三親等 曽祖父母、おじ・おば、甥・姪、ひ孫(一親等からもう二世代移動する)

二親等以降の数え方についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

【関連記事】親等とは?相続時に欠かせない親族の数え方や範囲を解説!

2. 姻族と血族における一親等の違いとは

2. 姻族と血族における一親等の違いとは

親族には血縁関係のある「血族」と、婚姻によって親族となった「姻族」があります。

この章では一親等においても、血族と姻族で対象となる人を詳しく解説します。

2-1. 姻族における一親等

姻族における一親等は配偶者をゼロとし、配偶者を起点に親等を数えます。

そのため、姻族の一親等は「配偶者の父母」が該当し、配偶者の祖父母は姻族の二親等となります。

内縁関係の配偶者や、離婚後の元夫・妻の父母は法律上の親族関係ではないため、姻族に該当しません。

再婚によって新たな配偶者と法律婚をした場合、新しい配偶者の父母が姻族における一親等となります。

2-2. 血族における一親等

血族における一親等とは、ご自身の父母と子が該当します。

血族とは、直接的な血の繋がりがある親族を意味します。

例として、ご自身の両親が離婚しても血族の親子関係が終了するものではありません。

両親の離婚後も父母は変わらず血族の一親等です。

同様に、離婚をしても実子は変わらず親から見て血族の一親等です。

2-3. 姻族は相続対象外のため注意

相続が発生した時に、法定相続人になるのは「血族の一親等」です。

姻族の一親等は法定相続人にはなれません。 

しかし、姻族の一親等であっても特別寄与料を受け取れる可能性はあります。

特別寄与料とは、被相続人の介護などを無償で行っていた法定相続人以外の親族が、生前の貢献について相続時に請求できる金銭を意味します。

この制度で特別寄与料を請求できる人の要件は3つあります。

1つ目は「親族であること」、2つ目は「法定相続人ではないこと」、3つ目が「相続放棄や相続欠格などで相続権を失った人ではないこと」です。

1つ目にある「親族であること」が指す親族の範囲は、6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族です。

つまり、被相続人の生前において介護などで3親等以内の姻族に該当する人が貢献していた場合、法定相続人ではないですが特別寄与料を請求できる立場にあります。

3. 相続時に「血族の一親等」が苦労する2つの理由

3. 相続時に「血族の一親等」が苦労する2つの理由

相続時には法定相続人となることが多い血族の一親等(子または父母)は、多くの手続きや責任を担うことがあります。

そこで、この章では相続時に一親等が直面する苦労について、2つの理由に分けて解説します。

3-1. ご逝去後に発生する多くの手続きを担うため

被相続人の一親等である子や父母は、ご逝去後に発生する多くの手続きを担う必要があります。

ご逝去後に発生する手続きの一例は以下です。

手続き名 手続き期限
訃報連絡 逝去後、速やかに
死亡診断書または死体検案書の受け取り 逝去後、速やかに
葬儀会社の手配と打ち合わせ 逝去後、数日以内
死亡届・火葬許可申請書の提出 逝去を知った日から7日以内
葬儀・告別式の実施  一般的に逝去後、数日~1週間程度
四十九日 逝去日を含めて49日目
年金関連手続き(国民年金)の受給停止 死亡の事実を知った日から14日以内
年金関連手続き(厚生年金)の受給停止 死亡の事実を知った日から10日以内(事業主経由)
相続放棄・限定承認 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
所得税の準確定申告 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
遺産分割協議 法的な期限はないが、早めに開始することが望ましい
相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続登記 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内もしくは遺産分割が成立した日から3年以内

こうした手続きの他に、被相続人の相続財産によっては預貯金口座の解約や有価証券の引継なども行わなければなりません。

ご家族が亡くなると悲しみに伏せる暇もなく、慌ただしく相続全般の手続きに翻弄されやすいのです。

相続税申告・納付や相続登記など、主要な手続きには期限もあるため、漏れの内容に行う必要があります。

3-2. 法定相続人として遺産分割協議が必要

被相続人に複数の法定相続人がいる場合に、遺言書がなかったら相続人全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。

たとえ生前に被相続人と疎遠な関係の相続人がいたとしても、協議には参加してもらう必要があるのです。

疎遠な相続人を無視したり、参加してもらえなかったりすると、その遺産分割協議は無効となってしまいます。

一般的に相続は「配偶者と一親等の血族」が法定相続人となり、円滑に進められることが多いですが、面識のない前妻・前夫との子や(一親等)などに参加してもらうケースも少なくありません。

不仲・面識がない相続人がいる遺産分割協議は、相続財産の取得をめぐって争いが起きやすく調停や審判といった家庭裁判所での手続きに発展しやすいためご注意ください。

3-2-1 遺言書があれば遺産分割協議は不要

相続が発生した際、遺産の分け方は相続人全員で話し合いを行う「遺産分割協議」が必要です。

しかし、被相続人が有効な遺言書を作成していた場合、この遺産分割協議は原則として不要です。

遺言書は、被相続人が生前に自身の財産の分け方を指定しておくもので、遺産分割協議よりも優先されます。

家族関係が複雑で相続トラブルを回避したい場合や、相続人以外の人へ相続財産を分配したい場合は遺言書を残しておくことが有効な方法です。

ただし、書式にミスが多いと遺言書が無効となってしまう可能性もあります。

遺言書を作成する際にはミスの発生が少ない公正証書遺言を選び、税理士や弁護士などのアドバイスを受けながら安全な遺言書を作ることが大切です。

4. 相続人の範囲に迷ったらどうするべき?

4. 相続人の範囲に迷ったらどうするべき?

相続人の範囲は、家族構成や離婚・再婚などによって複雑になることがあります。

もしも誰が相続人になるのか迷った場合は「相続関係説明図」の作成や、専門家への相談がおすすめです。

この章では相続人の範囲に迷った際にできる対策を紹介します。

4-1. 戸籍謄本類を収集し「相続関係説明図」を作ろう

相続関係説明図とは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本などを収集し、相続人との関係もつなげていくことで相続関係が図式化できる書類です。

家系図に類似しており、言葉だけでは表現しにくい相続関係がわかりやすく可視化できます。

相続関係説明図に法的な作成義務はありませんが、作成しておくと相続人が誰なのか整理できるだけでなく、相続登記時に提出することで被相続人・相続人の戸籍謄本類を返却してもらえるというメリットもあります。

戸籍謄本類は多くの相続手続きで必要書類であり、返却を受けられると別の手続きに再び利用できます。

4-1-1. 法定相続情報一覧図との違い

相続関係説明図に類似した書類に、法定相続情報一覧図と呼ばれるものもあります。

この書類は相続関係説明図とは異なり、法務局の登記官に認証を受けるもので、相続手続き時に被相続人・相続人の戸籍謄本類に代わる公的な書類として利用可能です。

相続関係説明図よりも利用できる範囲が広いですが、法務局で認証を受ける必要があるため時間を要します。

記載事項は相続関係説明図に類似していますが、以下の点が異なるためご注意ください。

  相続関係説明図 法定相続情報一覧図
作成する人 相続人等 相続人側で作成後、法務局の登記官が認証
公的証明力 なし あり
主な利用目的 相続人の整理
相続登記の際の戸籍謄本原本還付
各種相続手続きにおける戸籍謄本の代替
証明力 弱い 強い
記載内容 相続関係を図示(書式に制限はなく、自由に記載) 法務局の定める書式に記載
戸籍謄本類の原本還付 可能 不要(戸籍謄本類の代替となるため、そもそも戸籍謄本類を提出しなくて良い)

4-2. 相続に精通する専門家へのご相談もおすすめ

相続に関する法的な知識がない場合や、手続きに不安がある場合は、相続に精通する税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することがおすすめです。

専門家は、戸籍謄本の収集から相続人の確定、遺産分割協議、相続税申告などの手続きを法的にサポートしてくれます。

先に紹介した一親等の人が負担しやすい相続手続きの中には、法的な期限を有するものがあります。

特に相続税申告は、相続財産の特定・財産評価・二次相続も見据えた申告内容の作成など、行うべき準備が多数あるため、相続人だけで悩むのではなく、速やかに税理士へ相談することがおすすめです。

相続税申告は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」に行う必要があり、申告期限を過ぎてしまうと延滞税などのペナルティが課税されてしまいます。

5. 一親等は父母や子が該当|相続時に負担が大きくなりやすため注意が必要

本記事では、一親等について対象となる人や相続時の注意点について詳しく解説しました。

一親等はご自身から見て1世代離れた父母と子を指します。

特に一親等の血族は、相続において常に優先順位の高い法定相続人となるため、相続時には多くの手続きをこなす必要があります。

相続時にトラブルが予想される場合は、あらかじめ遺言書の作成などの対策を講じておくと良いでしょう。

相続税の申告・納税には期限があるため、被相続人に多くの財産がある場合は税理士への相談がおすすめです。

どうぞお気軽にお問い合わせください。

  • 養子
    養子と養親の間には法律上の親子関係が生じ、一親等に数えます。
    養子の他に実子がいる場合兄弟姉妹となり、実子・養子から見た兄弟姉妹は二親等です。
  • 内縁の配偶者、内縁の配偶者との子
    内縁の配偶者は法律婚をしておらず、親等には数えません。
    内縁の配偶者との間に子がいる場合、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子は、認知を受けることで父との間に一親等の血族関係が生じます。
    認知されていない場合は、法律上の親子関係はありません。

1-4. 二親等以降の数え方とは

親等は、自分をゼロとし親族へ世代を1つ移動するごとに一親等ずつ数えます。

例として、二親等や三親等は以下のとおりです。

  • 二親等 祖父母、兄弟姉妹、孫 (一親等からもう一世代移動する)
  • 三親等 曽祖父母、おじ・おば、甥・姪、ひ孫(一親等からもう二世代移動する)

二親等以降の数え方についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

【関連記事】親等とは?相続時に欠かせない親族の数え方や範囲を解説!

2. 姻族と血族における一親等の違いとは

2. 姻族と血族における一親等の違いとは

親族には血縁関係のある「血族」と、婚姻によって親族となった「姻族」があります。

この章では一親等においても、血族と姻族で対象となる人を詳しく解説します。

2-1. 姻族における一親等

姻族における一親等は配偶者をゼロとし、配偶者を起点に親等を数えます。

そのため、姻族の一親等は「配偶者の父母」が該当し、配偶者の祖父母は姻族の二親等となります。

内縁関係の配偶者や、離婚後の元夫・妻の父母は法律上の親族関係ではないため、姻族に該当しません。

再婚によって新たな配偶者と法律婚をした場合、新しい配偶者の父母が姻族における一親等となります。

2-2. 血族における一親等

血族における一親等とは、ご自身の父母と子が該当します。

血族とは、直接的な血の繋がりがある親族を意味します。

例として、ご自身の両親が離婚しても血族の親子関係が終了するものではありません。

両親の離婚後も父母は変わらず血族の一親等です。

同様に、離婚をしても実子は変わらず親から見て血族の一親等です。

2-3. 姻族は相続対象外のため注意

相続が発生した時に、法定相続人になるのは「血族の一親等」です。

姻族の一親等は法定相続人にはなれません。 

しかし、姻族の一親等であっても特別寄与料を受け取れる可能性はあります。

特別寄与料とは、被相続人の介護などを無償で行っていた法定相続人以外の親族が、生前の貢献について相続時に請求できる金銭を意味します。

この制度で特別寄与料を請求できる人の要件は3つあります。

1つ目は「親族であること」、2つ目は「法定相続人ではないこと」、3つ目が「相続放棄や相続欠格などで相続権を失った人ではないこと」です。

1つ目にある「親族であること」が指す親族の範囲は、6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族です。

つまり、被相続人の生前において介護などで3親等以内の姻族に該当する人が貢献していた場合、法定相続人ではないですが特別寄与料を請求できる立場にあります。

3. 相続時に「血族の一親等」が苦労する2つの理由

3. 相続時に「血族の一親等」が苦労する2つの理由

相続時には法定相続人となることが多い血族の一親等(子または父母)は、多くの手続きや責任を担うことがあります。

そこで、この章では相続時に一親等が直面する苦労について、2つの理由に分けて解説します。

3-1. ご逝去後に発生する多くの手続きを担うため

被相続人の一親等である子や父母は、ご逝去後に発生する多くの手続きを担う必要があります。

ご逝去後に発生する手続きの一例は以下です。

手続き名 手続き期限
訃報連絡 逝去後、速やかに
死亡診断書または死体検案書の受け取り 逝去後、速やかに
葬儀会社の手配と打ち合わせ 逝去後、数日以内
死亡届・火葬許可申請書の提出 逝去を知った日から7日以内
葬儀・告別式の実施  一般的に逝去後、数日~1週間程度
四十九日 逝去日を含めて49日目
年金関連手続き(国民年金)の受給停止 死亡の事実を知った日から14日以内
年金関連手続き(厚生年金)の受給停止 死亡の事実を知った日から10日以内(事業主経由)
相続放棄・限定承認 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
所得税の準確定申告 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
遺産分割協議 法的な期限はないが、早めに開始することが望ましい
相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続登記 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内もしくは遺産分割が成立した日から3年以内

こうした手続きの他に、被相続人の相続財産によっては預貯金口座の解約や有価証券の引継なども行わなければなりません。

ご家族が亡くなると悲しみに伏せる暇もなく、慌ただしく相続全般の手続きに翻弄されやすいのです。

相続税申告・納付や相続登記など、主要な手続きには期限もあるため、漏れの内容に行う必要があります。

3-2. 法定相続人として遺産分割協議が必要

被相続人に複数の法定相続人がいる場合に、遺言書がなかったら相続人全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。

たとえ生前に被相続人と疎遠な関係の相続人がいたとしても、協議には参加してもらう必要があるのです。

疎遠な相続人を無視したり、参加してもらえなかったりすると、その遺産分割協議は無効となってしまいます。

一般的に相続は「配偶者と一親等の血族」が法定相続人となり、円滑に進められることが多いですが、面識のない前妻・前夫との子や(一親等)などに参加してもらうケースも少なくありません。

不仲・面識がない相続人がいる遺産分割協議は、相続財産の取得をめぐって争いが起きやすく調停や審判といった家庭裁判所での手続きに発展しやすいためご注意ください。

3-2-1 遺言書があれば遺産分割協議は不要

相続が発生した際、遺産の分け方は相続人全員で話し合いを行う「遺産分割協議」が必要です。

しかし、被相続人が有効な遺言書を作成していた場合、この遺産分割協議は原則として不要です。

遺言書は、被相続人が生前に自身の財産の分け方を指定しておくもので、遺産分割協議よりも優先されます。

家族関係が複雑で相続トラブルを回避したい場合や、相続人以外の人へ相続財産を分配したい場合は遺言書を残しておくことが有効な方法です。

ただし、書式にミスが多いと遺言書が無効となってしまう可能性もあります。

遺言書を作成する際にはミスの発生が少ない公正証書遺言を選び、税理士や弁護士などのアドバイスを受けながら安全な遺言書を作ることが大切です。

4. 相続人の範囲に迷ったらどうするべき?

4. 相続人の範囲に迷ったらどうするべき?

相続人の範囲は、家族構成や離婚・再婚などによって複雑になることがあります。

もしも誰が相続人になるのか迷った場合は「相続関係説明図」の作成や、専門家への相談がおすすめです。

この章では相続人の範囲に迷った際にできる対策を紹介します。

4-1. 戸籍謄本類を収集し「相続関係説明図」を作ろう

相続関係説明図とは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本などを収集し、相続人との関係もつなげていくことで相続関係が図式化できる書類です。

家系図に類似しており、言葉だけでは表現しにくい相続関係がわかりやすく可視化できます。

相続関係説明図に法的な作成義務はありませんが、作成しておくと相続人が誰なのか整理できるだけでなく、相続登記時に提出することで被相続人・相続人の戸籍謄本類を返却してもらえるというメリットもあります。

戸籍謄本類は多くの相続手続きで必要書類であり、返却を受けられると別の手続きに再び利用できます。

4-1-1. 法定相続情報一覧図との違い

相続関係説明図に類似した書類に、法定相続情報一覧図と呼ばれるものもあります。

この書類は相続関係説明図とは異なり、法務局の登記官に認証を受けるもので、相続手続き時に被相続人・相続人の戸籍謄本類に代わる公的な書類として利用可能です。

相続関係説明図よりも利用できる範囲が広いですが、法務局で認証を受ける必要があるため時間を要します。

記載事項は相続関係説明図に類似していますが、以下の点が異なるためご注意ください。

  相続関係説明図 法定相続情報一覧図
作成する人 相続人等 相続人側で作成後、法務局の登記官が認証
公的証明力 なし あり
主な利用目的 相続人の整理
相続登記の際の戸籍謄本原本還付
各種相続手続きにおける戸籍謄本の代替
証明力 弱い 強い
記載内容 相続関係を図示(書式に制限はなく、自由に記載) 法務局の定める書式に記載
戸籍謄本類の原本還付 可能 不要(戸籍謄本類の代替となるため、そもそも戸籍謄本類を提出しなくて良い)

4-2. 相続に精通する専門家へのご相談もおすすめ

相続に関する法的な知識がない場合や、手続きに不安がある場合は、相続に精通する税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することがおすすめです。

専門家は、戸籍謄本の収集から相続人の確定、遺産分割協議、相続税申告などの手続きを法的にサポートしてくれます。

先に紹介した一親等の人が負担しやすい相続手続きの中には、法的な期限を有するものがあります。

特に相続税申告は、相続財産の特定・財産評価・二次相続も見据えた申告内容の作成など、行うべき準備が多数あるため、相続人だけで悩むのではなく、速やかに税理士へ相談することがおすすめです。

相続税申告は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」に行う必要があり、申告期限を過ぎてしまうと延滞税などのペナルティが課税されてしまいます。

5. 一親等は父母や子が該当|相続時に負担が大きくなりやすため注意が必要

本記事では、一親等について対象となる人や相続時の注意点について詳しく解説しました。

一親等はご自身から見て1世代離れた父母と子を指します。

特に一親等の血族は、相続において常に優先順位の高い法定相続人となるため、相続時には多くの手続きをこなす必要があります。

相続時にトラブルが予想される場合は、あらかじめ遺言書の作成などの対策を講じておくと良いでしょう。

相続税の申告・納税には期限があるため、被相続人に多くの財産がある場合は税理士への相談がおすすめです。

どうぞお気軽にお問い合わせください。

  • 再婚相手の連れ子
    養子縁組をしない限り血族ではないため、親等はありません。
    養子縁組をした場合は、養親と養子は一親等の親子となります。
  • 養子
    養子と養親の間には法律上の親子関係が生じ、一親等に数えます。
    養子の他に実子がいる場合兄弟姉妹となり、実子・養子から見た兄弟姉妹は二親等です。
  • 内縁の配偶者、内縁の配偶者との子
    内縁の配偶者は法律婚をしておらず、親等には数えません。
    内縁の配偶者との間に子がいる場合、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子は、認知を受けることで父との間に一親等の血族関係が生じます。
    認知されていない場合は、法律上の親子関係はありません。

1-4. 二親等以降の数え方とは

親等は、自分をゼロとし親族へ世代を1つ移動するごとに一親等ずつ数えます。

例として、二親等や三親等は以下のとおりです。

  • 二親等 祖父母、兄弟姉妹、孫 (一親等からもう一世代移動する)
  • 三親等 曽祖父母、おじ・おば、甥・姪、ひ孫(一親等からもう二世代移動する)

二親等以降の数え方についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

【関連記事】親等とは?相続時に欠かせない親族の数え方や範囲を解説!

2. 姻族と血族における一親等の違いとは

2. 姻族と血族における一親等の違いとは

親族には血縁関係のある「血族」と、婚姻によって親族となった「姻族」があります。

この章では一親等においても、血族と姻族で対象となる人を詳しく解説します。

2-1. 姻族における一親等

姻族における一親等は配偶者をゼロとし、配偶者を起点に親等を数えます。

そのため、姻族の一親等は「配偶者の父母」が該当し、配偶者の祖父母は姻族の二親等となります。

内縁関係の配偶者や、離婚後の元夫・妻の父母は法律上の親族関係ではないため、姻族に該当しません。

再婚によって新たな配偶者と法律婚をした場合、新しい配偶者の父母が姻族における一親等となります。

2-2. 血族における一親等

血族における一親等とは、ご自身の父母と子が該当します。

血族とは、直接的な血の繋がりがある親族を意味します。

例として、ご自身の両親が離婚しても血族の親子関係が終了するものではありません。

両親の離婚後も父母は変わらず血族の一親等です。

同様に、離婚をしても実子は変わらず親から見て血族の一親等です。

2-3. 姻族は相続対象外のため注意

相続が発生した時に、法定相続人になるのは「血族の一親等」です。

姻族の一親等は法定相続人にはなれません。 

しかし、姻族の一親等であっても特別寄与料を受け取れる可能性はあります。

特別寄与料とは、被相続人の介護などを無償で行っていた法定相続人以外の親族が、生前の貢献について相続時に請求できる金銭を意味します。

この制度で特別寄与料を請求できる人の要件は3つあります。

1つ目は「親族であること」、2つ目は「法定相続人ではないこと」、3つ目が「相続放棄や相続欠格などで相続権を失った人ではないこと」です。

1つ目にある「親族であること」が指す親族の範囲は、6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族です。

つまり、被相続人の生前において介護などで3親等以内の姻族に該当する人が貢献していた場合、法定相続人ではないですが特別寄与料を請求できる立場にあります。

3. 相続時に「血族の一親等」が苦労する2つの理由

3. 相続時に「血族の一親等」が苦労する2つの理由

相続時には法定相続人となることが多い血族の一親等(子または父母)は、多くの手続きや責任を担うことがあります。

そこで、この章では相続時に一親等が直面する苦労について、2つの理由に分けて解説します。

3-1. ご逝去後に発生する多くの手続きを担うため

被相続人の一親等である子や父母は、ご逝去後に発生する多くの手続きを担う必要があります。

ご逝去後に発生する手続きの一例は以下です。

手続き名 手続き期限
訃報連絡 逝去後、速やかに
死亡診断書または死体検案書の受け取り 逝去後、速やかに
葬儀会社の手配と打ち合わせ 逝去後、数日以内
死亡届・火葬許可申請書の提出 逝去を知った日から7日以内
葬儀・告別式の実施  一般的に逝去後、数日~1週間程度
四十九日 逝去日を含めて49日目
年金関連手続き(国民年金)の受給停止 死亡の事実を知った日から14日以内
年金関連手続き(厚生年金)の受給停止 死亡の事実を知った日から10日以内(事業主経由)
相続放棄・限定承認 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
所得税の準確定申告 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
遺産分割協議 法的な期限はないが、早めに開始することが望ましい
相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続登記 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内もしくは遺産分割が成立した日から3年以内

こうした手続きの他に、被相続人の相続財産によっては預貯金口座の解約や有価証券の引継なども行わなければなりません。

ご家族が亡くなると悲しみに伏せる暇もなく、慌ただしく相続全般の手続きに翻弄されやすいのです。

相続税申告・納付や相続登記など、主要な手続きには期限もあるため、漏れの内容に行う必要があります。

3-2. 法定相続人として遺産分割協議が必要

被相続人に複数の法定相続人がいる場合に、遺言書がなかったら相続人全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。

たとえ生前に被相続人と疎遠な関係の相続人がいたとしても、協議には参加してもらう必要があるのです。

疎遠な相続人を無視したり、参加してもらえなかったりすると、その遺産分割協議は無効となってしまいます。

一般的に相続は「配偶者と一親等の血族」が法定相続人となり、円滑に進められることが多いですが、面識のない前妻・前夫との子や(一親等)などに参加してもらうケースも少なくありません。

不仲・面識がない相続人がいる遺産分割協議は、相続財産の取得をめぐって争いが起きやすく調停や審判といった家庭裁判所での手続きに発展しやすいためご注意ください。

3-2-1 遺言書があれば遺産分割協議は不要

相続が発生した際、遺産の分け方は相続人全員で話し合いを行う「遺産分割協議」が必要です。

しかし、被相続人が有効な遺言書を作成していた場合、この遺産分割協議は原則として不要です。

遺言書は、被相続人が生前に自身の財産の分け方を指定しておくもので、遺産分割協議よりも優先されます。

家族関係が複雑で相続トラブルを回避したい場合や、相続人以外の人へ相続財産を分配したい場合は遺言書を残しておくことが有効な方法です。

ただし、書式にミスが多いと遺言書が無効となってしまう可能性もあります。

遺言書を作成する際にはミスの発生が少ない公正証書遺言を選び、税理士や弁護士などのアドバイスを受けながら安全な遺言書を作ることが大切です。

4. 相続人の範囲に迷ったらどうするべき?

4. 相続人の範囲に迷ったらどうするべき?

相続人の範囲は、家族構成や離婚・再婚などによって複雑になることがあります。

もしも誰が相続人になるのか迷った場合は「相続関係説明図」の作成や、専門家への相談がおすすめです。

この章では相続人の範囲に迷った際にできる対策を紹介します。

4-1. 戸籍謄本類を収集し「相続関係説明図」を作ろう

相続関係説明図とは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本などを収集し、相続人との関係もつなげていくことで相続関係が図式化できる書類です。

家系図に類似しており、言葉だけでは表現しにくい相続関係がわかりやすく可視化できます。

相続関係説明図に法的な作成義務はありませんが、作成しておくと相続人が誰なのか整理できるだけでなく、相続登記時に提出することで被相続人・相続人の戸籍謄本類を返却してもらえるというメリットもあります。

戸籍謄本類は多くの相続手続きで必要書類であり、返却を受けられると別の手続きに再び利用できます。

4-1-1. 法定相続情報一覧図との違い

相続関係説明図に類似した書類に、法定相続情報一覧図と呼ばれるものもあります。

この書類は相続関係説明図とは異なり、法務局の登記官に認証を受けるもので、相続手続き時に被相続人・相続人の戸籍謄本類に代わる公的な書類として利用可能です。

相続関係説明図よりも利用できる範囲が広いですが、法務局で認証を受ける必要があるため時間を要します。

記載事項は相続関係説明図に類似していますが、以下の点が異なるためご注意ください。

  相続関係説明図 法定相続情報一覧図
作成する人 相続人等 相続人側で作成後、法務局の登記官が認証
公的証明力 なし あり
主な利用目的 相続人の整理
相続登記の際の戸籍謄本原本還付
各種相続手続きにおける戸籍謄本の代替
証明力 弱い 強い
記載内容 相続関係を図示(書式に制限はなく、自由に記載) 法務局の定める書式に記載
戸籍謄本類の原本還付 可能 不要(戸籍謄本類の代替となるため、そもそも戸籍謄本類を提出しなくて良い)

4-2. 相続に精通する専門家へのご相談もおすすめ

相続に関する法的な知識がない場合や、手続きに不安がある場合は、相続に精通する税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することがおすすめです。

専門家は、戸籍謄本の収集から相続人の確定、遺産分割協議、相続税申告などの手続きを法的にサポートしてくれます。

先に紹介した一親等の人が負担しやすい相続手続きの中には、法的な期限を有するものがあります。

特に相続税申告は、相続財産の特定・財産評価・二次相続も見据えた申告内容の作成など、行うべき準備が多数あるため、相続人だけで悩むのではなく、速やかに税理士へ相談することがおすすめです。

相続税申告は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」に行う必要があり、申告期限を過ぎてしまうと延滞税などのペナルティが課税されてしまいます。

5. 一親等は父母や子が該当|相続時に負担が大きくなりやすため注意が必要

本記事では、一親等について対象となる人や相続時の注意点について詳しく解説しました。

一親等はご自身から見て1世代離れた父母と子を指します。

特に一親等の血族は、相続において常に優先順位の高い法定相続人となるため、相続時には多くの手続きをこなす必要があります。

相続時にトラブルが予想される場合は、あらかじめ遺言書の作成などの対策を講じておくと良いでしょう。

相続税の申告・納税には期限があるため、被相続人に多くの財産がある場合は税理士への相談がおすすめです。

どうぞお気軽にお問い合わせください。