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ーコラムー
相続税
税理士監修記事

相続と空き家問題~『空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例』の創設-相続・事業承継トピックス(アングルVol.40)

公開日:2016.5.19 更新日:2022.06.19

適切に管理が行われていない空き家の発生を抑制する観点から、平成27年5月26日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空き家対策特別措置法」)が全面施行されました。

やむを得ず空き家状態のまま維持している方も多いと思われますが、相続や贈与において、「空き家」をどう扱うかは課題の一つです。空き家対策特別措置法について解説します。

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例

空き家率推移

総務省統計局によると、平成25年の空き家率は約820万戸と、総住宅数の13.5%に達しています。

全国的に空き家は増加傾向にあり、今後ますます社会問題として顕在化するとみられています。

空き家率推移

固定資産税等の軽減税率

親と同居することができない等の理由で、増え続けている空き家ですが、「更地にして所有すればいいのではないか」との意見もあるでしょう。

しかし、更地にすると、固定資産税と都市計画税に定められている軽減税率の対象から外れてしまいます。つまり、更地ではなく建物が建っていることで、かかる税金が軽減されるのです。

税制面での軽減措置(建物が建っている場合)

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用宅地 住宅1戸につき200㎡まで 課税標準 × 1/6 課税標準 × 1/3
一般住宅用地 住宅1戸につき200㎡を超えた部分 課税標準 × 1/3 課税標準 × 2/3

空き家対策特別措置法

このように、空き家の解体には、上記の固定資産税と都市計画税の軽減措置が阻害要因となっていました。

そうした現状を踏まえ、治安面で問題となっている空き家については「対象外とする」と定めたのが、空き家対策特別措置法です。国土交通省は、「特定空き家」に認定する条件として、下記の4つの基準を示しました。

「特定空き家」認定する条件(国土交通省)

  • 基礎や屋根、外壁などに倒壊の危険があるもの
  • ごみの放置などで衛生上有害なもの
  • 適切な管理が行われておらず、著しく景観を損なうもの
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切なもの

「特定空き家」と認められた物件の持ち主には、指導や命令がなされます。それでも改善しない空き家については、固定資産税・都市計画税の軽減対象から外されることになります。


ここまでは、危険な空き家を放置しておくと行政から勧告がなされ、さらに「特定空き家」に認定されると固定資産税等が増える「空き家対策特別措置法」をご紹介しました。ここからは平成28年度税制改正で創設された「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」について解説します。

■ 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例

空き家の売買を活発にし、空き家を減らしていく目的で定められたこの特例は、一定の条件を満たした空き家の売却に対し、最高で3,000万円の特別控除を行うものです。

平成28年4月1日から平成31年12月31日の間の売却が対象となります。

要件 内容
建築要件 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること。従って、マンションは区分所有建築物であり、対象とはなりません。
居住要件 相続の直前まで自宅として使用し、相続により空き家になった家屋であること。かつ、相続以後に使用履歴がないこと。
譲渡期間要件 相続開始の時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されたものであること。
譲渡価額要件 被相続人の家屋及び土地の売却価額が1億円を超えないこと。

相続した旧耐震基準の家屋を、耐震リフォームして売却するか、あるいは、解体し更地にして売却した場合に、売却して得た利益(譲渡所得)から最高3,000万円の控除が適用されます。

つまり、譲渡所得が4,000万円であれば、3,000万円を引いた1,000万円に対して税金がかかることになります。

特例の適用には、上記の要件をすべて満たす必要があります。「実家の相続」に限定されていますが、該当する可能性のある方は、検討してみてはいかがでしょうか。


なお、相続した土地の売却については、相続税の申告から3年以内の売却であれば、相続税額の一部が譲渡所得から差し引かれる特例もあります。今回の空き家譲渡所得の特例は、この特例の選択適用となりますので、ご注意ください。

空き家対策特別措置法が「ムチ」であるのに対し、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例は「アメ」の役割を果たすといえるでしょう。この双方の法案により、空き家を本格的に減らす方向へと動き出しています。


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