24時間受付メール相談 電話

まずは
電話で相談

0120-55-4145

受付:9:00-18:30(平日/土曜)

LINEでの
ご相談はこちら

line

Button
ーコラムー
不動産の生前対策
税理士監修記事

資産管理会社設立とは?仕組みと活用のメリットについて

公開日:2020.9.8 更新日:2022.06.28

高額化する所得税・相続税への対策として、設立した「資産管理会社」に個人所有の資産を移転させる方法があります。不動産投資の効率化・遺産分割時のトラブル防止策としても有効で、後世代のために着実に財を築きたい人に注目されています。

本記事では、資産管理会社のメリットを具体化し、注意点や実践的な設立手続きについても解説します。

※本文中で紹介する法人の税率は、2020年時点で東京に本社を置く12月決算の会社を想定しています。

目次

1.資産管理会社(プライベートカンパニー)とは?
2.資産管理会社設立のメリット
3.相続が発生した時のメリット
メリット1:相続財産の過剰増加を防止できる
メリット2:納税資金を確保できる
メリット3:換価分割を迫られずに済む
4.資産管理会社設立に向いている人
4-1.個人所得が多い人
4-2.納税資金不足を懸念する人
4-3.不動産投資の規模拡大を予定している人
5.資産管理会社の設立方法
5-1.会社設立の流れ
5-2.会社設立の費用
5-3.会社設立代行サービスに依頼する
6.資産管理会社の注意点
6-1.タックスヘイブン対策税制
6-2.資産配分が不動産or株式に偏っている会社の評価
7.まとめ

資産管理会社設立とは?

資産管理会社設立とは?

1.資産管理会社(プライベートカンパニー)とは?

会社設立の目的はさまざまですが、社会に広く利益をもたらす事業ではなく、オーナー個人の資産管理・運用を目的とするものを、特に「資産管理会社」と呼びます。

資産管理会社の形態は「株式会社」や「合同会社」であり、設立手続きや決算に関するルールは一般的な企業と同様です。なお名称については、個人性の高い特徴を反映して「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

資産管理会社を持つメリットは、①個人所得の税率・②相続発生時の2つの観点から説明できます。下記では、まず①から詳しく解説します。

2.資産管理会社設立のメリット

資産管理会社設立のメリットの1つは、個人所得の課税種類を「所得税」から「法人税」へと転換できる点です。

個人の資産運用や被雇用によって生じる収入には、その額面に応じて最大45%の所得税率が課せられます。さらに全国一律10%の住民税まで発生するため、高額所得者は額面の半分以下しか手元に残せません。

では、個人所得を「資産管理会社のもの」とするとどうでしょうか。結果、課税種類は法人税に変わり、税率15%~23.2%へと大幅に低減します。その他かかる地方法人税や事業税などを考慮し、法人の利益に対する税金の負担割合(=実効税率)を計算しても、30.62%~34.59%と所得税の最大税率に比べてはるかに低額です。

3.相続が発生した時のメリット

資産管理会社設立の第二のメリットは、相続税対策・遺産分割トラブル防止の両方を可能にする点です。解説を具体化するため、下記では相続時の利点を3つに分けて紹介します。

メリット1:相続財産の過剰増加を防止できる

不動産など収入を生じさせる資産があると、いずれ相続税の課税対象となる個人資産が増え続けます。相続税の最大税率は55%であり、遺された家族に重い負担を強いると言わざるを得ません。

そこで資産管理会社を設立し、相続人を会社関係者扱いにして「給与」や「役員報酬」を支払う体裁をとり、収入を相続人固有の資産へと“分散”する方法が考えられます。相続人への報酬という「経費」が発生することで、収入を目減りさせずに相続財産の過剰な増加を抑制し、税率・課税額ともに低減できるのです。

なお、支払われた給与には所得税がかかるものの、額面を調整することで低い税率が適用されるため、相続人の負担を小さくすることは十分可能です。

メリット2:納税資金を確保できる

相続税は現金納税が原則です。
そこで、相続財産の資産比率が不動産・有価証券等に偏っているケースでは、多額の遺産承継が発生したにも関わらず、期限までに納税できない事例が後を絶ちません。これら高額資産に対する課税が原因で、納税すべき額が現預金資産を超えてしまうのです。

※相続税の納税資金対策の重要性やその方法についてはコラム「相続税の納税資金対策で土地の売却をするには?」で解説しています。併せてご参考ください。

以上の納税資金不足の問題についても、給与あるいは役員報酬の支払いによるキャッシュ積立で解消できます。また、相続人固有の資産となった現金は、原則として遺産分割の対象になりません。目減りの心配がなく、キャッシュ確保の手段として安全性が高いと言えます。

メリット3:換価分割を迫られずに済む

さらに相続トラブル回避につながるメリットとして、法人所有の資産は遺産分割の際に「換金」つまり売却を迫られない点が挙げられます。資産そのものの代わりに、資産管理会社の発行株式が相続財産となるからです。

特に不動産は、分割しづらく換金性も低いのがネックです。
相続人の共有登記にする方法も考えられますが、共有状態であるうちは売却やリフォームが自由にできず、さらに二次相続以降に権利関係が複雑化する恐れもあります。かといって、後継者と見込む親族に単独承継させると、他の相続人は不満を覚えるでしょう。

不動産を「株式」という分割しやすい性質の資産に転換すれば、以上の取り分の決め方を巡る問題は一挙に解決します。

4.資産管理会社設立に向いている人

資産管理会社の優れた性質から、設立に向いている人として第一に「個人所得の多い人」が挙げられます。生前準備を控えた人であれば、よりメリットが大きくなります。

4-1.個人所得が多い人

目安として、総収入から必要経費・控除を差し引いた額が900万円※を超えるなら、資産を法人化したときの実効税率が有利といえます。収益性資産の全体ではなくその一部だけでも、資産管理会社の設立は検討の余地があります。

【参考】所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

引用:国税庁「所得税の税率」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

※資産の法人化による節税効果の大きさは、資産配分や固定資産税評価額に影響を受けます。個別ケースについては税理士に診断を受けましょう。

4-2.納税資金不足を懸念する人

総所有資産に占める現金の割合が低い人は、生前準備の一環として納税資金対策は必須です。

対策として「生命保険の加入」「相続時精算課税の適用による生前贈与」などいくつかの方法が考えられます。いずれもキャッシュ確保や節税のメリットがありますが、資産管理会社の設立なら、相続財産の過剰増加・分割トラブルの防止効果まで得られます。

4-3.不動産投資の規模拡大を予定している人

現状すでに多額の資産があるケースのみならず、これから積極的に不動産投資を始めようとする人も会社設立に向いています。

アグレッシブな投資活動に対する追加のメリットとして、銀行の信用増加が挙げられます。融資審査に通過しやすくなることで、経営プランの幅が広がるでしょう。

他には、課税事業者(消費税の納税義務がある法人または個人事業主)の場合、売上減少などの一定の条件下で消費税還付を受けられるのも利点です。

法人ならではの様々なメリットを活用することで、いずれ生じる事業承継で円滑な引継ぎが実現します。

5.資産管理会社の設立方法

資産管理会社の設立は所定の費用を要するものの、自力でも簡単に行えます。
コストを押さえるには会社形態の選択も重要です。よく選ばれるのは、設立コストの低い「合同会社」の形態です。

【参考】株式会社と合同会社の違い

  • 株式会社
    出資者を集めて資金調達する会社です。運用ルールは会社法で厳格に定められており、取締役会や監査役の設置・決算公告義務などを負います。
  • 合同会社
    経営者自身が出資する会社です。運用ルールは定款で自由に決められる反面、社会的信用は株式会社に劣ります。

5-1.会社設立の流れ

資産管理会社設立をオーナー自身で行う場合、次の流れで進めます。

  • Step1.会社情報を決める
    社名(商号)・本店所在地・出資金・事業年度・決算月・設立時の社員と役員をそれぞれ決めます。
  • Step2.社判(社印)を作成する
    代表者印・角印・銀行印の3点セットを作成します。
  • Step3.定款を作成する
    会社の運用ルールを定めた「定款」を作成し、公証役場で認証を得ます。なお、合同会社を設立する場合、定款認証は不要です。
  • Step4.法務局で設立登記を行う
    設立登記申請書・定款等の必要書類に「登録免許税」を添え、本店所在地を管轄する法務局(本局)に提出します。
  • Step5.市区町村役場や税務署に届け出る
    青色申告承認申請書・法人設立届出書など、事業運営に必要な届出を行います。

5-2.会社設立の費用

資産管理会社の一般的な形態である「合同会社」「株式会社」について、2020年現在の設立最低費用は以下の表で示しています。

費用項目 合同会社 株式会社
①出資金 0円 0円
②登録免許税 6万円 15万円
③定款印紙代 0円 0円
④定款認証手数料 0円 5万円
⑤謄本手数料 0円 2千円(目安)
⑥社判作成費用 8千円(目安) 8千円(目安)

5-3.会社設立代行サービスに依頼する

「定款」に必要な絶対的記載事項の理解など、会社設立のプロセスのなかには独力で対応しきれない部分があります。スケジュールにゆとりがなく、複数の官公庁に対して届出するための時間がとれない場合もあるでしょう。

以上のように自力での資産管理会社設立が困難なケースは、司法書士または設立代行サービスに依頼できます。

会社設立代行サービスは法律系の士業(弁護士・行政書士・司法書士など)の事務所が母体となっているものが大半です。スキルについてはどのサービスを選んでも概ね信頼できますが、一方で申請コスト軽減の効果はまちまちです。

サービスの特徴を比較検討する際は、特に下記3点にこだわりましょう。

設立代行サービスの選び方①:電子定款への対応状況
最低費用で会社設立を任せるには、電子定款の作成に対応する業者の選択が必須です。依頼先候補のサービス紹介ページなどで必ず確認しましょう。

設立代行サービスの選び方②:代行業務の範囲
格安サービスのなかには、代行範囲を「書類作成のみ」とするものもあります。設立にかかる手間を徹底的に省く上で、書類作成だけでなく申請業務まで任せられる業者を選びましょう。

設立代行サービスの選び方③:0円代行or手数料割引の条件
「代行手数料0円」を掲げるサービスは「紹介する税理士との顧問契約」などを条件とする場合が多くあります。依頼先候補が0円代行・手数料割引などを実施している場合、何らかの条件が付されていないか確認しましょう。

6.資産管理会社の注意点

先で触れたように、資産管理会社のなかには課税強化の対象となるものがあります。海外資産のある人、あるいは法人名義としたい資産が極端に不動産あるいは株式に偏っている人は、下記の税制に注意しましょう。

6-1.タックスヘイブン対策税制

節税目的で国内資産を軽課税国へと移転させる行為は「租税回避」(タックスヘイブン)と呼ばれ、近年になって取り沙汰される機会が増えました。この問題を受け、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)が強化されています。

外国子会社合算税制とは、租税回避目的で設立された海外子会社の利益を「内国の親会社に配当されたもの」とみなし、日本の方式に沿って課税するものです。ただし、個別ケースで課税額が過重にならないよう、現地国で租税負担割合が20%以上であれば、本税制の適用は免除されます。

ところが2017年に法改正が行われ、適用免除の条件が追加されました。
「経済活動基準を満たさない“ペーパーカンパニー”については、免除要件を租税負担割合30%まで引き上げる」という内容の、租税回避に対する実質的なペナルティが設けられたのです。

税制優遇が整備されている国に資産を多く持つ人(あるいは国内資産を移転させようとする人)は、以上の課税強化に十分注意を払いましょう。

6-2.資産配分が不動産or株式に偏っている会社の評価

相続財産の評価では、不動産が総資産価額の50%を占める会社を「株式等保有特定会社」、土地が70%または90%を占める会社を「土地保有特定会社」として扱います。

このような「特定会社」の株式は、複数ある財産評価方法のうち、算定結果が高額化しやすい「純資産価額方式」しか選択できないと定められています。

いずれかの特定会社に該当し、かつ純資産価額方式だと課税額が上がってしまうケースでは、資産比率を変えなければなりません。具体的には、資産の買い付け・遊休地の貸し出し・建築物の立替などの方法が考えられます。

7.まとめ

資産管理会社を設立するメリットは、

①個人所得の課税額低減 ②相続財産の過剰増加防止 ③相続人のための納税資金確保 ④不動産を巡る相続トラブルの防止

と多岐に渡ります。

個人所得の多い人、なかでも生前準備を意識している人は、資産の法人化を積極的に検討すると良いでしょう。

いったん資産を法人化してしまうと、個人所有である場合に比べて管理(会計処理や運営など)に一層厳しいルールが課せられます。課税強化されるケースもあり、法人化しようとする資産や運営方針には十分注意しなければなりません。

以上の点を踏まえると、資産管理会社設立の個別具体的な効果については、税理士を始めとした専門家に試算を任せるのがベストです。

日本クレアス税理士法人グループに属する「株式会社日本クレアス財産サポート」では、総合的な税金対策を効果的に行える、資産管理会社設立サポートを行っています。事前の対策をしっかりと行えば、相続税以外の税金の節税対策も行いつつ、しっかりと大切な不動産や金融資産を残すことも可能です。大切な財産を守るための税金対策を行いたい方は、本Webサイトのお問合せフォームよりぜひお問合せください。

【お役立ちコンテンツ】

税務署で相続税に関する相談が可能、税理士との違いは?

相続相談はどこにするべき?専門家(税理士、司法書士、弁護士)の強み

 

【クレアスの相続税サービス】

相続税 生前対策コース

相続税申告・相続手続コース

税務調査対応コース

【生前対策コース】のご説明はこちら

日本クレアス税理士法人 相続サポート

このコラムは「日本クレアス税理士法人」が公開しております。

東京本社
〒100-6033東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング33階
電話:03-3593-3243(個別相談予約窓口)
FAX:03-3593-3246

※コラムの情報は公開時のものです。最新の情報は個別相談でお問合せください