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ーコラムー
相続税
税理士監修記事

相続税の債務控除とは?控除対象となる費用や条件・注意点を徹底解説!

公開日:2024.9.30 更新日:2024.10.01

両親や祖父母が残した財産に借金があるけれど、どうすればいいの?とお困りではありませんか。

マイナスの財産ばかりなら相続放棄が推奨されるものの、プラスの財産がある場合は放棄すると損をする恐れがあります。プラスのほうが上回る場合は、債務控除を適用して納税額を抑えることがおすすめです。

この記事では、相続税の債務控除とは何かをわかりやすく解説します。

債務控除の対象や計算方法、適用する際の注意点まで紹介するので、マイナスの財産でお困りの方は参考にしてください。

また、詳しい相続財産の種類について知りたい方は、ぜひ下記記事も併せてご覧ください。

【関連記事】相続財産の種類とは?相続した財産額の計算方法まとめ

1. 債務控除とは?相続税の基本からわかりやすく解説

1. 債務控除とは?相続税の基本からわかりやすく解説

相続する財産のなかに借金がある方は、債務控除の内容を把握しておきましょう。

相続放棄よりも利益を得られる可能性があるため、ここで詳しく解説します。

1-1. 債務控除の基本的な定義とその重要性

債務控除とは、遺産総額からマイナスの財産に該当する額を差し引けるものです。

代表的なマイナスの財産として挙げられるのが、借金です。

消費者金融や銀行などから借り入れているお金があれば、総借入額を遺産総額から差し引くことができるため、最終的な納税額が少なくなります。

引き継ぐ財産のなかに債務がある場合は、必ず債務控除のことを把握しておきましょう。

人によっては、借金がある時点で相続放棄を選ぶかと思います。

しかし、プラスの財産よりも借金が少なければ、結果的に利益を得られるため、プラス・マイナス問わず相続したほうがお得なのです。

マイナスの財産を引き継ぐ場合は債務控除も適用できるので、相続税を計算する際に重要になると覚えておきましょう。

1-2. 控除対象となる債務の範囲|生活費・借入金・医療費など

マイナスの財産だからといって、すべての債務が控除対象になるわけではありません。

控除の対象・対象外の財産をまとめました。

<債務控除の対象・対象外の財産一覧>

債務控除の対象

・消費者金融や銀行からの借り入れ
・連帯債務での借り入れ
・所得税
・消費税
・住民税
・固定資産税
・未払いの医療費
・未払いの公共料金
・未払いのクレジットカード代金
・事業における未払い金や預り金
・葬儀費用

債務控除の対象外

・保証人になっている借り入れ
・団信に加入している住宅ローン
・未払いの墓地や仏壇の購入費用
・相続財産の管理費用
・遺言執行費用
・香典返し
・法事にかかる費用

債務控除の対象になる費用が多くある一方で、対象外になるものもあります。

亡くなった人が団信付きの住宅ローンを契約していた場合、死亡によって残債の返済義務がなくなるため、残債を債務控除として適用できません。

また、墓地や仏壇などは相続税の非課税対象になるため、こちらも控除に含められないと覚えておきましょう。

香典返しや法事にかかる費用なども、葬儀費用として含めてしまいがちです。

葬儀や法事にかかる費用すべてが控除対象にならないので、対象・対象外のどちらかを確認することが大切です。

2. 控除対象となる具体的な費用|日常生活に関連する債務

2. 控除対象となる具体的な費用:日常生活に関連する債務

債務控除の対象となる費用にはさまざまなものがあるため、借金や未払い金などがある場合は対象の有無を確認しておきましょう。

ここでは、控除対象となる具体的な費用を紹介します。

2-1. 生活費・光熱費・電話代などは債務控除の対象?

亡くなった人の生前に発生していた生活費は、債務控除の対象です。

生活費として挙げられるのは、ガス・電気・水道光熱費・電話料金などがあります。

これらの料金は亡くなった人が支払うものなので、債務控除として相続税から料金を差し引けます。

一点注意したいのが、日割り計算した金額のみ差し引けることです。

光熱費や電話料金は月単位で払うことが一般的ですが、1カ月にかかった費用全額を控除できるわけではありません。

たとえば、9月15日に亡くなった場合は9月分の費用を日割りし、15日分の費用のみを相続税から差し引くことになります。

2-2. 医療費や新聞代など意外と知られていない債務控除の対象

亡くなった人が生前入院していた、または通院していた場合は、死亡後に支払いを求められます。

この場合は、未払いの金額を債務控除として適用できるため、病院から領収書をもらいましょう。

ただし、以下の費用は控除対象にならないので注意が必要です。

<控除対象にならない医療費>

  • 本人の希望によって発生した差額ベッド代
  • 医療器具として認められない物品の購入費用

本人の症状から個室での治療が必要だと医師が判断した場合は、差額ベッド代を債務控除に含められます。

しかし、本人の希望で個室になった場合は医療費として認められないので、差額分を控除として適用できません。

また、松葉づえや車いすなどの医療器具の購入費用は債務控除に含められますが、防ダニ効果のある寝具などの医療器具にあたらないものは控除の対象外です。

医療費のなかでも対象になるもの・ならないものが細かくわかれているため、迷ったら税理士に相談することがおすすめです。

3. 債務控除の計算方法を詳しく解説

3. 債務控除の計算方法を詳しく解説

引き継ぐ財産にマイナスのものがあったけれど、どのように計算すればいいかわからないとお悩みの方も多いでしょう。

ここでは、債務控除を加えた相続税の計算方法をくわしく解説します。

3-1. 債務控除の正確な計算手順

債務控除を適用できるときは、遺産総額から基礎控除と一緒に差し引きましょう。

借金や商品購入の未払い金はそのまま差し引けますが、光熱費は日割り計算しなければなりません。

光熱費の日割り計算の手順は以下の通りです。

光熱費の日割り計算の流れ

  • 電気料金:基本料金または最低料金 ×(使用日数÷30日)・第1~3段階の1kWhあたりの料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金の合計額
  • ガス料金:メーター口径に応じた基本料金 ×(使用日数÷30日)・下水道使用料の合計額
  • 水道料金:日割りした基本料金 +(単位料金×ガス使用量)

光熱費の日割り計算は複雑なので、間違えないよう注意が必要です。

計算に必要な数字については契約している電力会社やガス会社などに、計算自体が難しい場合は税理士に相談することで、誤りなく控除額を算出できるでしょう。

3-2. 自分でできる債務控除の計算例|減額効果を視覚化

債務控除を適用すると相続税が少なくなることはわかったものの、どれくらい減るの?と疑問を持っている方も多いでしょう

4,000万円を相続するにあたり、債務控除を適用する・適用しないケースを紹介します。

<債務控除を適用しないケース>

法定相続人を1人とし、基礎控除は3,600万円とします。

4,000万円 - 3,600万円= 400万円で、400万円が相続税の課税対象になります。

400万円の税率は10%なので、400万円 × 10%= 40万円が納める相続税額です。

<400万円の債務控除を適用するケース>

「4,000万円 - 3,600万円(基礎控除)- 400万円(債務控除)= 0円」となるため、相続税額は0円です。

債務控除を適用することで相続税がなくなる可能性もあるので、マイナスの財産を引き継ぐ場合は必ず計算に含めましょう。

4. 債務負担者の役割と手続きにおける重要ポイント

4. 債務控除負担者の役割と手続きにおける重要ポイント

債務控除を適用する場合は、引き継ぐマイナスの財産を負担しなければなりません。

未払いのものを相続する人が払うことで控除を適用できるので、支払い期限までに納めましょう。

ここでは、亡くなった人の債務を負担する人の役割と、覚えておきたいポイントを紹介します。

4-1. 負担者としての役割を正しく理解する

亡くなった人の債務は3つの種類に分けられ、種類別に分担方法が異なります。

種類の特徴は以下の通りです。

<債務の種類>

  • 可分債務:法定相続分に応じて分担できる種類
  • 不可分債務:分担が難しい種類
  • 連帯債務:亡くなった人の支払いを相続人間で分割できる種類

借金や未払いの光熱費などが可分債務に該当します。

法定相続分に応じて分担できるため、相続人1人がすべての債務を負うことはありません。

不可分債務は土地や建物などの分配が難しい債務です。

たとえば、生前に知り合いへ土地を引き渡すための債務を背負っていた場合、相続人全員が亡くなった人の債務を負うことになります。

相続人全員で協力して債務を完済する、または1人が全債務を完済することで、債務が消滅します。

連帯債務とは、亡くなった人が知人や友人などと連帯で借り入れをしていた場合の債務です。

連帯での借り入れは、借りている人それぞれが債務を負うため、亡くなった人がすべての額を完済する必要はありません。

相続人が引き継ぐのは亡くなった人が負う債務のみなので、亡くなった人に代わって完済すればいいと考えておきましょう。

4-2. 債務控除の適用をスムーズに進めるために準備すべきこと

債務控除を適用する際は、債務があることを証明できる書類を相続書類と一緒に用意しなければなりません。

用意しておきたい書類は以下の通りです。

<債務控除の適用に必要な書類>

  • 金融機関の残高証明書
  • 納税通知書や領収書
  • 医療費の領収書
  • 光熱費の領収書

金融機関からお金を借りている場合は、借入額の残高がわかる証明書を用意しましょう。

所得税・消費税・医療費・光熱費などの未払いがある場合は、それぞれの料金を納めたことがわかる領収書を用意する必要があります。

亡くなった人に代わって支払ったと証明すれば、債務控除を適用できるため、納税額を抑えることが可能です。

5. 債務控除を受けるための留意点|失敗しないために知っておきたいこと

5. 債務控除を受けるための留意点:失敗しないために知っておきたいこと

債務控除を適用することで納税額を抑えられるものの、手続きに誤りがあると控除を適用できなくなります。

場合によっては損をしてしまうため、注意すべきポイントを確認しておきましょう。

債務控除を適用する際に失敗しやすいポイントは以下の通りです。

<債務控除で失敗しやすいポイント>

  • 債務を証明する書類を用意し忘れる、または添付し忘れる
  • 預貯金口座の解約における振込手数料は債務控除に含められない
  • 未払い金の払い忘れ

亡くなった人が遺した債務を支払ったものの、納付済みを証明する書類がなければ債務控除は適用できません。

支払ったから大丈夫だと思わず、証明できる証拠となる領収書を必ず保管しておきましょう。

保管している書類を、相続税の申告時に一緒に提出することも大切です。

相続税の申告書に控除を適用した金額を記載していても、添付書類がなければ控除は適用されません。

追徴課税を求められる可能性があるため、忘れず提出しましょう。

前述したように、債務控除には控除の対象・対象外となるものがあります。

よく間違われやすいのが、亡くなった人の預貯金口座解約後、解約金を振り込む際に発生する振込手数料です。

解約金は控除の対象になるものの、手数料は相続人が遺産を振り分けるために必要な費用だと判断されるため、控除の対象外になります。

また、未払い金を払い忘れると債務控除を適用できない点にも注意が必要です。

亡くなった人が遺したマイナスの財産は、死亡後に相続人が一括で支払う必要があります。

各所に死亡した旨を伝えると、未払い金の支払いについて説明されるため、指示通りの手順で未払い金を納めましょう。

6. 特殊なケースにおける債務控除の適用例

6. 特殊なケースにおける債務控除の適用例:相続放棄はできる?

相続において、亡くなった人が何らかの未払い金を残すことは珍しくありません。

特に光熱費は未払い金が発生しやすいため、相続人が未払い分を納めることで債務控除を適用できます。

しかし、なかには亡くなる直前に入院していたり、収入を得ていて確定申告をする前に亡くなったりするケースもあります。

どちらも債務控除の対象ではあるものの、どのようにすれば適用されるかがわからないとお困りの方もいるでしょう。

ここでは、生活費以外の債務が残されている特殊ケースについて紹介します。

6-1. 所得税や医療費の未払金が発生した場合の債務控除の適用方法

確定申告前に亡くなった、または入院生活中に亡くなった場合は、所得税や医療費を支払わなければなりません。

所得税は、相続人のだれかが税額を計算したうえで確定申告をする必要があります。

確定申告の期限は相続があったことを知った日の翌日から4カ月以内なので、できるだけ早めに申告書を作成することがおすすめです。

税務署に必要書類を提出したら、忘れないうちに納税しましょう。

納税後10日~2週間ほどで納付したことを証明する納税証明書が発行できるため、税務署に発行を依頼しましょう。

医療費は死亡後に病院側が計算し、遺族に請求額が伝えられるため、忘れずに払うことが大切です。

支払った際に領収書が発行されるので、なくさないよう保管しておきましょう。

納税証明書や領収書は、債務控除を適用する際の添付書類として必要になります。

相続税の申告と一緒に提出しなければならないので、忘れずに出しましょう。

6-2. クレジットカード利用者死亡時の債務の取り扱い

亡くなった人が生前にクレジットカードを利用しており、支払い前に死亡した場合は債務控除を適用できます。

まず、クレジットカード契約者が亡くなったら、カード会社に死亡した旨を伝えなければなりません。

死亡したことを伝えた時点でクレジットカードは使えなくなり、それまでの利用料金が伝えられます。

利用料金は、基本的に一括払いです。

一括払い後に領収書を受け取っておけば、相続税申告時に債務控除の添付書類として提出できます。

家族カードを持っている人のなかには、契約者が亡くなる直前にたくさん買い物をした方がいいと考える方もいるでしょう。

生前に購入したものは贈与にあたり、年間110万円以内の購入なら相続税・贈与税どちらもかからないと考えるからです。

しかし、死亡日以前3年間の間に行われた贈与分は、相続税に加算されます。

また、契約者の同意なしで購入したものは契約者が購入したものとみなされるため、購入したものを受け取る場合は相続に加算されます。

クレジットカードの利用にはいくつかの落とし穴があるため、亡くなる直前に相続税対策をすることは難しいでしょう。

ただし、契約者の未払い分を債務控除することはできるため、代金を代わりに支払ったことがわかる領収書を必ず受け取っておくことが大切です。

7. 相続税が発生した際には債務控除を正確に適用しよう

相続のなかには、プラスだけでなく、マイナスの財産がいくつか発生するケースもあります。

特に亡くなる直前までかかっていた生活費や医療費などの未払い分は発生しやすいため、相続人で分担し、それぞれに債務控除を適用することが大切です。

債務控除を適用することで、相続税を抑えることが可能です。

適用するには未払い分を支払ったことがわかる書類が必要なので、領収書や納税証明書を紛失しないよう保管しましょう。

計算が複雑な場合も多いので、不安な場合には税理士に相談することがおすすめです。

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