相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うよう義務付けられています。万一申告が期限に間に合なかった時は、ペナルティとして本来の課税額の5%〜20%分にあたる「無申告加算税」を支払わなければなりません。
無申告加算税の詳細やペナルティの回避方法については、下記でさらに解説します。
目次 |
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1.無申告加算税とは |
1.無申告加算税とは
そもそも相続税は、遺産総額が基礎控除の金額内(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に収まる場合を除き、相続人として取り分を得たときは必ず課税されます。
また、相続税の課税対象になったときは「被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内」に遺産の状況を税務署に報告(=申告)し、相続人自ら計算した課税額を納税しなければなりません。
万が一上記期限内に相続税申告できなかったとしても「期限後申告」は認められます。自主的に期限後申告しなかった場合でも、税務署が実施する資産状況の調査(=税務調査)によって申告の必要性が指摘されれば、事実上拒むことはできません。
このように期限後申告を行う際、当初の期限に間に合わなかった理由が正当なものでなければ、ペナルティとして課税額の5%~20%分相当が納税すべき金額に加算されます。この加算分こそ、国税通則法等で規定される「無申告加算税」です。
1-1.被相続人に収入がある場合は「準確定申告」も忘れずに
家族が亡くなったときに必要なのは相続税申告ばかりではありません。
死亡した年に収入(給料や不動産収益など)がある場合は、本人自らするはずだった所得税申告を相続人が代行する「準確定申告」が必須です。
準確定申告の期限は、生前本人が行う場合(課税年度の翌年2月~3月)とは異なり「被相続人の死亡を知った日の翌日から4か月以内」であることに注意しなければなりません。相続税申告と同じく、準確定申告でも期限に間に合わなかった場合は、無申告加算税(課税額の15%または20%)をペナルティとして支払わなければなりません。
【整理】相続人の申告義務
- 相続税申告(遺産総額が基礎控除を超え、相続人として取り分を得る場合)
→申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内」 - 準確定申告(死亡直前まで収入を得ていた人が課税年度内に死亡した場合)
→申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から4か月以内」
2.期限後申告と修正申告の違い
申告期限内に正しく手続きできなかったケースでは、①期限後申告・②修正申告の2つの手続きが混同されがちです。税法上は下記のように明確に区別されており、どちらにもペナルティはあるものの①のほうが重大視されることが分かります。
①期限後申告:法定申告期限後に初めて申告する場合
→無申告加算税(5%〜20%)が課せられ、その計算ベースは「本来期限内に申告すべきだった相続税の全額」となります。
②修正申告:一度行った申告内容に誤りがあり、法定申告期限後に上方修正する場合
→過少申告加算税(0%〜15%)が課せられ、その計算ベースは「修正申告によって生じた追加課税分」となります。
2-1.修正申告が期限内に行われた場合の扱い
修正申告についてさらに解説すると、期限内に間に合うならペナルティ(過少申告加算税)はありません。そもそも税法上の“修正申告”にあたらず、通常の期限内申告とみなされるからです。
以上の点から「相続税申告は早く行うことが理想的」と結論付けられます。期限に余裕をもって申告を済ませれば、手続きをやりなおすための時間を十分に確保でき、ペナルティを確実に回避できるのです。
反対に、申告手続きを期限ぎりぎりに先送りするのは好ましくありません。申告準備のための時間すら確保できず、税計算中のちょっとしたトラブルや誤りが加算税に直結してしまうからです。
3.期限後申告してしまったときの加算率
万一無申告加算税の対象となってしまった場合、その税率は「期限後申告の時期」により変化します。
税務調査が実施されるまでに自発的に期限後申告した場合は「課税額の5%」(一律)ですが、調査が開始された後だと「課税額の15%」(課税額50万円超の部分は20%)へと大幅に上昇するのです。
【参考】国税通則法で定める相続税の加算率(平成28年度税制改正以降)
()内の数字=追加で納税すべき税額のうち50万円を超える部分に適用される加算率
- ① 法定申告期限等の翌日から調査通知前まで:5%
- ② 税務調査の通知後~更正を予知 するまで:10%(15%)
- ③ 税務調査による更正を予知 した後 :15%(20%)
②の加算率が適用されるケースは稀です。更正(税務署による課税額の確定)は通常、税務調査の通知が来た段階で予測(=予知)できるものと考えられるからです。
税務調査の実施時期は申告期限後1年後または2年後が一般的で、無申告は比較的早く指摘されると考えるべきでしょう。
それでは、どうしても相続税申告が期限に間に合わない場合、なんとか加算を回避することはできないのでしょうか。
4.無申告加算税がかからないこともある(“正当な理由“とは)
先に触れたように、無申告加算は“期限に間に合わなかった理由が正当”であれば実施されません。
ここで “正当”と認められ得るのは「災害発生または交通や通信の途絶」と「期限後申告の特則に該当する事由」のいずれかのみです。
4-1.期限後申告の特則に該当する事由
なお「期限後申告の特則に該当する事由」とは、相続人構成の変化・取り分を巡る争いに確定判決が下された等の「申告期限ギリギリになって課税価格が法的に変化するような事情」を指します。
【参考/一例】期限後申告の特則に該当する事由
相続人構成の変化…
- 相続人の異動(子の認知or廃除or欠格)が確定した
- 遺贈(遺言書による法定相続分を超えた贈与)の記載された遺言書が発見された
- 遺贈された人(=受遺者)がこれを放棄した
- 条件付きの遺贈について、その条件が成就した(遺贈が確定した)
相続トラブルの解決による課税価格(取り分)の変更…
- 共同相続人によって未分割の遺産が分割された
- 相続人により遺留分侵害額請求権が行使され、返還または支払うべき金額が確定した
- 相続・遺贈・贈与により取得した財産について、帰属に関する訴えの判決があった
- 遺産分割後に認知された子から取り分の請求があり、その金額が確定した
もっとも、個別のケースで上記のような事情が発生する場合、申告期限の到来までに予測できるのが通常と考えられます。このような場合、下記で解説する「申告期限の延長」を実施しておくべきです。
5.正当な理由なら無申告加算税が免除される?
相続手続きでは予想外のトラブル発生の可能性は否めません。そこで相続税でも、期限内の申し出により最大2か月の申告期限延長が認められます。
【参考】相続税の期限延長が認められるケース
- 死亡時点で胎児だった相続人が誕生した
- 相続人の異動(子の認知・廃除または欠格・失踪宣告)があった
- 遺留分侵害額請求権が行使された
- 法定相続分とは異なる内容を記載した遺言書が、遅れて発見された
- 災害や感染症流行※などの特殊事情に巻き込まれた
※令和2年4月より、新型コロナウイルス流行を受けて特別対応が実施されています。自粛要請・テレワークの開始・関係者の感染等が原因で申告期限に間に合わない場合、管轄税務局に問い合わせた上で「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しましょう。
前もって上記の状況を管轄税務署に伝えておけば、申告の精度を高める時間を確保できる他、万一延長期限に遅れてしまった場合も「期限後申告の特則」の該当事由についてスムーズに説明できます。
6.まとめ
相続税について一度も手続きしないまま法定申告期限後に申告すると「期限後申告」として扱われ、少なくとも課税額の5%に及ぶ「無申告加算税」がペナルティとして課せられます。
修正申告時にも過少申告加算税が生じることを考慮すると、相続税申告は早く・正確に行うべきです。
とはいえ、申告準備を他の相続手続きと並行して進めるのは容易ではありません。「当初の財産調査が不徹底で、それが申告漏れにつながった」というケースがあることも否めません。 申告ミスを徹底的に防ぐなら、早急に相続税分野に長けた税理士のサポートを得て、必要な手配をスムーズにとってもらうのが最善策です。
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