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ーコラムー
相続税
税理士監修記事

今からでも遅くない!相続税申告を見直すメリット(相続税&贈与税最新情報)

公開日:2021.3.15 更新日:2023.05.01

相続税は「過大申告」となっているケースが少なからず見受けられます。今からでも申告内容を見直せば、支払った税が一部還付されるかもしれません。

また、知らず知らずのうちに「過少申告」になっているケースでも、税務調査でのペナルティを避けるため、なるべく早いうちに申告内容を修正しておく必要があります。

本記事では、相続税の申告内容を修正するメリットと共に「特に見直したほうがいいケース」や「見直しはどんな税理士に依頼すればいいのか」を紹介します。

【簡易チェック】相続税の見直しの検討余地があるケース

  • 自力で相続税申告した
  • もらい受けた遺産のほとんどが土地だった
  • 形・位置・隣接する設備等に個性のある「訳あり土地」を相続した
  • 申告時、どちらかといえば会計処理(帳簿作成など)が得意な税理士に頼んだ
  • 申告時、税理士と相性が合わないと感じた

令和2年に土地を相続した人に対しては、一部地域で新型コロナウイルスの影響で評価額を下げる措置が行われています。本措置は相続税申告が終わった人も対象になっており、申告内容の見直しで還付金を得られる可能性があります(詳細は本記事で解説します)。

目次

1.自主的に相続税申告を見直す3つのメリット
  メリット1:払いすぎた税が戻ってくる
  メリット2:加算税を免除してもらえる
  メリット3:誠実な申告者だと評価される
2.相続税申告の見直しには「期限」がある
  【ポイント】相続税の申告期限
  【過大申告】還付金を得るための期限は5年
  【過少申告】加算税の免除は調査通知前の修正申告分のみ
3.相続税が還付される可能性がある人
  ①自力で申告した人
  ②訳ありの土地を相続した人
  ③相続財産に占める土地の割合が多い人
4.相続税で過少申告している可能性がある人
  誤りやすい項目1:相続税の2割加算
  誤りやすい項目2:相続税の基礎控除
  誤りやすい項目3:生前購入したお墓等の代金
  誤りやすい項目4:生命保険金の扱い
  誤りやすい項目5:名義預金
  誤りやすい項目6:団信による住宅ローンの返済免除
5.申告済の相続税を修正する方法
6.申告内容に不安がある人は税理士に相談を
  6-1.「不動産の評価」は税理士の経験&業務体制が問われる
  6-2.「最新情報をキャッチできているか」も見極めのポイント
  6-3.土地の減額評価で3,000万円の還付を受けた事例
  6-4.日本クレアス税理士法人のセカンドオピニオンサービス
7.相続税&贈与税の最新情報
①「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の変更
②「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の変更
③路線価の減額補正(一部地域のみ・今後追加予定)
8.まとめ

1.自主的に相続税申告を見直す3つのメリット

相続税の課税は、所得税などと共に「申告納税方式」と呼ばれる仕組みを採用しています。この方式では、申告義務者(=亡くなった人から財産をもらい受けた人)が自分で課税額を計算しなければなりません。また、その内容が間違っていても、その場で税務署の担当者が教えてくれることはないのです。

こうした仕組みから、ほとんどの納税者は「もしかしたら税を払いすぎているのではないか」「うっかり少なく申告してしまっているのではないか」と後々まで心配することになります。実際に、申告した額が多すぎた(または少なすぎた)というケースは珍しくありません

こういった不安がある場合は、すぐ自主的に相続税申告書の内容を見直し、申告に要を修正することで、以下のメリットが得られる可能性があります。

メリット1:払いすぎた税が戻ってくる

相続税申告を見直す第1のメリットは、万が一税を払いすぎてしまっている場合、その差額を還付してもらえる点です。

当初払いすぎてしまった原因としては「資産を過大評価してしまった」「調停で遺産の取得分が減った」などと様々ですが、こうした理由での申告内容の修正に気後れする必要はありません。課税額が下がることを証明できるなら、還付には好意的に応じてもらえます。

メリット2:加算税を免除してもらえる

第2のメリットは、相続税の課税額を少なく申告してしまった時の「過少申告加算税」(最大15%)を免除してもらえる点です(国税通則法第65条第5項)。

過少申告加算税は「申告内容の修正により追加で支払うことになった課税額」をベースに計算されますが、決して微々たる額とは言えません。特に土地建物のような高額資産が申告から漏れていた場合は、何としてでも加算税を回避したいところです。

税務調査と、万が一申告漏れがあった場合の加算税(追徴課税)についてはこちらのコラム「相続税の税務調査とは?」をご参照ください。

メリット3:誠実な申告者だと評価される

相続税の申告内容を見直すメリットとして、他には「適正申告を心がけている」と評価される点が挙げられます。

国税庁では「国税総合管理システム」(KSKシステム)などを使って納税者情報を多角的に分析しており、これまでの課税状況や申告に対する姿勢も評価されていると考えられます。きちんと申告し、誤りがあればすぐに正す姿勢を見せておけば、遺産以外に申告内容が厳しくチェックされる収入(事業収入など)を届け出る時、信頼してもらえるでしょう。

個人事業主や会社経営者、あるいは今後賃貸経営などで副収入を得ようとする人は、特に注目したいメリットです。

相続税申告を見直すメリット

2.相続税申告の見直しには「期限」がある

メリットとして紹介した「還付金」や「加算税免除」を得るには、期限を意識して出来るだけ早く申告内容を見直さなくてはなりません。

ここでは、申告内容を見直す際の手続き名と共に、それぞれの期限について解説します。

【ポイント】相続税の申告期限

相続税の申告期限は「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。この期限のことを「法定申告期限」と呼びます。

【過大申告】還付金を得るための期限は5年

相続税や所得税などで、実際の課税額よりも多く申告してしまうことを「過大申告」と呼びます。いったんは過大申告してしまっても、後から見直して気付くことが出来れば、払いすぎた税を取り戻すための「更正の請求」が出来ます。

ただし、更正の請求の期限は「法定申告期限から5年以内」です。この期限を過ぎると手続きは受け付けてもらえなくなり、還付金は得られません。

また、遺産分割調停などの影響で「当初よりも遺産の取得額が減ったため税を還付してほしい」という事情がある場合は、その事情(=後発的理由)が発生した日の翌日から2か月または4か月以内と期間が短縮されます。

※平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来していた相続税申告について…更生の請求期限は「法定申告期限から1年以内」に短縮されます。

【過少申告】加算税の免除は調査通知前の修正申告分のみ

相続税や所得税などで、実際の課税額よりも少なく申告してしまうことを「過少申告」と呼びます。過少申告に関しては、後から見直して気付くことが出来れば、正しく申告して課税額の差額を納めるための「修正申告」が出来ます。

修正申告の期限は、特に設けられていません。ただし、過少申告加算税が課税されないのは「税務調査の通知前の修正申告分」だけです。

なお、税務調査の通知のタイミングは公にされてはいませんが、法定申告期限の1年後~2年後、かつその年度の税務署の人事異動が終わった秋頃に来るのが一般的とされています。申告した時期によっては、1年以上の猶予は期待できません。
過少申告の疑いを持ち始めたら、すぐ見直しすることが大切です。

3.相続税が還付される可能性がある人

それでは、相続税申告を見直すことで実際に誤りが見つかるケースとは、どのようなものでしょうか。ここではまず「税を支払いすぎたかもしれない」と不安を抱く人へ、還付金のある可能性が特に高い人を実務家目線で紹介します。

①自力で申告した人

過大申告となっている可能性が特に高いのは、税理士に頼らず自力で申告した人です。

自力申告でよくあるのは、課税評価額として「民間業者の査定価格」や「購入時の価格」をそのまま採用してしまうケースです。実際には、高額資産ほど市場取引価格より安く評価できる傾向があるものの、知識が十分な専門家以外にはあまり知られていません。


【よくある過大申告の例1】土地を査定額で評価している
土地に相続税が課税される時は、路線価方式または倍率方式と呼ばれる方法で評価します。これにより、相続税課税時の評価額は、固定資産税評価額のおおむね8割程度に抑えられます。

【よくある過大申告の例2】株式を申告日の価格で評価している
上場株式(=相場があり証券口座で取引できる株式)の場合は、亡くなった日が属する月の値動きを基準に評価します。非上場株式でも、譲渡する時の価格を採用する必要はなく、会社規模や経営状態から評価可能です。

②訳ありの土地を相続した人

自力で相続税申告したケースと並び、性質が独特な「訳ありの土地」を相続した場合でも、還付金を得られる可能性大です。

こうした土地は事情に応じて評価を減らせますが、特に高度なスキルと体制が整った税理士しか対応できません。そうした背景から「慌てて専門外の税理士に依頼してしまい、後から別の税理士にセカンドオピニオンを受けたところ、過大申告が判明した」といったケースが少なからず見受けられます。

【参考】「訳ありの土地」に適用できる評価方法

評価方法 適用対象になる土地
不整形地補正率 形状が歪な土地
(旗竿地や無道路地なども含む)
奥行長大補正率 間口に比べて奥行が長い土地
間口狭小補正率 道路に接している部分が狭い土地
がけ地補正率 がけ地の側にある土地
容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価 建築基準法で定められる「延べ面積÷敷地面積」の制限が部分的に異なる土地
地積規模の大きな宅地評価 三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の面積がある土地
土砂災害特別警戒区域内(レッドゾーン)にある宅地 土砂崩れや津波被害の危険性が特に高く、一定の建築制限や利用目的制限がかかっている土地
利用価値が著しく低下している宅地 周辺の宅地との高低差が激しい土地
地盤の凹凸がはなはだしい土地
環境的瑕疵※がある土地
忌み地(墓地に隣接する土地など)

※環境的瑕疵とは…
「日照阻害がある」「騒音や悪臭がひどい」「暴力団事務所が近隣にある」などといった、生活環境に関する悪い事情のことです。こうしたトラブルは売買取引等の際に説明義務があり、周辺の土地に比べて取引価格が下がってしまいがちです。

③相続財産に占める土地の割合が多い人

土地は総じて評価方法が複雑です。基本的な評価方法、個別の性質により評価減が出来る点は紹介した通りですが、他にも権利関係や不動産関連法による制限等に注意しなければなりません。


土地の評価額に影響しやすいポイント1:権利関係
持っている権利は「完全所有権」なのか、それとも地上権・地役権・借地権あるいはそれらが付着した底地である「不完全所有権」なのか
→不完全所有権は売買取引や使用に制限を受けるため、評価が下がります。

土地の評価額に影響しやすいポイント2:不動産関連法
建築基準法、都市計画法、農地法、生産緑地法、森林法、その他自治体条例による何らかの制限を受けているか
→利用目的や建築できる建物に制限がある場合、評価が下がる可能性があります。

地主家系など「もらい受けた遺産に占める土地の割合が多い人」は、税務の専門家に依頼したかどうかに関わらず、土地ごとの性質をどこかで見落としていた可能性があります。
「自力申告」や「訳ありの土地」に心当たりがなくても、還付金を得られる可能性を検討してみましょう。

4.相続税で過少申告している可能性がある人

過大申告の可能性があるケースと同じ理由で、相続税を少なく申告してしまっている可能性があります。自力で申告した人、土地等の評価に知見のある専門家に依頼しなかった人は、早めの見直しを心がけましょう。

【相続税申告書の「よくある誤りやすい項目」とは】
「特に申告書で間違いが多い項目」として、国税庁から下記のような例が挙げられています。いずれも自力で申告したケースで特に多く、過少申告に繋がるポイントです。

誤りやすい項目1:相続税の2割加算

遺産をもらい受けた人それぞれに課税される相続税は、その人の身分が一親等以内の血族(父母の死亡により相続権を得た孫を含む)でない場合、2割加算があります。

→2割加算される人の例:兄弟姉妹・本人が養子に迎えた孫・おい・めい

2割加算については、コラム「相続税額の2割加算とは?具体例と計算方法」も合わせてご参考ください。

誤りやすい項目2:相続税の基礎控除

相続税の基礎控除は法定相続人の数に応じて加算できますが、養子に関しては原則1人まで(実子がいない場合は2人まで)しか計算に含められません。

誤りやすい項目3:生前購入したお墓等の代金

亡くなった人が遺した債務やお葬式費用は、課税対象から差し引くことが出来ます。ただし、生前購入したお墓の代金など「非課税財産に関する債務」は差し引けません。
→非課税財産の例:墓地・墓石・仏壇・仏具・公益事業用の資産・社会保険制度の給付権など

誤りやすい項目4:生命保険金の扱い

受け取った死亡保険金は「みなし相続財産」として課税されます。死亡保険金と共に前払いした保険料の返還を受けた時は、この分も合わせて申告しなければなりません。

さらに、実際に死亡保険金を受け取っていなくても「亡くなった人の契約者としての地位」を受け継いだ場合も、課税対象として申告義務が生じます。

誤りやすい項目5:名義預金

本人の名義でなくとも、子どもや孫名義で預け入れて亡くなった人が管理していた預金(=名義預金)は課税対象です。名義預金の申告義務があるかどうかは、これまでの残高管理の実態から判断しなければなりません。

誤りやすい項目6:団信による住宅ローンの返済免除

住宅ローン契約時は「団体信用生命保険」(=団信)をつけるのが一般的であり、契約者が亡くなると左記保険で債務が立て替えられます。立て替えが発生して住宅ローンの返済が必要なくなった時は、元々あった残債を遺産から控除することはできません。

参考:(国税庁)相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集

上記以外にも「亡くなる直前3年以内の生前贈与分」を申告対象に含めないなど、課税対象に関する誤解が原因の過少申告はよく見られます。「自分は大丈夫」と過信せず、きちんと見直すことが大切です。

5.申告済の相続税を修正する方法

相続税申告書を見直して誤りが見つかった時は、所定の用紙に正しい申告内容を記入し、その裏付けとなる資料を添付しなければなりません。

  • 過大申告で還付金を得たい場合の必要書類
    →記入済の「更正の請求書」+「基礎となる事実を証明する書類」
  • 過少申告を修正したい場合の必要書類
    →「相続税の修正申告書」+「配偶者の税額の軽減などにかかる各種計算書」+「相続財産を裏付ける資料」

還付金を受けたい場合(過大申告)では、税務署の審査があることを意識し、課税額が少なくなる根拠について証明力の高い資料を用意する必要があります。また、過少申告を修正したい場合、特例等による税額軽減の額を改めて計算しなければならず、手間がかかります。 相続税の見直し自体はもとより、上記の手続きも不慣れな人が対応するのは困難です。

6.申告内容に不安がある人は税理士に相談を

相続税の申告内容に不安がある人は、申告実績が豊富な税理士に相談してみましょう。

このとき最も重要なのは、相談先の選び方です。 相談先選びで譲れないのは「見直しに前向きに対応してくれる姿勢」でしょう。また、修正項目がよく見つかるケース(過少申告や過大申告の発生原因)を押さえ、下記のようにスキルや業務体制面を最重要視すべきです。

6-1.「不動産の評価」は税理士の経験&業務体制が問われる

修正項目が見つかりやすい「土地」は、1件ごとに異なる個性を持っているのが難点です。適切に評価するには、知識だけでなく「より多くの評価経験があるかどうか」が問われます

また、図面確認や現況調査を積極的に行う姿勢があるかどうかも重要です。この点、税理士だけでは完結できず、不動産鑑定士など分野との協業が必要になることが多いのも実情です。

そこで、税理士を選ぶ際は「土地評価に対する経験はあるか」「不動産分野のプロとも連携がとれているか」の2点を重視しなければなりません。

6-2.「最新情報をキャッチできているか」も見極めのポイント

相続税見直しの依頼先選びでは、税制の改定に関する最新情報をキャッチできていることも重要視しましょう。

当初の申告に誤りがあるケースでは、新たな法改正の見落としが原因で過大申告(または過少申告)になっているものもあります。本記事の公開時点では、この後紹介する「路線価の減額修正」が特に目新しいものです。

6-3.土地の減額評価で3,000万円の還付を受けた事例

相続税の申告は、事前の対策も含め、誰が行っても同じというわけではありません。相続税の納税額は、その申告書を作成する税理士により大きな差が生じます。

相続税の申告後、セカンドオピニオンとして当法人にご相談いただいたお客様の中には、土地の減額評価で3,000万円の還付を受けることができた、というケース※がありました。申告業務を手掛ける税理士が違うだけで納税額に明らかな差が出てくるのが相続税です。

※お客様事例「土地を相続する場合、相続税の計算方法は?セカンドオピニオンを活用し3,000万円の相続税の還付を受けたケース」でご紹介しています。

6-4.日本クレアス税理士法人のセカンドオピニオンサービス

日本クレアス税理士法人では、他の税理士が作成した申告についても見直しを行い、必要があればお客様の還付申告のお手伝いをさせていただきます。

当社では、財産評価、特に土地の評価に関し経験豊富な専門スタッフが、様々な減額要因を総合的に考慮し、適切な評価を行います。

過去に申告した相続税について還付の可能性があるかどうか、相続専門のスタッフが分析します。まずはお気軽にご連絡ください。

日本クレアス税理士法人のセカンドオピニオンサービスはこちら

7.相続税&贈与税の最新情報

本記事の公開時点までに、相続税の見直し項目に影響する様々な情報が入っています。

まず、令和3年度の税制改正大綱では、教育費や住宅取得資金の生前贈与にかかる措置ついて一部改正が行われました。

土地の相続に関しては、新型コロナウイルス流行による経済的影響に配慮し、申告済の人に還付金が発生する内容の見直しが行われている点に要注目です。

最後に、これら「今後の相続税申告にかかわると思われる重要な最新情報」を3つ紹介します。

①「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の変更

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」とは、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅購入や新築・改築などを行うための資金を一括贈与した時に適用できるものです。本措置を適用すると、贈与した資金のうち一定額までは非課税となりますが、令和3年4月以降は非課税枠の引き下げが予定されていました。

しかし令和3年の税制改正大綱、住宅取得を継続的に促すため、予定されていた非課税枠の引き下げは行わない(令和2年4月以降の水準を維持する)こととされました。この改正内容は、贈与税だけでなく、今後の相続税申告に織り込む必要があります。

【表】住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の改正内容(令和3年度)

非課税措置の対象となる住宅 改正前の非課税枠
※令和3年4月~12月の契約締結分
改正後の非課税枠
※令和3年4月~12月の契約締結分
耐震、省エネ、バリアフリー設計等のある住宅 消費税率10%適用住宅:1,200万円
上記以外:800万円
消費税率10%適用住宅:1,500万円
上記以外:1,000万円
上記以外の住宅 消費税率10%適用住宅:700万円
上記以外:300万円
消費税率10%適用住宅:1,000万円
上記以外:500万円

②「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の変更

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」とは、同じく父母や祖父母などの直系尊属から、教育費や結婚資金を一括贈与した場合に適用できるものです。

平成27年4月1日以降に本措置を適用すると、贈与した資金のうち1,000万円(結婚資金は300万円)を限度に非課税となります。なお、贈与者が亡くなった時に資金が残っていれば、それは相続財産に加算されます。

この措置は令和3年3月31日で終了する予定でしたが、今回「贈与者死亡時の残高にかかる相続税の課税額は2割加算する」との条件を追加し、2年延長されることになりました。
この改正内容も、相続税申告への影響は避けられません。

③路線価の減額補正(一部地域のみ・今後追加予定)

今般最も目を引くのは、相続税の課税時に土地評価の基礎となる「路線価」が、新型コロナウイルス流行の影響を受けて減額補正されたことです。対象地域で補正対象期間内の土地を取得した人は、すでに相続税申告が終わっていても「更正の請求」で還付金を得られる可能性があります。

なお、現時点で減額補正が決定しているのは、特にインバウンド収入への依存度が大きかった大阪府内の一部地域のみです。また、すでに対象地域の追加予定が発表されており(下記表参照)、同様の動きは飲食業や観光業への依存度が高い地域を中心に拡大していくものと予測されます。

【表】新型コロナウイルス感染症拡大の影響にかかる路線価の補正地域

都道府県名 補正対象地域
※カッコ内は補正率
土地評価を補正できる条件
大阪府 心斎橋2丁目(0.96)
宗右衛門町(0.96)
道頓堀1丁目(0.96)
令和2年7月~9月に相続等で取得した場合
千日前1丁目・2丁目(未定)
道頓堀2丁目(未定)
難波1丁目・3丁目(未定)
難波千日前(未定)
日本橋1丁目・2丁目(未定)
南船場3丁目(未定)
令和2年10月~12月に相続等で取得した場合
愛知県 名古屋市中区(未定) 令和2年10月~12月に相続等で取得した場合

※国税庁Webサイトで公開されている令和3年2月25日時点の情報を元に作成しています。令和2年分 財産評価基準書令和2年分の路線価等に係る地価変動補正率表

相続税申告の内容の修正には、一定の期限があります。なるべく早めに申告を見直すことで、万一ミスがあった時に「払いすぎた税を取り戻す」あるいは「税務調査に入られて加算税がかかるのを防ぐ」といった効果を得られます。

特に下記5つのどれかに心当たりがある人は、申告内容の見直しでメリットを得られる可能性が高いと言えるでしょう。

  • 自力で申告した人
  • 訳あり土地を相続した人
  • 遺産に占める土地の割合が多い人
  • 税理士の専門分野や対応に不安がある人
  • 本記事で「申告方法を誤解していた」と気づいた人

また、令和2年内に相続した土地に対する路線価の減額補正など、各種改正の影響で当初の申告が間違っていなくても還付金を得られる可能性があります。

少しでも気になる点があれば、実績豊富で資産評価について各分野と連携のとれる税理士に相談してみましょう。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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このコラムは「日本クレアス税理士法人」が公開しております。

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