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ーコラムー
預貯金の相続
税理士監修記事

現金での相続はどこまでが相続税の対象なの?現金相続の疑問を解決

公開日:2020.11.17 更新日:2020.11.17

亡くなった人の身辺で保管されている金銭は、課税されるかどうかの判断が難しい財産です。

タンス預金や“へそくり“、さらに夫婦が共同で蓄えていた預金は、特に申告漏れが指摘されやすい財産だと言わざるを得ません。申告漏れ以外の心配事として、もちろん「相続で得たお金に対してどのくらい課税されるのか」も挙げられるでしょう。

本記事では、時として高度な判断が必要になる現預金(現金や銀行口座にある預金)の課税上の扱いについて、最低限心得ておきたいポイントを解説します。

目次

1.相続における現金の取り扱いとは
2.相続税の申告義務がある「現金・預貯金」の範囲
  2-1.見落とされがちな「相続税の課税対象になる現預金」
3.課税遺産総額の計算方法
  3-1.正味の遺産額の計算方法
  3-2.現預金は「死亡日の残高+預金利息」で扱う
  3-3.相続税の基礎控除とは
4.相続税の計算方法
5.相続開始日(死亡日)以降に使ってしまっていたら?
6.被相続人夫婦の預金が1口座で管理されている場合は?
  6-1.夫婦共有預金から「亡くなった人の預金額」を区別する方法
7.現金での相続メリットとデメリット
  7-1.メリット:相続トラブルが起きにくい
  7-2.デメリット:税対策がしにくい
8.まとめ<

現金での相続

1.相続における現金の取り扱いとは

最初に押さえておきたいのは、亡くなった人のものと認められるお金の一切は「相続財産」として扱い、かつ死亡日時点の残額で税申告しなければならない原則です。根拠として「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が亡くなった時点から相続人のものになるとの民法の規定(第896条)が挙げられます。

では「亡くなった人の所持金の一切」とは、具体的にどのような財産なのでしょうか。

2.相続税の申告義務がある「現金・預貯金」の範囲

亡くなった人の財布や銀行口座にあるお金は、もちろん相続税申告しなければなりません。

「亡くなった人のものと認められるお金の一切」であるからには、自宅で見つかった現金(へそくりやタンス預金)にも申告義務が及びます。保険会社や生前の勤め先から親族が受け取ったお金でも、元々は亡くなった人の資産であると解釈できる以上、相続税の申告が必要です。

【代表的な例】相続税申告が必要になる現預金

■ 亡くなった人が所持していた現金
■ 亡くなった人名義の口座にある預金
■ 遺品にあった「へそくり」や「タンス預金」
■ 死亡保険金(※亡くなった人が自分で掛金を負担していたもの)
■ 死亡退職金(※亡くなった人の勤め先から支払われるもの)

上記はいずれも、見つかった状況や契約書から誰の所有かはっきりと分かるものです。しかし、税務署に申告義務が指摘されるのは、こうした資産ばかりではありません。

2-1.見落とされがちな「相続税の課税対象になる現預金」

相続税の実務上、相続財産として扱うかどうかは“名義”ではなく“実質”で判断します。
つまり、管理上亡くなった人の名義ではない「専業主婦(夫)が貯めたへそくり」や「親族に口座名義を借りて蓄えていた預金」(=名義預金)も、下記のような理由から相続税の申告義務が及ぶと解釈されるのです。

【現預金を相続財産として扱う基準】

他の誰でもない「亡くなった人の収入」を元に蓄えられている 亡くなった人が自分の意思で自由に管理処分できる状態だった

申告内容が正しいか調べるため個別に行われる「税務調査」の実施報告によると、申告漏れが指摘されるケースの3割程度が「預貯金」に関するものです。 申告漏れのいきさつまで個別に紹介されているわけではありませんが、自宅の現金・配偶者のへそくり・名義預金等が申告時に見落とされていたケースが少なからず含まれていると考えられます。

このような「亡くなった人名義ではないが実質的には相続財産」として扱う現預金は、個別に入出金明細等を調べながら判断しなければなりません。この作業は実務経験者でないと難しく、税申告の際は専門家にサポートしてもらうのが無難です。

3.課税遺産総額の計算方法

現預金を相続税申告でどう扱うべきか悩む際、最も気がかりなのは「課税額はいくらになるのか」でしょう。結論として、相続税の試算は難しくありません。現預金を含む「相続財産の全体」にまとめて課税される点さえ押さえておけば、あとは所定の計算式に個別の状況にあてはめるだけです。

なお、相続財産の全体と言っても、死亡後の手続き等による支出分は課税対象から外せます。こうして正確に割り出した「正味の遺産額」のうち、相続人の数に応じて一定の控除を行った後の「課税遺産総額」が実際に納税する額の元になるのです。

ここからは、現預金特有のポイントを押さえつつ、相続税の計算方法を紹介します。

3-1.正味の遺産額の計算方法

正味の遺産額の計算は、下記式の通り「死亡時点で残されていた財産」の価額をベースに進めます。

葬儀費用や住宅ローン残債などは課税されないものとして差し引けますが、反対に「死亡前の贈与」は時期により正味の遺産額に含めなければならない点に要注意です。

【「正味の遺産額」の計算方法】
 → A+B-E+C-F+D

A 「死亡時点で残されていた財産」の価額
B 「みなし相続財産」(死亡保険金や死亡退職金など)の価額
C 「相続時精算課税※を適用した生前贈与」の財産価額
D 「死亡3年以内に行われた生前贈与」の財産価額
E 「非課税財産」(墓地墓石・仏壇・寄付した財産など)の価額
F 「債務」および「葬儀費用」の価額

A~D:正味の遺産額に算入するもの
E~F:正味の遺産額から控除できるもの

※相続時精算課税とは…
適用申請後の生前贈与を対象に、贈与税について最大2,500万円の控除と一律20%の税率を課す税制です。相続時精算課税の特徴や暦年課税との違い、メリットデメリットはコラム「相続時精算課税制度とは?必要届出書や手続きの流れや注意点をまとめて解説!」をご参考ください。

3-2.現預金は「死亡日の残高+預金利息」で扱う

現金を正味の遺産額に含める時は、本記事の始めで解説した通り「死亡日時点で残されていた額」で扱います。銀行口座にあるお金に関しては、さらに「相続開始後に発生した預金利息」も課税対象として加え入れなければなりません。

現金の状況に関しては、死亡後から常に金額を把握しておきましょう。預金に関しては、銀行が発行する「残高証明書」で正味の遺産額に含めるべき金額を確かめられます。

3-3.相続税の基礎控除とは

正味の遺産額はその全体に申告・納税義務が生じるわけではなく、基礎控除と呼ばれる「3,000万円+600万円×法定相続人」に相当する額までは課税されません。相続人が1人だけなら3,600万円まで、2人に及ぶと4,200万円までが非課税になるのです。

最終的に、正味の遺産額のうち基礎控除を上回る部分が「課税遺産総額」として扱われ、実際にいくら納税するのか計算する際のベースになります。

4.相続税の計算方法

相続税は「課税遺産総額×税率-税額控除」で計算できます。
相続人が2人以上いるケースでは、民法で定められる各人の相続分(=法定相続分)ごとに税率を決定して課税額を計算し、その合計額を実際の取得分に合わせて分担する方法をとります。

【相続税の税率表】

課税遺産総額
(※各人の法定相続分に対応する部分)
税率 税額控除
1,000万円以下 10% 0万円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

国税庁:No.4155 相続税の税率「【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表」より

問題は、相続税試算の最初のステップに関わる「課税遺産総額に含めるべき金額」をはっきりとさせられるかです。

現金や銀行預金では、死亡後の諸手続きを行った影響で目減りしていたり、同居家族の預貯金と合算して管理されていたりする可能性が十分考えられます。

こんなとき、課税対象になる現預金の額をどう判断すればよいのでしょうか。

5.相続開始日(死亡日)以降に使ってしまっていたら?

水道光熱費や医療費の精算などの死亡に伴う出費は、亡くなった本人の所持金から優先的にまかなわれることが多いでしょう。このように相続開始日以降に目減りしてしまった現金・預金に関しても、最初に原則として紹介した通り「死亡日時点の金額」で正味の遺産額に含めなければなりません

厳密に実務での扱い方を解説すると、まず申告準備として「〇月〇日に医療費として〇円」とのように支出を記録しておきます。申告手続きを始める際に現時点で残っている金額と支出記録を合算したものが「死亡日時点の金額」です。

ここまでの手順を踏んでから、死亡日以降に使ってしまった葬儀費用については、正味の遺産額の計算式に沿って控除します。

6.被相続人夫婦の預金が1口座で管理されている場合は?

生活費管理などの便宜上、夫婦で口座を共有して預金するケースは珍しくありません。この場合に関しては「亡くなった人個人に属する預金額」を区別して税申告する必要があります。

上記申告ルールの根拠は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする」との民法の規定です(第762条1項)。つまり、管理上は夫婦共有になっている財産でも「夫の収入にあたる部分は夫のもの」「妻の収入にあたる部分は妻のもの」として扱わなければなりません。

実際にあり得る例として、共働き夫婦のうち妻が亡くなり、夫名義になっていた夫婦の生活費用口座について税申告しなかったところ、あとから「預金のうち亡妻の収入部分の申告が漏れている」と指摘されるケースが挙げられます。

6-1.夫婦共有預金から「亡くなった人の預金額」を区別する方法

夫婦共有の預金から「亡くなった人個人に属する預金」を区別する方法は指定されていません。実務での判断はケースバイケースですが、以下の①~③の方法を組み合わせるなどして、課税上の扱いの原則通り「実質的にどう扱われていたか」を検討します。

①夫婦の収入比率
…夫婦の最近の年収を比較し、亡くなった人の収入比率からその預金額を判断する方法です。

②入出金記録の追跡
…夫婦それぞれが持つ口座の入出金明細をさかのぼり、お金の動きから亡くなった人個人の預金額を判断する方法です。

③夫婦財産契約の有無
…「夫から妻へ毎月10万円渡す」等の内容の書面を作成し、お金のやりとりに関して結婚前から法律上の効力をもたせておくことを「夫婦財産契約」と呼びます(民法第755条)。現在までほとんど活用されていない制度ですが、夫婦財産契約の書面がある稀なケースでは、その内容に沿って亡くなった人個人に属する預金を見分けられます。


大切なのは、申告後に管轄税務署から質問された時に「資料に基づいて法的根拠のある説明ができること」です。この点に関して、夫婦共有の現預金は特に扱いが難しいと言わざるを得ません。類似ケースに長けた専門家に相談し、申告義務が及ぶ範囲を個別に判断してもらうのがベストです。

7.現金での相続メリットとデメリット

現預金は遺産分割でトラブル化しにくい反面、課税面では不動産などに比べて不利だと言わざるを得ません。相続開始まである程度時間がある家庭では、下記メリットとデメリットを意識して生前対策を進めておくべきです。

7-1.メリット:相続トラブルが起きにくい

不動産や株式などの資産は、売却市場に携わった経験のない人から価値が期待されやすく、相続トラブルの引き金になることがあります。分割方法でも問題になることが多く、公平に分割するため換金するともなれば、資産の特性を生かして投資などに役立ててもらう道が途絶えます。

対する金銭には絶対的な評価があり、分割する時は1円刻みで取得額を決められます。 「介護負担などが原因で家族仲が悪化している」「遺産隠しが起きた」等の特殊事情がない限り、財産的価値や分割方法を巡るトラブルの可能性は考えにくいでしょう。さらに、分割後は各相続人の収入等と合算し、思い思いの方法で有効活用できます。

7-2.デメリット:税対策がしにくい

一方で、現預金には「税額優遇につながる制度がほとんどない」という弱点があります。

例えば不動産なら、相続税申告時に評価額を最大80%軽減できる「小規模宅地等の特例」があります。しかし、金銭の相続に関しては、同様の評価減に繋がる制度はありません。配偶者の税額の軽減(取得した相続財産について最大1億6千万円まで非課税とする制度)など、限られた手段で上手くやりくりするしかないのです。

以上の点から、少なくとも相続税の基礎控除額を上回る額の現預金を相続する予定なら、別の資産に変更するなどの対策がないか検討してみるべきです。例として、生命保険に加入して掛金を支払い、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用するテクニックが挙げられます。

8.まとめ

亡くなった人の身辺にある現預金の扱いは、課税上“名義”ではなく“実質”で判断されます。 申告する際に特に注意しなければならないのは、本人やその配偶者の「へそくり」や親族名義で保管されている預貯金です。よくある夫婦共有の預金については、状況判断で申告義務のある金額を判断しなければなりません。

また、金銭を相続する際のそもそもの課題として「課税負担をどう減らすか」があります。

以上の点から、現預金の扱いは専門性の高い分野だと言わざるを得ません。
申告漏れ指摘や不要な納税負担を防ぐため、自力で対応できそうな状況でもなるべく税理士に相談することをおすすめします。

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