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ーコラムー
年金の相続
税理士監修記事

遺族年金はいつまでもらえる?受給条件 ・金額は?

公開日:2019.11.18 更新日:2022.07.05

国民年金や厚生年金に所定の加入歴のある方が亡くなったときに、その遺族の生活を保障するための公的年金が「遺族年金」で、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。

遺族年金は受給要件が複雑で、受給にはこのようなパターンが存在します。

・遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方とも受給できる人
・遺族基礎年金のみ受給できる人
・遺族厚生年金のみ受給できる人
・両方とも受給できない人

今回のコラムでは、遺族年金の受給要件を確認しながら、どのくらいの期間に・どれだけの金額が受給できるか、具体例を挙げて紹介します。

目次

1.遺族年金とは
2.遺族基礎年金はいつまでいくらもらえる?
3.60歳からの「寡婦年金」もチェック
4.遺族厚生年金はいつまでいくらもらえる?
5.遺族厚生年金に加算される「中高齢寡婦加算」とは
6.遺族年金の金額の計算方法は?
7.まとめ

1.遺族年金とは

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。

■遺族基礎年金…国民年金加入者の遺族に支給される年金
■遺族厚生年金…厚生年金加入者の遺族に支給される年金

国民年金は建物の1階部分、厚生年金は建物の2階部分」と例えられることがありますが、厚生年金とは、国民年金の上乗せ部分になります

したがって厚生年金に加入している人は、同時に国民年金(第2号被保険者)の加入者にも該当します。

「厚生年金加入者の遺族なら、必ず2種類の遺族年金を受け取れるの?」というと、そうではありません。

なぜなら、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、それぞれ受給できる遺族に要件があります。また、亡くなった方が死亡時に国民年金や厚生年金の加入者でない場合は、その人の過去の加入歴等から判断されます。

亡くなった方が一定の加入歴を満たしていなければ、遺族側が要件を満たしていても、遺族年金は支給されません。さらに年金保険料に滞納があると、たとえ死亡時に国民年金や厚生年金の加入者であったとしても、遺族年金の対象にならないケースがあるので要注意です。

まずは、遺族基礎年金、遺族厚生年金それぞれの受給要件を確認することが大切です。

2.遺族基礎年金はいつまでいくらもらえる?

まずは、遺族基礎年金について解説していきます。
2-1.受給要件(遺族)
2-2.受給要件(亡くなった方)
2-3.受給金額
2-4.受給期間

2-1.遺族基礎年金の受給要件(遺族)

遺族基礎年金を受給できる遺族の要件は、次のとおりです。

【遺族基礎年金の受給要件(遺族)】

  • 死亡者によって生計を維持されていた(※)
  • 子のある配偶者
  • 子(18歳になる年度末までの子。障害年金の障害等級が1級または2級の子であれば20歳未満)

したがって、子供のいない夫婦や子供が年齢要件を満たさない夫婦はお互いに遺族基礎年金の対象になりません。

※配偶者が受け取れる場合、子は受け取れません
※上記の条件に加え、さらに死亡者が、後述する国民年金について一定の加入条件を満たしていることが必要です

なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の要件「生計を維持されていた」は、原則として下記の基準で判断します。
・同居している
・別居している場合は、仕送りをしていることや健康保険の扶養親族である等の状況判断
・前年の収入が850万円未満または所得が655万5千円未満であること

2-2.遺族基礎年金の受給要件(亡くなった方)

遺族基礎年金を遺族が受給するには、亡くなった方が、死亡時に国民年金の加入者か、過去に一定以上の加入歴を有している必要があります。国民年金に関する知識が関係するので、要件はやや複雑です。

【遺族基礎年金の受給要件(亡くなった方)】
死亡時に、下記のア~ウのいずれかに該当することが条件です。
(ア)国民年金の被保険者が死亡した時
(イ)死亡時に65歳未満で、一定の納付要件を満たす者が死亡した時
(ウ)老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡した時

(ア)国民年金の被保険者が死亡した時

まず日本に住む20歳から60歳未満の方は、全員、国民年金に加入する義務があります。そのため、20歳から60歳未満の方が亡くなった時は、アに該当する場合がほとんどです。

ただし、国民年金保険料を納付した期間が、国民年金への加入期間の3分の2以上あることが必要になります。たとえば、50歳の自営業の方(第1号被保険者)が亡くなった場合、加入期間は30年ですから、20年以上、保険料を納付している必要があります。

なお、「保険料免除期間」があれば、納付済みの期間に含まれます。「保険料免除期間」とは、保険料の免除が特別に認められた期間のことです。


【こんな人も「国民年金の被保険者」に】
■会社員(第2号被保険者)

会社員など、会社の厚生年金に加入している方は、国民年金の第2号被保険者です。
したがって、亡くなった方が会社の厚生年金の加入者であれば、遺族基礎年金の対象となります。

なお60歳から65歳まで厚生年金保険に加入を続けている場合は、その間も、国民年金2号被保険者になります。

会社員のほか、公務員や会社役員など、勤め先の厚生年金に加入していれば、第2号被保険者となります。

■会社員の妻(第3号被保険者)

第2号被保険者に扶養される配偶者は、国民年金の第3号被保険者として、自身は年金保険料を納めていませんが国民年金の被保険者となります。

したがって、会社員の妻が亡くなった場合でも、遺族基礎年金の対象となります。(ただし、夫は遺族の要件を満たさなければなりません。)

(イ)死亡時に65歳未満で、一定の納付要件を満たす者が死亡した時

60歳を迎えて国民年金の被保険者でなくなった方でも、令和8年4月1日前までに亡くなり、その死亡日の年齢が65歳未満であれば、遺族基礎年金の対象になります。
ただし、死亡日の属する月の前々月までの1年の間に、保険料の滞納がない場合に限ります。保険料免除期間は、アと同様に滞納扱いにはなりません。

(ウ)老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡した時

老齢基礎年金の受給資格期間とは、国民年金保険料の納付済みの期間と免除期間を合わせた期間のことです。年齢制限がないため、高齢の方でも遺族基礎年金の対象になります。
ただし、遺族の要件となる子供の年齢に注意が必要です。

2-3.遺族基礎年金の受給金額

遺族基礎年金の受給金額は下記のとおりです。

配偶者が受給できる金額 子が受給できる金額
年780,100円+子の加算額

※子の加算額
 -第1子と第2子:各224,500円
 -第3子以降  :各74,800円
年780,100円+子(第2子以降の加算額)
※子供の人数で分けられる

配偶者が遺族基礎年金を受け取れる場合、子供は受け取れません。
両方が受給できるわけではないので注意しましょう。

受給できる年金額は、配偶者の場合は「年780,100円+子の加算額」です。
子供の場合は「年780,100円+第2子以降の子の加算額」を子供の人数で分けることになります。

なお、この金額は、平成31年4月分からのものです。年金額は、経済情勢を反映して毎年、数百円ほど増減します。

2-4.遺族基礎年金の受給期間

遺族基礎年金は、子供が18歳になる年度末(障害年金の障害等級が1級または2級の子であれば20歳)を迎えるまで受給することができます。

ただし、途中で受給できなくなるケースがあるので注意が必要です。


【遺族基礎年金を受給できなくなるケースとは】
遺族基礎年金を受給できる遺族が、死亡したり、結婚、養子縁組(直系血族・直系姻族以外との養子縁組)を行ったりすると、遺族年金の受給権を失います。

配偶者(子供の親)の受給権がなくなった場合、遺族基礎年金の受給権は、子供に移ります。子供もまた、これらの理由に該当すると、受給権を失います。

受給権を失った時は、年金事務所等に届出が必要です。

3.60歳からの「寡婦年金」もチェック

遺族年金と併せて知っておく必要があるのが、寡婦年金です。
寡婦年金とは、国民年金(第1号被保険者)の夫の「妻」のみを対象とする年金制度で、夫の老齢基礎年金が掛け捨てにならないよう設けられた年金になります。

受給開始は、早くても60歳からです。子供の有無や子供の年齢に関係なく受給できるため、遺族基礎年金の対象外となる妻でも受給できます。また、子供の年齢によって遺族基礎年金を受給できなくなった妻も受給できます。

3-1.寡婦年金の受給要件

会社員の夫は、第2号被保険者ですが、会社員の妻でも寡婦年金の対象になることがあります。たとえば夫が会社を早期退職しフリーランスに転向したケースなどでは、第1号被保険者期間が10年以上となることが考えられます。

ただし、夫が生前に障害基礎年金を受給していた場合は、妻に寡婦年金は支給されません。

妻(受給権者)の要件 夫(死亡者)の要件
・夫の死亡時、65歳未満であること
・生計を維持されていたこと
・10年以上婚姻関係にあったこと
国民年金第1号被保険者(自営業、フリーランス、無職等)として保険料納付期間が10年以上あること(免除期間を含む)

3-2.寡婦年金の受給額

受給できる年金額は、亡くなった夫の老齢基礎年金の4分の3となります。

老齢基礎年金の目安ですが、仮に20歳から60歳まで被保険者で、かつ保険料をすべて納付済みの方の場合、年78万円ほど受給できます。

この年金額は、被保険者期間が短いほど減少し、さらに保険料の免除月数・免除割合に応じて減少するしくみです。

3-3.寡婦年金の受給期間

寡婦年金は、妻が65歳になるまで支給されます。短期間の年金ですが、忘れずに請求しましょう。

請求書は日本年金機構のWebサイトからダウンロード、あるいは住所地の市区町村役場・年金事務所や街角の年金相談センターで受け取ることができます。

日本年金機構Webサイト:寡婦年金を受ける時
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/seikyu/20140422.html

遺族厚生年金はいつまでいくらもらえる?

4.遺族厚生年金はいつまでいくらもらえる?

続いて、遺族厚生年金について解説します。
4-1.受給要件(遺族)
4-2.受給要件(亡くなった方)
4-3.受給金額
4-4.受給期間

遺族厚生年金の受給要件や受給額の計算は、遺族基礎年金よりもさらに複雑です。

4-1.遺族厚生年金の受給要件(遺族)

遺族厚生年金の受給要件にも、遺族と死亡者それぞれに条件があります。
受給できる遺族の範囲は、遺族基礎年金よりも対象が広く、それぞれの年齢要件も複雑となります。

【遺族厚生年金の受給要件(遺族)】
死亡者によって生計を維持されていた次の遺族

  1. 配偶者(夫は55歳以上)または子(年齢は遺族基礎年金の子の年齢要件に同じ)
  2. 55歳以上の父母
  3. 孫(子の年齢要件に同じ)
  4. 55歳以上の祖父母

※妻以外の遺族には年齢要件があります。(次項参照)
※上記の要件に加え、さらに死亡者が、後述する厚生年金について一定の加入条件を満たしていることが必要です

遺族厚生年金の遺族は、遺族基礎年金と異なり、配偶者や子供以外も対象となります。
遺族厚生年金では、上記の1~4の順番が年金の受取順位となり、先順位者が受給できない場合、後順位の遺族に受給権が移ります。

なお、遺族厚生年金では配偶者の受給要件に、子供の有無がありません。したがって、子供のない配偶者でも受給できます。

また、配偶者や子供は遺族基礎年金も併せて受け取ることができ、子供が年齢要件を満たしたことによって遺族基礎年金の受給がストップしても、遺族厚生年金は引き続き受給可能です。

遺族厚生年金をいつまで受給できるかについては、後述する「遺族厚生年金の受給期間」をご覧ください。


【遺族厚生年金の年齢要件(遺族)】
遺族厚生年金を受給できる遺族の年齢要件は、厚生年金加入者が亡くなった時を基準とします。
さらに、夫、父母、祖父母については、受給開始時期も年齢によって決められています。

遺族 年齢要件 受給開始年齢
なし
(30歳未満で子がいない場合、受給期間は5年)
なし
子、孫 18歳になる年度末まで
(障害年金の障害等級が1級または2級の子であれば20歳を迎えるまで)
なし
夫、父母、祖父母 55歳以上 60歳から

夫が死亡した場合、妻は年齢に関係なく受給要件を満たします。

これに対し、妻が死亡した場合、夫は55歳以上でなければ受給要件を満たしません。
しかも60歳からでなければ受給できず、この点は、父母、祖父母が受給する場合も同じです。ただし、夫については遺族基礎年金を受給中の場合に限り、60歳を待たずに遺族厚生年金を受け取ることができます。

4-2.遺族厚生年金の受給要件(亡くなった方)

遺族厚生年金を受給するには、亡くなった方が厚生年金の加入者か、過去に一定以上の加入歴を有している必要があります。

【遺族厚生年金の受給要件(亡くなった方)】
ア.被保険者が死亡した時
イ.被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡した時
ウ.1級・2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡した時
エ.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡した時
ア~エのいずれかに該当する必要があります。

なお、エを除くア~ウの要件のいずれかに該当する場合、受給金額の計算の際に「短期要件」を適用できます。詳しくは、「遺族厚生年金の受給金額」で解説します。

ア.被保険者が死亡した時

厚生年金に加入中の方が亡くなった場合です。
厚生年金は、所定の労働時間や労働日数のある方が、勤め先を通じて加入する年金のことで、現在、70歳まで加入することが認められています。

給与明細で厚生年金保険料が天引きされている間と考えると、わかりやすいと思います。保険料納付済みの期間(保険料免除期間を含む)が、加入期間の3分の2以上あることが要件となります。

イ.被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡した時

退職などで被保険者でなくなった人でも、被保険者期間中に初診の日がある傷病がもとで5年以内に亡くなった場合、遺族厚生年金の対象となります。

ここでも、保険料納付済みの期間(保険料免除期間を含む)が、加入期間の3分の2以上あることが要件となります。

ウ.1級・2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡した時

障害厚生年金とは、厚生年金に加入している方が傷病によって障がいを負った場合に支給される年金のことです。

障害等級1級・2級で障害厚生年金を受けていた方が亡くなった場合、遺族厚生年金の対象となります。

エ.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡した時

厚生年金保険への加入期間が25年以上ある方が亡くなった場合に該当します。この要件を満たせば、高齢の方が亡くなった場合でも対象になります。

ただし遺族が65歳を迎えると、自身の老齢厚生年金が受け取れる場合はそちらが優先されます。詳しくは、「遺族厚生年金の受給期間」で解説します。

4-3.遺族厚生年金の受給金額

実際の計算は自分で行う必要はありませんので、細かい数字を気にする必要はありませんが、需給金額の計算方法をご紹介します。

遺族厚生年金の計算式は、次のAとBの合計に4分の3をかけた額です。
【遺族厚生年金の受給額=(AB)×3/4】

A:平均標準報酬月額(※1)×7.125/1,000×平成15年3月末までの被保険者期間の月数
B:平均標準報酬額(※2)×5.481/1,000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数

(※1)平均標準報酬月額…標準報酬月額の平均に当年の再評価率(最近の賃金水準等から算出された率)をかけたもの
(※2)平均標準報酬額…標準報酬月額と標準賞与の平均月額に当年の再評価率(前同)をかけたもの


平均標準報酬月額や平均標準報酬額とは、ざっくり表現すると、亡くなった方の月給やボーナスの平均です。(実際の月給やボーナスの平均とまったく同じにはなりません。あくまで遺族厚生年金の概要をつかむためのイメージです)

遺族基礎年金は、「78万100円+子の加算額」のように受給額が一律だったことに対し、遺族厚生年金は、亡くなった方が受け取っていた給与やボーナスによって、金額がバラバラになります。

なお、上記のA(平均標準報酬月額)とB(平均標準報酬額)は、報酬比例部分といって、老齢厚生年金の計算方法と同じです。

つまり遺族厚生年金の受給額は、亡くなった方が本当なら受け取るはずだった、老齢厚生年金の4分の3(※3)ということになります。

なおAとBには、平成6年の再評価率等を使用する「従来の計算基準」もあります。 複雑になるため説明は省略しますが、もし従前の水準で計算した年金額の方が高い時は、従前の水準が適用されるしくみになっています。

(※3)実際に支給される老齢厚生年金は、報酬比例部分だけでなく、定額部分と老齢基礎年金の差額を補う数万円の経過的加算が加えられますが、上記の4分の3にこの経過的加算は含みません。


【「短期要件」は300ヶ月(25年)で計算できる】
前述の遺族厚生年金の受給要件(亡くなった方)が、ア~ウに該当する場合、「短期要件」として、計算式の被保険者期間の月数が300ヶ月(25年)に満たない場合、300ヶ月(25年)とみなして計算します。

たとえば、亡くなった方の被保険者期間が15年しかなくて、25年あったものとして計算するということです。

若くして亡くなった方の遺族にとっては、受給額の底上げとなる重要な制度となります。計算方法は、まず通常どおり、A(平均標準報酬月額)とB(平均標準報酬額)それぞれから遺族厚生年金の受給額を計算し、その額を300ヶ月に換算するという手順で行います。

たとえば、ABの合計が50万円で、被保険者期間15年(180ヶ月)の方が亡くなった場合、遺族厚生年金の受給額は、次のようになります。
 ⇒年金受給額=50万円×3/4×300ヶ月/180ヶ月=62万5,000円

4-4.遺族厚生年金の受給期間

遺族厚生年金の受給期間は、次のとおりです。

受給権者 受給期間
・子のない30歳未満の妻:5年間の有期給付
・上記以外の妻:死亡月の翌月から生涯受け取れる
子、孫 ・18歳になる年度末まで(障害年金の障害等級が1級または2級の子であれば20歳を迎えるまで)
夫、父母、祖父母 ・生涯受け取れる(ただし60歳から)

子供のいない30歳未満の妻の場合は、5年間の有期給付となります。
ただし、子供以外の受給権者のうち、65歳から自身の老齢厚生年金を受ける権利がある方については、老齢厚生年金の額と遺族厚生年金の額が次のように調整されます。


【65歳以上の遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整】

遺族厚生年金は、死亡者の加入した厚生年金をもとに支給される年金です。
しかし、遺族の中には自身の厚生年金から支給される老齢厚生年金を、65歳から受け取れる方がいます。

どちらも受け取れる方は、65歳になると自身の老齢厚生年金が優先支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給がストップするしくみです。

つまり、遺族厚生年金の方が自身の老齢厚生年金より高ければ、差額は遺族厚生年金として受給し続けることになります(パターンA参照)。

通常、公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金)の支給は、原則的に1人1年金となりますが、老齢年金と遺族年金にはこのような特別な扱いが認められています。

【パターンA】

65歳以上の遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整

もし、自身の老齢厚生年金の方が高ければ、遺族厚生年金は支給されません。
また、受給権者が配偶者の場合、パターンAか「遺族厚生年金の3分の2+配偶者の老齢厚生年金額の2分の1」(パターンB参照)の、いずれか多い額が支給されます。

【パターンB】

配偶者の老齢厚生年金が、亡くなった方の老齢厚生年金の半分を超える場合

パターンAよりもパターンBの受給額が多くなるのは、配偶者の老齢厚生年金が、亡くなった方の老齢厚生年金の半分(=遺族厚生年金の3分の2)を超える場合です。
それに満たない時は、パターンAで受給することになります。

5.遺族厚生年金に加算される「中高齢寡婦加算」とは

「中高齢寡婦加算」とは、一定の要件を満たす妻を対象に、遺族厚生年金から加算される給付です。たとえば子のない妻は、遺族基礎年金を受け取ることができないため、遺族厚生年金を頼りに生活することとなります。

この場合、中高齢寡婦加算により遺族厚生年金を手厚くすることで、受給できない遺族基礎年金の分を、ある程度カバーすることができます。

5-1.中高齢寡婦加算の受給要件

妻(受給権者) 夫(死亡者)
・夫が死亡した時、40歳以上の子のない妻
または
・40歳を迎えた時、子がいるため遺族基礎年金を受給している妻※
・遺族厚生年金の短期要件を満たしている
・長期要件であれば、被保険者期間が20年以上ある

※子供の年齢が18歳年度末に達するなどで、遺族基礎年金を受け取れなくなった時から加算されるようになります。

5-2.中高齢寡婦加算の受給額

受給できる年金額は、遺族基礎年金(子の加算額は考慮しない)の4分の3です。現在の年額は、58万5,100円(※)です。

遺族基礎年金ほど大きな額ではありませんが、受給できるとできないとでは大きな差になります。

(※)780,100×3/4=58万5,075円≒58万5,100円
(50円以上の端数を切り上げ、百円単位で支給される)

5-3.中高齢寡婦加算の受給期間

中高齢寡婦加算は、妻が65歳になるまで加算されます。65歳からは、妻自身の老齢基礎年金が支給されるからです。

ただし、妻の老齢基礎年金の額が、中高齢寡婦加算の額より下がる場合は、その差額は、「経過的寡婦加算」として支給されます。

6.遺族年金の金額の計算方法は?

ここからは、具体例で遺族年金の計算方法を確認してみます。

今回のコラムでは冒頭に、遺族年金の受給パターンをお伝えしました。
・遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる人
・遺族基礎年金のみ受給できる人
・遺族厚生年金のみ受給できる人
・両方とも受け取れない人

細かい受給要件をすべて覚えるのは大変ですが、せめて、どのケースであればどの遺族年金が受給できるかは把握しておきたいですよね。

受給できる遺族年金の違いは、亡くなった方の年金の加入状況と、遺族(配偶者)の子供の有無にあることは、ここまでの解説のとおりです。

このことから、夫が死亡して妻が遺族年金を受給するケースを前提に
6-1.夫が自営業のケース
6-2.夫が会社員のケース
に分けて、それぞれ子供の有無によって受給できる遺族年金の種類とそれぞれの計算方法をシミュレーションします。

6-1.夫が自営業の場合

夫が国民年金の第1号被保険者のケースです。

■例1:子供のあるケース
・死亡者 夫(自営業・50歳)
・遺族 妻(無職・45歳)、子(15歳)
・年金受給者 妻

夫がずっと自営業(国民年金の加入歴のみ)のケースでは、子供の年齢から遺族基礎年金が受給できるかを検討します。

【受給できる遺族年金の額】

遺族基礎年金 遺族厚生年金 合計
受給額 100万4,600円(※) なし 100万4,600円
受給期間 子供が18歳の年度末を迎えるまで(障害年金の障害等級が1級または2級の子であれば20歳を迎えるまで)

(※)78万100円+22万4,500円


■例2:子供のないケース
・死亡者 夫(自営業・50歳)
・遺族 妻(無職・45歳)、子なし

【受給できる遺族年金の額】
なし

夫がずっと自営業(国民年金の加入歴のみ)で子供のないケースは、遺族年金は受給できません。ですが、夫が過去に会社員だった場合、一定の要件を満たすと遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。

また、妻が60歳を迎えたら、65歳まで寡婦年金を受け取れるケースが多いので併せてチェックしましょう。

6-2.夫が会社員のケース

夫が厚生年金に加入しているケースです。

■例3:子供のあるケース
・死亡者 夫(会社員・50歳)
・夫の報酬比例部分(AとBの合計)120万円
・遺族 妻(無職・45歳)、子2人(15歳・13歳)
・年金受給者 妻
遺族基礎年金、遺族厚生年金の両方を受給できるケースです。

【受給できる遺族年金の額】

遺族基礎年金 遺族厚生年金 合計
受給額 122万9,100円(※1) 90万円(※2) 212万9,100円
受給期間 子が18歳の年度末を迎えるまで(障害年金の障害等級が1級または2級の子であれば20歳を迎えるまで) 生涯

(※1)78万100円+22万4,500円+22万4,500円
(※2)120万円×3/4

■例4:子のないケース
・死亡者 夫(会社員・50歳)
・夫の報酬比例部分のAとBの合計120万円
・遺族 妻(無職・45歳)、子なし
・年金受給者 妻

子がないため遺族基礎年金は受給できません。
ただし妻の年齢が40歳以上なので、中高齢寡婦加算を受給することができます。

遺族基礎年金 遺族厚生年金 合計
受給額 なし 148万5,100円(※) 148万5,100円
受給期間 なし 生涯

(※)120万円×3/4+58万5,100円=148万5,100円

例3では、子供が18歳の年度末を迎えて遺族基礎年金がなくなっても、この例では中高齢寡婦加算は受給できません。子供のいる妻の場合、40歳の時点で遺族基礎年金を受けていることが中高齢寡婦加算の要件となるからです。

また、遺族厚生年金の受給期間は「生涯」としていますが、妻に65歳から受け取れる老齢厚生年金がある場合、金額が調整されます。

7.まとめ

遺族年金について、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給要件、金額、受給期間等について解説しました。

遺族年金を受け取るには、必要書類を用意し、年金事務所や市区町村役場に請求する手続が必要です。遺族年金の請求は、受給権が発生してから5年間有効になります。

遺族年金は支給要件や受給額の計算が非常に複雑です、相続時に併せて専門家に相談される方が多いですが、生前対策としてその内容や具体的な金額を知っておくことは重要です。相続とそれにまつわる年金についてのご相談はぜひ日本クレアス税理士法人にお問合せください。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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