「広大地(こうだいち)」評価とは、課税時期が平成29年12月31日以前の場合に適用される土地の評価減の制度です。平成29年度の税制改正でこの制度は廃止され、「地積規模の大きな宅地の評価」が創設されました。
目次 |
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1.広大地とは? |
1.広大地とは?
1.(1)広大地はなぜ評価額減額の対象になるのか?
「広大地」とは、その名の通り広くて大きい土地です。あまりにも広い土地は、住宅用地として使用しようとしても使用しづらく、処分しようとしてもなかなか買い手がつかないことがあります。
よくあるのが、面積が広い土地を業者が買い取り、区画割をして一般住宅用地として販売を行うという方法です。広くて大きい土地でも区画割をして住宅用地として使うことができるのに、どうして評価額の減額がされるのでしょうか。
大きくて広い土地を区画割しようとするときに、すべてを住宅用地とすることは難しく、土地の中に道路などを設置しなければなりません
その道路部分は分譲地として使うことができませんので、大きくて広い土地すべてを住宅用地として販売できることを前提に買取りが行われることはなく、道路などを設置することを前提として、面積で計算したよりも低い金額で取引きされることが通常なのです。
これを税法上の評価額にも反映して、広大地の評価額は減額の対象となっていたのです。
2.広大地制度の改正について(平成29年度税制改正)
2.(1)改正の背景
広大地制度は、平成29年度の税制改正で、その評価について見直されました。見直された理由には、大きく3つの理由があります。
理由1;
今までの広大地評価制度は、面積に応じて比例的に減額する評価方法でした。
しかし実際の取引は、面積の広さだけではなく土地の形状が重要となります。土地の形状が複雑であったり奥行きがあった場合には、道路部分も大きくなり住宅地として使うことのできる部分が少なくなるので、面積に対して道路の割合が大きくなって取引価格が低くなる場合があるのです。
この場合、相続税評価額と実際の取引価格に大きく差が出てしまうことになります。
理由2;
広大地の減額制度を使うと大きく節税できることから、過度な節税対策として広大地の減額制度が使われることがあり、広大地でない土地を所有している人と比べて不公平となってしまうことがあることから、広大地評価制度の見直しについての要望がでていました。
理由3;
広大地評価の適用要件が明確でないことから専門家の立場からも広大地かどうかの判断が難しく、納税者と税務当局との間で見解の相違により、広大地評価として認められたり否認されたりすることがあるために、税務当局と争いになるケースが多く発生していました。
2.(2)改正の内容
広大地の評価の改正では、適用要件が明確化され、広大地相続税評価額は面積だけでなく、土地の形状や奥行きを考慮した補正率が使用されることになりました。
適用については、平成30年1月1日以後の相続などにより取得した財産の評価について適用されます。
2.(3)改正の影響
広大地についての減額が、土地の形状や奥行きを考慮した補正率が使われることになると、複雑な形状をした広大地や奥行きのある広大地については従来どおりの評価をされる可能性も高いのですが、形状のよい広大地については評価額が高くなってしまう可能性があります。
相続対策で広大地だから評価額が安いはずと思って安心していた方は、期待していたよりも相続税が高くなってしまう可能性があるということです。
従って、実際の取引価格と相続税評価額が大きく離れていることを利用することによる節税対策は、することができなくなってしまいます。
相続が発生してしまってからでは、相続対策として対策できることが少なくなってしまうので、相続が発生する前に生前贈与などを利用することを検討していくとよいでしょう。
生前贈与を利用するときにも、広大地のような場合には相続時精算課税制度を利用するかどうかを検討していくことが考えられます。
3.地積規模の大きな宅地の評価について
地積規模の大きな宅地に該当するのは、
・三大都市圏…500㎡以上の地積の宅地
・三大都市圏以外の地域…1,000㎡以上の地積の宅地
都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されていないなど除外要件がありますが、大きくは上記です。
3.①評価方法‐路線価地域の場合
路線価に、奥行き価格補正率や不整形地補正率などを乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
出典:国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」
3.②評価方法‐倍率地域の場合
評価する土地が倍率地域に所在する場合には、以下のいずれか低い価額によって評価します。
A:その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
B:その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額
3.③規模格差補正率の求め方
規模格差補正率は、以下の計算式で求めます。「(B)」及び「(C)」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて決まっています。
出典:国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」
(1)三大都市圏に所在する宅地;
地積 | 普通商業・併用住宅 地区、普通住宅地区 |
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(B) | (C) | |
500平方メートル以上1,000平方メートル未満 | 0.95 | 25 |
1,000平方メートル以上3,000平方メートル未満 | 0.90 | 75 |
3,000平方メートル以上5,000平方メートル未満 | 0.85 | 225 |
5,000平方メートル以上 | 0.80 | 475 |
(2)三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅 地区、普通住宅地区 |
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(B) | (C) | |
1,000平方メートル以上3,000平方メートル未満 | 0.90 | 100 |
3,000平方メートル以上5,000平方メートル未満 | 0.85 | 250 |
5,000平方メートル以上 | 0.80 | 500 |
まとめ
面積が広い土地は、評価額が相続税に与える影響が大きくなります。自分の持っている土地や相続する予定のある土地が、近隣の土地より大きくて広い場合には、相続が発生する前に専門家である税理士や不動産鑑定士に相談して、相続対策を考えることをおすすめします。
改正に気づかないで相続対策を考えていると、自分の思っていた相続税額と大きく違ってしまうこともありますので、相続評価額に少しでも不安がある場合には専門家である税理士や不動産鑑定士に早めに相談をして、税制改正の動向についての情報もキャッチしておくほうが安心と言えます。
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