「贈与税の申告漏れはばれるの?」
「ばれたらどうなるの?デメリットはある?」
毎年一定の金額を超えて贈与を受けた場合には、贈与税が発生します。
贈与税は贈与を受けた年の「翌年2月1日から3月15日」の期間に申告・納税しなければなりません。
仮に贈与税の申告漏れが起こってしまった場合、無申告がばれることはあるのでしょうか。
本記事では贈与税の無申告がばれてしまうのか、そのタイミングやばれた場合のペナルティを解説します。
申告漏れがばれてしまう原因やペナルティを知りたい・適切に贈与税を申告したい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
1. 贈与税の申告漏れはばれる
基本的に、贈与税の申告漏れがばれずに見逃されることはありません。
そのため、申告漏れがばれないだろうと思っている方は注意が必要です。
ではなぜ申告漏れがばれてしまうのか、ばれるタイミングやばれない方法があるのか解説します。
1-1. なぜばれてしまう?
贈与税の申告有無については税務署に管轄があり、税務署は各関係機関やSNSなどさまざまなルートから情報を常に収集しています。
税務署はお金の流れの中でポイントとなる部分を詳細に把握しており、法務局や銀行などと連携してデータを詳細に把握することが可能です。
そのため、手渡しだからばれない・この方法だからばれないということはありません。
現代ではお金を管理する仕組みが確立されているため、無申告は必ずばれてしまうと思っておきましょう。
1-2. どのようなタイミングでばれる?
贈与税の申告漏れがばれてしまうタイミングは、お金を使ったタイミングであることがほとんどです。
たとえば、手渡しで現金を贈与されタンスに保管していたなどの場合、お金を使うまでは税務署も感知することができません。
しかし、受け取ったお金をどこかで使ったタイミングで、そのお金はどこから来たのかという疑問が税務署に生まれ調査が開始されます。
すると税務署から「お尋ね」文書が届き、資金の調達方法などから贈与であることがばれてしまうのです。
1-3. 100%の確率でばれない方法はある?
100%贈与税の申告漏れがばれない方法はありません。
どのような方法を取ったとしても、どこかのタイミングで贈与ではないかと疑わればれてしまうことがほとんどです。
わざと申告しないでいるとより多くの税金を徴収されてしまうので、ばれない方法を考えること自体が無意味で高リスクであることを理解しておきましょう。
2. 贈与税の申告漏れがばれてしまうケース
贈与税の申告漏れがばれてしまうケースを、大きく3つに分けて解説します。
- 相続税の調査でばれる
- 税務署の「お尋ね」からばれる
- 法定調書の内容からばれる
どのような流れで贈与税の申告漏れがばれてしまうのか、詳しくみていきましょう。
2-1. 相続税の調査でばれる
贈与税の申告漏れが、相続税の調査でばれるケースがあります。
相続税の調査では故人の遺産を調べることが中心ですが、その過程では相続人の財産も一緒に調査されることが一般的です。
被相続人(故人)から相続人へのお金の流れがあった場合、財産が贈与にあたるのか相続にあたるのか調査されます。
相続税対策として死亡の少し前に贈与を行う人が多いですが、それは生前贈与にあたるため、相続税ではなく贈与税の対象であることが調査のタイミングでばれてしまうのです。
相続税の税務調査を行う職員には被相続人だけでなく、相続人の銀行口座を調べる権限もあるため、不審なお金の流れがあればすぐにばれてしまいます。
贈与されたお金を数年使っていないという場合でも、相続税調査のタイミングでばれ追徴課税をされるケースも少なくないため注意しましょう。
2-2. 税務署の「お尋ね」からばれる
贈与税の申告漏れは、税務署からの「お尋ね」でばれるケースもあります。
「お尋ね」は税務署から送られてくるアンケート用紙で、購入物に対して買入先や資金の調達方法などを記入して税務署に返送しなければなりません。
税務署は記入された情報を元に整合性があるのかを判断し、贈与税申告の必要性を判断します。
必要と判断された場合には、税務調査が入り直接話を聞かれるなどすることで無申告であることがばれてしまうのです。
税務署は年末調整や確定申告によって個人の所得を把握しているため、所得に不釣り合いな買い物を繰り返すと「贈与があるのでは?」と疑いを持たれてしまいます。
税務署は「お尋ね」に記入された内容が真実であるのか調査し証明する力を持っているので、嘘を書いてもすぐにばれてしまうため注意しましょう。
2-3. 法定調書の内容からばれる
贈与税の申告漏れは、法定調査の内容からばれる場合もあります。
法定調書とは相続税・所得税法などによって、事業者から税務署への提出が義務付けられている書類です。
税務署は事業者から提出された法定調書をもとに、どの人がどのくらいの所得や譲渡益を手にしているかを把握しています。
たとえば、給与や退職金・保険金の受け取り・宝石の売却などで得たお金など。
法定調書から贈与税の申告漏れがばれるケースで多いのが、保険金の受け取りです。
保険金は契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人がすべて異なる人物の場合、贈与税の対象となります。
<保険金が贈与税の対象となる例>
- 契約者:父
- 被保険者:母
- 受取人:長男
この例の場合において長男が保険金を受け取った場合には、父から長男への贈与であるとみなされるため、長男は贈与税の申告をしなければなりません。
申告が漏れていた場合、保険会社から税務署に提出される法定調書によって、長男が無申告であることがばれてしまうのです。
3. 贈与税の無申告がばれた場合のペナルティ
贈与税の申告漏れはほぼ100%ばれてしまうと解説しましたが、具体的にばれた場合にはどうなってしまうのでしょうか。
贈与税の申告漏れがばれた際に課せられる可能性があるペナルティを5つ紹介します。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
- 刑事罰
どのようなペナルティなのかくわしくみていきましょう。
3-1. 無申告加算税
贈与税を申告しなかった場合には無申告加算税が課され、本来の納税額以上の税金を支払わなければなりません。
無申告加算税は状況にや金額によって、課される税率が異なります。
<無申告加算税の税率>
ケース | 税率 |
自主申告の場合 | 5% |
税務署からの指摘後に申告 | 50万円以下:15% 50万円を超える部分:20% |
たとえば、100万円の贈与税を税務署からの指摘後に申告した場合、無申告加算税は下記のように計算されます。
<無申告加算税の計算例>
- 50万円×15%=7.5万円
- 50万円×20%=10万円
「1」・「2」を合算した17.5万円が無申告加算税によって追徴課税されるため、合計で117.5万円を支払わなければなりません。
なお申告期限内に申告できない正当な理由があり、期限後1ヶ月以内に申告した場合には無申告加算税の対象外となるケースもあります。
3-2. 過少申告加算税
本来の申告金額よりも少ない金額で申告した場合には、過少申告加算税が課せられます。
過少申告加算税では、実際に申告した金額や申告時期によって税率が異なります。
<過少申告加算税の税率>
課税対象 | 事前通知前の申告 | 事前通知〜税務調査間の申告 | 税務調査後の申告 |
申告額と50万円のいずれか 大きい方以下の部分 |
無し | 5% | 10% |
申告額と50万円のいずれか 大きい方を超える部分 |
10% | 15% |
たとえば、申告額が30万円で本来の申告額が100万円だった場合(追加納税額は70万円)に税務調査後に申告したケース。
<過少告加算税の計算例>
- 50万円×10%=5万円
- 20万円×15%=3万円
この例の場合申告額が30万円であるため、50万円を基準に追徴課税額を計算し合算した8万円が追徴課税額です。
追加納税額に8万円を加え、78万円を追加で支払うことになります。
3-3. 重加算税
わざと無申告にした・隠蔽した場合など、悪質だと判断された場合には、無申告・過少申告加算税に加えて重加算税が課せられます。
<重加算税の税率>
ケース | 通常 | 過去5年間に無申告加算税か 重加算税を課せられている場合 |
過少申告 | 35% | 45% |
無申告 | 40% | 50% |
たとえば、3年前にも無申告加算税を課せられていて、50万円の無申告がばれてしまった場合。
<重加算税の計算例>
- 50万円×50%=25万円
この例の場合には、最も悪質なケースとして50%の税率が適用されます。
重加算税は税率がとても高く、該当してしまった場合にはかなりの追徴課税を強いられてしまうので注意しましょう。
3-4. 延滞税
延滞税は納税をしなかった場合に課せられるペナルティです。
無申告の場合には納税もしていないケースがほとんどのため、無申告・過少申告・重加算税に加えて、延滞税もかかることになります。
<延滞税の税率>
延滞期間 | 税率 |
納期限後2ヶ月以内 | 年7.3%(原則) |
納期限後2ヶ月を超える期間 | 年14.6%(原則) |
延滞税は毎年税率が異なるため、国税庁のHPから確認しましょう。
3-5. 刑事罰の対象になることも
贈与税を申告しなかった場合には、その金額に応じて刑事罰も課せられる可能性があります。
刑事罰の対象となる可能性がある行為は下記の3つです。
- 脱税
- 故意に申告書を提出しなかった
- 過失による無申告
とくに脱税の場合には処罰が重く、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方が課せられる可能性があります。
そのほか「2」の場合には、5年以下の懲役または500万円以下の罰金(両方が課せられる場合も)、「3」の場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
刑事罰の対象となるかはケースバイケースですが、正当に申告を行っていればそもそもペナルティは発生しません。
適切に申告・納税を行うためには、自分の贈与を正確に把握すること、不安な場合には専門家に相談することが大切です。
3-6. ペナルティを軽減する方法
贈与税の申告漏れを起こしてしまった場合でも、ペナルティを軽減する方法があります。
それは1秒でも早く、正確な申告を行うことです。
申告漏れが起こった場合には遅かれ早かれ税務調査が入る可能性が高く、調査後に申告を命じられてしまうと、ペナルティが大きくなってしまいます。
税務署からの指摘や調査が入る前に申告すればペナルティが軽減・場合によっては無くなる可能性もありますので、いち早く申告を行いましょう。
4. 贈与税申告に時効はある?
贈与税の申告には時効が存在します。
法定に沿えば申告期限の時効が満たされれば、贈与税の支払い義務は消失します。
では贈与税申告の時効はいつまでなのでしょうか、期間や時効成立に関する疑問をくわしくみていきましょう。
4-1. 贈与税申告の時効は6年または7年
贈与税申告の時効は、相続税法第37条で原則6年と定められています。
しかし故意に贈与税の申告を行わなかった場合には、時効が7年に延長されるため注意が必要です。
【関連記事】贈与税の時効はいつから6年?7年の場合や成立が難しい理由を解説
贈与税申告の時効が満たされれば、時効が成立したとみなされますが時効の成立は難しいといわれています。
なぜ時効成立が難しいといわれているのかみていきましょう。
4-2. 贈与税申告の時効成立は難しい
贈与税申告の時効成立が難しいといわれているのは、6~7年の間に何らかの形で贈与税の無申告が税務署にばれてしまうからです。
前述の通り、税務署はお金の流れを正確に把握する手段と持っています。
そのため、税務調査や支払い調書などから贈与があった事実を隠すことは非常に困難です。
また、名義預金であれば贈与税の申告を逃れられるという考えの方もいますが、名義預金には時効がありません。
過去に遡って贈与税の納税を命じられる可能性があるので、時効成立を待つことは現実的ではないのです。
4-3. 贈与税申告の時効成立を確認する方法
意図的に贈与税申告の時効を成立させるのは難しいですが、意図せず過去に受け取っていた贈与が時効成立しているのではないかと考える人もいるでしょう。
贈与税の時効を確認する場合には、時効の起算日を正確に把握することが重要です。
贈与税申告の時効起算日は、申告期限日の翌日と定められています。
たとえば、2010年に贈与を受けていた場合の時効起算日は翌年(2011年)の3月16日です。
そこから6年または7年経っている場合には、時効が成立している可能性があります。
ただし、たとえ7年が経過していた場合でも意図的に時効成立を計画していた場合には、脱税として支払いを命じられることも。
実際に時効の成立を狙った人が裁判した結果敗訴となり、支払いを命じられた判例があります。
(名古屋地裁 平成5年3月24日)
確実に時効成立を確認する方法はないため、最初から適切な申告・納税を行うことが大切です。
5. 非課税で贈与したいなら基礎控除や特例を活用する
贈与は受けたいけど贈与税を払いたくないという方は、正式に認められている控除や非課税枠・特例を利用することがおすすめです。
贈与税で設けられている控除・非課税枠・特例をいくつか紹介します。
- 暦年課税制度の基礎控除(毎年110万円)
- 相続時精算課税制度の基礎控除(毎年110万円)&非課税枠(最大2,500万円)
- 教育資金贈与の非課税措置(最大1,500万円)
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置(最大1,000万円)
- 住宅資金贈与の非課税措置(最大1,000万円)
- 贈与税の配偶者控除(最大2,000万円)
暦年課税制度の基礎控除枠は誰でも利用でき、そのほかの非課税枠・特例に関しては要件を満たすことで利用可能です。
自身の状況によって利用できるものがあれば、積極的に利用して贈与税の負担を減らしましょう。
非課税措置や特例の利用は必要な書類が多く適切に申告を行う必要があるため、税理士などの専門家に相談することがおすすめです。
6. 申告漏れはばれるため贈与税は正しく申告しよう
贈与税の申告漏れは、税務署によってほぼ確実にばれてしまいます。
ばれない贈与方法というものはなく、時効を成立させることはかなり困難で現実的ではありません。
そもそも申告漏れで時効成立を狙うことは脱税行為に該当し、刑事罰の対象にもなっている犯罪行為です。
贈与税には基礎控除枠や特例など、負担を軽減できる措置がいくつか設けられています。
申告漏れがばれない方法を探すのではなく、正当な方法で贈与税の負担を軽減しましょう。
税の専門家である税理士に相談すれば、個々人にとって最適な節税方法を提案してもらえます。
贈与税を少しでも減らしたいという方は、税理士に相談し適切な申告・納税のもと節税を行いましょう。
下記記事では、贈与税の申告方法についてくわしく解説していますので気になる方はぜひご覧ください。
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