相続税の申告と納税は相続開始から10か月以内という期限が定められているので、この期限内に手続きを終えるようにしなければなりません。
ただ実際には計算のミスによって税額を誤ってしまう可能性もありますし、税務以外の相続に関する各種の手続き上、相続税の申告期限までに正確な計算ができず、取りあえずの措置として暫定の不正確な額を申告しなければならないケースもあります。
今回はこのように申告した相続税額が本来の税額と異なる場合の対応について解説します。
目次 |
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1.納めた相続税額が多すぎた時は「更正の請求」 2.納めた相続税額が少なすぎた時は「修正申告」 2.1.延滞税(えんたいぜい) 2.2.過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい) 2.3.重加算税(じゅうかさんぜい) 3.まとめ |
納めた相続税額が多すぎた時は「更正の請求」
本来納めるべき額よりも多くの相続税を納税した場合には「更正の請求(こうせいのせいきゅう)」という手続きを行うことができます。 更正の請求は納め過ぎた分を還付して(払い戻して)もらうことができるものです。
更正の請求ができる期限は原則として相続税の申告期限から5年となっています。 申告期限は相続開始から10カ月ですから、被相続人の死亡から5年と10カ月が期限の目安になります。
ただし、例えば申告期限までに遺産分割が整わなかったため仕方なく暫定数値で申告手続きを行い、その後遺産分割が確定したなど特別な事情がある場合は、その事情が発生したことを知った日の翌日から4か月以内であれば、上記の5年10か月を過ぎていても更正の請求を行うことができます。 特別な理由は他に以下のような事情が挙げられます。
- 遺留分侵害額(減殺)請求が行われたことにより承継する財産の額が変動し、これに連動して相続税額が減少した
- 遺産分割が確定し、適用する特例によって税額が軽減された
- 相続人の廃除等の裁判の確定や認知があったことで相続人か変わり、基礎控除が増えて税額に変動が起きた
このようなケースでは相続税の計算の為の正確な数値が申告期限までに確定しないこともあるので、事後的な救済措置として、原則の期限とは別扱いとなっています。
ちなみに本来よりも税金を多く納めているという事実は国側にとっては不利なことではないので、「納め過ぎていますよ」ということを知らせてくれることは通常ありません。
また更正の請求を行わなかったとしても国にとっては不都合なことではないのでペナルティもありません。 しかし逆に本来納めるべき税額よりも少なく申告してしまった場合、国側としては損失を被ることになるので、手続きをとらないと一定のペナルティを課せられてしまいます。
ここからは納めた相続税額が少なかった場合の対応を見ていきましょう。
納めた相続税額が少なすぎた時は「修正申告」
本来よりも少ない税額で申告してしまった場合、足りない分を追加で納税するために「修正申告」という手続きが必要になります。
注意しなければならないのは、足りない分の差額を納めてそれで終わり、とはならないことです。
民事上の一般的な借金でも、返済が滞ると遅延利息や損害金を取られてしまうことがありますが、税金の世界にもそれに似た以下のようなペナルティがあります。
①延滞税(えんたいぜい)
一般の借金でいえば遅延利息にあたるのが延滞税というもので、不足分の税額について、本来の納税期限から実際に納付がされるまでの間に一定の税率で課税されます。
原則として、納税期限から二か月以内の税率は年7.3%、二か月を超えると年14.6%の税率になります。
ただし特例があり、納付期限から二か月以内は上記の「年7.3%」と「特例基準割合+1%」を比較してどちらか低い方が、二か月を超える期間については同じく上記の「年14.6%」と「特例基準割合+7.3%」を比較してどちらか低い方の税率が適用になります。
特例基準割合は年によって変動がありますが、平成30年については1.6%となっています。 従って納付期限から二か月以内は2.6%、二か月超は8.9%となり、原則の利率よりも低利率となっています。
②過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい)
過少申告加算税は本来よりも過少に税額を申告したこと自体に対するペナルティで、懲罰的な意味合いがあるものです。
修正申告を行うタイミングとして、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合はこの加算税は課税されません。
しかし一旦税務調査の事前通知を受けてしまうと、実際に税務調査を受ける前に修正申告をしたとしても以下の税率で本加算税が課税されます。
- 追加で納める税額について、当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分の額に対して・・5%
- 追加で納める税額について、当初の納税額と50万円のいずれか多い方を超える部分の額に対して・・10%
もし税務調査を受けてから修正申告をした場合は上記①について10%、②については15%の税率になります。
③重加算税(じゅうかさんぜい)
相続財産の隠ぺいや仮装があった場合など、悪質性の高い申告漏れの場合は過少申告加算税よりも重い35%という税率で重加算税が課せられます。 もし悪質性の高い手法で相続税の申告自体を逃れていた場合は40%の税率が適用されます。
まとめ
今回は相続税の税務処理で税額を間違ってしまった場合の二つの対応について見てきました。
本来の税額よりも多く納めてしまった時は、更正の請求を行うことで納め過ぎた税金を還付してもらうことができますが、請求には期限があることは覚えておきましょう。
本来よりも少ない税額で申告した場合は修正申告を行い不足分を納めることになりますが、一定のペナルティがあるので注意しなければなりません。
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