生命保険に加入することで、死亡時に死亡保険金の受け取り可能です。
そのため、自分や家族の万が一に備え加入しているという方も多いでしょう。
実は生命保険の死亡保険金には非課税枠があることにくわえ、相続税の基礎控除を適用可能です。
本記事では、どのような場合に生命保険に相続税がかかるのか、基礎控除や非課税枠について解説します。
相続税における生命保険の扱いについて、くわしく知りたいという方はぜひご覧ください。
目次
1. 生命保険はみなし相続財産として相続税の対象になる
生命保険に加入していた場合に受け取る死亡保険金は、みなし相続財産と呼ばれ相続税の対象になります。
みなし相続財産とは、相続発生時には存在していない財産で、被相続人の死亡を要因として相続人が受け取ることになる財産です。
生命保険の死亡保険金をはじめ、死亡退職金などがみなし相続財産に該当します。
ただ、生命保険は相続税の対象ではありますが、すべての場合において相続税がかかるわけではありません。
これには、「生命保険には非課税枠がある」・「対象となる税金が相続税ではない場合がある」ことが関わっています。
まず、生命保険の基礎控除や非課税枠についてみていきましょう。
2. 生命保険の基礎控除とは?非課税枠を解説
生命保険に基礎控除はなく、代わりに非課税枠が設けられています。
前述の通り、生命保険の死亡保険金を受け取ったすべての場合において、相続税が発生するわけではありません。
その1つの理由として、生命保険には非課税枠が設けられており、死亡保険金が非課税枠内であれば相続税がかからないことが挙げられます。
下記では、生命保険の非課税枠や相続税の基礎控除との関係について整理しましょう。
2-1. 生命保険の非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」
生命保険の死亡保険金に対しては「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。
死亡保険金がこの非課税枠内であれば、生命保険に対して相続税は発生しません。
法定相続人とは、民法886条から890条において定められている、被相続人の遺産を相続する権利を持つ血縁者を指します。
法定相続人には相続順位が設けられており、血縁者との関係によって決定されます。
この相続順位が高いほど、法定相続人になる可能性が高いです。
法定相続人には「配偶者+最も相続順位が高い相続人」がなります。
配偶者がいない場合には「最も相続順位が高い相続人」が法定相続人です。
生命保険の非課税枠の計算では、この法定相続人の数が重要で、増えるほどに非課税枠も拡大します。
生命保険の非課税枠 = 500万円 × 1 = 500万円
生命保険の非課税枠 = 500万円 × 2 = 1,000万円
生命保険の非課税枠 = 500万円 × 3 = 1,500万円
生命保険の非課税枠 = 500万円 × 4 = 2,000万円 |
法定相続人が多ければ、死亡保険金が高額な生命保険をかけていた場合でも、相続税がかかる可能性が低くなります。
2-2. 生命保険の死亡保険金にも基礎控除が適用可能
生命保険の死亡保険金には非課税枠が設けられていますが、相続税の基礎控除も適用可能です。
相続税の基礎控除は、財産の種類に関係なく設けられている控除枠で、下記の計算式で算出できます。
<相続税の基礎控除額> 「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」 |
相続税の計算では、すべての財産の相続税評価額を合算した遺産総額を求めます。
相続税の基礎控除額は、この遺産総額に対して設けられている控除枠です。
もちろん、遺産総額のなかには生命保険も含まれるため、生命保険の非課税枠にプラスして相続税の基礎控除額も適用されることになります。
<例> 生命保険の死亡保険金:3,000万円 →生命保険の非課税枠:1,500万円(法定相続人が3人) 不動産:1,000万円 現金:1,000万円 →遺産総額:1,500 + 1,000 + 1,000 = 3,500万円 相続税の基礎控除額:4,800万円 |
この例の場合には、死亡保険金が非課税枠を超えているため、相続税が1,500万円に対してかかります。
ただ、遺産総額に対しては相続税の基礎控除額が適用できます。
生命保険の1,500万円を含めた遺産総額<基礎控除額となっているため、最終的に相続税は発生しません。
3. 生命保険にかかる税金は組み合わせで異なる
生命保険の死亡保険金は、下記3者の組み合わせによって対象となる税金が異なります。
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対象となる可能性がある税金は「相続税・所得税・贈与税」の3種類です。
それぞれどのような組み合わせの場合に対象となるのかみていきましょう。
3-1. 生命保険(死亡保険金)に相続税がかかる場合
被保険者・保険料の支払い者がともに被相続人である場合には、生命保険に対して相続税がかかります。
被保険者 | 保険料の支払い者 | 保険金の受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
被相続人 | 被相続人 | 誰でも | 相続税 |
保険料を被相続人が払っていた場合には、死亡保険金が被相続人の財産とみなされるため、相続税の対象となるのです。
代表的な保険としては、定期死亡保険や個人年金保険などが挙げられます。
3-2. 生命保険に(死亡保険金)所得税がかかる場合
保険料の支払い者と保険金の受取人が同一人物(被相続人を除く)の場合には、生命保険に対して所得税がかかります。
被保険者 | 保険料の支払い者 | 保険金の受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
被相続人 | 被相続人以外 | 支払い者と同一人物 | 所得税 |
この場合には保険料を被相続人が払っていないため、相続財産とはみなされません。
その代わり、受取人が自分の掛け金で得たお金として所得税の対象となるのです。
なお、所得として扱われるため住民税の対象にもなります。
3-3. 生命保険に(死亡保険金)贈与税がかかる場合
被保険者が被相続人であり、そのほかの2者がそれぞれ異なる人物の場合には、生命保険に対して贈与税がかかります。
被保険者 | 保険料の支払い者 | 保険金の受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
被相続人 | 被相続人以外のもの | 被相続人・支払い者以外のもの | 贈与税 |
これまででわかるように、死亡保険金は保険料を支払っている人の財産とみなされます。
そのため上記の場合には、支払い者の財産を第三者が受け取っていることになり、贈与として扱われるのです。
ひとくちに生命保険といっても、組み合わせによって対象となる税金が異なりますので注意しましょう。
4. 生命保険の節税効果|相続対策におすすめな4つのメリット
生命保険には、一定の節税効果を見込むことができるなどのメリットが存在します。
そのほかにも、多くのメリットがありますので解説します。
<相続における生命保険のメリット>
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相続における生命保険のメリットを理解し、活用を検討しましょう。
4-1. 法定相続人の数に応じて非課税枠が増加する
生命保険は法定相続人の数に応じて非課税枠が増加するため、節税効果が見込めるメリットがあります。
生命保険の掛け金の平均は1世帯あたり3〜4万円となっており、一人当たり1.5~2万円で加入可能です。
年間で10〜20万円程度の賭け金に対し、500万円〜ほどの死亡保険金を受け取ることができるため、家族に財産を遺すために非常に有効な手段です。
通常の相続財産の場合には相続税の対象となってしまいますが、死亡保険金には非課税枠が設けられているため、無税で財産を遺せる可能性があります。
そのため、財産を増加させながら相続税は増えないという節税効果が見込めるのです。
4-2. 代償分割により相続トラブルを回避できる
生命保険の死亡保険金を代償分割に利用することで、相続トラブルを回避できるというメリットがあります。
代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法です。 引用元:国税庁公式HP |
相続人が複数人いる場合には、相続財産をめぐって相続トラブルが起きてしまう可能性があります。
とくに、自宅などの不動産がある場合には、現物分割が難しいため相続割合に偏りが出てしまうことも多いです。
そのような場合には代償分割を行うことで相続トラブルを回避できますが、代償する分の現金を用意することは簡単ではありません。
そこで注目すべきなのが死亡保険金です。
不動産を相続予定である相続人を生命保険の受取人にしておくことで、用意が困難な現金を相続人に遺すことができ代償分割が利用できます。
自身の死後に親族同士での争いを回避できるという、大きなメリットが生命保険にはあるのです。
4-3. 葬儀・納税などすぐに活用できる
生命保険で受け取れる死亡保険金は、ほかの相続財産とは異なり、受取人が早い段階で自由に利用できるというメリットがあります。
通常の相続では「遺産分割協議などによって相続人を決定→名義変更」というプロセスを経なければ、被相続人の財産を使うことができません。
使用用途などを正式に申請することで、遺産分割前に預金の一部を受け取れる制度も存在しますが、利用には多少の時間を要します。
その間にも、葬儀や仏具の準備など資金が必要な場面は多く存在します。
また期限が迫っている場合には、名義変更を行う前に納税が必要となるパターンもあるでしょう。
そんなときに生命保険の死亡保険金があればすぐに活用できるため、資金面での不安を払拭できます。
4-4. 相続放棄した場合でも受け取れる
生命保険には法定相続人が相続放棄した場合でも、死亡保険金を受け取れるというメリットがあります。
相続人は、相続する財産が明らかにマイナスの財産が多い場合には、相続放棄を選択してすべての財産を放棄可能です。
しかし、相続放棄を選択すると財産を何も遺すことができません。
そのような場合には生命保険の受取人を相続人にしておくことで、現金を遺すことが可能です。
ただ相続放棄した場合には、死亡保険金の非課税枠を利用できない点には注意しましょう。
5. 相続における生命保険についてよくある質問
相続における生命保険について、よくある質問をまとめましたのでご覧ください。
<生命保険についてよくある質問>
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疑問を解消して、生命保険についての理解を深めましょう。
5-1. 相続開始時に受取人が亡くなっている場合はどうなる?
相続開始時に生命保険の受取人が亡くなっている場合には、受取人の法定相続人が新たな受取人となります。
受取人が亡くなった時点で変更すればいいですが、仮に変更しなかった場合には、加入当初の想定とは違う人に死亡保険金が渡ってしまうのです。
たとえば、子供が2人いる夫婦が夫の保険金の受取人を妻にしていたが相続開始時に亡くなっていた場合、子供2人が死亡保険金の受取人となります。
なお、契約している保険会社に連絡して事情を説明することで、受取人の変更は可能です。
5-2. リビングニーズ特約とは?
リビングニーズ特約とは、被保険者の余命が6ヶ月以内と判断された場合に、死亡保険金の一部または全額(3,000万円が上限)を生前に受け取ることができる特約です。
リビングニーズ特約を利用した場合には、被保険者本人がそのお金を無税で受け取ることができます。
使途に制限はないため、家族に使っても余生を楽しむために使っても問題ありません。
しかし、被保険者が亡くなったときに残額があった場合には、相続財産として相続税の対象となるため注意しましょう。
またこの場合には、死亡保険金として受け取っているわけではないため、非課税枠が適用されない点にも注意が必要です。
5-3. 相続対策に適している生命保険の種類が知りたい
死亡保険金を受け取れる保険であれば、どの保険でも相続対策に利用できます。
ただ、相続対策を目的として生命保険に加入する場合には、契約期間に定めのない終身保険に加入することがおすすめです。
5-4. 解約返戻金でも非課税枠は利用できる?
解約返戻金を受け取る場合には、非課税枠を利用できませんので注意しましょう。
解約返戻金とは、契約を解除する場合に契約者に返還されるお金のことを指し、契約期間や掛け金などによって変動します。
多くの場合には、掛け金よりも少ない金額となるため損をしてしまう可能性が高いです。
相続においては、被相続人が契約者となりほかの人に保険をかけていた場合に、解約返戻金を受け取るというパターンがあります。
解約返戻金は被相続人の財産として、相続税の対象となりますが死亡保険金ではないため非課税枠を利用できません。
このような場合には、名義変更して引き続き保険に加入し続けることも可能ですので、状況に応じて選択しましょう。
6. まとめ
ここまで、生命保険の基礎控除や非課税枠について解説しました。
生命保険で受け取れる死亡保険には、基礎控除はありませんが非課税枠が設けられています。
生命保険の非課税枠は法定相続人1人あたり500万円となるため、うまく活用することで相続税対策にも利用できるでしょう。
ただ、相続税対策や相続トラブルに対する対策は専門的な知識を必要とするため、税理士への相談がおすすめです。
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