ーコラムー
相続税の基本

相続税の課税対象になるみなし相続財産の具体例と相続のポイント

2018.6.7

相続が起きると被相続人が残した遺産を各権利者間で分配することになりますが、承継する遺産に応じた相続税の処理についても間違いの無いように計算しなければなりません。

その計算の過程では「みなし相続財産」というものが絡んでくることがあり、この取扱いについても齟齬が出ないようにする必要があります。

今回は「みなし相続財産」に焦点をあてて解説します。

目次
1.みなし相続財産とは?
2.みなし相続財産の具体例
3.みなし相続財産が存在する相続のポイント
  3.1.相続放棄をした場合の影響
  3.2.遺産分割時の取扱い
4.まとめ

みなし相続財産とは?

まず、「相続財産」とは何かですが、相続財産とは被相続人が生前に所有していた財産のうち、相続人等の権利者に引き継がれるものをいいます。

しかし一部の財産については、厳密に解釈すると故人が「生前に所有していた」とはいえないものもあり、また中には世間一般には「財産」とは解釈しないものもあります。

こうしたものも、総合的にみて相続税の課税対象に含めるべきと国によって判断される(みなされる)ものが「みなし相続財産」になります。

みなし相続財産の具体例

例えば以下のようなものがみなし相続財産となります。

生命保険金

被相続人が保険料を負担していて、被相続人の死亡によって相続人等が受け取る生命保険金。

ただし生命保険金には一定の非課税枠があります。

死亡退職金

被相続人の死亡によって相続人等が受け取る死亡退職金のうち、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定したもの。

ただし死亡退職金には一定の非課税枠があります。

弔慰金

業務上の死亡の場合は賞与を除く普通給与の3年分を超える部分業務外の死亡の場合は賞与を除く普通給与の6か月分を超える部分については、上の死亡退職金に含まれるため、みなし相続財産となります。

定期金

被相続人が保険料を負担していたもので、相続開始の段階でまだ給付事由が発生していない定期金の給付契約があった場合の、本来受け取れるはずだった利益

低額譲受による利益

遺言によって著しく低い対価で財産を譲り受けた場合、時価との差額分が遺贈によって取得したものとみなされ、当該差額分が相続税の課税対象になります。

特別縁故者への財産分与

相続人がおらず特別縁故者が財産分与を受けた場合は、当該時点での評価額に基づいて相続税の処理を行います。

公共法人等から受ける利益

一定の法人に遺贈が行われた場合において、その法人と特別な関係がある者が特別な利益を受けた場合、その利益に相続税が課税されます。

被相続人が亡くなる前3年以内の贈与

こちらは厳密にはみなし相続財産ではなく「生前贈与加算」といわれるものですが、被相続人の死亡前3年以内に贈与された財産については、相続税の計算の際に相続財産に組戻して計算されます。  

みなし相続財産とされる財産には多くの種類がありますが、特に死亡保険金死亡退職金については非課税枠等の要点を整理しておくとよいでしょう。   「みなし相続財産」が存在する場合、相続発生時に特に留意すべきポイントがありますので、確認をしてみましょう。

みなし相続財産が存在する相続のポイント

①相続放棄をした場合の影響

みなし相続財産は、仮に相続放棄をしても受け取ることができ、その場合は相続税の課税対象になります。

例えば、みなし相続財産となる生命保険金は相続放棄をしても受け取ることができ、相続対策にもよく利用されますが、これも相続税の課税対象になるということです。

注意が必要なのは、相続放棄をした者は、相続税の計算上、生命保険金と死亡退職金に用意されている非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使うことができなくなる点です。

ただし他の相続放棄をしていない相続人は上記の非課税枠を使うことができ、その際には法定相続人の数に相続放棄者をカウントすることもできます。

また相続税の基礎控除として「3000万円+600万円×法定相続人の数」がありますが、この中の法定相続人のカウントについても相続放棄者を含めて計算することができます。

②遺産分割時の取扱い

みなし相続財産については、原則として遺産分割の対象になりません

例えば生命保険金の場合、その保険金を受け取る権利はその受取人の固有のものであり、他の相続財産とは切り離して考えることになります。

この性質を利用して、例えば相続税の納税資金に充てることを目的にしたり、あるいは特定の遺族の当面の生活費を確保してあげるために利用されることがあります。

ただ特定の者にあまりにも高額な保険金が支給されるとなると問題が起きることもあります。 例えば兄弟のAとBが相続人となり、故人が残した遺産は当初現預金の5000万円だったとします。これを法定相続分通りに分けると双方2500万円ずつの取り分となります。


しかしそこにプラスして、Bが受取人となる生命保険契約(保険金額3000万円)があることが判明し、その保険料は故人が支払っていた場合、Bは遺産と保険金合わせて5500万円を手にすることになります。

Aとしては保険料が故人の財産から支払われていた分、相続財産が値減りしているわけですし、不公平感を感じますね。


このようなケースでは一つに遺族間で大きな不和を生み、争いの火種になってしまう可能性があることと、もう一つはケースによっては上記の生命保険金を「特別受益」とみなして相続財産への持ち戻し計算の対象にされる可能性がでてくること、この二点に注意しなければなりません。

特別受益の持ち戻し計算とは、相続人間の公平性を考えて、対象となる財産を一旦相続財産に加えて遺産の分配を考えるものです。

過去の判例では、生命保険金は原則として特別受益にはあたらないが、個別のケースで相続人間に著しい不公平が出る場合には特別受益となることもあると判断しています。

著しい不公平となるか否かの判定には、支払われる保険金の額はもちろん、保険金以外の遺産全体の総額はいくらで、保険金が占める割合はどの程度なのか、故人の生前の面倒を誰がみていたのかなど、個別具体的な要素を考慮することになります。

まとめ

今回はみなし相続財産について、どのようなものが該当するのか、また相続の際のポイントなどを見てきました。

意外なものがみなし相続財産となるので、ご自身のケースで関係のありそうなものはないか確認し、必要に応じて相続が起きる前から税理士等に相談すると安心です。

特に生命保険金については相続後に遺族の間に思わぬ火種を残す可能性もあります。 個別のケースで留意すべき点は異なるので、自分の場合はどうなのかという点を専門家に確認しておきましょう。