タンス預金とは、銀行に預けずに自宅で現金を保管する方法で、現金を手元に置いておきたいという心理から、多くの人々が選択しています。
しかし、相続時にはこのタンス預金が大きな問題となることがあります。
特に、相続税対策としてタンス預金を利用することは非常にリスクが高く、税務署に発覚した場合には重大なペナルティが科される可能性もあるのです。
本記事では、タンス預金が相続税対策にならない理由や税務署にバレるリスク、適切な相続税対策の方法についてくわしく解説します。
相続の際に安心して手続きを進めるために、正しい知識と適切な対策を身につけましょう。
目次
1. そもそもタンス預金とは?
タンス預金とは、銀行や金融機関に預けずに、自宅のタンスや金庫などに現金を保管する方法です。
自分のお金を手元に置いておくことで安心感を得られると考え、タンス預金を選択する方は多いです。
日本では特に、低金利政策や金融機関への信頼低下が進む中で、タンス預金が増加していましたが直近の半年ほどは減少傾向にあります。
ここでは、タンス預金の定義や背景、そのメリットについて詳しく解説します。
1-1. 日本におけるタンス預金の普及理由
日本では、ゼロ金利政策や低金利が続く中で、銀行に預けてもほとんど利息がつかないため、現金を自宅で保管する人が増えています。
また、銀行手数料の増加やセキュリティの懸念もタンス預金を選ぶ理由となっています。
1-2. タンス預金のメリット
タンス預金の主なメリットは、いつでも現金を引き出せる利便性と、銀行の破綻リスクから現金を守ることです。
しかし、これらのメリットは相続税対策としてはあまり有効ではありません。
2. タンス預金が相続税対策にならない理由
タンス預金を相続税対策として利用することは一見魅力的に見えますが、実際には多くの問題が伴います。
法律上、タンス預金も相続財産として認識され、正確に申告しなければなりません。
また、財産を隠蔽する行為は重大なリスクを伴い、税務署に発覚した場合には厳しいペナルティが科される可能性があります。
ここでは、タンス預金が相続税対策として適していない理由を詳しく見ていきます。
2-1. 法律上の問題点
タンス預金は、相続税法上の「財産」として認識されます。
相続時に現金がタンスに保管されていることが発覚すると、その現金も相続財産として課税対象となります。
2-2. 財産隠蔽のリスク
タンス預金を相続税の申告から外すことは財産隠蔽とみなされ、重大な法的リスクを伴います。
税務署に発覚した場合、大きなペナルティを受ける可能性があります。
くわしいペナルティについては、「タンス預金がバレた場合のペナルティ」をご覧ください。
3. タンス預金はなぜ税務署にバレるの?
タンス預金を隠しているつもりでも、税務署の目を逃れることは難しいです。
税務署はKSKシステムを活用し、相続人の財産状況を詳しく把握しています。
また、税務調査には書面調査や実地調査があり、これらの調査によって不自然な資金移動や財産隠蔽が明らかになることが多いです。
ここでは、税務署がどのようにしてタンス預金を発見するのか、その仕組みと具体的な調査方法について解説します。
3-1. KSKシステムによる財産把握
税務署はKSKシステムを使って、相続人の財産状況を包括的に把握します。
<KSKシステムとは>
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このシステムにより、銀行口座の動きや不動産の所有状況が詳細に監視されており、不自然な資金移動はすぐに判明します。
3-2. 税務調査の種類と実施方法
税務調査には、書面調査と実地調査があります。
書面調査では、相続財産の書類を詳細にチェックし、不審な点があれば追加の資料を要求されます。
実地調査では、直接税務署員が実際に自宅を訪れ、現金の保管状況などを確認するのです。
3-3. 実地調査や反面調査の詳細
実地調査によってタンス預金が見つかる可能性が高く、反面調査では銀行や他の関係者から情報を収集します。
これにより、相続人が隠している財産が明るみに出ることが多いです。
4. タンス預金がバレた場合のペナルティ
タンス預金を隠していたことが税務署に発覚した場合、さまざまなペナルティが課されます。
延滞税や加算税の対象となり、特に重加算税が適用されると罰則は非常に重くなります。
さらに、最悪の場合には裁判に発展し、有罪判決が下されることもあります。
ここでは、タンス預金が発覚した際の具体的なペナルティやその計算方法、そして最悪のシナリオについて詳しく説明します。
4-1. 延滞税と加算税の種類と計算方法
タンス預金を隠蔽していた場合、発覚後には延滞税や加算税が課されます。
延滞税は納期限の過ぎた日からの延滞期間に応じて、年率約1.6%の延滞税率が適用されます。(2024年現在の税率)
加算税は過少申告や無申告に対するペナルティです。
一般的には申告漏れ金額に対して20%から40%の税率が課されます。
4-2. 重加算税の適用条件と罰則の重さ
重加算税は、故意に財産を隠蔽した場合に適用され、通常の加算税よりも重い罰則が課されます。
これにより、最悪の場合、財産の50%程度が課税されることもあります。
本来の課税価格の半分も追徴課税が行われる可能性があるので注意しましょう。
さらに詳しいペナルティについては下記記事で解説していますのでぜひご覧ください。
関連記事:相続税期限後申告のデメリット|ペナルティや特例の利用可否について
4-3. 最悪のシナリオ:裁判と有罪判決
財産隠蔽が悪質と判断されると、裁判に発展し、有罪判決が下される可能性があります。
この場合、刑事罰として罰金や懲役刑が科される場合もあるため、確実に相続税を申告できるようになりましょう。
5. タンス預金を正しく相続税申告する方法
タンス預金を正しく申告することは、相続税を適切に処理するために非常に重要です。
正確な申告手順を踏むことで、財産隠蔽のリスクを避けることができます。
ここでは、タンス預金の正しい申告手順や必要書類、注意点について詳しく解説します。
また、税理士に相談することのメリットについてもみていきましょう。
5-1. タンス預金の申告手順
タンス預金も含めた全財産を正確に申告することが重要で、下記の手順で進めていきましょう。
申告手順 |
内容 |
現金の確認と記録 |
タンス預金(現金)の額を正確に確認 保管場所や金額を詳細に記録 |
財産目録の作成 |
タンス預金も含め、相続財産の全体をリストアップ 不動産や預貯金、株式など他の財産も含めた総資産額を計算 |
相続税申告書の作成 |
相続税申告書に、タンス預金の額を記載 他の相続財産と一緒に申告書を作成 |
必要書類の準備 |
被相続人の死亡診断書や除籍謄本、戸籍謄本など、法定の必要書類を準備 タンス預金の額を証明するための書類(現金の出所や領収書など)準備 |
相続税の計算 |
相続税の基礎控除額や各種控除を考慮し、相続税額を計算 タンス預金を含めた総資産に基づき、最終的な相続税額を算出 |
相続税の申告 |
相続税申告書と必要書類を税務署に提出 提出期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
税務署への納付 |
計算した相続税を期限内に申告・納付 銀行振込や税務署窓口での納付が可能 |
税務署からの確認 |
税務署からの確認や追加書類の要求があれば速やかに対応 必要に応じて税理士に相談し、適切な対応を行う |
相続税の申告時にはタンス預金だけでなく、被相続人の全財産を正確に申告することが重要です。
用意する書類がいくつもありますので、以下でくわしく解説します。
5-2. 申告時の必要書類と注意点
申告には、必要に応じて下記の書類の中からいくつかの書類を準備しましょう。
必要書類 |
内容 |
相続税申告書 |
相続税の申告に必要な基本的な書類 |
被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本 |
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 |
除籍謄本または改製原戸籍 |
被相続人の本籍地から取り寄せる |
相続人の戸籍謄本 |
各相続人の戸籍謄本を揃える |
住民票の除票 |
被相続人の最終的な住所を証明するための書類 |
相続人の住民票 |
相続人の住所を証明するための書類 |
遺言書の写し(ある場合) |
遺言書がある場合、写しを添付する |
公正証書遺言の写し(ある場合) |
公正証書遺言がある場合、写しを添付する |
遺産分割協議書 |
相続人全員で遺産の分割方法を協議した内容を記載した書類 |
財産目録 |
相続財産の一覧表で、タンス預金も含めたすべての財産を記載したもの |
タンス預金の証明書類 |
タンス預金の出所を証明する書類(現金の引き出し記録や領収書など)を準備 |
預貯金の残高証明書 |
相続開始時点の銀行口座の残高を証明する書類 |
不動産登記簿謄本 |
不動産がある場合、その登記簿謄本を準備 |
固定資産税評価証明書 |
不動産の評価額を証明するための書類 |
保険金の受取証明書 |
生命保険金などがある場合、その受取金額を証明する書類 |
各書類の内容を正確に記載し、不備がないように注意しましょう。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内のため、各書類の準備は早めに始めることがおすすめです。
5-3. 税理士に相談するメリット
税理士に相談することのメリットは以下のとおりです。
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税理士に相続税申告を相談することで、正確かつ効率的な申告が可能となり、相続に関する不安やリスクを大幅に軽減することができます。
不安な場合や自分での手続きが難しい場合には、税理士に相談しましょう。
6. タンス預金はリスクが高い!適切に相続税対策をしよう
ここまでタンス預金と相続税の関係について、リスクやバレる理由・ペナルティなどを解説してきました。
タンス預金は便利ですが、相続税対策としてはリスクが高く、不適切な隠蔽は重大なペナルティを招く可能性があります。
そのため、相続税申告や対策は専門家の助言を受け、法に基づいた適切な方法を選ぶことが重要です。
たとえば、相続時精算課税制度や小規模宅地の特例など、正当な節税対策を活用しましょう。
タンス預金をはじめ、相続税対策を行う場合には税理士への相談がおすすめです。
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