相続税の申告手続き

相続財産調査のやり方|預金・不動産・株・借金の調べ方と期限、誰に頼むか

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士

親が亡くなったあと、最初に取り掛かりたいのが「相続財産調査」です。どんな財産と借金があるか分からなければ、相続放棄をするかどうかも、相続税の申告が必要かどうかも判断できません。この記事では、財産の種類ごとの調べ方と照会先、期限、専門家への頼み方を、相続税の申告に携わる税理士の立場から整理します。

この記事の要点

  • 相続財産調査は、相続放棄の期限(相続の開始を知った日から3か月)を意識して、亡くなった直後から始めます。
  • 預金は「相続時の預貯金口座照会」、不動産は2026年2月に始まった「所有不動産記録証明制度」という、以前より一括で調べやすい手段があります。ただしどちらも、すべての財産が必ず見つかるわけではありません。
  • 相続税の申告が必要になりそうな場合は、申告に使う書類(残高証明書や取引履歴など)を最初からその形で集めると、二度手間を防げます。

相続財産調査とは?いつまでに終えるべきか

相続財産調査とは、亡くなった方(被相続人)が持っていた預金、不動産、有価証券などのプラスの財産と、借金や保証債務などのマイナスの財産を洗い出す作業です。法律で義務づけられた手続きではありませんが、次の期限がある手続きはすべて財産の把握が前提になります。

手続き 期限 財産調査との関係
相続放棄・限定承認 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(家庭裁判所で伸長の申立て可) 借金が財産を上回るかの判断に必要
準確定申告 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 不動産収入・年金などの所得の把握に必要
相続税の申告・納付 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内 財産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかの判定に必要
相続登記 不動産の取得を知った日から3年以内(2024年4月から義務化) 不動産の特定に必要

特に注意したいのが相続放棄の3か月です。調査の途中で被相続人の預金を引き出して使うなど財産を処分すると、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。借金がありそうな場合は、財産に手を付ける前に専門家に確認してください。

相続財産調査の進め方(5ステップ)

  1. 自宅にある手がかりを集める:通帳、キャッシュカード、金融機関や証券会社からの郵便物、固定資産税の通知書、保険証券、確定申告書の控え、スマートフォンのアプリやメール。
  2. 戸籍をそろえる:金融機関などへの照会には、被相続人の死亡と相続人であることを示す書類が必要です。法定相続情報一覧図を取っておくと、以降の手続きが楽になります。
  3. 財産の種類ごとに照会する:次の一覧表に沿って、金融機関・市区町村・法務局などに照会します。
  4. 借金と保証債務を確認する:信用情報機関への開示請求や、契約書類の確認です。
  5. 財産目録にまとめ、申告の要否を判定する:財産と借金を一覧表にし、基礎控除と比べます。

財産の種類別の調べ方

財産 手がかり 主な照会先・手段 取得しておきたい書類
預貯金 通帳、キャッシュカード、郵便物、アプリ 各金融機関、相続時の預貯金口座照会 相続開始日の残高証明書、取引履歴
不動産 固定資産税の課税明細書、権利証・登記識別情報 市区町村(名寄帳)、法務局(所有不動産記録証明書、登記事項証明書) 名寄帳、固定資産評価証明書、登記事項証明書
株式・投資信託 取引報告書、配当金の通知、株主総会の招集通知 証券会社、証券保管振替機構(登録済加入者情報の開示請求)、株主名簿管理人 残高証明書
生命保険 保険証券、保険料の引き落とし 各保険会社、生命保険協会の生命保険契約照会制度 支払調書・契約内容の分かる書類
借金・保証債務 督促状、契約書、引き落とし 信用情報機関(CIC、日本信用情報機構、全国銀行個人信用情報センター) 開示報告書、残高証明書

預貯金

通帳や郵便物から取引のある金融機関を洗い出し、各金融機関に「相続開始日現在の残高証明書」を依頼します。支店が分からなくても、名義人が一致すればその金融機関の全口座を調べてもらえるのが一般的です。

通帳がないネット銀行や、昔使っていた口座を探す手段として「相続時の預貯金口座照会」があります。預貯金口座管理法に基づく制度で、相続人が一つの金融機関(取引がなくても可)に申し込むと、被相続人がマイナンバーを登録していた口座の金融機関名・支店名・口座番号などが通知されます。金融機関の案内では、手数料は1件5,060円(税込)、結果が届くまで約1か月、申し込めるのは死亡後10年までです。通知に残高は含まれず、マイナンバーを登録していない口座は対象外のため、通帳などでの調査と併用します。

税理士の視点:定期預金は、相続開始日までの利息(既経過利息)も相続財産に含めて評価します。残高証明書を依頼する際に「既経過利息の計算書」もあわせて依頼すると、申告時に取り直す必要がありません。また、過去数年分の取引履歴も取得しておくと、生前贈与や家族名義の預金の確認に使えます。

不動産

毎年4〜6月ごろに届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)が最初の手がかりです。ただし、課税標準額が低く固定資産税がかからない土地や、他の市区町村にある不動産は載らないことがあります。

  • 名寄帳:市区町村が管理する、その市区町村内の所有不動産の一覧です。課税されていない私道なども把握できますが、市区町村ごとの請求が必要です。
  • 所有不動産記録証明制度:2026年2月2日に始まった制度で、相続人は全国の法務局で、被相続人が登記簿上の所有者となっている不動産の一覧を請求できます。窓口での請求は1通1,600円です。ただし、検索条件の氏名・住所と登記簿上の氏名・住所が一致しない不動産は抽出されません。引っ越し後に住所変更登記をしていない場合などは、旧住所でも請求する必要があります。
  • 登記事項証明書:見つかった不動産の所有者や担保(抵当権)の有無を確認します。抵当権が残っていれば、借入金の手がかりにもなります。

株式・投資信託

証券会社からの取引報告書や配当金の通知が手がかりです。口座のある証券会社が分からない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすると、口座を開設していた証券会社等が分かります。証券口座にない単元未満株などは、発行会社の株主名簿管理人(信託銀行など)で管理されていることがあります。

生命保険

保険証券や口座からの保険料の引き落としで確認します。契約先が分からない場合は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で、加盟する生命保険会社への一括照会ができます。被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、受取人が相続人でも「みなし相続財産」として相続税の対象になります(相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」まで非課税)。

借金・保証債務

ローンやクレジットの契約は、信用情報機関(CIC、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター)に相続人が開示を請求して確認できます。ただし、個人間の借金や、知人・会社の借金の連帯保証は信用情報に載らないことが多く、契約書や督促状、通帳の定期的な振込みなどから確認します。未払いの住民税や固定資産税、入院費も債務になります。

見落としやすい財産

  • 家族名義の預金(名義預金):被相続人のお金で作られ、実質的に被相続人が管理していた場合は、相続財産に含める必要があります。
  • 自宅の現金、貸金庫の中身、貴金属
  • ネット銀行・ネット証券・暗号資産(メールやアプリから探します)
  • 未支給の年金、所得税の還付金、高額療養費の払戻し
  • 被相続人が経営していた会社への貸付金、自社株、ゴルフ会員権

照会や書類の取得をまとめて任せたい方は、日本クレアス税理士法人の相続税申告・相続手続コースをご覧ください。財産調査から申告まで一貫して対応しています。

相続税申告を見据えた調査で税理士が確認する点

相続税の申告が必要になりそうな場合、財産調査では「今ある財産」だけでなく「過去のお金の動き」も確認します。国税庁によると、令和6事務年度に相続税の実地調査を受けた9,512件のうち82.3%で申告漏れ等が指摘されています。申告の段階で漏れをなくすことが、結果として税務調査への備えになります。

  • 生前贈与:相続などで財産を取得した人が生前に受けた暦年贈与は、一定期間分が相続財産に加算されます。2024年1月以降の贈与から、加算期間は段階的に7年へ延長されます。
  • 名義預金:家族名義の口座の原資や、通帳・印鑑を誰が管理していたかを確認します。
  • まとまった出金:使途が分からない引き出しは、現金として残っていないか、誰かに渡していないかを確認します。

このため、取引履歴は相続開始日の残高だけでなく、過去数年分を取得するのが実務上の定石です。何年分が必要かは、贈与の有無や財産の規模によって税理士が判断します。

自分で調べるか、専門家に頼むか

財産が預金と自宅程度で、取引先も分かっていれば、自分で調べることは十分可能です。一方で、口座や不動産が複数の地域にある、借金があるかもしれない、相続税がかかりそうという場合は、専門家に任せると期限内に漏れなく進めやすくなります。依頼先は、調査の「その先」に何があるかで選びます。

依頼先 向いているケース 注意点
税理士 相続税の申告が必要になりそう。財産の評価・申告まで一緒に頼みたい 相続人間の紛争の代理はできない
弁護士 相続人間で争いがある、借金が多く相続放棄を検討している 相続税の申告は税理士との連携が必要なことが多い
司法書士 不動産の調査と相続登記を一緒に頼みたい 相続税の申告は対象外
行政書士・金融機関 戸籍収集や預金の解約などの事務手続きを任せたい 紛争や税務申告はそれぞれの専門家が必要

相続税がかかるかどうか分からない段階でも、分かっている範囲の財産で簡易計算をすると、どこまで調べるべきかの目安が立ちます。日本クレアス税理士法人では、無料相談で簡易計算と必要書類のご案内を行っています。

調査結果は財産目録にまとめる

調べた財産と借金は、種類・所在・金額・根拠書類を一覧にした「財産目録」にまとめます。遺産分割の話し合いや相続税の申告の土台になります。書き方は財産目録を作成してみましょうで紹介しています。

よくある質問

Q. 相続財産調査にはどのくらいの期間がかかりますか?

財産の数や照会先によりますが、残高証明書や口座照会は数週間〜1か月程度かかることがあります。相続放棄の3か月を意識し、亡くなってから早めに着手してください。

Q. 他の相続人の同意がなくても調査できますか?

残高証明書の発行や相続時の預貯金口座照会などは、相続人の一人から申し込めるのが一般的です。必要書類は照会先ごとに確認してください。

Q. 調べた結果、財産が基礎控除以下なら何もしなくてよいですか?

相続税の申告は不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って初めて基礎控除以下になる場合は、申告が必要です。預金の解約や相続登記は別途必要です。

Q. 申告後に財産が見つかったらどうなりますか?

修正申告で申告内容を正します。税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に修正すれば、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかります)。

Q. 財産調査だけを税理士に頼めますか?

事務所によって対応が異なります。日本クレアス税理士法人では、財産調査から相続税申告・相続手続きまでを一括でお受けするのが基本です。まずは無料相談でご状況をお聞かせください。

まとめ

相続財産調査は、相続放棄、準確定申告、相続税の申告という期限のある手続きの前提です。自宅の手がかりを集め、相続時の預貯金口座照会や所有不動産記録証明制度などを組み合わせれば、自分でも一定の範囲を調べられます。相続税がかかりそうな場合は、申告に使える形で資料をそろえることが、手間と税務リスクの両方を減らします。

日本クレアス税理士法人では、全国10拠点とオンラインで無料相談を受け付けています。お電話(0120-55-4145/平日・土曜 9:00〜18:30)または無料相談フォームからお問い合わせください。

出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月)、法務局「所有不動産記録証明制度」、各金融機関の相続時預貯金口座照会の案内。本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士

2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

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